理解できない39

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 なんでと問えば、その気になってない相手に触ってもきっと楽しくないと思うからだと返された。
「無理強いする気もないし、乗り気じゃないお前相手に手ぇだす理由がないって」
 続いた相手の言葉に、そういやそういう人だったと思い出す。相手を焦らすというのは、思ったよりもずっとずっと難易度が高そうだ。というかもう、無理だと諦めたほうがいいような気さえしてくる。
「あーああーもー! 知ってた! 知ってたそれ」
「え、何だよ突然」
「結局さ、そっちが俺を抱きたくて仕方なくなるより先に、俺が抱かれたくて仕方なくなるやつでしょこれ」
 やけくそ気味に言い放てば、呆気にとられた様子でしばし眺められた後、何かに思い当たってしまったらしい。
「あー……つまり、俺がお前を抱きたくて仕方なくなるまで、お前に手を出させない予定だった?」
 企んでたのはそれだろうという指摘に、渋々と、ちょっと焦らしたかっただけだよと白状する。
「だって高校時代、俺は散々焦らされたわけだし」
「なるほどな。ただ、言わせてもらえば、お前が高校生だった時期、俺は焦らされただけじゃなく、煽られまくるのを散々耐えても居たんだが?」
「ん? どういうこと?」
 聞けば盛大に溜息を吐かれてしまった。
「お前が抱いて貰えなくて辛かったって言うなら、俺だってお前を抱けなくて辛かったって言ってんだ。しかもお前の抱いて貰えないって、お礼を受け取って貰えない、みたいな話だっただろうが。好きなのに抱いて貰えないって話じゃなかったろ」
「それはそうだけど、」
 あの頃の気持ちが、好きなのに抱いてくれないだったら何か変わってたのかと聞きたかったのに、反論は許さんとばかりに彼の言葉が続いていく。
「こっちは好きな子から無邪気に、絶対食えない据え膳チラつかせられてたようなもんだぞ。その俺の心労が、散々焦らされたなんて言ってるお前の苦労に劣るとは到底思えないね」
 どうだとばかりに言い募られて、そう言われてしまえば、自分だけが焦らされていたわけじゃないのは確かだろう。今度は自分が焦らしてやりたい、なんて事を思ってしまったのは浅はかだったと認めるしか無い。
「それはわかった。けどさぁ、もし俺があの時期に既にあなたを好きって思えてたら、あなたが言うところの子供相手でも、恋人になったり据え膳食べたり出来たわけ?」
 あんなに年齢を気にしていた相手が、気持ち一つでそれを覆すはずがない。どうせ抱いてくれないなら、好きなのに抱いて貰えないって状況になる方が、もっと辛かったはずだ。と思った所で、彼の憤りがわかってしまった。
 なるほど。好きな子に手を出せなかった相手の方が、より焦らされていたに違いない。
 なんてことをあれこれ考えていたせいで、彼の答えがすぐには理解できなかった。
「もしあの頃のお前の中に、自発的に俺への気持ちが湧いたってなら、喜んで、恋人になってたろうさ」
「…………は?」
「恋人には、なってた」
 間抜けな音を口から漏らしてしまえば、相手は重要なところを繰り返してくれる。
「え、嘘でしょ。高校生だよ? 子供だよ?」
「さすがに抱いてくれに応じるのは無理だけど、好きだって言いあったり、デートしたりは出来るだろ。というか、二度目を躊躇ってる今の状態がまさにそれだろ」
「ああ、そっか。てかなんで俺、もっと早く好きになろうって思わなかったんだろなぁ」
 勿体ないことをしたと言ったら、やっぱり少し呆れた顔と声で、成長していて何よりだと言われた。解せない。

続きました→

 
 
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