聞きたいことは色々38

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 意識が浮上して、まずは大きなため息を一つ。多分泣きすぎが原因で、頭と目元と鼻の奥が痛かった。
 好きって言わされて泣いて、好きって返されてやっぱり泣いて、本当にひどいセックスだったと思うのに、相手は間違いなくかなり楽しんでいたと思う。
 最初の夜に、こっちの顔を見て悲壮な顔だの不満そうな顔だの言って楽しそうにしてたし、多分きっと泣き顔にも興奮出来る性癖を持っているんだろう。
 だって昨夜は久々に、というか初回以来初めて、相手がゴムを替えていた。といってもゴム替えは1回だけだったし、初回ほどしつこくイカされることもなかったし、抱き潰されて意識を飛ばしたりもしてないけども。
 いっそ抱き潰されていたほうがまだましだった、かもしれない。
 広いベッドのおかげで終わったあと強制的にくっついて眠る体勢になることもなく、しっかり距離をとった状態で寝るぞと言われてしまったら、自分から触れにいけるはずもない。
 もともと事後にまで甘やかしてくれる人じゃない。どころか、最中でさえそこまで明確に甘やかしてくれるようなことは少ない人だ。しっかり気持ちよくはしてくれたし、好きとも言い合わない、ただ恋人という関係を結んでいるだけの相手だったから、そんなもんかと思ってたし不満なんかなかったけど。
 昨夜は一転して、表面的には好きが溢れる甘ったるいセックスをしたから、頭ではただのプレイとわかってても、事後にあっさり放置されるのは寂しかった。ついでに言えば、やっぱりただのプレイだったよねと、再認識させられるのは辛かった。
 結果、広いベッドの端っこで、あれこれと思い返してはグスグスベソベソとけっこう長い時間ひっそり泣き続けて、結局泣き疲れて寝落ちたらしい。これは、どん底気分な目覚めだったのも致し方ない。
 体を起こせば部屋には自分ひとりで、これはまぁいつも通りと言っていい。毎回けっこうしっかり疲れ果ててしまうから、相手より早く起きれたことなんてほぼなかった。
 トイレを済ませて顔を洗って、鏡の中の自分に向かって酷い顔だと笑ってから、リビングへと向かう。泣き腫らした目元を晒す気まずさはあるが、昨夜散々泣き顔を見られているのだし、今更だろう。多分、体調の良し悪しやらを聞かれるくらいで済むはずだ。
 少なくとも、前夜のセックスの内容を蒸し返してアレコレ言われたことはない。
 まぁ昨日のあれは蒸し返してアレコレ話し合ったほうがいいような気がしないでもないんだけど。今後あんなセックスが主流になるとこちらとしてもちょっと困るし。というかあんなセックスを繰り返されたらさすがに音を上げそうなので、出来れば避けたい。
 でも話し合いがしたいかと言えばしたくない気持ちも強かった。
 泣くだけ泣いて理由をちゃんと話さなかったのも、プレイとわかって拒否らず受け入れたのも、自分自身だという意識はあって、自業自得という気持ちも大きいから、今後どうなるかも相手任せにして、自身の限界までチャレンジでもいいかという気がしないでもない。
 なんてことをツラツラ考えながらリビングのドアを開いた途端。
「ちょっと!? なにその顔」
 リビングに入った瞬間に聞こえてきた、怒りと悲鳴が混じったような声は、お兄さんのものだった。
 テーブルの上には既に食事が3人分並んでいて、お兄さんの向かいには彼が座っていて、どうやら自分が起きてくるのを待っていてくれたらしい。
 その彼とももちろん視線があったけれど、そちらからは特にコメントはないようだ。というか不機嫌そうな顔をしているから、起きてくる前にお兄さんになにか言われたのかも知れない。
「あ、おはようございます」
 来てたんですねと言えば、そりゃあんなメセ貰ったらその後どうなったか気になるでしょと返される。
「めちゃくちゃ泣いたんじゃないの、それ」
「あー……まぁ、はい」
 おいでおいでと手招かれるまま、お兄さんの座る椅子の近くまで近寄れば、スッと立ち上がった相手にギュッと抱きしめられてしまう。
「何されてそんな泣いたのか言ってご覧。おにーさんがそいつにメッてしてあげるから」
 そこそこの声量で告げられたそれは、彼にも聞かせるためだろう。
 大きなため息が聞こえてきて、思わずふふっと笑ってしまう。
「うん。笑えるならヨシ」
 告げ口とご飯どっち先にする? と聞かれたので、ご飯をと返して自分の分の食事が用意された席へと移動した。

続きました→

 
 
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