聞きたいことは色々19

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「やっぱもう終わりなんですかね」
「は? 何の話?」
「俺がもうけっこう好きになってるの、さっきのでバレたと思うんで。それに半年も付き合うのが珍しいみたいだし、本気で惚れたら満足してポイなら、もういいって言われるのかなって」
 ヤダなって思ったらやっぱり後半は涙声になってしまって、横から伸びてきた腕がまた、今度はそっと抱きしめてくれる。優しく背中を撫でてくれる。
「大丈夫。って言っていいかわからないんだけど、少なくともまだ別れる気は全然なさそうだったよ?」
「でもそれ、俺が好きなのバレてなかったからで」
「いやぁ……さすがに気づいてるでしょ。多分」
「え?」
 驚いて相手の顔をまじまじと見てしまえば、腕が解かれて間近にあった苦笑顔が離れていく。
「だって今日初めて会った俺があっさり気づくんだから、気づいてないとは思えないよ?」
「え……でも、えっ……えぇ……」
 戸惑いしか漏れなかったけれど、嘘だとも思えなかった。必要なのは付き合っているという事実で、定期的にデートしてセックス出来る関係が維持できるならこっちの好きは必要なさそうって思わされることは確かにあったから、気づいても無視していただけって言われたら納得してしまう。
 納得はするけど、でもやっぱり寂しいなと思う。せっかく恋人になったのに、求められてるのが体だけだなんて。それとも、本気で好きなのがバレてもポイされないくらい魅力的な体を持ってる、とでも思って誇ればいいんだろうか。
 カラダが良くて付き合ってる。なんてのを突きつけられるようなセックスはされてないし、そこまでスゴイカラダを持ってるなんてとても思えないんだけど。そもそも誰でも良さそうと言うか、たまたまタイミングよくフリーの時に、同じくフリーの色々未経験なちょろいネコが目の前をうろついたから、とりあえず捕まえたっぽいみたいな。
「気づかれてない想定だったか。てかアイツ、気づいてない振りしてたわけだよな? え、なんで?」
「って俺に聞かれても」
「だよねぇ」
 あとで問い詰めてやると意気込んでいるが、あとでっていうのはいつだろう。その場に自分も同席してていいのか、それとも自分が居ないところでって話だろうか。
 聞いてみたい気もするし、聞きたくないような気もする。だって余計に落ち込む可能性のが絶対高い。
「っていうか、好きとか言われるの、煩わしいからじゃないんですか?」
「どういうこと?」
「本気で惚れたら満足してポイなら、好き好き言われるのが根本的に嫌いなんじゃないかなって」
 もちろん、好きって言うのも。
「いやぁ……それはナイ、かなぁ」
「そ、ですか」
 あっさり否定されて気持ちが沈む。そうだねって肯定されたら、自分だけじゃないって諦めもついたのに。過去の恋人たちとはちゃんと好きって言いあったりしてたんだ、って考えてしまうから。
「てかエッチしてるとき、好きって言わされたりしないの? って、言わされてないっぽいよね」
「は? 言わされる? 好きって、ですか?」
「アイツ口うまいしあの顔だし、好きって言ってとかのおねだり、得意なはずなんだけど」
「ええぇ……」
 そんな経験、もちろんしたことがない。
 好きって言ってなんておねだりされたらきっと喜んで好きって言ってたけど、それで後から苦しくなったりしてそうだけど、でもそんな素振り欠片もなかった。むしろこっちからの好きなんて要らないって態度だった。
 それが気楽だって思ってたことすらあるのに。それでも恋人でいいんだって、そういう恋人もありなんだって、思ってたのに。
 でも過去の恋人相手にはそういう態度を見せてたってこと?
 家族に紹介したり、家族の前で好きって言ってと甘えて見せるような、ベタ甘の恋人が居たことがあるってこと?
 もしかして凄く特別な恋人が過去に居て、でもその人とは何かしらで上手く行かなくて、だからもう誰だっていいみたいな感じになってる?
 もう特別は作らないって思ってる?
「あの、あの人がそんなおねだりするような恋人って、どんな人でした?」
 そんなことを聞いたところで、その特別だった相手の代わりになれるわけがないんだけど。

続きました→

 
 
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