口を閉じて首を横に振る。言いたくないと態度で伝え、口はそのまま開かなかった。
「ふーん……」
そんなこちらに対して、相手もどうするべきか悩むような頷き一つを残して黙ってしまう。
もしかして根比べだろうか。こちらが諦めて次の相談を口に出すまでこのままなんだろうか。気まずい時間が長く続くのは嫌だなと思うが、だとしても負ける気はなかった。
「あー……わっかんねぇなぁ」
やがてぼそりとそう口にした相手をハッとして見つめてしまえば、真っすぐに見つめ返される。
「降参だ。お前が言うのを躊躇う相談てのが本気で思い浮かばない。そもそも、言われたら困る相談に心当たりがない」
きっぱりと言い切られて、だから教えてくれと続く。根比べではなく、ずっと、こちらの相談が何か、ということを考えていたらしい。もしくは、根比べに相手が白旗を上げた結果、なのかも知れないけれど。
「望む反応ごと全部話せば、なるべくお前が望む通りの反応をしてやる。って言ってもダメか?」
「このまま俺を放っておいてくれる選択肢は? 欠片もないの?」
「ない。寂しいなら構ってやる、ってのも、あんまり嬉しそうじゃなかったからな。今を逃したらもっと拗れそうだ」
強い意志を感じて諦めに似たため息を一つ吐き出した。相手が本気でこうと決めたことを、崩せた事がないからだ。
「まだ、望む反応なんか返ってくるはずがないって、思ってるか?」
「どうかな。だって、なるべく、だしね。絶対に、じゃないし」
「絶対に、って言ってやってもいいけど、そう約束したからお前が望む反応を返したんだって思われそうだろ。それはダメだ」
「すっごい自信だよね。なんでそう言い切れるの。困らせるよって言ってるのに」
「相談そのいちが、寂しいのどうすればいい、だったからだ。お前が俺を嫌ったり恨んだりしてて、この世から居なくなれ、みたいな物騒な方向の気持ちを育ててるわけじゃないってのがわかってりゃ、何言われたってそうそう困ることにはならないよ」
言われて困る相談事に全く心当たりがないんだと繰り返した相手は、ふと何かに思い当たった様子でニヤリと笑ってみせる。
「俺が困ると思うなら、いっそ困らせてみろっての」
「なにそれ。煽ってんの?」
「そうだよ」
しれっと肯定されて、もう一度深く息を吐いた。
「ねぇ、俺のこと、まだ好き?」
やっという気になったかと待ち構えていただろう相手は、一瞬呆気にとられた顔をしたけれど、すぐに真剣な顔に戻って、もちろん好きだよと返してくれる。だから安心して相談を口に出していいのだと、背中を押してくれる。
「俺も、好き」
やっぱり想定外の言葉だったんだろう。驚きに目を瞠った相手を真っ直ぐに見つめ続けるのはなんだかいたたまれなくて、少しだけ視線をそらして言葉を続けていく。
「今はまだ、あなたがくれる好きとは違う好きだと思うけど、それを同じ好きに変えていきたい。あなたが喜んでくれる好きって気持ちを、いつか、あなたに差し出したい。そう言ったら、俺に、協力してくれる?」
「その前に、お前が望む俺の反応は?」
「嬉しいって、笑って欲しい」
なんだそんなこと、と言わんばかりに安堵の息を吐いてから、相手は嬉しそうに笑ってみせた。
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