追いかけて追いかけて30

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 区切られた時間の中でなら、恋人という関係を目一杯楽しめるんじゃないかなんて、なんて浅はかだったんだろう。
 抱きしめられるとホッとして、何もかも全部、すべてを晒してしまいたくなる。恋人となった彼をこの時間が終わっても手放したくないと考えてしまう欲深さも、彼に自分を選ばせる罪悪感と嫌悪感に耐えられなくなる未来に怯える弱さも、この彼なら許して受け止めてくれるんじゃないかと思ってしまう。
 同時に、それはダメだと引き止める自分もいる。彼にしてきた仕打ちを思い出せと、自分自身に詰られる。そんなのあまりに自分勝手が過ぎる。わかっている。それに、諦めて手を引くのが得策だとわかっていると言われた上での、今だけ恋人という提案だったってことも忘れちゃいけない。
 わかっていながら、それでも。気持ちを晒してしまいたい衝動を抱えて気持ちが揺れた。だって辛抱強くこの体を慣らして拡げてくれた事実も、幸せそうにふにゃふにゃと崩れた笑顔を見てしまったことも、今こうして抱きしめてくれる腕の暖かさも、胸の中をグズグズと甘く溶かしていくばかりなのだ。
 正直な気持ちを言ってしまっても、いいだろうか。そう思った矢先。
「もしかしてだけど、今だけ恋人、ってのが嫌になった、とか?」
 先を越されて唖然とする。
「な……んで……」
「あ、図星? え、ほんと?」
 あわあわと何も返せずにいれば、図星なんだねと疑問符を取っ払って繰り返される。その声は楽しげで嬉しげだ。
 言ってよかったのかと思ったら、安心しきって全身から力が抜けた。
 背を抱く腕の力が抜けたのを感じたらしい相手にそっとベッド上に降ろされれば、そのままずるりと腕が落ちて、拘束の解けた相手が上体を起こす。嬉しそうに笑った相手に見おろされる。
「散々、あなたと恋人にはならないって言ってた俺が、このまま恋人で居たいって言っても、いいの?」
「いいよ。嬉しい」
「でも……」
「うん。不安なこととか、罪悪感だとか、嫌悪感だとか、色々あるのわかってるけど、それはちょっと後回しにしよう。取り敢えず、簡単には逃がす気ないってのだけ、覚えててくれればいいから」
 まずは続きをさせてと言いながらゆるく腰を揺すられ、彼と繋がっている状態を意識させられる。確かに、挿入までにかなり時間を掛けた上に、繋がってからもあんな態度を見せて抱きつき拘束してしまったのだから、相手は相当焦らされきっているだろう。相手からすれば、ここからが気持ちよくなる本番なはずなのに。無事に相手と繋がれただけで、どこか満足しきっていたことを恥じた。
「ふぁっ……」
「痛くない? よね?」
「ぁ、ぁ……」
「大丈夫そうかな」
 確かめるように更に数度小さく揺すられたあと、動くよって宣言されてお腹のナカをぐちゅぐちゅと擦られ始める。押し出されるみたいに喉の奥からあふれる声が、自分のものだなんて信じられない。
 ただその声に煽られるらしい相手が、だんだんと余裕をなくして行くのを見るのはなんだか少し楽しかった。といっても、余裕がありそうだねって笑われた後は、とても相手の観察なんてしてられないくらい、あっさり追い詰められてしまったのだけど。
 経験値の差に太刀打ちできない。初めてだってのに、まさかアナルに相手のペニスを咥えこんだ状態のまま、二度目の吐精を相手の手の中で果たすとか思ってなかった。
 色々な意味で呆然としている間に、相手もどうやらイッたらしい。力を抜いて倒れ込んできたかと思うと、ぎゅうと抱きしめられてしまう。
「やっと、捕まえた」
 耳元で囁かれた声がいやに感慨深くて、さすがに大げさだと笑いそうになった。

続きました→

 
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