友人となった彼とはその後、たまにこちらの友人も交えたりしつつ、積極的に遊び歩いていた。人数は居たほうが何かと楽しいが、でも家庭持ちやら趣味持ちやら忙しそうにしている友人が多いのでそう頻繁に付き合わせるわけにもいかず、結局二人で遊んでいる方が圧倒的に多かった。
元々、一人でふらっと観光地なりに出向いてそこの特産品やら名産品やらを味わうのが趣味、みたいな生活をしていたせいで、その趣味に相手を付き合わせてるともいう。
温泉地へ行けば日帰り温泉を利用したりもするし、公共交通機関を利用するときは昼からお酒を飲むことも有るが、今のところ特に不満はなさそうだし、結構楽しんでくれているとも思う。
こちらとしても、一緒に楽しんでくれる相棒が出来たのは有り難かった。
一人でも楽しめるけど、美味しいものや綺麗な景色を共有できる相手がいる、という喜びはやはり大きい。
ただ二人きりで観光地へ出かけるそれが、デートと言えないこともない、ということに気づいたのは最近で、なんでそんな思考になったかと言えば、相手の態度が何やら怪しくなってきたせいだ。
最初の頃は何もかもが新鮮だという感じで、彼の意識は訪れた観光地の方へ向いていたのだけど、出歩くことに慣れたからか彼の興味がこちらへも向いてきた気がする。と思ったのが既に数ヶ月前のことで、最近は、なんだか意識されてる? みたいな気配を感じることが増えた。
気の所為、ではないと思う。しかしきっかけは思い当たらないし、いつからという明確な時期もわからない。
恋愛経験もあまりなさそうというか、それどころじゃなかったっぽい話を聞いたことが有るし、男が恋愛対象とか以前に、相手に関心を持って一緒に過ごしてくれる相手が今まで居なかったせいで勘違いをしている可能性が高そうな気はする。
友人が恋人を兼ねたら一石二鳥、とまで思ってるかはわからないが、恋愛に興味が湧いたなら女の子紹介する? とか言ってみた方がいいのかどうかも少し迷う。
ついでに、もしいつか告白されてしまったらどうするかも考えた。
有りか無しかで言ったら有りなんだけど、残念ながら、相手に対してこちらも恋愛感情があるからではなく、無理と思わなかったから試してみてもいい、くらいの感覚なので、それを正直に伝えて相手がそれでいいならって感じになるだろうか。
男と付き合ったことはないからそれはそれで面白そう、みたいな気持ちも若干あって、むしろ告白してくれないかなという期待も実はある。が、どう考えても真剣な想いに対する態度ではない自覚も有るので、もし真剣な告白を受けてしまったらいっそ丁寧にお断りするのが優しさかも知れない。いやでも好奇心が勝ちそう。
などとあれこれ悩んでいたら、さすがに相手にも気づかれたらしい。
混んでいたせいで少し遅くなった昼食を食べ終えたところで、相手が少し困った様子で苦笑する。
「もしかして、俺が悩ませてます?」
「えっ?」
今日はかなり口数が少ないのでと指摘されてしまった。確かにそうだったかも知れない。
「ごめん。確かに君のことであれこれ考えちゃってた」
「ですよね。その、さすがに気づかれてるかなとは、思ってたんですけど」
「あー……俺のこと、好きになっちゃった? みたいな?」
「やっぱりわかりますよね」
否定はされなかったが、ついでのように溜息が漏れていたから、相手もどうやらその想いを持て余しているようだ。
「ちなみに俺とどうなりたいとかどうしたいとかの希望は? ある?」
「特にはないです」
「ないんだ」
「というか何を望んでいいのかもわからないって言うか、そもそも俺に選択権ないですよね?」
「え、なんで?」
「なんで、って、俺が勝手に好きになっちゃって困らせてるんだから、その俺をどうするかはあなたが決めるんじゃ?」
「いやそんな一方的に委ねられても。てかまず俺が何を悩んでるかを確かめようよ」
「えっ?」
「でも取りあえずは場所移動しようか」
人気店らしく未だに席が空くのを待っている客が途切れないので、早めに退席したほうがいいだろう。それに話の内容的にも、もう少し人目を気にしたい。
といっても、観光地なのでどこもかしこもそこそこ人がいて、ゆっくり落ち着いて話せる場所なんて急に思いつかなかった。
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