弟は何かを企んでいる13

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 呆気にとられて目を瞠った顔に、新たな涙が誘発されて溢れ出した。しかも次々に湧いて出るから、いきなり泣き出された理由がさっぱりわからないだろう弟が慌てだす。
「えっ、ちょっ、なんで!?」
「おまっ、おまえ、がっ」
 変に誤解されたくないし、自分の気持ちを隠すことでこじれたくないし、弟の想いを信じてもいる。だからこれはちゃんと伝えないとダメだよなと思って口を開くものの、喉に突っかかって言葉はなかなか出てこなかった。
「うん。うん。ちゃんと聞く。聞くから落ち着いて」
 兄貴の涙の理由がちゃんと知りたいよと、俺に気を遣って嘘つくのはなしねと、穏やかな声が気持ちを宥めてくれる。その声に、溢れていた涙が引いていく。
「兄貴が何言い出しても俺の好きは変わらないし、本当に抱き潰されたいって思ってるならしたっていいし、兄貴が明日起きれなかったら責任持って世話だってするけど。でももし、俺がしたがってると思って」
「待って」
 続きは聞かなくてもわかるから、弟の言葉を途中で遮ってしまった。
「俺が、したい。して欲しい、っていうか、」
「うん」
 言わなきゃと思うのに、それでもやっぱり恥ずかしさで躊躇えば、弟が大丈夫だから続きを言ってと促すみたいに、ただただ頷いてくれるから。
「お前が毎日俺とするために俺の体に無理させないようにしてるのわかってるし、その通りに毎日いっぱいイカされて、愛されて、幸せって思うのに、思えてるのに、こ、こんな毎日いっぱいイカされてんのに、足りないって、思っちゃってて」
 こんなにされてるのに足りない、をとうとう訴えてしまったが、特に驚かれることもなく、弟はすぐにその理由にも思い至ったらしい。
「あー……兄貴の体の負担考えて手でイカせちゃうことも多いせいで、ちゃんと抱いてよって思っちゃう、みたいな?」
「そ、そう。それ。あと、せっかく長い休み取ったんだから、ちょっとくらい無茶されたいのが、本音。俺、ここに抱き潰される覚悟して来たの、知ってるだろ」
「えっ…と……ええ……まさかあれってマジの、抱き潰してって意味、だった?」
「や、それは違う、けど」
 そんなの気づけないよと思っただろう弟のために、そこは一応否定しておく。
 あの時、久々だからいっぱい抱かれたい、くらいの意味で受け取っていたのは知っている。それを自分は否定しなかったし、あの時点では、どうしても抱き潰されたい、なんて強い欲求があったわけでもない。
「でもそういうつもりで来てたから、お前に抱き潰すのなしって言われて、すぐ気持ちよくなっちゃうとこばっかりいっぱい弄られて、俺自身、抱き潰されるの、すごく期待してたんだって、気づいちゃった」
 抱き潰してくれないんだ、と思った時点で最初から期待はあったけど。でも抱き潰してもらえないことが、こんなに物足りなく感じるようになるなんて、思ってなかった。
「まぁ、あの時はかなり無茶した分、最後の方とかかなり気持ちよさそうにイキまくってたもんな。でも奥の方気持ちぃの怖いって言って止めるから、そうなるのが嫌なんだって、思ってた。そ、っか。ちゃんとダメージ回復する時間さえ用意できてれば、兄貴自身、またされたいって、思ってくれんのか」
「頻繁に体調不良で寝込んだら、まず親が心配するだろ。あと、仕事だってそんな理由で休み取るの躊躇うって」
「それは確かに。じゃあほんとに、抱き潰して、いいんだな?」
「いいよ。っていうか、俺の体が抱き潰されるの期待するくらいエロくなったの、絶対お前のせいだから」
 責任取って、と甘えるみたいに訴えたら、お腹の中のペニスの質量がグッと増して、呻く羽目になった。
「いまのは兄貴が悪い。でもまぁもう動くの我慢しなくてもいいのか」
 じゃあもっかいしっかり捕まってと言われて、ベッドに移動したいって言ったのは却下されて、ここで続きが始まってしまうのかと思ったのだけど。
「え、ぁんっ、ええっ、ちょっ」
「絶対落とさないから大丈夫。ゆっくり歩くから、奥の方、優しくとんとんされちゃうかもだけど」
 途中でイッちゃいそうなら教えてねと告げる声は相当楽しげだった。

続きました→

 
 
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