「どんな、って……」
会ったことあるんですよねと聞いてみたが、相手は困った様子で口を閉ざし考え込んでしまう。
「やっぱ俺とはカスリもしない感じなんですね」
「あー……いやぁ、確かにちょっと系統違うっていうか、珍しいタイプを恋人にしたとは思うけど」
「そ、なんですね」
「けど! あっちから別れる気とかなさそうだし、現状に満足してるとか言ってたのも多分嘘じゃないし、いい意味で代わろうとしてる可能性もあるから! 好きって言ってっておねだりが恋人たちの甘いやり取りとは限らないから! というか基本そういうのじゃないから!」
泣きかけたりはしてないはずだが、一体どんな顔を見せてしまったのか。またしても慌てた様子でなにやら慰めの言葉をくれたけれど、後半は全然意味がわからなかった。
好きって言ってっておねだりが、恋人との甘いやり取りじゃないってどういうこと?
「あの、エッチ中のおねだりが甘いやり取りにならない場面、まったく想像できないんですけど……」
「だーよーねぇ〜」
感性まともすぎてなんかもう俺が申し訳なくなってくるよと嘆いたかと思うと、相手が勢いよく立ち上がるから驚く。
「え、ちょ、あの……?」
「ちょっと問い詰めてくるから。てかどこまで喋っていいのか確認してくるから!」
連れ込んどいて一人にして悪いけどここで待っててと言い置いて、相手は部屋を出ていってしまった。
一人取り残された寝室で、追いかけるべきかをかなり迷う。何を問い詰めに言ったのか知らないけれど、直接聞きたいって気持ちは当然ある。でも同じくらい、直接聞きたくない気持ちもあった。
どこまで喋っていいか確認するとも言っていたし、多分きっと隠しておきたい何かしらの過去があるんだろう。隠すくらいだから、知ったら不快になる内容の可能性も高そうだ。
お兄さんが戻ってくるのを大人しく待って、お兄さんの口から聞いたほうが、直接聞くより多少はマシかもしれない。だって恋人本人よりよっぽど優しいというか、わかりやすく好意的というか、なにやら心配されているのがわかるから。落ち込むと慰めてくれるから。もし聞き出した内容でつらくなりそうなら、なるべく傷つかないように言葉を選んでくれそうだから。
そんな甘えた気持ちで結局大人しく戻ってくるのを待ってしまえば、やがて寝室の扉が軽くノックされた後で開かれる。
「待たせてごめんね」
そう言って部屋に入ってきた男は困った様子の苦笑顔をしていた。
「おかえりなさい。そんなに困るようなこと、言われたんですか?」
「うんまあそれなりに。てか自分で直接話すっていうのを諦めさせるのが大変だった」
恋人本人から聞くのは色々ショック大きすぎると思うんだよねと続いた言葉に、よほどの話をされるのだと覚悟を決める。
「あのね、恋愛対象が同性ってだけで、ごくごく普通のありふれた恋愛がしたいって思ってただろう子には、結構刺激強い話になると思うんだけど。でも俺が話さなくても、もうアイツが自分で話すと思うから、俺の話から先に聞いて欲しい」
なるべく言葉は選ぶけど気分悪くなったら我慢しないで教えてねと念を押されるくらい、やばい話をされるっぽい。覚悟、足りるだろうか。だとしても、わかりましたと返すしかないんだけど。
「まず、アイツが過去に紹介してきた恋人たちの話ね。アイツの性癖っていうか好みっていうかなんだけど、ノンケとかバリタチとかが多くて、元から抱かれたい側の子をわざわざ恋人にして側に置くってのは多分初めてだと思う」
初っ端からなかなかの衝撃内容だった。これってつまり、全く欠片も好みのタイプではないって意味なのでは?
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