聞きたいことは色々57

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 意識が浮上して隣に横たわる熱に擦り寄れば、少し待たされたあとで抱き抱えるように腕が回されて、「起きた? わけじゃないのか?」という声が聞こえてきて、あれ? と思う。と同時に、昨夜何があったかを思い出す。
 どうやら寝ぼけて擦り寄る相手を間違えた。だって寝起きに彼が同じベッドに居たことなんてほぼなかったから。でもってお兄さんはこっちが起きるまでベッドでダラダラしてる人だから。場合によっては自分が先に目覚めることもあるくらいだから。
 というかお兄さんの方はもう目覚めてるんだろうか。だとしたらこの状況を見て何かしら反応がありそうだけど。とすると、まだ寝ている可能性が高いのか。
 さて、どうしよう。
 このままもう暫く寝たふりを続けて、この腕の中を堪能するのもありだろうか。昨夜は疲れ切ってて結局あっさり再度寝落ちたから、彼に抱っこされながら寝た実感があまりない。
 でもそれなりに嫌そうな顔をしてたんだよな、とも思う。今だって、どんな顔をしているのやら。
 そもそもなんで抱きかかえてくれてるんだろう。今までは起きたらさっさとリビングに移動してたはずなのに。なんでベッドに居るんだろう。
「なぁ、起きてるだろう?」
「はい」
 そんな言葉を掛けられてしまったら、諦めて肯定を返すしかない。
「このまままだ寝るつもりでいるのか?」
「あー……まだ寝てたい気もするし、起きたい気もしてます」
 お腹減ったんでと言えば、だろうなと返ってきたから、もしかしなくても結構遅い時間なんじゃないだろうか。
「いまって何時ですか?」
「9時半」
 思ったより遅くなかった。
「昨日て何時に終わったんです?」
「22時ごろ?」
 始めたの早かったしと言われて、確かになと思う。
 車から降りた後、まっすぐ寝室に向かうのかと思ったら抱き潰しそうだから先に軽くなにか食べておこうって言われて、寝室に入ったのは18時前だった気がする。とすると、4時間位はやってた計算になるのか。
「そんなもんなんですね。なんかもっと長かったような」
「車で散々弄った後だったからだろ」
「ああ、それでか」
 体が出来上がってたから、前戯というか慣らす時間が短かったせいだ。
「それで、どうする?」
「どうする?」
「朝食」
 食べに行くかまだ寝るかと聞かれて、食べますと返せば、体を包んでいた腕が離れていく。
 相手が体を起こすのに合わせて自分も起き上がれば、なぜかまた肩を抱かれて引き寄せられて、チュッチュと軽い音を立てながら顔のあちこちにキスの雨が落ちた。
「ひぇっ」
「どういう反応なんだ、それ」
「や、だって何して、てか、今までこんなことしてくれたことないじゃないすか」
「されたいと思ってなかった。というか事実、されたくなかったんだろ?」
 好きになっちゃうもんなと言われれば、そうですよと返すしかないんだけど。でもそれは答えになってないというか、今それをする理由にはなってない。だってして欲しいなんて頼んでない。
「今も別にされたいわけでは」
「あいつにはされて喜んでるらしいから」
 同じように喜べとまでは言わないけど嫌だとかするなとかは言うなよ、と続いた声はどことなく懇願にも似ている。そういや不機嫌丸出しって顔も声もしていない。
 違和感というよりは、なんだか不思議だった。不思議なものを、見ている。
「どうした?」
「や、なんか、」
 今までとは何かが確実に違うのに。でも何がどう変わったのかは上手く言葉にできない。
 そもそも寝起きから、今までの彼はやらなかったことばかりされているのだけど。どういう心境の変化で? と思ったところで、3人でやったからかな、と思い至った。
「あ、起きてる」
「えっ?」
 突然聞こえたお兄さんの声に、慌てて声がした方へ振り向けば、そっとドアを開けて入室してくるところだった。起き上がったところで部屋にいないことはわかってたんだけど。ただ、キスの雨を降らされて、どこへ行ってるのか聞ける余裕がなかっただけで。
「おはよ。いっぱい寝たね」
 体調どう? と聞きながら近づいてきたお兄さんが、ちゅっと額に一つキスを落としてくる。
「だいじょぶ、です。多分」
「ご飯できたけど、食べれる?」
「はい。てか朝飯作ってたんですか? あなたが?」
「そう。どっちが朝ご飯作るかでちょっと揉めたけど、まぁ、今回も俺が譲ったよね」
 おはようのチュウして貰った? と聞かれて、この人の差し金かと思いながらも貰いましたと返せば、良かったねぇと頭を撫でられる。正直、嬉しいってよりも驚きと戸惑いが大きかったけど、嫌々してくれたって感じがなかったのは良かったかも知れない。
「先行ってる」
 お前らもイチャついてないでさっさと来いよと、不機嫌そうな声が聞こえて、あれ? と思う。ついさっきまでは、不機嫌そうな様子はなかったのに。
「言われなくてももう行くよ」
 部屋を出ていく彼にそう声をかけた後、コソッと「嫉妬丸出し」と耳打ちしてきたお兄さんが、満たされたって顔で楽しげに笑った。

続きました→

 
 
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