上体を起こした相手をゆるりと抱きしめる。
「俺、お前のこと、めちゃくちゃ好きだよ?」
「知ってる。俺も、好き。あの、ごめん……」
「謝んなくていい。てかさ、この際だからちょっとお互い正直にさ、話、してみない?」
なんかすごく今更な事を言っている気もするが、このまま抱いてしまうのはダメだと頭のどこかで警鐘が鳴っている。
「セックスは?」
「もちろんするけど、ちょっと休憩で」
「怒った? それとも萎えた?」
「怒ってないし萎えてない」
またチンコ触る? さっきよりガッチガチだよ? と軽く笑えば、相手は諦めたように小さく息を吐きだした。
「話、ってどんな話したいの?」
「俺にとってお前がどんだけ特別なのかって話?」
「語尾上がってんだけど。疑問符付いてんだけど」
「いやだって、お前が聞きたい話、わかんないんだもん」
「俺がお前にとって特別な相手だってのは、今更聞かなくても知ってるんだけど、これ以上まだなんかあんの?」
「だってちゃんと知ってたら、お前がアンアン言ってるのに呆れるなんて絶対思うわけ無いし。でも元々男が好きなわけじゃないのも、お前以外の男に欲情しないのも本当だし。なんでお前にだけこんなに執着するのかを、何かが狂ってたまたまお前が俺の運命の相手になったって言われたら否定しきれない……気もする」
言葉に出したら、途端に不安になってくる。自分自身の吐き出した言葉に、グラグラと自信が揺れて崩れそうだ。
「だから知ってるって」
呆れた様子の声は、けれど酷く優しい響きをしていた。
「お前絶対怒ると思うけど、正直、セックスしてみたらお前の気が済んで恋人関係終了になる可能性、絶対あると思ってんだよね」
「ないよっ!」
「わかってるよ」
慌てて強い語気で否定すれば、落ち着けと言わんばかりに、やっぱり優しい響きが肯定を返してくる。
「正直に話がしたいんだろ。だから聞いて」
相手の腕が上がって、そっと背を抱き返された。まるでこちらがあやされているみたいで苦笑が零れそうだ。
「ん、……聞く。だから話して。お前が俺に思ってること、不安なこと、全部、話して」
「正直に言えば、なんで俺、ってのは今でも思ってる。でもお前の気持ちを疑ってるわけじゃないんだよ。お前の好きは信じてるし、それも生半可な好きじゃないってことも、知ってる。絶対同じ大学通ってやるって言われたの、ビックリしたけど嬉しかった。しかも本当に合格しちゃうしさ」
「お前がすげー喜んでくれたから、俺も、思ってたより、お前に好きって思われてるのかも、って思って嬉しかった」
同じ大学受からなかったら、高校卒業と同時にそのまま別れるって言われると思ってたと言ったら、あっさりそれもありだったと返された。
「あー……やっぱりって凄く思ってるけど、直接言われるとへこむわー」
「提案はしただろうけど、お前が嫌だって言ったら継続するつもりはあったよ」
「それ本当?」
「本当だって。お前自身が言ってるけど、お前が思ってる以上に、俺はお前を好きになってる。だからこそ、色々考えるんだよ。いつか突然お前が正気に返って俺を捨てる可能性とか、セックスしたらお前の気が済んで恋人関係終了とかってのも、色々の中の小さな一つってだけ」
「それってさ、そういうの、考えないわけにはいかない……んだよな?」
「そうだよ。性格的に、そういうの考えちゃうの。わかってるから、そう聞くんだよな?」
うん、と頷く声は自分でもわかるほどに弱々しい。
「だって、お前のそういうとこも好き……なんだよ、俺」
あーあと溜息を吐いたら、腕の中の体が楽しげなクスクス笑いとともに小さく揺れた。
「考えないの無理だし、何かの拍子にポロッとこぼれちゃうこともあるけど、だからってお前の気持ちを信じてないわけじゃない。色々考えるせいで、一人で先走ってお尻の穴慣らしちゃったり、それでお前に、俺の体をお前が慣らしたかったんだって言われて、慣らしちゃったことを後悔したりもないわけじゃない。勝手に体慣らしちゃったのマズかったのかなって思って少し不安になってたから、さっきの呆れられたかもってのは、そっちに引きずられてついこぼれた」
わかってると思うけどさ、と相手の言葉は更に続いていく。
「色々な可能性考えるし、さっきも言ったようにその中にはお前に捨てられる可能性も入ってるけど、何のためにそれらの可能性をあれこれ考えるかって言ったら、回避きできるのもは回避していくためだからな?」
わかってると頷いたら、せっかくだからもうちょっとだけ聞いてと、相手はやはり少し楽しげな声で告げる。
「聞くよ。全部、聞く」
「もしお前がセックスしたら気が済んだーとか言い出したって、この状況で即ルームシェア解消とかなんないのはわかるよな? お前が俺を逃さないと思ってるのと同じくらい、俺もお前を逃がす気ないって可能性、そろそろ気付いたほうがいいと思うよ? ってわけで、今思ってる事はこれで多分全部かなぁ」
どうする? と続いた声に、何をと問い返したら、セックスの続きと返されて、そうだセックスの真っ最中だったのを中断して、むりやり話を聞き出したんだったと思い出した。
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話したいんでしょうね、彼らが。
男女でもそうだけど同性同士なら余計、’愛情’って目に見えない不確かなものを頼らなきゃいけないから。
知識が増えれば、失敗したくないとか思うことが増えるだろうし、世の中もわかってくる。
少子化の中、その片棒を担ぐのも心苦しい、とか。 でも、そんなこと気にしてたら恋愛出来ない(笑)。
安心してエッチが出来るようになるまで、カーテンの陰でお付き合いしますよ♡お待ちしてます~。
mさん、コメント有難うございます~(*^_^*)
ああ、確かに。
これはもう、彼らが話したがってるんでしょうねぇ……
両想いは確実なのに、ちょっとしたズレがまだまだ不安で仕方ないみたいな。
さすがにそろそろ終わりたいんですが、彼らが安心してエッチ出来るまで、もう少々お付き合いよろしくお願いします~