今度は自分が焦らしてやろう。という企みを胸に、彼との時間を重ねていく。
それは、どこかに出かけるか自室でまったりイチャつくかの二択に、彼が越した先の家で過ごすという選択が増えた日だった。
初めて招かれた彼の家への興味と興奮が大半で、けれど、どうして家に呼んでくれたのかと勘ぐる期待だってもちろんある。自室でまったりイチャつくのが、せいぜいキス程度で終わってしまうのは、家の中に彼の両親が居るからなのだとわかっていた。完全に二人きりで過ごすのなんて、あのラブホ以来と言ってもいい。
ただ、いつもより過激なスキンシップが可能だと期待する気持ちはあっても、正直、どこまで許していいのかわからない。焦らしてやれと思っていたって、どうすれば相手が焦らされてくれるのか、肝心な所がわかっていない。ということに、勧められるままソファに座ってから気づいて焦っていた。
「なんでそんな緊張してんの?」
ソファ前のローテーブルにお茶を置きながらそう言った相手は、隣の空きスペースに腰をおろす。しかも随分と体をこちらに向けていて、視線が頬に突き刺さる。
「期待していいんだよね? とか言いながら、ぐいぐい来そうなとこなのに」
「期、待……していい、の?」
「多少は」
「たしょう、って、どれくらい?」
「んー……そうだなぁ」
言いながら彼の手が伸びてきて、頭を撫でて髪を梳き、やわやわと耳を摘まれた。いつものスキンシップよりも手付きが柔らかで、ゾワゾワとするこの感覚が、快感の芽であることはわかっている。
「俺とのセックスを意識し過ぎてこんなになってる、ってなら、このまま抱くのも有りなんだけど」
「えっ、抱くの?」
抱くのも有りだなんて言葉が出てくるのはあまりに想定外で、思わず相手を振り向いてしまう。ようやく彼と視線を合わせたせいか、目の前で満足そうに笑われた。ただし、その口から吐き出されてきたのは否定の言葉だったけれど。
「いいや。だってどう見たって違うんだよなぁ」
「違うって何が?」
「緊張してる理由。やっと抱いて貰えるかもなんて事、ちっとも思ってないだろ」
「だ、って、同じ好きになったのか、自信ない、し。でも、いつもよりえっちなこと、して貰えるのかも、って思っては、いる」
「どこまでしていい?」
「えっ?」
「今日、どこまでなら、お前に触っていい?」
「えー……っと、それを、俺が、決めるの?」
「そう」
頷かれて、どこまで許せばいいのかを考え込めば、しばらくして、相手が堪えきれなかった様子で吹き出したから、驚きのあまり肩が跳ねてしまった。
「えっ、え、何!?」
「なぁ、お前、いったいなに企んでんの?」
「たくらんでなんか……」
焦らしてやりたい気持ちを見透かされているようで居たたまれない。
「こーら。ちゃんとこっち見て言えよ」
視線を泳がせればすぐに窘められてしまったが、だからと言って真っ直ぐに彼を見返すのは難しい。
「お前ね。そんなじゃますます、変なこと企んでますって言ってるようなもんだぞ」
呆れた様子の声に、何企んでるか言ってみろと促されたけれど、果たして、今度は自分が焦らす番だなんてことを口に出していいのかわからない。というか、そんなの言えるわけがなかった。
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