多分、両想いな二人のクリスマスイブ

 先日、冬至だと言って南瓜と柚子を抱えて来た友人には、クリスマスは平日だし特に何かをやる気はないと明言していた。つまりは来るなと言ってあった。
 正月休みに入る前に終えなければならない仕事が山積みで、その冬至の日だってろくに相手をせずに自宅でも仕事をしていたのに。そんな状況で定時で帰れるはずがないことなんか、わかりきっていると思っていたのに。
「なんでいるんだ」
 帰宅した自宅ドア前、身を縮めて丸く座り込んでいる男を前に、驚くよりも呆れて溜息がこぼれ落ちる。ただ、呆れてはいるが、想定通りでもあった。
「寒い」
「当たり前だ。というか遅くなるから帰れって送ったろ」
 まだ帰ってこれないの? というメッセージを受け取ったのは1時間ほど前だ。どれくらい待ったあとでそのメッセージを送ってきたのかはわからないが、既に相当待った後だろうことは想像がつく。
 相手が自宅に押しかけていることを知って、もちろん即座に帰れと返信していた。返したが、素直に帰らない可能性が高いともわかっていたから、これでも相当急いで帰宅している。
「だってクリスマスイブだし」
「だってじゃない」
「つかマジ寒いから。早く」
 家に入れろと急かされて、再度、盛大に溜息を吐いてから家の鍵を開けてやれば、勝手知ったるとばかりに家主である自分よりも先にさっさと中へ入っていく。だけでなく、暖房のスイッチを入れ、抱えていた荷物をキッチンに持ち込み、慌ただしくゴソゴソと動き回っている。
 またしても軽い溜息がこぼれ落ちたが好きにしろと諦めて、こちらも普段通り過ごす事にした。普段通りというか、スーツを脱いで風呂場へ向かった。

 シャワーを浴びてリビングへと戻れば、テーブルの上にはフライドチキンやらローストビーフやらピザやら、大変クリスマスらしいメニューが山盛り並んでいて、小ぶりながらも丸いケーキまである。
 彼が持ち込んだ大荷物は見えていたから、ある意味これも予想通りではあるのだけれど。
「重っ」
「え、なに?」
「いやお前、この時間からこれ食うとかマジか」
「この時間になったのはお前が帰ってこなかったからじゃん」
「だから元々、平日ど真ん中のクリスマスなんてやらないって言ってたっつーの」
「あーもー、別に半分くえとか言わねぇし。食える分だけ食ってくれればいいから。とにかく俺に付き合って。クリスマス一人とか寂しいから一緒にメシ食ってお祝いしてってだけだから!」
 口を尖らせて不満を示すものの、すぐに満面の笑みを作って開き直られてしまった。
 まぁ付き合う気がなければ、頑張って帰宅なんてしないし家にも入れないのだけど。でも文句も言わずに甘い顔をして受け入れていたら、どこまでも付け上がっていくんだろうから、取り合えず釘は刺しておこうというだけで。
 はい座って座ってと促されて席につき、平日には極力酒は飲まない主義なのに、注がれるままワインで乾杯して、用意されたご馳走に手を伸ばす。
 まぁ、睡眠時間やら明日の仕事やらを考えなければ、悪くない時間だった。ボリューム満載のご馳走も、結局、雰囲気と酒の力とで思ったより食べれてしまって胃が苦しい。
「んーさすがにこれ以上無理〜」
 カットせずに直接フォークを突き刺して食べていたケーキはまだ半分ほど残っているが、どうやら相手もここでギブアップらしい。
「無理して食うなよ」
「だって持って帰るの面倒だし、置いて帰ったらお前絶対また文句言うし」
「そりゃ言うだろ。っていうか」
 言いながら確認した時計は23時を超えている。帰宅が遅かった上に、大量の料理を前にダラダラと飲み食いしていたせいだ。
 言葉を止めて溜息を吐けば、相手が気まずそうな顔になって、そそくさとテーブルの上を片付け始める。ただその手つきはなんとも怪しい。手つきどころか足元もなんだかふわふわとおぼつかない。
「飲み過ぎだ、バカ」
「んーゴメン」
 素直に謝るくらいには自覚があるらしい。
「ああ、もう、片付けは俺がやるから、お前ちょっとシャワー浴びてこい」
「え? なんで?」
「泊まっていい。が、さすがにそのまま布団を使われるのは抵抗がある。部屋着は貸す」
「え、マジ? いいの?」
「寒い中何時間も外で待たせた上にこんな時間に追い出して、風邪でも引かれたら寝覚めが悪い」
「やった! じゃ行ってくる!」
 こちらの気が変わらないうちにとでも思ったのか、さっきのおぼつかない足取りはなんだったんだと言いたくなるくらい、しっかりとした早足でささっと風呂場へ行ってしまった。
 もしや、相手の酔っ払って帰れないという演技に、まんまと引っかかったんだろうか?
 そんな思考がチラリと掠めたものの、どちらにしろ後の祭りだった。

 
 
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親切なお隣さん(目次)

キャラ名ありません。全46話。
隣に住む社会人✕貧乏大学生(視点の主)。
明確な年齢差は出てませんが、7歳位を想定。出会った時、視点の主18歳・お隣さんは25歳くらい、みたいな。

真夏にエアコンが壊れてしまって途方に暮れてた視点の主を、昔周りの大人に助けられた経験を持つお隣さんが、今度は自分が困ってる子どもを助ける番! と思って張り切って助けてくれる話。
視点の主は中学時代にパパ活経験あり。それがキッカケでアナニーを覚えて、一応処女だけど自己開発済み。だけど性経験はそのパパ活のみの童貞。
お隣さんはアナルセックス未経験の非童貞。視点の主に抱きたいって言われる可能性を考えてアナニーチャレンジ経験あり。
視点の主には毒親とその親に甘やかされて歪んだ弟がいて、作中、その弟にアナニーを知られて襲われかける展開があります。
弟から視点の主に向かう恋愛感情はないので当て馬とは少し違うかもですが、弟は放置されたまま特に救済なく終わります。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的描写が多目な話のタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 真夏に壊れたエアコン
2話 オカシナお隣さん
3話 お隣さん宅で過ごす
4話 今後も食事作り継続
5話 大家さんに挨拶
6話 お弁当も作るよ
7話 祖父の他界
8話 喪服のお礼持参
9話 お隣さんの下心
10話 お隣さんの特殊な要望
11話 結婚なんて……
12話 巻き込みたくない
13話 抱かれたくてアナニー
14話 帰省しないお正月
15話 弟相手にも強気
16話 3人で夕飯
17話 弟と自宅に戻る
18話 実家の闇
19話 弟の来訪理由
20話 実家に戻る気はない
21話 弟から見たお隣さんとの関係
22話 弟にアナニーばれ
23話 お隣さんに助けられる
24話 お隣さんに報告
25話 弟とはキスだけ
26話 結婚諦めてない宣言
27話 今すぐ抱いてって言ったら?
28話 ひとりH中の声
29話 ラブホへ
30話 お隣さんの経験値
31話 パパ活経験済み認定
32話 あっさりイっちゃう(R-18)
33話 相手をイカセたい(R-18)
34話 飲んでやった(R-18)
35話 いっそ全部話してみる?
36話 怖い笑顔
37話 こんな体になったのは
38話 必要なものは持ってきた
39話 性急に(R-18)
40話 繋がる(R-18)
41話 また自分だけ(R-18)
42話 奥は未開発(R-18)
43話 とにかく必死
44話 エロい意味で好き(R-18)
45話 ゆっくり気持ちよく(R-18)
46話 今日の予定

 
 
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Mさんへ(メルフォお返事)

親切なお隣さんの感想メッセージどうもありがとうございました。
感想下さる前に頭から読み返してくださったそうで、くり返し読んでもらえるのも本当に嬉しいです。ありがとうございます。

今回の話がもしお隣さん側視点だったら、お隣さんは相当ヒヤヒヤしながら隣の学生の昔話(パパ活話)を聞いただろうなと思います。
本人呑気にラッキーとかいい人と当たったとかで済ませちゃってますけど、色々フィルター掛かってそうというか認識歪んでそうだなとも思うんですよね。でもそれを外から判断できる大人は中学時代の彼の周りにはいなかったので、真実は闇の中です。
中学時にパパ活した相手側視点とか書く機会はないと思うんですけど、そっちはそっちでちょっと興味が湧いてたりもするんですよね。
書く機会ないとは思ってますけど、でも今これ書きながら、パパ側でパパ活したことあるよってキャラもなしではないような気がしてきました……

弟くんは弟くんで色々歪んだ育ち方しちゃった可愛そうな子ではあると思うので、今後いろんな事実に気づく機会や、支えてくれる誰かとの出会いがあるといいなと思ってはいます。
適当に濁して書いてしまった弟くんの関わってる競技、というのが邪魔をして(そこしっかり設定練るのが面倒ってだけですが)弟くんの話を書くことはなさそうなんですけども、彼にも幸せになって欲しいな〜という気持ちだけはあるんですよね。
先に帰ったお隣さんとのやり取りが実家の歪みに気づくキッカケになる、というのもありかな? なんて思ったりもしますが、二人が帰ってくる前にさっさと帰ってる可能性もありそうです。

弟✕兄で弟が兄を襲う、ってなったら、想いが募りすぎて、みたいなのがやっぱり多い印象ですよね。というか、好きでもない相手を襲う、ってのがちょっと理解の範疇を超えてくる感じがありますよね。苦笑。

今回のお話も楽しく読んでもらえたようで本当に良かったです。
次の更新期間にどんなものを書くのかはいつも通り全く決まってませんが(さすがに25日はクリスマスネタを何かと思ってはいますけど)、更新再開した際にはまたよろしくお願いします。

 
 
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親切なお隣さん46(終)

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 自然と目が冷めて見慣れない天井に慌てて体を起こした後で、昨夜何があったかを思い出す。
 部屋に窓がないので、朝になっているのかすらわからない。いったいどれくらい寝てしまったんだろう?
 キョロキョロと辺りを見回して、ベッドヘッドの時計にやっと気づいた。時計が示す時間はいつもの起床時間とほぼ変わらず、どうやら普段起きる時間を体が覚えていたらしい。
「ん、おはよ」
 慌てて飛び起きたり時計を探したりで、どうやら隣で寝ていたお隣さんを起こしてしまった。
「起こしてすみません。あ、朝飯」
 どうします? と聞くより先に、昨日遅かったからもう少し寝たいと返ってくる。なのにそこで会話は終わらず、相手から次の話題を振ってきた。
「それより体は平気そう?」
「あー、まぁ、ちょっと腰がだるいくらいすかね」
 時計を探してキョロキョロ動いた時も平気だったし、立ち上がることはしないまま軽く体を動かしてみるが、やっぱりどこかが強く痛むとかはない。
「そういや突っ込んだまま寝たりはしなかったんすね」
「さすがにね。だって俺も一緒にイッたし、またゴム変えて寝落ちた君の中に入ろう、とかは考えなかったかな」
「あ、やっぱ一緒にイッてくれたんすね。良かった。てかそんな時に寝落ちてすみません」
「一瞬気絶したかと思って焦ったけど、幸せそうな顔してるし、寝てるだけみたいだし、どう考えても夜ふかしさせすぎたせいだなって」
 こっちこそ長々付き合わせてゴメンねと謝られて、いっぱいしてもらえて嬉しかったから謝らないで欲しいと返す。
 だいたい、ヤリ溜めしたい的なことを自分から言ったし、求められて仕方なく応じたなんて場面は全然なかったんだから、謝られる要素なんて欠片だってない気がする。
「簡単には後始末もしてあるけど、必要ならここ出る前にもっかいシャワー使うといいよ。あ、お湯ためて一緒に入る?」
 広いしと言われて、確かに二人一緒に入れそうな風呂だったなとは思うけれど。
「二度寝するんじゃないんすか?」
「と思ったけど、話してたら目が冷めてきちゃった」
 そして結局、お風呂にお湯をためて朝から一緒に風呂に入った。
 体を洗いあって、そんなことしたら当然気持ちが盛り上がって、でもさすがに挿入はってことで、互いに互いのを握りあって扱いてイッて、結果、風呂上がりに二人してベッドに倒れ込んでいる。
 疲れた……
 てか朝から何をやってるんだ。
「今日の仕事、昼からだよね?」
「そっすね」
「じゃあもう1時間くらいは寝てもいいかな」
「1時間?」
 そこまで遠くのホテルに連れてこられたわけじゃないから、もう少し寝てても大丈夫そうだけど。ああ、でも、一旦帰って何かお腹に入れてからバイトに行きたい。というか家の鍵とかスマホとか、モロモロ全部持ってきてない。ってのを考えると、1時間は妥当な時間でもあるか。
 そう、思ったのに。
「お腹減ってるでしょ。どっかでブランチして、そのあとバイト先まで送ってあげる」
「どっかで? え、外食!?」
「たまにはいいでしょ。お正月だし。って、あー……」
「どうしました?」
「いや、君の弟くんの朝ご飯、考えてなかった」
 家の鍵とかスマホとか取りに戻ったほうがいいよね、って話かと思いきや、心配してるのは残してきた弟のことらしい。この人らしいと言えばらしいんだけど。置いてきた弟のことなんて、出来れば忘れていたいと言うか、あまり考えたくないんだけど。
「や、あれはほっといていいす。てか出来れば顔合わせたくないっていうか」
 多分向こうだって会いたいとは思ってないんじゃないだろうか。
 だってどう考えたって気まずい。あんなことがあったあとでお隣さんと仲良く朝帰りなんて、色々な意味で気まずい。
 何言われるんだろと考えるだけで、気まずいを通り越して、絶対会いたくないって気持ちになってしまう。
「ああ、うん。じゃあ直接バイト先送るのが正解だね」
「ですね。でも一つ問題が。というかお願いがありまして」
 ここで弟の朝飯の心配が出来るこの人になら、甘えてしまっても大丈夫なんじゃないかと思って口に出す。
「お願い? なんだろ?」
「俺のスマホと家の鍵の回収というか、アイツがまだ家にいるかもわかんないんすけど、いっそ鍵開けっぱにして帰っててくれてりゃいいんすけど、もし、まだアイツが家に残ってたら、スマホと家の鍵回収して、アイツ追い出してくれないかなって……」
 アイツと顔合わせたくないんすよと繰り返したら、あっさりわかったと了承された。本当は、これ以上この人をあの弟と会わせるのも嫌なんだけど。
「あの、俺とヤッたってアイツも気づいてると思うんで、もし変なこと言われたらすみません。つか、もし誘惑されても断ってくれるて、信じてるんで」
「兄貴の恋人奪ってやるって?」
「そういうの平気で考えるヤツなんすよ」
「おれが好きなのは君だけだから大丈夫だよ」
 即答でそう言い切ってくれるから、ほんと、嬉しいし安心するし信じられるとも思う。にへっと頬が緩むのが自分でもわかってしまう。
「それより、バイト中にスマホなくて大丈夫なの?」
「それは全然大丈夫す」
「しかし、鍵もスマホも持ってきてないの全然気づいてなかったっていうか、おれも相当テンパってたと言うか浮かれすぎてたね」
「俺はまぁいっかなって。このチャンス絶対逃せないって、テンションぶち上げだったんで」
「まぁわからなくはないかな」
 気づいてても取りに戻れる感じじゃなかったよねと納得されて、ですねと相槌を打っておく。
「さて、じゃあ今日の予定もあらかた決まったところで」
 おいでと両手を広げられてしまって、もぞっと相手に近寄れば、すぐに緩く抱きしめられる。
「アラームかけたから大丈夫だと思うけど、もうちょっとだけ眠らせてね」
 言って目を閉じた相手が、すぐに穏やかな寝息を立て始めて、寝付きいいなと思ってしまう。普段からこうなのか、疲れ切っているのかはわからないけど。昨夜あっさり寝落ちたのはこっちだけど。
 自分の方は、そこそこ疲れては居ても眠いってわけではないんだけど、でも抱き枕よろしく抱え込まれているし、やれることなんてないし。
 そう思いながら目を閉じたら、案外するっと意識が落ちた。

<終>

最後までお付き合いありがとうございました。
1ヶ月ほどお休みして、次回更新は12/25(水)の予定です。

 
 
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親切なお隣さん45

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 次はもっと密着した体勢で繋がりたいなと言われて、言われるまま横向きになれば、背後に寄り添うみたいに寝転がった相手が片足を持ち上げて穴の位置を確かめてくる。だけでなく、そのままぬるっと指先が入り込んできた。
「んっ」
「乾いてなさそうだし、このまま入るけど、いい?」
「は、はい」
 ゴムを付け替えるのは見てたし、そっちにローションを塗りつけているのだって見ている。穴は少し前までマックスサイズを受け入れて、けっこうガッツリ動かれても擦れる痛みはなかったんだから、多分なんの問題もないだろう。
 さすが、幾らか知らないけど安全を買ったとか言ってたアナル用ローション。そういや乾きにくくて良かった、とも言ってたっけ。
「じゃあ、入るね」
「ぁ……んっ……」
「さっきより小さくなってるし、この体勢だとそんなに奥までは届かないけど」
 物足りない? と聞かれて、いいえと否定を返した。
 だいぶ浅い位置にしか入ってないけど、そもそも、強い刺激が欲しいとか早くイきたいとは思っていない。物足りないってほど、体が昂った状態じゃない。
「じゃあもし物足りなくなったら、正直に教えてね」
 取り敢えずはしばらくこのままイチャイチャさせてと、足を下ろした相手の腕が、胸の前に回ってくる。というか抱きしめられた。
 背中があったかくて、確かにこれは密着って感じ。
 ほぅ……と緩んだ息が漏れて、背後から相手がクスッと笑う気配がする。
「腕の中に君がいて、その君と繋がってて、なのにそんな風に安心してくれてるの、すごい幸せだよ」
「俺も、けっこう幸せ? かもっす。なんかこのまま寝れそう、みたいな」
「あれ、そこまで落ち着いちゃってる?」
「まぁ……」
 ちゃんと気持ちよくはなっていたけど、奥への刺激でイッた経験はないから、正直イキそこねた感は薄かった。相手が気持ちよくイッてくれて満足したのもあるし、一度抜け出てゴムを変えるというインターバルもあった。
 今のサイズ的にもそこまで圧迫感はないし、挿入が浅いからそこまで快感を刺激されてもいない。
 うん、このままじっと抱きしめられてたら、本気で寝落ちる。
「もしかして眠い?」
 いつもならとっくに寝てる時間だもんねと言われれば、確かにそうなんだけど。でもこの時間を惜しむ気持ちだって当然ある。
「や、だいじょぶす」
「俺だけ先イッちゃったから、もっかいイカせてあげたかったんだけど」
 このまま寝てみる? という提案に、どこまで本気なんだと思いながら、嫌ですと返す。
 指でイカせてあげるよ、だったらともかく、まだ出来るって言われて実際こうして体を繋げているんだから、こんな中途半端な状態で終わりたくはなかった。
「もったいないんで」
「もったいない?」
「だって次いつ抱いて貰えるかわかんないすから。アンタがもう無理出ないって言うまで、搾り取りたい」
「ええ、本気で?」
 笑われてしまって、全く本気にされていないけど。実際、搾り取りたいって部分は本気で言ってるわけでもないけど。
 でも、次いつ抱いて貰えるかわからない、は間違いなく本音だった。というかあのアパート内では抱いて貰えないのだから、これは切実な問題だ。
「それくらいの気概で、ってヤツっすね。ヤレるだけヤッて帰りたい、みたいな」
「そんな意気込まなくても、ラブホくらいいつでも連れて来るんだけどね。普通のデートだってしたいんだけどね。でもおれとの時間を作るための無理もさせたくないし、ヤリ溜めみたいな無茶なセックスだってする気はないよ」
 そう言った相手は、明日だって仕事入れてるでしょと聞いてくる。
「入れてますね」
「じゃあ、これ以上あまり体に負担かかんないように、ゆっくり気持ちよくなって、気持ちよくイッたら、今日のところは終わりにしようか」
「それでいいすけど、そんな狙ってゆっくりとか出来るんすか」
「多分出来るよ。ゆっくり、一番キモチイイとこ擦ってあげる」
「えっ!?」
 言いながら、こっちの腰を押さえて後ろからゆっくりと腰を突き出してくる。
「ああっっ」
「ほらココ、でしょ」
「あ、そ、なんで……」
「なんで、ってイチャイチャしたかったからあんまり当たらないようにしてただけで」
 随分浅い挿入だと思ってたけどそれはわざとで、腰もしっかり密着させたら前立腺まではちゃんと届く、らしい。
「あ……はァ……」
「えっちな声出てる」
「だ、だって」
「少し動く? それとも、もうちょっとこのまま焦らそうか」
 そのほうがじっくり気持ちよくなれるかも、とか言われたけど。
「う、動いて」
「ん、わかった」
 ゆっくりするからゆっくり気持ちよくなって、の言葉通り、ゆるゆると腰を前後されると、お腹の中からじわっと快感が広がっていく。
「あ……あ……ぁあ……」
 ただ、そんな風にゆるゆると刺激されて、前立腺だけでイケるまで我慢、なんて出来るわけもなかった。そんな焦らしプレイやら我慢プレイには縁がないというか、ゆっくり気持ちよくなって、なんてセックスをされる想定がなかったから、そういう妄想で自分を焦らした経験なんて無い。
 つまり、もどかしさにあっさり屈して、自身の手を股間へ伸ばした。
「はぁ……」
「ん? もしかして、我慢出来なくて自分でおちんちん触ってる?」
 満足気な吐息が漏れるのが自分でもわかったし、快感でお尻の穴を締めてしまった自覚もあった。だから気づかれて当然なんだけど。
「だって……」
 最初にトコロテンしてペニスには触らずイッたから、前立腺だけでイケるって思ってるのかもだけど、トコロテンはそんなに簡単なものじゃない。そもそも、こんなゆっくりな刺激で自分を焦らした経験がないんだから、この状態からトコロテンが出来るのかどうかすら自分自身わからない。
「別に責めてないよ。ただ、おれも一緒に、していい?」
「え?」
 戸惑う声を上げたときには、腰を押さえていた相手の手がスルッと前に回ってくる。ペニスを握る手を包みこんで、一緒にゆるゆると扱いてくる。
「ぁ……」
「気持ちぃ?」
「き、きもちぃ、ああ」
「ふふ、えっちなお汁いっぱい出てる」
 指先が器用に先端からこぼれる先走りを掬い取って、くるくるとくすぐるみたいに亀頭へ塗りつけてくるからたまらない。ゾクゾクと腰の奥が疼いてしまう。
「あぁ、やぁあ」
「でも気持ちぃでしょ」
 お尻凄い締まったよと指摘されて、止めては貰えなかった。
 トプトプと溢れてくる先走りを次々と掬われ塗り込まれ、お尻の中では前立腺をゆっくり擦られて、全然激しくされてないのに、ビリビリ痺れるみたいな快感がずっと続いていっそ怖い。
 なにこれ。
「あ、あ、ああっ、や、だめ、だめっ」
「何がダメ?」
「だ、だって、いく、も、いきたい」
「うん、いいよ。イッて?」
 そう言うくせに、イクために激しく擦ろうとするのはやんわりと拒否られて、こちらの手を覆う相手の手は、依然としてゆるゆるとしかペニスを扱いてくれない。
「あ、ああ、やだぁ」
 イキたいイキたいイカセてと繰り返したら、仕方ないなぁと、呆れるってよりは甘やかすみたいな、どこか笑いを含んだ声とともにペニスを握る手が外れて、また腰を掴んでくる。
「自分でしていいから、イクときちゃんと教えてね」
 おれはいっぱい前立腺突いてあげるからいっぱい気持ちよくなってと、その言葉通りに、さっきよりも強めにゴリゴリと前立腺ばかりを狙って突いてくれるから、焦らされまくった体はあっという間に昇りつめていく。
「あ、あ、あ、イクイクイクっ」
 ギュウギュウとお尻の穴を締め付けながら、ビュクビュクと白濁を吐き出す中、背後で相手が小さく呻くのがわかった。自分の体が絶頂で痙攣してるからか、さっきほどはっきりわからないけど、でも多分、相手も一緒にイッてくれたんだと思う。
 良かった。嬉しい。
 そう思ったところまでは、覚えている。

続きました→

 
 
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親切なお隣さん44

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 再度口の中をグチュグチュにされたけれど、でもやっぱりかなり加減はしてくれているようで、息を継ぐタイミングがさっきよりもわかりやすいし、唾液はどうしたって流れ込んでくるけど、口を開いたまま必死に喉の奥に流さなくても良くなった。
 引っ張り出されるみたいに舌を差し出しきつく吸われたり、奥の方まで差し込まれた舌先で舌の根やら上顎の柔らかな所をズリズリ擦られたりも、全くされないわけじゃないけど。でも舌先同士を擦り合わせたり、舌先を柔く喰まれたり、歯列のキワを辿られるみたいな、比較的浅い場所での触れ合いが増えたせいだと思う。あと、合間合間に、可愛いとか好きだよとか言ってくれるから。
 ただ、これなら気持ちいいに集中できそうって思ったところで、今度はゆっくりと腰を使われだしたから、全く落ち着く隙がない。
「んぅぅう゛……ぁ、うぶっ……んぅう……ぁあ゛……ぁ」
 ゆっくり長めのストロークで中を擦られると、すぐにまた、奥まで全部が気持ちがいい。それに加えて、今は口の中まで気持ちが良くて快感の逃し場所がない。
 思わず縋るみたいに相手にギュッと抱きついてしまえば、またしても嬉しそうに笑う気配がして、腰の動きがだんだんと早くなる。
「んっ、ぅ゛っ、…ぁ、んぶっ、う、…ん゛んっ」
「っはぁ、可愛い」
 気持ちぃねと、問いかけなのか同意を求めているのかわかりにくい言葉に、どっちでもいいかと頷けば、また緩く口を塞がれたのだけど。
「んあっっ、あ、ああっ」
 グッと奥を押し上げるみたいに腰を押し付けられて喉を反らせば、そのまま奥を揺するように捏ねられて歓喜の声が上がった。
 入りすぎって思ってたところまで、もう、しっかり気持ちがいい。
「だいじょぶそ、だね」
 気持ちよさそ、と笑われたその先。
「あ、あ、あっ」
「一緒にイケるといいんだけど、先にイッちゃったら、ゴメンね」
 肌が打ち合う音が聞こえるくらい激しく突かれだして、とうとう、相手の絶頂が近いらしい。
「い、いい、から。あ、ああ、イッて、あ、うれし、から、イッて、ああ」
 イッてイッてと繰り返したら、愛しそうに笑われて、好きだよって言われて、でも好きって返す途中で口を塞がれてしまった。
「す、んぅうっ、んんんっっ」
 お腹の奥の深いところで、相手のペニスの先端が震えるのを確かに感じる。ゴムの膜があるのに、いっぱい吐き出してくれてるって思ってしまって、それがただの錯覚じゃなければいいなと思う。
「ふふ、君が可愛くイッてイッてって何度もお願いしてくるから、ホントに先にイッちゃったよ」
 照れくさそうにそう言って体を起こした相手が、一度抜こうねとゆっくり腰を引いていく。
「ぁ……あぁ……」
 昂ったままの体は、それだけでもゾワゾワとした快感を拾ってしまうし、ずっと繋がっていた相手と離れてしまうなんとも言えない寂しさに、変な声を出してしまった。という自覚はあった。
 ガッカリがあからさまな吐息に、快感がしっかり乗ってる。みたいな。
「ふふっ、そんな声出さなくても、ゴム変えるだけだから。ちょっとだけ待ってね」
「変える?」
「だって君、イッてないでしょ」
「イッて、萎えてないんすか?」
「あんな声出されたらすぐ復活するよね。まぁ、先イッちゃったら指で前立腺弄ってイッて貰う、って案もあったんだけど」
 もっかいイケそう、と言いながらゴムを外している相手に、ちょっとばかり興味がわいた。
「いっぱい、出ました?」
「そりゃあ」
「見ていいすか」
「えぇっ??」
 そんな驚きの声を上げながらも、次には、ほらこんなにって言いながら、口を結んだ使い終わりのゴムを掲げてくれる。確かに、2回目なのに結構たっぷり白濁が溜まっていた。
「いっぱい気持ちくなってくれたなら、良かった、す」
「それは確かにそうなんだけどね」
 おかしそうに笑われた後。
「気持ち良くイケるってのは、そりゃ確かに大事だし、抱かれる側からしたら、自分の体でちゃんとイッてくれたって安心とかもあるのかなって思うんだけどさ。君のことが愛しくて、可愛くて、そんな君と体を繋げることができて、ちゃんと一緒に気持ちよくなれてるのが最高に幸せだ。って言うのを言葉とか態度とかから感じて欲しかったんだけど、そういうの、ちゃんと感じて貰えてた?」
「楽しそう、ってのと、俺のこと、ちゃんとというか、なんか思ってた以上にエロい意味でも好き、っぽいのは」
 最高に幸せ、なんて思ってくれてたのは知らなかった。こっちは初めてがいっぱいあって必死だったし、気持ちいいに翻弄されてた感が強くて、最高に幸せ、みたいなことを感じている余裕はなかった。
 なんて考えていたら、相手の困惑する声が聞こえてきた。
「エロい意味でも好きっぽい……?」
「あー、や、その、好きって言ってキスもしてんのに、押し倒されたりとかなかったから、その、ほんと、俺ばっかりそういうのしたがってんのかと思ってたし、したい気持ちあるよって言われてラブホ連れてきて貰ったけど、それも、結局は俺がキス以上のことしたがったからだし、あ、あんな、じっくりしっかり抱かれるとか思ってなかった、つうか」
「じっくりしっかり……」
「お、奥、感じるようなるまで待たれるとか、思わなかった、す」
 もっと早い段階でガツガツ腰を振られて相手だけ気持ちよくなられても、多分全く疑問に思わなかったはずだ。それでイッてくれたら、抱いて貰えた、ちゃんと気持ちよくなって貰えたって、満足していたとも思う。
「奥で感じられるとは言わなかったけど、痛い様子はなかったからね。でも奥で感じてくれるまで待ったってよりは、君と深く繋がれるのが嬉しくて、その時間を可能な限り引き伸ばしてただけ、かな。って、そっちのがより一層、『エロい意味でも好き』を肯定してるか」
 確かにエロい意味でもはっきりしっかり君が好きだよと言って、だからもっかい君の中に入らせてと、開かれた足の間に戻って来る。
 話しながらゴムを付け替えていた相手のペニスは、少しサイズが小さくなってはいるものの、しっかり硬く勃ち上がっていた。

続きました→

 
 
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