まだ随分と迷ってはいるようだけれど、このまま恋人となることを了承してくれる可能性はありそうだし、だとしたらそこは確かめておきたかった。相手が自分の何を、どこを、好きだと思ってくれているのかを知るのは重要だ。
「えっ?」
相手は突然何をと言いたげに、思考を中断してこちらを見つめてくる。噛み締めていたはずの唇は、呆気にとられてかうっすら開いていた。
「俺を好きだと思いながら、なのに俺以外の、お前を抱いてくれる人を探してた? それはなんで? だとしたら俺に抱かれる気になった理由も聞きたい。好きになれたら付き合う気があったのに、でも俺は別っての、お前の本音として確かに伝わってはいるけど、理由はやっぱわかんないんだよな。本気で年の差がダメとは言わないだろ?」
「質問、多すぎ」
ちょっと聞きたいって内容じゃないですよと言いながらも、相手が酷く動揺しているのがわかる。
「そうだな。じゃ、さっきのはちょっと答えてに変更で。でもって、ちょっとずつお前のペースでいいから、答えて。ゆっくりでもいいけど、なるべく全部な」
小さな声がズルいと呟いたようだったし、確かになと思いはしたが、聞こえなかったふりで相手の答えを待てば、やがて嫌だと吐き出されてきた。そう言いそうな気がしていた。
やっぱりと思いながら、用意していた言葉を告げてみる。
「そんなに恥ずかしい理由なの?」
「ちょっ、恥ずかしい、って、なん、で」
「いや恥ずかしくて言えないってやつかなと思って?」
「別に、恥ずかしくも、そもそも大層な理由なんてのも、ない、です」
「じゃあ尚更、もったいぶらずに教えてよ」
もう一度、いつから俺が好きだったのと繰り返せば、仕方がないと言った様子のため息を一つ吐いた後、相当気まずそうにさっきからと返された。
さすがの衝撃に息を呑む。まだ淡い好意だとは感じていたが、そこまでとは思わなかった。というかそれって結局、キモチイイに気持ちが引きずられたってだけじゃないのか?
いくら成り行きでそうなっただけだとしても、相手が自分を想っていなくても、出来る限り相手も気持ち良くなれるセックスをしようとした結果がこれか。
相手は大学生とはいえ未成年で、男相手のセックスは間違いなく初めてだと知っていたのに。
知識として、そういうこともあるとわかっているし、実際そういうタイプも居るんだろう。けれど今まで出会ってきた友人知人から、リアル体験として耳にしたことはなかった。自分自身、体の快楽と好きという感情が直結はしていない。気持ちいいセックスをした後、嫌いな相手が好きな相手に転化したことなんてない。というかそもそも、それなりの好意が育っている相手としか関係を持ったことがない。
だからこそ、考えつきもしなかった。
「えー……っと、つまり、抱かれたら好きかもって気がしてきたとか、そういう、話? さすがに好きの自覚ははっきりありそうと思ってたけど、そこからして俺の勘違い?」
絶対嫌われただろう相手に、好きだと繰り返された上で名前を呼ばれたりしたから、慌てて舞い上がり過ぎていたらしい。
「恋人になってに頷いてくれないのは、本当に俺を好きかどうかで迷ってるせいもあったりする?」
「ちがっ……ぁ、わない」
思わずといった感じで否定を漏らしたものの、すぐにしまったと言いたげに更に否定を繋げ、またキュッと唇を閉ざしてしまった。
えー、もう、本当に困る。こんな反応をされてしまったら、全てが疑わしく感じてしまう。自分に都合の良い部分だけを信じて、後は照れ隠しの嘘やごまかしって事にしたくなってしまう。もしくは真逆で、自分に都合の悪い部分だけ信じて、彼のことを諦めてしまいそうだ。
そしてきっとまた、勘違いの思い込みが激しいなどと言われてしまうんだろう。そうしたら、勘違いするのはこちらばかりが悪いわけじゃないと、今度こそ口に出して言ってしまうかもしれない。
「はいダウト。というか頼むからもう、いい加減お前の本当を教えてくれ。で、どっから違うの? 俺のことは本当に好き? それはいつから? 抱かれてその気になっちゃった? それともさっきから、ってのからして、嘘だったりするの?」
「だからっ」
焦れた様子で叫ばれたってわからない。ちょっと聞いていいかだとか、ゆっくり答えてくれればいいと言いながら、どんどん疑問符を並べ立てているのは事実で、それに苛ついているっぽいのはなんとなく感じているけれど。
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