頬を撫でるように軽く叩かれて一度意識が浮上したが、大丈夫かと確認されて、凄かったと返せば笑われて、じゃあおやすみと言われるまま眠りに落ちた。次に意識が浮上したのは少し早い時間ではあったけれどすっかり朝で、部屋の中は薄明るい。
隣では弟が健やかな寝息を立てているが、その腕はこちらを抱き込んでいないから、そのままそっと体を起こしてみた。
それだけではっきりわかる強い痛みはない。
それならばと、ベッドを降りて立ち上がり、取り敢えずはトイレを目指す。ついでのように、おそるおそるあちこち体を動かしても見た。
ところどころ筋肉痛のような痛みがなくはないが、一番痛みを感じるのは下半身のどこかではなく上腕で、原因は間違いなく、駅弁スタイルで抱えられた時に必死でしがみついていたせいだ。
今回はちゃんとゴムを使っていて深くに中出しされたわけではないからか、多少の違和感は残っているけれど、ジクジクとした腹痛だって起こっていない。これなら多分、この後お腹を壊すこともないと思う。
前回とは比べるまでもない軽症っぷりに驚きながら、トイレを済ませた後で歯を磨く。鏡を見ながら、上に着ているTシャツが昨夜と変わっていないことに気づいて、結局その後でシャワーを浴びた。
下半身の服は弟が着せてくれたのだろうけど、上まで手がまわらなかったのか、思ったよりも汚していなかったのか。確かに昨夜は、最初っから射精なしで絶頂していた自覚があるけども。
シャワーを出てリビングに戻ると、どうやらこちらが動き回る気配で弟が目を覚ましたらしい。
「兄貴……?」
弟の手がもぞもぞと、自分が寝ていたスペースを探るように撫でるから、小さな笑いがこみ上がる。寝起きのまだぼんやりしているだろうその瞬間にも、まず最初に自分を探してくれるのが、嬉しかった。
「おはよ」
「え……あっ!」
声をかければ一気に覚醒したらしく、勢いよく起き上がるからビックリする。
「なんで? てか動いて大丈夫なのかよ」
「うん。思ったよりどこもかしこも、凄く痛いって感じはない」
ここ数日、毎日抱かれてたから体の準備が出来てたのかも、と言えば、弟も納得顔で頷いている。
「予想より全然動けてる。てか一番痛いの、お前にしがみついてた腕の筋肉痛」
中出しされてないからお腹も痛くないよと続ければ、明らかに安堵の表情を浮かべながら、良かったと言って腕を広げてくる。来い、または、来て、というその誘いを断る理由もないので、近寄って弟の胴をまたぐように座り、その腕の中に収まった。いわゆる対面座位だ。
「風呂ってきた?」
「軽くシャワーだけな」
「髪まだ湿ってる」
頭を撫でるみたいにゆるく何度も髪を梳かれて、穏やかな気持ちよさに包まれる。
「きもちぃ」
「知ってる」
「体、思ってたより全然平気そうなんだけど、今日も、する?」
さすがに連日あの抱かれ方は無理だけど、というか満たされた後だからか、奥まで気持ちよくなりたい欲求そのものが薄れているけど。でも浅い場所で気持ちよくなったり、ただ繋がっていることを感じ合うためのセックスなら、してもいいかなと思う。
「どっちでも。なんか俺も、昨日のでめちゃくちゃ満たされてっから。こうやってくっついてイチャイチャするだけも、悪くないかも」
あんな風にもう一度求めて貰えるのはもっと先だと思ってたし、無茶させる気なかったからずっとそれでいいと思ってたけど、でもやっぱりドロドロのイキっぱなしになって奥の奥まで欲しがられるのは最高に幸せだった。らしい。
ずっと、抱き潰された後の惨状回避のためにお互い避け続けていたけれど、この程度のダメージで済むなら、そこまで状況を整えまくらなくても次が出来るってことだ。射精なしでイキまくる怖さとか、奥で感じる体になる怖さが全部払拭されたとまでは言わないけど、でもやっぱり、あのたまらない幸福感や強烈すぎる快感やらは魅力的だった。
どんなにイヤラシイ体になっても弟は喜ぶばっかり。というのも、本当に心強い。ドロドロになってイキまくっても、汚く喘ぎまくってる最中でさえ、弟は甘やかに可愛い愛しい大好きだと言い続けてくれる。
連日やりまくってて体が行為に馴染んでたとか準備ができてただけという可能性もあるから、次もここまで軽症とは限らない。ってことだけ頭に入れて、今後も機会があれば、というよりはそうされたくなったら、我慢したり恥ずかしがったりせずに、して欲しいって自分からお願いしようと思う。
だって好きな子が、満面の笑みで最高に幸せだったと言ってくれるのだ。それを得るためなら、自分からのおねだりくらい、なんてことはない。
「じゃ、もう少しこうしてよう。俺も満たされたから、イチャイチャするだけ大歓迎」
弟が、腹が減ったから朝飯を作ると言い出すまでもう暫くの間、こうしてくっつきながら他愛のない話を続けていたいなと思った。
<終>
リクエストは「弟エスコートでふわふわになる兄弟デート・社会人になる弟との同棲をめぐった一悶着・年月を経て繋がりが深まったことによる一層甘々でえっちな営み」でした。
久々にこの二人を書けてめちゃくちゃ楽しかったです。リクエストどうもありがとうございました〜
1ヶ月ほどお休みして、残りのリクエストを1月26日(金)から更新再開予定です。
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