お世話係の繁殖期4

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 最初のうちは人型のほうが良さそうだと言って、ベッドに上る直前に姿を変えた雇い主は、ニンゲンのお尻の穴に指を入れて解している。発情しないから、事前にそういった処置が必要なんだそうだ。
 ふっくらとした肉の谷間に存在するから、人型のほうが圧倒的に便利、らしい。
 ニンゲンと関わるようになって爪の先を少し丸く削るようにはなったけれど、肉の谷間以前に、この指をそんなところに突っ込むなんて確かに考えられない。
 そしてニンゲンの方はというと、まだ発情前のスリットに興味津々で顔を寄せている。だけでなく、早く出てこいと言いたげに撫でたり指先を引っ掛けたりされている。あと、しきりに匂いを嗅がれていて、なんとも恥ずかしい。
「結構固いな」
「かたい?」
「匂いも薄いし」
「匂いかぐ、しなくていい」
「やだ。まだ薄いけどちゃんと美味そうだ」
「美味そう???」
「うん。楽しみ」
 ためらいなく肯定されて、そういや彼にとってこれは食事だったと思い出す。
「まだ始まってないのと、慣れてないからだろう」
「つまりお前は最初っから慣れてた?」
「なわけがあるか」
 お前が舌を突っ込んだのは事後だろうと続いた言葉にビクッと体が跳ねてしまった。
 事後に? 舌を突っ込む?? スリットに???
「事後じゃなくてもけっこうユルユルだったような」
「だからそれは慣れだろう。食事を与えに来るたび弄られてたんだぞ」
 一晩でおおよそ何度射精したか的な報告は、食事量という意味で聞いていたし、気持ちの伴った交合の重要性なども聞いてはいたが、行為の詳細なんて聞いたことがなかったし、当然、翌朝そんな真似をされていたのも初耳だ。
 そういやニンゲンが勃起した際には受け止めてもいるんだったか。ユルユルなのか、スリット。じゃなきゃ入らないか。
 未だ射精はしないらしいが、今回自分が相手をすることで何某かの変化が起こるのでは、という期待があるのも知っている。もちろん、応じる一番の理由はニンゲンが喜ぶからではあるけれど、過度ではない期待はニンゲンの雄と交わる後押しになっているとも思う。上からの否定を跳ね除けてニンゲンを抱ける強さはない。
 食べたいと言われた、という報告を聞いたその晩には、自身を提供してみるという実験を強行したこの人はやはり決断力も行動力も凄すぎる。絶対反対されたと思うのに。
 なんて考えを見透かしたみたいに、思わず見つめていた先で一瞬視線が絡んだあと、めちゃくちゃ意味深に笑われてしまってドキドキが加速する。人の姿をしているせいで、表情表現が豊かなのも良くないし、純粋にやっぱり見慣れないせいも大きいとは思うけど。
「舐めるくらいはしていいが、舌は突っ込んでやるなよ。あと指も入れるな。撫でるだけにしてやれ」
 勝手に舐める許可を与えていて、意味深な顔の意味はそれかと思う。いやまぁ舌も指も突っ込むなとは言ってくれてるけれども。
「ええ〜」
「お前にこいつを抱かせる気はないからな。というか体格差を考えてやれ」
 ニンゲンが勃起した際に抱かれろ、なんて命令が下るわけがないし、拒否権は当然あるんだろうけど。ただ、ニンゲンにどうしてもと頼まれてしまったときに、断りきれる自信はない。
 届けは出せなくても彼らは番だと思っているし、どうせなら体格差云々ではなく、自分が嫌だからとか言っといてくれればいいのに。今回自分が応じなかったら、独占欲やら嫉妬やらを伝えれば納得するはずとか言っていたのだから。
「まぁそれはそうだけど。でも人間は大きな男の相手を小柄な女性がってのも普通だったぞ?」
 竜人は体格差あるカップルいないの? 見合い相手は自分と同じか大きいのばっかり相手にするの? などと、ニンゲンの興味がこちらの繁殖に向いてしまった。いやまぁ繁殖と言うよりは、他のカップルが繁殖期にどんな行為をしているかという興味でしかないんだろうけれど。
「体格差のあるカップルもいなくはないが、体格が大きな者が自分より小柄な者のスリットに突っ込んでいるかは知らないな。雌が見合いで、自分より圧倒的に大きな雄を選んだ話も聞いたことがない」
「そっか。やっぱ慣らして広げるにしても、この手じゃ難しいか」
 言いながらこちらの手を取り、指先をぺろりと舐めていく。ふふっと嬉しげに笑うのは、彼のために爪の先を丸く研いでいるのを知っているからだろう。

続きました→

 
 
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