理解できない54(終)

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 急いだから毎晩のように時間を掛けて慣らし広げていたけれど、今日もこれからたっぷり抱いて貰えそうだし、だとしたらそこまで熱心に慣らし行為を続けなくたって大丈夫だ。
 しかしまたしても、相手の返答はこちらの想像のはるか上だった。
「もっと広い物件に引っ越しは必要だろうけど、お前さえ良ければ、このままずっと」
「は?」
「俺が家出る前に、お前を一緒に連れて行く可能性があったことや、連れて出る理由がないって言ったこと、覚えてるか?」
「うん」
 確かに言われたのを覚えている。独り立ちしたいのについて行きたいと言うのは矛盾していると言われて、その通りなのに辛かった。
「もともと、お前と恋人になれたら、実家出て二人で暮らしたいって思ってた」
「え、でも、俺の自立は? 一人暮らしの練習兼ねて、家事とか仕込まれてたんだよね?」
「俺と暮らすのにも家事スキルは必要だから仕込んでた。それと、保護者代わりの俺にくっついて家を出るのと、恋人として俺と暮らすのは別物だと思ってるよ。一人暮らし経験があったって、学生が親掛かりで生活してるのを自立とは呼ばないし、実家暮らしだった奴が結婚を機に家を出る、みたいなのだって立派な自立だろ」
「そ、そっか……」
「一緒に暮らしてくれるか?」
「う、うん。もちろん」
 嬉しいと笑えば、相手も良かったと言って笑う。
「あ、でも」
「どうした?」
「おじさんとかおばさんに、どう説明するの?」
「説明なら済んでる。一緒に暮らして問題なけりゃ、広いとこ引っ越すって言ってある」
「あ、そうなんだ……」
 自分が知らないところで、自分に関する話が色々とされているのだろう事は知っていたけれど。
「今一緒に暮らしてるの、一人暮らしの練習させるって言ってたはずだから、そんな話になってると思わなかった」
「あー、まぁ、あまり俺の方の事情は話さないでくれって言ってあったからな」
「そっちの事情って?」
「色々有るけど、直近だと、俺と暮らすためにって気を遣って俺に合わせた生活しそうだったから、上手く行ったらそのまま暮らすつもりなのは隠してもらった」
「色々って、他は?」
「他は……そうだな、お前と恋人になれたら実家出て二人で暮らしたいと思ってた事とか?」
「待って。え、待って。恋人になったら、って、俺達が恋人になったこと、言ってるの?」
「言ってる。というか俺の気持ちはお前を引き取りたいって話した時から知ってるよ。だから俺の恋愛感情も、こっちの事情の一つだな」
「まじでっ!?」
「マジで」
 驚きはしたが、頭のどこかで納得もしていた。恋人って関係になってから先、ずっと寄り付かなかった実家に頻繁に戻ってきた上に、こっちの部屋で長時間二人きりで過ごしていたのを、何も言われなかった。
 アフターケア的なものとして認識されているのかと思っていたが、正しく恋人という認識をされていたらしい。まさかこれも何か彼の事情絡みで、知ってるって隠されてたんだろうか。
 恋人になってからも、おじさんやおばさんの態度が何か変わったようには思わなかったし、知っててあの態度だったの!? という新たな驚きが湧いてしまう。しかも息子の恋愛感情を知ってたなら、やっと成就したって事なのに。てかおじさんもおばさんも、この関係をどう思っているんだろう。
 彼は当然知ってるだろうけど、聞いたらこれも教えてくれるんだろうか。これもそっちの事情の一部だったりするんだろうか。
「お前の健全な成長が第一で、お前の意思を尊重するとか、気持ちを意図的に自分に向けさせないとか、高校卒業前のお前に手を出さないとか、俺自身の意思なのはもちろんだけど、お前を引き取る上での親からの条件でもあったんだ」
「なにそれ初耳。てかえー、ええー……イメージ変わる」
「親の? 俺の?」
「どっちも、だよ」
 えー、ええー、と何度も戸惑いの声を上げてしまえば、相手は知りたきゃ全部話すよと言って、額にチュッとキスを落とす。
「さすがにもう、知られて困ること多分ないし」
「前はあったの?」
「あったよ。知ったらお前の気持ちがどう揺れるかわからない話は出来ないだろ」
「知ったら気持ちが揺らぎそうな話なら、今なら聞いても揺れない、とは限らないんじゃ?」
「お前の気持ちが俺に向かって育ちきったと思うから、もういいよ、って話。ただまぁ、時間かかりそうだから、取り敢えず起きて朝飯食おう」
「でも朝ご飯食べたらセックス……」
「食べながら、セックスしながら、セックス終わってからのどれかでいいだろ。まぁ食べながら話してそのままセックスになだれ込んで、お前が感じすぎて話できない状態になったら一旦中断して、終わったら話の続き。ってなりそうだけど」
 どうやら、セックスを先延ばしにして話をする気はないようだけれど、こちらが知りたいことを全部聞くには相当時間が掛かるとも思われているようだ。そしてそれは多分当たっている。さっきチラッと聞いた話だけでも、新たな驚きや疑問が次々と湧いて出たのだから。
 じゃあそれでと了承を告げて、まずは一緒に起き上がってベッドを降りた。

<終>

視点の主の気持ちを育てるのに苦労して随分と長々書いてしまいましたが、最後までお付き合いどうもありがとうございました。

 
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「理解できない54(終)」への6件のフィードバック

  1.  完結おめでとうございます。とってもオモシロかった。お疲れ様でした。どうもありがとうっ!
     次作も期待しています(^-^)

  2. 受けの子の純愛というリクエストでしたが、無事に書けていたようなら良かったです〜
    書きながら、これでいいんだろうかと思うことも多々あったので、楽しんで貰えてホッとしました(´∀`*)

  3. 初コメントです
    とっても、面白かったです!
    読めば読むほど引き込まれる文章で思わず一気読みしてしまいました
    これからも応援しています!

  4. 成桜さん、初コメントありがとうございます!
    そこそこ文字量のある作品ですが、一気読みして貰えるほど楽しんで貰えて嬉しいです(*^_^*)
    こちらこそ、今後もどうぞよろしくおねがいします〜

  5. はじめまして。お話すごく良かったです。もだもだぐるぐるする受けが非常にかわいかった。最後まで読んでから改めて最初の攻め視点を読むと感慨深いものがありますね。

  6. はじめまして。お話、楽しんで貰えて嬉しいです(´∀`*)
    もだもだぐるぐるしてるシーンが長いので、途中で飽きられることなく、それどころかそんな受けを可愛いと思って貰えた事にはすごくホッとします。
    最後まで読み終わってから、頭に戻って最初の攻め視点をもう一度読んで下さったというのも、本当にありがたいです。
    コメント、どうもありがとうございました〜

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