聞きたいことは色々26

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 誘ったけどお断りされたよと聞いた彼は、あっさり「なんで」と問うてくる。
「ゴム使うの嫌がる男じゃないし、病気だって気をつけてるはずだし、初対面でも身元は割れてるし、既に充分気を許して見えるけど。あとどっちで誘ったのか知らないけど、そいつタチも出来るよ」
 他の男試してみる絶好の機会じゃないの、みたいな言い方をされて、普通は了承しないものという自身の常識がまたしても揺らぐ気がした。
「俺にも抱かせてって誘ったけど、恋人が居る身で浮気したくないってさ」
 それを聞いて、彼はますます意味がわからないって顔をしている。
「話したんじゃないのか?」
「話したし、俺も交ぜてって誘ったね」
「なら、浮気にはならないだろう?」
「そう思うのは俺らだけで、この子はそう思わなかった。ってだけだろ」
「浮気だなんて思わないから、抱かれ」
「はいストップ」
 抱かれてみたらと続きそうだった彼の言葉を、隣に座る男が遮ってくれた。チラチラとこちらの様子をうかがう気配はあったから、このままだと泣きそうって伝わってるのかも知れない。
「この子が本気で嫌がることはしない、っていうお付き合いしてるなら、余計なことは言わないように」
「そんなに?」
「過去の恋人たちには全然嫌がられなかったんですか?」
 意外そうな顔をされて思わず聞いてしまえば、相手は少し考えたあとで、何かを納得した様子で「なるほど」と言った。てことは、嫌がられた過去がちゃんとあるってことじゃないの?
「確かに今までが通じない相手ではあるか」
「お前、自分がやりたいこと押し通すタイプだったのにな」
 ああ、つまり嫌がられても了承をもぎ取ってたって話か。
「話色々聞きましたけど、なんで俺は今までと違う扱いされてるんですか?」
「なんで、って、口説かれたくないと予防線張られながら付き合うのが初めてだから?」
 色々あったからと濁されたり、叔父さんが亡くなったことが関係ある素振りをされるのかと思ったら、そんな答えが帰ってきて拍子抜けだった。
「というか今までとはあらゆる面が違う恋人だからな」
 聞いたんじゃないのかと言われて、そういや未経験のネコが貴重って言われたのを思い出す。ノンケとかタチとか、彼を抱く気で近寄ってくる男たちが対象だった。とも聞いたっけ。
「俺を好きで寄ってきたわけじゃないとこ食ったし、わざわざ周りに知らせて回る真似はしなくてもしっかり隠す気なんかはない付き合いばっかりだったし、お前から誘ってくることほぼないし、ラブホ禁止とか言い出すし」
「ラブホ禁止!?」
 驚きの声は隣から上がった。
「だって連れてかれるの、変な部屋ばっかなんですもん」
「興奮するどころか、気が散って萎えるんだと」
「する場所に困ってるわけじゃないんだから、お金使わなくてもいいと思って」
「ラブホ行く最大の利点が潰されてる上に、俺のベッドのがいいと言われてまで、ラブホでヤることに拘りないしな」
「へぇえええ〜」
 驚きと感心が混ざったみたいな声を上げたあと。
「でもなんか、らしいね、としか思わないな。プレイっぽいの全般ダメそうというか、普通に抱かれるだけで満足しそうというか」
 トロトロに優しく甘やかされながら、好きだよ可愛いよ愛してるよっていっぱい言われるセックスとか好きそうだよね。と楽しげに言われて、その通りなのに、その通りだとは言えなかった。だって、そんなセックスして貰ったことがない。
「あっ……」
 そしてそれはどうやら相手にも伝わったらしい。

続きました→

 
 
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