「だから、お前が、そのお綺麗な顔面で!」
再度、一区切りごとにけっこう強めに吐き出していく。けれど、相手の戸惑いに不安が混じってきたのを察して、そこで一度口を閉じた。何度か深めの呼吸を繰り返し、頭にのぼった血を下げる。勢いで相手を責めたって仕方がない。
「その、お前がアチコチで愛想振りまいて色々引っ掛けてくるから、俺とエロいことするのに、そこまで特別な意味ないだろって思ってたんだっつの」
「はぁ? 俺かなり特別扱いしてたはずなんだけど?」
「知ってる。けどそれも、愛想振りまいて寄ってきた奴等の相手するのが面倒で、俺を特別扱いすることで、余計なトラブル回避に使われてるのかなって思ってたんだよ。寄ってきたのと軽い気持ちで関係持ったりしたら絶対揉めるの、容易に想像できたし」
「えー……まって、まって、それは、かなり……誤解、です」
違くて、だの、そうじゃなくて、だのウダウダ言いながらも、どうやら何かを考えている。どう言えばこちらの誤解が解けるか、告げる言葉なりを探しているんだろうか。
「その、女の子と出会いがないって嘆いてる奴等が多かったから、ちょっと出会いの場を提供してただけっていうか。円滑な友達付き合い? のために、わかってて利用されてたと言うか、自分の顔に利用価値があるってわかったから、使えるものは使ってただけ、みたいな。でも、女の子集めるのにこの顔を利用したの事実だし、その、俺狙いだった子に嫌な思いさせられたことあるのも知ってるし、トラブル回避のためにとは思ってなかったけど、お前ならどうにかしてくれそうというかギラギラした女の子たちから守ってくれそうっていうか、頼ってたのは、事実、かも」
大きくため息を吐いてから、情けない声でゴメンと謝られてしまった。
言われた言葉を脳内で繰り返しながら、頭の中は目まぐるしくあれこれ思い出している。愛想のない孤高のイケメンだった高校時代とか、一転して愛想を振りまき人を集めまくるこいつに度肝を抜かれた大学入学初期の頃とか、レポートが書けないと泣きつかれて聞いた彼の生育環境とか家庭の事情とか。そういや、母親が倒れてから大学に入学するまで、友人と遊んだ記憶がないと言っていなかっただろうか。
4年も人の輪の中で愛想良く振る舞うこいつを見てきたから気づいてなかったけれど、言われてみれば大半はこいつの顔やら人当たりのよさやらに群がっていただけで、こいつが自分以外の誰かを頼ったり面倒を見られてたりする姿は見ていない気がする。いやでも四六時中一緒にいたわけじゃないし、バイトだってしてたし、自分が居ないところでは自分以外にも頼ることはあっただろう。だって、こいつの世話を焼きたい女なんていくらでもいそうだし。こいつに頼られたら張り切るだろう男だって絶対いる。
ああ、でも、愛想がいい八方美人と思うことはあったが、要領がいいと思ったことはないかもしれない。その顔と頭の良さを使えば、もっと楽が出来るだろうに。とか、もっと上を目指せばいいのに。なんてことを思っていたのを思い出す。
「お前がいなかったら、断りきれなくて何回かは食われた、とは思う」
「え? なんだって?」
思考に耽っていたからか、暫くしてポソリと追加された言葉を一瞬聞き逃した。でも相手は余計なことを言ったと思ったようで、なんでもないとごまかそうとする。
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