煽ったつもりは当然なかったからつい謝ってしまったけれど、そもそもどこまで本気でこのまま抱く気なんだろう?
こんな忠告をするくらいだから、明日じゃなきゃ嫌だってもっと強く言えば、引いてくれるのかも知れない。ただまぁ、イキたい直前だったはずのペニスはだいぶ萎えてしまったし、だから結構余裕ぶって話してしまっているけれど、動かされていないだけで彼の指はまだお尻に嵌っているから、あっさり諦めて明日仕切り直す気も少なそうだ。
「繰り返すけど、気になってるのが食事の件だけなら、試させて。このまま、抱かせてくれ」
こちらの迷いに気づいてか、直球で繰り返される要求に胸の奥が甘く疼く気がした。連動するようにお腹の奥まで疼いて、お腹の中の彼の指をキュムッと締め付けてしまったから、さすがに少し恥ずかしい。
「ダメ?」
甘やかな声が、ねだるみたいに確認を取ってくるのはズルいなと思う。しかもこちらの体の反応から、絶対に脈アリって思ってる顔をしてるのが憎たらしい。
事実、躊躇う理由は一応あるが、何かを試したいと思っていて、本人が構わないと言うなら、拒否するほどの問題ではない気がしてきていた。だって考えてみれば、抱かれる前の食事制限なんて、叩き込まれた習慣の一つでしかない。
更に言うなら、前回彼に抱かれた時も、この件に関してはだいぶ不十分だった。でも特に問題はなかったはずだ。
「ダメじゃない、けど……」
頭の中では、このまま抱かれても問題ないだろうと思っているのに、口からは躊躇いの残滓がこぼれていた。しかも相手はそういう僅かな躊躇いを、きっちり拾い上げてくるのだ。
「けど?」
「このまましたって大丈夫だとは思うけど、でも本当に経験なくて、だから、せっかく恋人同士でする初セックスなのに、何か失敗したらやだな、とは思う、というか……あの、試すのって、今日じゃないと、ダメなの?」
経験がないとか、初恋人セックスだとか、煽られると言うなら煽られてくれと思った。今度は間違いなくわかってて口に出しているのだから、それを理由に今すぐ抱いてしまえばいい。
でもさっきみたいななんとも言えない顔を見せたりはしなかったし、わかってて煽るなと怒る様子もなかった。
「ダメじゃないけど」
さっき自分が吐いた言葉と同じ言葉を吐かれながら、お尻からゆっくりと指が引き抜かれていく。それを残念に思うのは間違いで、わかってくれたと喜ぶべき場面だと思う。
なんの心配も不安もない状態で、明日、抱いて貰えるなら、その方が絶対にいいはずだった。
これは慣らす行為なんだから、一時はイク直前まで熱を上げたとは言え、今はかなり落ち着いてしまったし、明日に持ち越しでも問題ない。むしろお預けされるわけだから、明日への期待値が上がるってものだろう。
なのに、なんでこんなにガッカリした気持ちになるんだろう。
「そんな顔すんなって。お前の言い分は間違ってないし、俺に引く気もない」
「んん?」
間違ってないし、の後に続く言葉としては、何かが変な気がした。けれど、変だ、というのはわかるが、何がどうと説明できるわけではなく、結果、首をかしげるしかない。
「お前が言ってることはおかしくない。けど、わかった、じゃあ明日にしよう。とはまだ言ってないだろ。でもってそんな顔されたら、余計にそんなこと言えなくなるって」
こちらの引っ掛かりも、その理由さえもわかった顔で説明されてしまったけれど、そんな顔ってどんな顔だとは聞けなかった。だって聞かなくたってわかる。
「なら、このまま、するの?」
聞けばするよと即答されて、なんだか酷くホッとしてしまった。今日抱かれる予定は全く無くて、言われた最初はあんなに驚いたのに。いつの間にやら、このまま抱かれたい気持ちのほうが、断然大きくなってしまったらしい。
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