竜人はご飯だったはずなのに14

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 話し相手もゲーム相手も風呂も断って、ひたすら暇な時間を一人で過ごす。朝夕に飲まされる液体の味は一向に美味しくなる気配はないけれど、比較的マシなレベルを維持していたから、口直しのキスもねだらない。
 世話係の彼は心配そうにはするけれど、もう、話をしたいとか触りたいとは言わずに、こちらの体調に変化がないか、何か要望はあるかを確認して部屋を出て行く。
 要望は、食事担当の彼に会いたい、と繰り返している。抱かれる食事がしたいのではなく、ただ会いたいのだと、繰り返し伝えた。
 世話係の彼を拒絶し、食事担当を呼べと繰り返すこちらに、彼らがどういう判断を下すのかはわからない。世話係の彼では手に負えない、という状況を作り出すことは、世話係の彼がこの仕事を外されるリスクを負うことでもある。
 でもこのまま世話係の彼と友好的な関係を深めていって、世話係の彼さえ傍にいれば問題ないだろうと判断されるのは困る。問題ないからとこのまま食事の頻度を下げられて、食事担当の彼と会える機会がどんどんと減っていく未来を、本気でどうにかしたかった。
 そんなこちらの気持ちを、世話係の彼は了承済みだ。嘘の報告は出来ないから、本当に接触を最低限に控えて、互いにそっけない態度を取っている。
 正直に言えば世話係の彼がリスク含めて丁寧にアレコレ考えてくれた中から、一番手っ取り早そうなものを選んで決めた計画だけれど、即効性があるのもがキツイのは定石だ。何もすること無く静かな部屋に一人で居ると、ベッドの中でただただ死を待っていたあの時を思い出してしまってゾッとする。
 あの時は近づく死にホッとする気持ちもあったけれど、そう思うと、今はもう死にたいとは欠片も思っていないらしい。竜人たちのモルモットで、セックスが食事で、むりやり生かされているはずなのに、自分に関わってくれる二人の竜人があまりに優しいから、死ぬことも、この生活から必死で抜け出すことも、考えられなくなっている。
 ただ、この生活を続けてもいいと思うには、間違いなく二人とも必要だった。世話係の彼はそれをわかってくれているから、こうして協力してくれるけれど、食事担当の彼にはこれからそれを理解して貰わないといけない。そう思うと気が重くもなって、不安が増していく。
 早く会いたいのに、会うのが怖い。
 そんな不安定な気持ちを持て余しつつ、待つこと数日。例の液体を持ってカーテンを開けに来たのは、世話係の彼ではなく食事担当の彼だった。
 日中も暇を持て余して寝てしまうからか、ここ数日の生活リズムなんてメチャクチャで、ベッドの中で横になっていたけれど深く眠っては居なかったから、すぐに誰が入ってきたのかわかって慌てて身を起こす。
「おはよう」
「おは、よう」
 目があってなんとか挨拶を交わしたものの、ひどく緊張しているのがわかる。戦略だの駆け引きだのは全く得意じゃないのに、これからこの彼相手に、食事以外でもっと会いたいというこちらの要望を飲んでもらわなければならないのだから当然だ。
「たしかに酷い顔をしてるな。起きてこれるか?」
「大丈夫」
 そうかと言った彼は真っすぐテーブルセットに向かい、そこへコップを置くと、今度はカーテンへ向かっていく。
 彼がカーテンを開けて戻ってくるのと、こちらが椅子に腰掛けたのは、ほぼ同時だった。
「どうしても私に話したい事があると聞いてきた」
「ん、来るの、待ってた」
「でもまずはこれを飲んでからだ」
 頷いてテーブルの上のコップを手に取り、いつも通り一息に飲み干したが、どうやら油断していた。ここ暫くそこそこ安定したマズさだったのに、久々のゲロマズさに驚いて、暫く咽てえずいて大変だった。

続きました→

 
 
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