別れた男の弟が気になって仕方がない3

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 視線を逸らしたまま、別に、と一度小さく呟いた後、相手はまたゆっくりとこちらへ視線を向ける。そこに動揺などはなさそうだったが、静かに見返してくる相手の瞳に、こちらの申し訳ないという気持ちごと跳ね返すような拒絶を感じた気がした。
「過ぎたことだし別にいいです。目的は果たしましたし」
 どうでも良さそうに言い募るけれど、それが本心からどうでもいいと思っているのかは、やはり今ひとつわからない。落ち着かなければと思うのに、気持ちがざわついて仕方がない。
「それより、さっきの話、どうなんですか?」
「さっきのって?」
「俺に誰か紹介、してくれるんですか?」
 好奇心ってのはつまり、兄が長年の片恋を実らせて幸せを振りまいているから、それにあてられたって事なのだろうか。兄が羨ましい、兄のように愛されたい、みたいな?
 うーんと唸ってしまったら、無理ならいいですとあっさり諦めの言葉を吐いて立ち上がる。
「おい、どうする気だ?」
「これ以上話すこと、ないですよね」
「じゃなくて。お前、また変なの引っ掛けに行く気じゃないよな?」
「今度はもう少し気をつけますよ。さすがに知り合ったばかりの人といきなりホテルでやれるほど、覚悟決めて来てるわけじゃないんで」
 初めて会った数十分後に、ベッドの上に裸体を投げ出していた男が何を言っているんだか。さっきだってこちらが通りかかって声をかけなければ、押し切られてホテルに入室していたかもしれないのに。
 それじゃあ失礼しますと言って去ろうとする相手を引き止めるため、こちらも慌てて立ち上がり咄嗟に手を伸ばした。握ってしまった手首は一瞬にして力が込められ、相手の緊張と、やはりこちらを拒絶する気配を感じ取る。それでも放してはやれなかった。
「紹介は、する。だから一人でうろつくな」
 思いの外低く威圧的に響いてしまった声に自分自身驚いていたが、相手も同様に驚いたらしく目を瞠っている。しまったなと思ったけれど、取り繕う気が起きずそのまま会話をほぼ一方的に進めていった。
 成人間近とはいえ、知ってしまった以上、自己責任だと放って置けそうにない。こんな短時間の付き合いでは、相手が何を考え思って行動しているかなんてさっぱりわからないので、思慮が浅いとまでは言わないが、無駄に行動力があるタイプなのは間違いないみたいだし、危なっかしくてハラハラする。背が高く硬質な雰囲気から大人っぽく見えても、中身はやっぱり子供だった。そして自分の魅力を知らなすぎる。
 きっちりと筋肉の付いた細身の長身で未貫通の若い男が、好奇心からだけどセックス上手い人に抱かれてみたい、などと言って回って、もし何事もなく無事に希望通りの初体験が出来たとしたら、それはもの凄く運がいいと言えるだろう。
 知り合いを紹介するのは放って置けないからだと言えば、やはり先程の失言が効いているのかまたしても嫌そうな顔をされた挙句に、兄とは別れたくせに保護者気取りとまで言われたけれど、その兄に連絡しないだけありがたく思えと告げればさすがに黙った。という事は先程チラリと思った通り、彼の兄は弟がこんな場所で抱いてくれる相手を探しているという、この事実を知らないのだろう。
 好奇心なら一度だけ出来れば満足なのか、それとも相性が良ければそのまま交際する気があるのか、相手の年齢や体格や性格にこれだけは譲れないという希望があるかなどを聞いて、結果、身元のはっきりしている恋人募集中という男を一人紹介した。

続きました→

 
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