ご飯担当の繁殖期7

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 味覚を変えられてしまったニンゲンと違って、間違っても美味しいなんて思えないような物を咥えたり舐めたり飲み下したりするのは、間違いなく深い愛ゆえ。というのは、まぁ、わからなくはない。
 突っ込む側も、噛まれない、もしくは噛まれても許せる、という信頼と愛とが無ければとても出来ない行為。というのにも納得ではある。
 ついでに言うと、噛んでしまわないように口を開いたまま固定する器具、なんてものも存在するらしい。でもそんなものを付けた口に突っ込んでまで欲を発散したい気持ちはないそうだ。
 残念だと思ってしまったら、まさか使われたいのかと驚かれたけれど、番いの欲を問題なく受け止めたい気持ちはそんなにオカシナものではないと思う。噛まずに受け止められる自信がつくまでそれを使って訓練するのも、全然有りだった。
 まぁこのヒトにはニンゲンというパートナーが既に居て、だからそこまでする必要はないと思うんだとわかってはいる。スリットに先だけ突っ込むので良い、なんて言えるのだって、全てを受け入れてくれるニンゲンが居るからだろう。
 だから、口でしますとか、口に入れてとか、言って良いのかすらわからない。口の方が圧倒的に大きいから、含める量だって多くなるけど、どちらの方が気持ち良いのかもわからない。
 自身の繁殖期中、竜人姿のこのヒトに口でされたことはない、というのも大きい。どの程度気持ちが良くなれるのか、さっぱりわからない。
 ただ、絶対ニンゲンに口でして貰う方が気持ちいいだろう、とは思う。
 口を窄めて吸われる気持ち良さを知っているが、あれを真似る事は到底出来ない。
 たいして気持ち良くない上に、最悪噛まれるリスクがあるような事に、許可を出すだろうか。
 考えるほどに、相手の発情を口で受け止める難しさに気づいてしまって、だから事前に知らされる事がなかったんだと納得してしまうのだけど。でも、だとしたら今この瞬間に、訓練しておけば良かったなんて話がなぜ出るのかわからなくなる。
「口の訓練、しておけば良かったって、本当に思ってるんですか?」
「ああ、思ってる」
 同じように何かを考え無言になっている相手に問えば、はっきりと肯定された。
「なんでですか?」
「なんで、って、小柄である事やヒト型を取れないことを、そこまで気にしていると思ってなかったのもあるし、お前の、番の発情を受け止めたいという気持ちを侮っていた、とも思う」
 番の発情を受け止める他の方法がある事を、もっと早くに共有して、どうしたいか相談くらいはしておくべきだったと反省している。らしい。
「番としての責任感だとか、訓練すればスリットで気持ちよくなれると知ってしまったことだとか、そういった比重が大きいのだと思っていて、訓練の成果的に、こちらとしては、あまり無理をさせたくない気持ちが大きかった。これまでの努力の結果として、繁殖期に勃起ペニスをスリットに入れて射精を受けた、という事実が一度でも作れれば満足かと思っていた」
 一度で満足だと思っていた、という部分に、ひどくガッカリする。そんな風に思われていたなんて。というか、一度しか入れてくれないつもりなんだろうか。
「私、好きになったから抱かれたいって、いいましたよね?」
「そう言えば断られないとわかっていただろう?」
「それは、まぁ、そうですけど」
「繁殖期中以外でお前に好きだと言われたのはその時だけだし、お前がこいつへ向ける好意はもっとはっきりわかりやすいじゃないか」
 傍らで眠るニンゲンを指してそう言う声は、どこか拗ねているようにも感じる。
「それは、お互い立場ってものがあるでしょう」
「プライベートのスリット訓練中も、お前は俺に甘えたり好きだといったりしなかった」
「訓練だからです。あと、ニンゲンにだって甘えたり好きだと言ったりしてません」
「俺に対してよりは甘えてた」
「多分それ、あなたよりニンゲンのが私を甘やかすせいですよ。というか見た目のイメージからか、子供扱いされてるとこ、ありますよね」
 自分たちは2人とも、小柄だからといって成人済みの竜人を子供扱いするような真似をするのは明確な侮辱となる、という常識の中で生きているけれど、ニンゲンにその常識は通じない。
 わかっているし、今後もずっと囲われた部屋の中で過ごすことが決定している彼に、こちらの常識を押し付ける気もない。子供扱いされたからと特に不満だとも思わない。
「もし俺が同じように子供扱いしたら?」
「別に怒りはしませんよ」
「本当に?」
「さっき、いい子だ、とか言われましたけど、怒ってないでしょう?」
 私の年齢知ってます? と聞いたら、知ってると気まずそうな声が返ってきた。
「私たちの数年なんて誤差ですし、ほぼほぼ同い年ではありますがあなたは番なんですから、いい子、は愛情表現ってことにしておきます」
 ニンゲンを愛でるのと同じ感覚でつい言ってしまったのだと思うし、ニンゲンと同じように扱われるのは多分きっと嬉しい。

続きました→

 
 
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