「俺も1つ、お願いしても、いいですか?」
甘やかな声にねだられて、もちろんいいよと返す。
「やっぱりちゃんと最後まで、抱いて貰えませんか?」
終わらないなら、そっちも終わりたくないです。と続いた言葉は色々省略されていたけれど、お付き合いを続けるなら早く抱かれたい、という意味なんだろう。
「俺としては嬉しいお誘いでしかないけど、本当に?」
「はい」
「その、感じさせるの我慢するとか、出来そうにないんだけど。さっきのじゃ全然足りないくらい、もっともっと感じさせてトロトロになったとこ見たいって思ってるくらいなんだけど。俺に感じさせられるの、辛くない?」
「た、多分。もう大丈夫、だと思う、ので」
大丈夫というのは、もうやだやだ言って泣かない、って意味でいいんだろうか。それはやはり、両想いが判明したからだろうか。
「俺が好きだよって言ったから? 俺も君に本気で恋してるから?」
「そ、です。俺ばっかりどんどん好きになっちゃう、っていうのが怖かったんですよ。でも気持ちよくなってみっともなく喘いでても、あなたは可愛いって言ってくれてたし、その、俺を気持ちよくさせたいのは俺のことが好きだから、って思えたから、じゃあ、いいかなって」
さっきと違って、随分と饒舌に言い募る。
「きっと次は、気持ちよくなれたら気持ちよくなった分だけ、素直に嬉しいと思えるはずだし、安心してあなたをもっと好きになります。なって、いいんですよね?」
あれこれ言葉を重ねるのは、多分きっとそこに不安と期待があるからなんだろう。
「もちろん。嬉しいよ。それに俺も、もっともっと、君を好きになるよ」
抱きしめていた腕を緩めて、相手の期待と喜びの混ざった顔に笑いかけて、ゆっくりと唇を塞ぎにいく。
まずは柔らかに押し当て、ちゅっちゅと何度か啄んでから綻んだ隙間に舌を差し入れ、口内の性感帯をゆるゆると刺激してやる。逸る気持ちはもちろんあるが、焦る気持ちはないし、じっくり感じて欲しい欲の方が強いからだ。
なんせ、相手は一度吐き出している、という事実がある。
だんだんと上気していく頬をしっかり確認しながら、熱い吐息が漏れてくるのを待って、可愛いと囁いた。お願いした通りにそれを好きだと変換してくれた様子で、嬉しそうに笑った後、俺も好きですと返される。
本当に、なんて、可愛い。
愛しさが溢れて、んふふと笑ってしまう。笑いながら、愛しくて可愛くて大好きだと、こちらも声に出して言ってみた。どうしたって、まずは可愛いと口にしてしまうのを止められないだろうからお願いはしたけど、省略せずに言えるようになりたい気持ちだってあった。
相手は照れくさそうにしながらも、嬉しいと言って笑う。大好きと返して、自ら唇を寄せてくれる。
そうやって散々キスを繰り返してから、とうとう相手を押し倒せば、おかしそうに笑う気配がした。
「どうしたの?」
「なんだかちょっと、楽しいって、思えて」
嬉しくて、愛しいです。と続いた言葉に、首を傾げる。
「愛しい?」
「あなたが楽しそうに笑うのが、ニコニコしながら俺に構うのが、好きだからなんだって理解できた感じというか。あなたが俺にしてくれることが、繰り返される焦れったいキスすら嬉しくて、やっと押し倒されたって思って笑っちゃうのが、愛しい、なんだなって。愛しいから、楽しそうにするんだって」
お願いされたからじゃなくて、理解した感じです。と言われて、思わずありがとうと返してしまった。
愛しさから生まれる楽しさを、わかって貰えて素直に嬉しい。
「さっきは、なんでとか早くとかもっとがっついて欲しい、みたいなことばっかり考えてて、焦らされるの苦しくて仕方なくて、あなたが楽しそうにしてるのが不満だったのに。今は、あなたが楽しそうにしてるのが、俺も、楽しいです」
嬉しい、とはにかまれて、やっぱり愛しさがこみ上げた。
気持ちのすり合わせはやはり大事だなと思う。さっき「同じように楽しめない自分が悪い」なんて言っていた相手が、同じように楽しめていると言ってくれた事実に、感極まって泣きそうだ。
「ん、ふふっ」
笑いをこらえるような音を漏らした相手が、愛しげに、そんなこちらを見つめていた。
「あなたが泣いたら、お相子ですね」
どうやら泣きそうになっているのがすっかりバレている。
「俺のは嬉し泣きだけどね」
ははっと笑ってそんな強がりを告げてから、ちょっとだけねと、押し倒した相手の肩に顔を埋めた。といっても、一粒か二粒流れただけなので、時間にしてほんの数十秒でしかなかったし、素肌に直接目元を押し当てたところでそれを相手が知覚できたかもわからない。
「もう終わりですか?」
「うん。だってホント、嬉しさ極まっただけだし。早く続きもしたいしね」
「そうですね。俺も早く、あなたと直接、繋がってみたいです」
まぁ焦れったいのを同じように楽しめるようになった、とは言っていても、「抱いて欲しい」の本音はやはりそこなんだろう。わかっているから、善処はすると返して、それを証明するかのようにローションボトルへ手を伸ばした。
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