バレたら終わりと思ってた3

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 二人きりの空間が大丈夫ならドライブデートがしたいと言い出した相手に頷き、待ち合わせた駅のロータリーで、先程送られてきた画像の車を探す。以前、免許はあるけど車は持ってないと言っていた相手は、わざわざレンタカーを借りて来たらしい。
 車はすぐに見つかった。
 ロックは既に外れていたようで、取っ手を引けばあっさり助手席のドアが開く。
「お待たせしました」
「え、あ、あー、うん」
 珍しくも不躾な視線と、なにやら言いたげな相手の反応の理由はわかっている。でもあえて気づかぬふりをして問いかけた。
「どうかしました?」
「や、その、今日は男の格好で来るもんだとばかり思ってたから、ちょっと、驚いちゃって」
 確かに、女装が好きで趣味でやってるというよりは、異性愛者である相手に女だと思わせるためのものでしかないから、男だとバレた以上はわざわざ女装してデートに赴く必要はないんだろう。
「でもこれ、デート、ですよね?」
「それはそうなんだけど」
「なら、この格好の方が何かと都合がいいと思いませんか?」
 ドライブデートだからってずっと車の中に居続けるとは思えないし、車から出た時には以前と同じように、手を繋いで歩きたかった。あともしホテルやらに入る予定があるなら、やっぱりはっきり男同士よりも男女に見えるほうが良いんじゃないかとも思う。
 というのは割と建前的な理由で、実のところ、デート用の服を所持していない。女装は何かとお金が掛かって、バイト代も生活費も結構注ぎ込んでしまっている。メンズ服なんて、大学とバイト先に通うための最低限でいいと思っていたせいで、どう考えても女装で出向く方がマシだった。
 それにやっぱり素を晒すのは怖い。今までこの女装で相手とのデートを繰り返して、相手の気持ちを掴んできた実績があるのだから、いくら「そのままの君との新しい恋人関係を始めよう」と言われていたって、そう簡単に手放せるわけがなかった。
「せっかくのデート、手ぇ繋いで歩いたり、したいですもん」
 まぁ色々理由はあるけれど、とりあえず口にして問題無さそうな部分を伝えておく。
「男同士でそれやったら、やっぱ問題あるかな?」
「え、やる気だったんですか?」
「だって、実は男だったから。なんて理由で、今まで出来たことが出来なくなるのは変だろ。でもそれで変に注目されたり、嫌な思いをして欲しくはないから難しいな」
「難しいならやっぱデートは今まで通り女装で良くないですか?」
「女装が好きで趣味でやってるってならそれもありなんだけど、俺と付き合うために女装してるとか言われたら、そこはやっぱ、そんなの必要ないよって言いたいだろ。男の子でも何の問題もなく君が君だから好きなんだよ、とも言ってるわけだし」
「それは、確かに言われました、けど」
 その言葉を疑いたいわけじゃないけど、女装なしの男の体に手を伸ばされ済みでもあるけど、でも好みに寄せた外見のが絶対いいでしょ、という気持ちはどうしたってある。
 だってあの日、男とバレないために二人きりになることや広範囲での接触を避けていただけ、という部分を何度も確認された後、嫌じゃないならとお願いされて抱きしめられた。
 当然それだけで終わりになんかならなくて、何度も嫌じゃないならと確認されながら、押し倒されてあちこち撫でられて、口の中を舐められるようなキスをされて、結局最後には相手の手の中で果ててしまった。可愛いと繰り返して、ちっとも嫌悪感なんてないよと柔らかに笑って、電車の中でのあまりにみっともない出来事を上書きしてくれた。
 ずっと、女の体ならすぐにでも応じたいと思っていたのだから、その手を拒むことはしなかったし、嬉しかったし、安堵だってしたけど。でも、相手が帰ってから気づいてしまった。
 相手がそれで興奮できていたのかがさっぱりわからない。というか、一方的に撫で回された挙げ句、自分だけがイッて相手をイかせることなく終わってしまったという事実。
 想定外すぎる展開にいっぱいいっぱいだったせいなのは明白だけど、もし女装を解かずにいたらその先も当たり前のように求められていた可能性、というのを考えずにはいられなかった。

続きました→

 
 
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