そんなこちらの安堵も伝わっているのか、相手の纏う気配も、こちらを見つめる表情も、なんだか随分と満足げで穏やかだ。
「お前、ほんっと、可愛いな」
どういう部分を指して可愛いと言っているのかを確かめようとは思わないけれど、本心からの言葉だってことはわかっている。
「知ってる」
平然とそう返すのは、きっと可愛げがない行為だと思うのだけれど、でもなぜか彼は、更に満足げに、楽しげに笑った。笑いながら、彼自身の準備を進めている。つまりは服を脱ぎ捨て、ゴムを装着している。
そんな彼を前にして、ドキドキソワソワするのは、間違いなく期待だった。
「好きだよ」
開かされた足の間に準備を終えた彼を迎えれば、そんな甘やかな声が降ってくるから嬉しくなる。顔がだらしなくニヤけそうで、恥ずかしくて、しっかり彼を見返せない。
「俺も、好き」
視線を逸らしながら返した言葉はたどたどしくて、でも、相手にとってはなんの問題もなかったらしく、相手の放つ気配がますます甘く緩んだ気がする。
「お前の中、入るな」
「ん、来て」
軽くうなずき促せば、お尻の穴に押し当てられたペニスの先に圧がかかって、そのままヌプリと入り込んでくる。久々のペニスとは言え、ここ一週間はほぼ毎晩彼の指を受け入れていたし、慣れた感覚に呼吸を合わせていく。
慣れた感覚とは言っても、彼のはなかなかに立派なので、それなりに必死にはなったけれど。
「ぁ……は、……ぁあ……」
ゆっくりと奥まで全部挿入された後、やっぱりゆっくりと彼の体が覆いかぶさってくるから、腕を伸ばしてその体を抱きとめた。
「苦しくない?」
「苦しい、けど、へーき」
くっついた体が離れてしまわないようにと腕に力を込めてしまえば、辛いの我慢してるわけじゃないならいいんだと言われて、何度もキスが繰り返される。口だけじゃなくて、目や頬や鼻の頭にも。
キスの合間に繰り返される「好き」の言葉に、同じように何度も好きを繰り返せば、そのたびに、相手が嬉しそうに笑ってくれるのがたまらなかった。ホッとして、嬉しくて、相手のことがますます好きになる気がする。
だけど同時に、胸の奥がぐずぐずと崩れてしまうみたいに苦しくなって、目の前がぼやりと霞んでいく。やっと辿り着いた、いわば理想的なセックスが出来ているはずで、幸せの最中と言っていい状況のはずなのに、なんで涙が溢れてくるのかわけがわからない。
言い訳するみたいに、嫌なわけじゃないんだとか、ちゃんと幸せなんだとか、本当に好きなんだとか、必死に言い募ってしまうこちらに、相手はいいよ、大丈夫だよと優しく頷くばかりで、なんで泣くのと責められることはなかった。ただ、そうやって優しくされると、ますます罪悪感のようなものが募って苦しい。
「ね、も、動いて」
こちらが落ち着くのを待ってくれているらしい相手の欲の状態は、お腹の中でしっかりと感じている。せめてこれ以上待たせたくないと、お願いだからとせっつけば、少し迷う様子を見せた後、わかったと返された。
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