そっくりさん探し13(終)

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 両想いを確認してセックスする仲になってから、やり取りするメッセージには少しだけ甘い言葉が増えてやり取りする頻度があがって、声が聞きたいなんていう理由で時々通話するようになって、デート先もまた少し変わった。
 存分にイチャつきたいから人が少なそうな隠れた観光スポット巡りが多いのは変わらないけど、帰りがけにラブホ利用ではなく最初から宿をとることがあったり、観光地巡りではなく互いの家に訪れたりのお家デートなんかもするようになって、お付き合いは順調に進んでいると思う。
 そんな中、相手が少し興奮気味に、妹夫婦に紹介したいと言い出した。
 先日甥っ子に会いに行った際、妹旦那のそっくりさんと深い仲になったことが、とうとうバレてしまったらしい。
 相手の休日スケジュールは当然把握してるので、妹夫婦とはそう頻繁に会ってないことはわかっている。つまり、バレるまでにそこそこ時間がかかったったのは、単に会ってなかったからというだけの理由で、とうとうバレたってよりはあっさりバレたが正しい。まぁそんな指摘をわざわざしたりはしなかったけれど。
 その前段階で、とりあえず恋人みたいな曖昧な関係だったことにも気づかれていて、別れようかと迷っていたあたりでしっかり心配されていたようだ。まぁそれも、きっと相当わかりやすかったんだろう。
 良かったと言われてホッとしたと喜んでいたから、こちらも良かったなと返したし、紹介されるのだってもちろん構わないと返した。
 こちらとしても、例のそっくりさんともう一度会えるのはちょっと楽しみでもあった。なんせ軽く挨拶して事情を説明したあとさっさと退席してしまったから、せっかくそっくりさんと会ったのに、本人同士はあまり会話が出来ていない。
 ただ、小さな子が居るからと呼ばれた先の相手の家で、待っていたのは妹さんだけだった。旦那であるそっくりさんは息子を近くの実家に預けに行っているらしく、もうすぐ帰ってくるとは言われたものの、明らかに、まずは3人でお話しましょうという雰囲気というか、つまりは思いっきり、兄の恋人として現れた男を品定めする気満々のようだ。
「本当に男同士で恋人してるんですか? 結婚も出来ないし子どもも作れないのに?」
 テーブルに向かい合わせに座って、簡単な挨拶を済ませたあとの開口一番のセリフとしては、内容にしろ声音にしろなかなかに棘がある。
「おいっ」
 思ったより歓迎の雰囲気がないのは相手もとっくに察していて、戸惑いつつもなんだか不安そうにしていたのだけれど、妹からの攻撃的なセリフに黙っていられなかったらしい。
「待って待って。大丈夫だから落ち着いて」
「でも」
「本当に大丈夫だから座って」
 声を荒げてガタッと椅子から立ち上がるのを宥めて座らせたあとで、妹さんに向き直る。
「本気で恋人してるし、それを後ろめたいとも思ってないし、誰に恥じる気持ちもないな。結婚はそのうち出来るようになるかもしれないし、必要ならパートナーシップ制度の利用を考えたっていいと思ってる」
「ええっ!?」
 驚きの声は隣から上がった。基本、今をどう楽しむかばかりに重点を置いた付き合いだったし、今後二人の関係をどうしていくつもりか、どうしたいか、なんて話は殆どしてなかったので当然だ。もちろん、パートナーシップ制度なんて単語が、今まで二人の間で出たことはない。
「って驚かれる程度には、まだ結婚やらを考えるには早い付き合いなのは確かだけどね。あとは子どもか」
 隣を向いて、自分の子供欲しい? と尋ねれば、大慌てて首をブンブンと横に振って否定してみせるから、可愛いなと思いながらくすっと笑って、俺も要らないと返す。
「てわけで、子どもに関しては、現状望んでないよ、としか言えないけど。少なくとも、自分の子が欲しくなったからって理由で放り出すような真似をする気はないよ」
 言ったところで信じられるかはわからないけど、と言えば、隣からは信じられるよと柔らかな声が響いて、妹さんは少し悔しそうな顔をした。
「でも、男同士で付き合ってるなんて、知られただけで何か言われたりするかもでしょ? 世間体とか、あるでしょ? お兄ちゃんがそうなんだって知られたら、私だって何か言われるかもしれないでしょ?」
「世間体って話をするなら、そっちだってかなり問題あるよね?」
 君の行動のせいで多分この人も色々言われたと思うんだけどと指摘すれば、不安そうな顔になって隣の男を見つめるから、どうやら自覚はあるらしい。
「何か、言われた?」
「あー……まぁ、そりゃ。でもお前が今幸せだってなら、いいよ、別に」
 過ぎたことだよと言い切るから、なぜかこちらまでホッとする。初めて会ったときの思い詰めた表情も、再会したときのやつれた様子も忘れていないせいだ。
「お兄ちゃんは今幸せ? その人のお陰で?」
「っ……それは、そりゃ、……そうだよ」
 言葉を詰まらせながらも肯定する相手は、多分相当照れている。チラッと横を向いて赤くなった耳の先を見れば、やはりくすっと笑いが漏れてしまう。
「可愛いな」
 思わず漏れた声に相手が反応して、ビクッと肩が揺れた。
「ちょ、今は、そういうのは」
 すっかり「好きだよ」に変換されるようになっているのは相手だけで、妹さんにはそこまで意味のある言葉として伝わっては居ないはずだけど。
「ああ、うん、ごめん。つい。俺と居るのが幸せだって認めて貰えて、嬉しくて」
「なんか、凄く変な感じ」
 私が知ってるお兄ちゃんじゃないと言い出した妹さんは、随分と複雑そうな顔をしている。
「俺がお兄さんの恋人なのは不満?」
 聞いたら、不満じゃないのが不満だと返ってきて、笑いをこらえるのが大変だった。
「他に聞きたいことは? 俺の年収とか聞いとく? それともお兄さんを俺にくださいって頭下げようか?」
「えっ、えっ、ちょ、何言って?」
「いやだってこれ、どう考えても、親に交際やら結婚やらの許可貰う疑似体験だよね?」
「えっ、えっ!?」
 親が居ないから妹さん相手になってるだけでしょと指摘すれば、相手はますます混乱した様子を見せたけれど、妹さんの方は諦めに似た溜息を吐き出している。そしてこちらと目が会えば、すっと背を伸ばしてから深々と頭を下げた。
「兄を、よろしくお願いします」
「これからも幸せだって言い続けてもらえるように、頑張ります」
 同じように頭を深く下げて告げれば、やっぱり隣からは戸惑いの声が漏れてくるから、顔を上げて妹さんと目があった後は二人して笑ってしまった。
 その後は、妹さんが旦那さんに連絡を入れて息子さん共々呼び戻して、一緒に食事をしながら和やかに過ごした。
 そっくりさんは妹さんから先程のやり取りを聞いて、だから言ったろと自信満々で、こんなにそっくりなんだからやっぱいい男なんだよと、若干自画自賛めいた言葉を続けて妹さんの頬を膨らませていたけれど。でもそのあとこっそり、兄である彼が会うたびに落ち着いていき、穏やかで幸せそうな顔を見せるようになったのが根拠だと教えてくれた。
 そっくりさんがアレコレ手を回して兄妹の繋がりを一度切ってしまったことを、悔やんでいるらしい。妹さんの話を一方的に信じて動いたことを申し訳なかったと言っていた。
 そっくりさんからも、彼のことをよろしくお願いしますと頭を下げられたから、先ほど妹さんに告げたのと同じ言葉を伝えてこちらも頭を下げる。
「え、ちょ、何してんの?」
「そりゃ、疑似お義父さんへのご挨拶的な?」
「ちょ、またそれ!?」
 頭を下げ合っていたから気になったらしい彼が声を掛けてきたので、何をしていたのか教えれば、相手はやはり驚きながらも戸惑っている。
「お義兄さんだって俺に妹をよろしくって頭下げてくれたんだから、そりゃあ俺だって、お義兄さんをよろしくって頭下げますよ」
 そうしていい相手なんでしょう? と言われて、困りながらもそうだけどと認める相手を見つめながら、愛しさが込み上げる。
 恋人として紹介されるだけのつもりで来たはずが、結婚の許可を貰うような場になってしまったのは驚いたけれど、でもまぁそんな疑似体験もなかなかに楽しかったし、もちろん告げた言葉に嘘はない。順番が逆になったけれど、あとでちゃんとプロポーズ的なこともしようと、愛しさとワクワクで胸を満たしながら考えた。

<終>

最後までお付き合いありがとうございました。1回分早いかなって思ったけど、キリが良いのでここで一旦お休みして、再開は4月30日(水)からを予定しています。

 
 
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そっくりさん探し12

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 ごめんと謝って、それでも一応、動いていいかと問いかける。間違いなく、言質を取るための行動でしかないから、本当に申し訳ないと言うか懲りないと言うか、恥じる気持ちはあるのだけれど。
「そんな顔しないで、どうぞ、好きに動いてください」
 そんな顔ってどんな顔だと思ったけれど、許されて動き始めてしまったので、本当に余裕がない。
 律動に合わせてあっアッと上がる声にも余裕がないというか、どうしようもなく漏れ出ている様子で、やはりだいぶ苦しそうだ。
 申し訳なくて、あやまりたくて、でも、ごめんごめんと繰り返すのも違う気がする。ついでに言えば、苦しげに耐えている姿を可愛いとはとても言えない。想い人を苦しめて楽しむ嗜癖はない。
 結果、馬鹿みたいに好きだ好きだと繰り返した。情けないことに、それ以外に言葉を見つけられなかった。
 せめて相手にも感じて欲しいと、自身の快楽をついつい追ってしまう中で、必死で相手の前立腺を狙って擦りあげる。
「ぁあああっっ」
 悲鳴に似た、それでも甘い声が響いて、躊躇ったのは一瞬だった。
「ここ、きもちぃとこ。一緒にイケる?」
 聞けば首が横に振られてしまったけれど、だからって諦められるわけでもない。わかったと返して、相手のペニスを握った。
「ひぇっ」
 漏れる短な音からでも、驚きと戸惑いの中に不安と怖れが混じっているのを感じ取る。
「嫌? 怖い?」
 さすがにこちらの意図は伝わっているはずだし、同時にされればイケはずだし、それは相手もわかっているはずだ。
「や、じゃ、ない。へぇき」
 やはり怯えは残っているようだったし、これも結局のところ言質を取っているようなものだったから、どうしたって申し訳ない気持ちはわくのだけれど。
 それを飲み込んで、一緒にイきたい気持ちと一緒にイケたら嬉しい気持ちを、思いっきり込めて笑ってみせた。
「ん、なら良かった」
「ふへっ」
 不器用な笑顔が返されて、ホッとする。
 思わず可愛いと漏らせば、さらにふへへと笑った相手が、俺も、と言った。略された「好きです」は当然伝わっていたから、やっぱり煽られてしまって、相手のペニスをゆるく握ったまま数度腰を振ってしまったけれど。すぐさま上がった小さな悲鳴に、そうじゃないだろとどうにか理性を引き戻す。
 こんなに愛しい相手を前に、自分だけが快楽を貪るセックスなんて、絶対にしたくない。
「んぁ、ぁっ、ああっ、きもち、ぃ」
 相手をイカせたくて相手に意識が向かったのと、そのために片手を使っているのとで、ガツガツと自分ばかりが快楽を貪れなくなったのは幸いだった。
 こちらの動きが鈍ったのは、相手にとっても良かったんだろう。適度な刺激に対してなら、相手の前立腺はもう、快楽を拾えるようになっている。
 とろけるような声を上げるようになった相手のペニスを扱きながら、いいところに当たるように腰を振るのにも、だいぶ慣れてきた気がする。
「ぁっ、もぉ」
「イキそ? イケる?」
「ん、はい、ぁ、あっ、いッちゃぁああ」
 相手の吐精でギュウギュウと括約筋が絞まって、たまらなく興奮する上に気持ちがいい。増す興奮に達成感と幸福感とを混ぜながら、締まる腸壁に少々強引にグッグッと強めに自身のペニスを擦り付け、自身も絶頂を迎えた。

続きました→

 
 
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そっくりさん探し11

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 自分ばかりがどんどん好きになるのが怖い、というのが払拭されたのは、触れる体の反応からも有り有りと感じ取れた。次は気持ちよくなれたら気持ちよくなれた分だけ嬉しい、の言葉通り、どこか怯えを含んでいた反応はすっかりとなくなり、うっとりと甘えた反応を見せてくれる。
 もちろん、勃起したペニスを握っても、嫌がられたりしなかった。イカせてしまわないように気をつけながら、同時にアナルの中の前立腺も柔く刺激する。
「ぁっ、ぁっ、きもちぃ」
「ここで気持ちぃの、怖くない?」
「へぇき、です」
 でも強くされたらまたイッちゃいそう、と続いた言葉に、次は繋がってから一緒にイキたいと思ってると返せば、安堵した様子でやっぱり嬉しそうに笑う。安心してとろけた顔が愛しい。
「可愛い」
 思わずこぼせば、ふふっと更に笑われて、好きですと返ってきた。
「俺も好き。可愛くて、愛しい」
「んふふっ、大好き、です」
 そう返して笑う顔は楽しげだ。
「俺も、大好きだよ」
 言いながら埋めていた指を引き抜いて、とうとう自身の準備にかかる。といってもとっくに完勃ちなので、ゴムを付けてローションをまぶすだけだけど。
 それをじっと見つめる視線には、当然気づいていた。
「今からこれが入るんだけど、大丈夫そ?」
「大丈夫じゃなかったら、入れてくれないんじゃ? って気がするから、ダイジョブ、です。けど」
「けど?」
「ちょっと触ってみても、いいですか?」
「もちろん」
 既にローションを掛けてしまったので、触れたらその手が汚れてしまうけれど。でもそんなの拭けば済む話だし、相手も一切躊躇わずに手を伸ばしてくる。
「おっきぃ、くて、熱い」
 独り言みたいな小さな呟きが漏れている。顔は股間に向いているのでその表情は読めないが、ふふっと笑う気配がして、間違いなく、握られて反応する様子を楽しまれている。
「俺が反応するの、楽しい?」
「ですね。あと、嬉しいです」
「うん、わかる」
「俺に触られて、興奮してる」
 ちらっと顔を上げて、ですよね、と言いたげな視線を投げられたから、そうだよと頷いた。
「握ってもらえるとか思ってなかったし、凄く、興奮してる。だから、あんまり強くされたらイッちゃうと思うけど」
 どうする? と聞いたら、えっ、と戸惑ってしまう。さすがに意味が伝わらなかったらしい。
「さっき一回イカせちゃったし、おちんちんの先から白いの溢れてくるのめちゃくちゃ興奮したからさ。君も、その手で俺をイカせたり、俺がイクとこ見たいかも、と思って」
 その方がお相子って感じもするしと言えば、確かにと同意はされたけれど、でもペニスを握っていた手は離れていく。
「いいの?」
「だって手で、じゃなくて」
「うん。次は繋がってから一緒にイこ、って言ったもんな」
「です」
 じゃあ君の中に入らせてとお願いしたら、小さく頷いて起こしていた体を戻す。自ら立てた膝を開いて、待っていてくれる。
 嬉しくて、愛しい。
「俺も、好きです。だから」
 早くきてと甘く誘われて、頷きその膝に手をかけた。
 可愛いと零しはしなかったのに、どうやら態度で伝わってしまったらしい。可愛いと零すまでを待てなかった、なんて理由かもと思いついてしまって、興奮は増していくばかりだ。
「ぁっ……」
 先端を押し当てれば、小さな吐息が漏れる。興奮と期待に、僅かながらの不安が見える。
「もし痛かったり苦しかったり辛かったら、我慢しないで教えてね」
「は、ぁ、ぁああっ、ぅっんんっっ」
 相手が頷くと同時に腰を進めれば、慌てて口を閉じようとする。
「声噛まないで。聞かせて?」
 可愛い声だよと促せばおずおずと口を開いてその声を聞かせてくれたから、その声を注意深く聞きながら、可愛い愛しい気持ちがいいねと繰り返しつつ、とりあえず一度全てを埋めきってしまう。さすがに「好き」とは返ってこなかったけれど、わかってると言いたげに頷く仕草は何度か見せていて、それがやはりとてつもなく可愛くて、愛しかった。
「全部、入ったよ」
 動きを止めて一息ついて、相手が多少落ち着くのを待ってから声を掛ける。
「痛くはない、です、けど」
 お腹いっぱいって感じ、と嬉しげに続いた言葉にまんまと煽られたけれど、反応して彼のお腹の中で質量を増してしまったペニスに驚かれたので、間違いなく狙った発言ではなく素での感想なんだろう。当然、そういうところも彼の魅力の1つではあるのだけれど。
「馴染むまで待ちたいから、今だけちょっと可愛いの禁止で」
「なんですか、それ」
 おかしそうに笑いながらも、どうすればいいんです? と小首を傾げる姿すら結局のところ可愛くて、もうダメだ、と思った。

続きました→

 
 
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そっくりさん探し10

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「俺も1つ、お願いしても、いいですか?」
 甘やかな声にねだられて、もちろんいいよと返す。
「やっぱりちゃんと最後まで、抱いて貰えませんか?」
 終わらないなら、そっちも終わりたくないです。と続いた言葉は色々省略されていたけれど、お付き合いを続けるなら早く抱かれたい、という意味なんだろう。
「俺としては嬉しいお誘いでしかないけど、本当に?」
「はい」
「その、感じさせるの我慢するとか、出来そうにないんだけど。さっきのじゃ全然足りないくらい、もっともっと感じさせてトロトロになったとこ見たいって思ってるくらいなんだけど。俺に感じさせられるの、辛くない?」
「た、多分。もう大丈夫、だと思う、ので」
 大丈夫というのは、もうやだやだ言って泣かない、って意味でいいんだろうか。それはやはり、両想いが判明したからだろうか。
「俺が好きだよって言ったから? 俺も君に本気で恋してるから?」
「そ、です。俺ばっかりどんどん好きになっちゃう、っていうのが怖かったんですよ。でも気持ちよくなってみっともなく喘いでても、あなたは可愛いって言ってくれてたし、その、俺を気持ちよくさせたいのは俺のことが好きだから、って思えたから、じゃあ、いいかなって」
 さっきと違って、随分と饒舌に言い募る。
「きっと次は、気持ちよくなれたら気持ちよくなった分だけ、素直に嬉しいと思えるはずだし、安心してあなたをもっと好きになります。なって、いいんですよね?」
 あれこれ言葉を重ねるのは、多分きっとそこに不安と期待があるからなんだろう。
「もちろん。嬉しいよ。それに俺も、もっともっと、君を好きになるよ」
 抱きしめていた腕を緩めて、相手の期待と喜びの混ざった顔に笑いかけて、ゆっくりと唇を塞ぎにいく。
 まずは柔らかに押し当て、ちゅっちゅと何度か啄んでから綻んだ隙間に舌を差し入れ、口内の性感帯をゆるゆると刺激してやる。逸る気持ちはもちろんあるが、焦る気持ちはないし、じっくり感じて欲しい欲の方が強いからだ。
 なんせ、相手は一度吐き出している、という事実がある。
 だんだんと上気していく頬をしっかり確認しながら、熱い吐息が漏れてくるのを待って、可愛いと囁いた。お願いした通りにそれを好きだと変換してくれた様子で、嬉しそうに笑った後、俺も好きですと返される。
 本当に、なんて、可愛い。
 愛しさが溢れて、んふふと笑ってしまう。笑いながら、愛しくて可愛くて大好きだと、こちらも声に出して言ってみた。どうしたって、まずは可愛いと口にしてしまうのを止められないだろうからお願いはしたけど、省略せずに言えるようになりたい気持ちだってあった。
 相手は照れくさそうにしながらも、嬉しいと言って笑う。大好きと返して、自ら唇を寄せてくれる。
 そうやって散々キスを繰り返してから、とうとう相手を押し倒せば、おかしそうに笑う気配がした。
「どうしたの?」
「なんだかちょっと、楽しいって、思えて」
 嬉しくて、愛しいです。と続いた言葉に、首を傾げる。
「愛しい?」
「あなたが楽しそうに笑うのが、ニコニコしながら俺に構うのが、好きだからなんだって理解できた感じというか。あなたが俺にしてくれることが、繰り返される焦れったいキスすら嬉しくて、やっと押し倒されたって思って笑っちゃうのが、愛しい、なんだなって。愛しいから、楽しそうにするんだって」
 お願いされたからじゃなくて、理解した感じです。と言われて、思わずありがとうと返してしまった。
 愛しさから生まれる楽しさを、わかって貰えて素直に嬉しい。
「さっきは、なんでとか早くとかもっとがっついて欲しい、みたいなことばっかり考えてて、焦らされるの苦しくて仕方なくて、あなたが楽しそうにしてるのが不満だったのに。今は、あなたが楽しそうにしてるのが、俺も、楽しいです」
 嬉しい、とはにかまれて、やっぱり愛しさがこみ上げた。
 気持ちのすり合わせはやはり大事だなと思う。さっき「同じように楽しめない自分が悪い」なんて言っていた相手が、同じように楽しめていると言ってくれた事実に、感極まって泣きそうだ。
「ん、ふふっ」
 笑いをこらえるような音を漏らした相手が、愛しげに、そんなこちらを見つめていた。
「あなたが泣いたら、お相子ですね」
 どうやら泣きそうになっているのがすっかりバレている。
「俺のは嬉し泣きだけどね」
 ははっと笑ってそんな強がりを告げてから、ちょっとだけねと、押し倒した相手の肩に顔を埋めた。といっても、一粒か二粒流れただけなので、時間にしてほんの数十秒でしかなかったし、素肌に直接目元を押し当てたところでそれを相手が知覚できたかもわからない。
「もう終わりですか?」
「うん。だってホント、嬉しさ極まっただけだし。早く続きもしたいしね」
「そうですね。俺も早く、あなたと直接、繋がってみたいです」
 まぁ焦れったいのを同じように楽しめるようになった、とは言っていても、「抱いて欲しい」の本音はやはりそこなんだろう。わかっているから、善処はすると返して、それを証明するかのようにローションボトルへ手を伸ばした。

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そっくりさん探し9

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 本当だよと言葉を重ねてから、一度大きく息を吐きだす。
「ほらね、やっぱり悪いのは俺だった」
「えっ?」
「あんなに泣かせたのも、別れたいって言われるのも、俺が、悪い」
「な、なんで? っていうかどこが?」
「君が恋愛初心者で、君が頷いてくれたら俺が初めての恋人になるんだって、ちゃんとわかってたのに、お試しなんてやっちゃったことからして、多分、俺が悪かったよ。少なくとも俺の君への興味と好奇心が、ちゃんと恋愛感情になってから、付き合ってって言うべきだった」
 あのままもう少しだけ友達を続けておけばよかった。恋愛感情かはわからないけど意識するのを止められないと言った相手に、ちょっとだけ手を出すのを我慢して、先に自分の気持ちを育ててしまうべきだった。
 試してみてもいいかなと思った時点で、余程のことがなければ、この子に恋ができると思っていたはずなのだから。
「好きになったから付き合ってって、そうお願いして始めればよかった」
「い、いつから?」
「好奇心が恋愛感情になった時期?」
「そ、です」
「割とすぐだったよ。少なくとも、好きだって思ったから、キスした」
「えぇっ!?」
 その驚きは間違いなく、そんな初期から? って意味だろう。
 そう。そんな初期からちゃんと自分の中に湧いた感情を認識していたのに、それを伝え忘れたまま、どんどん関係を進めてしまった。
 デートが楽しくて、相手が可愛くて、愛しくて。浮かれすぎだったのは間違いない。
「ついでに言うと、君の気持ちもちゃんと恋になったんだと、勝手に判断してキスしたよ」
 同じ想いが相手の中にあると確信していたから、手を繋ぐだけだったところから軽く触れあうキスへと踏み込んだのに、それを口に出して確かめることをしなかった。互いの認識を擦り合わせておく、なんてことを考えもしなかった。
 ガチ恋愛初心者という部分を、こうなるまで、わかっているようでわかっていなかったんだろう。自分自身が初心者だったのは既にかなり昔だし、過去に付き合った彼女たちに、ここまでガチな初心者はいなかった。
 もしかしたら、友達の少なさも関係しているのかも知れない。若いうちから妹のためにと社会に出て、働くことに必死で恋愛なんて縁のないもの扱いだった彼には、友達と恋バナで盛り上がった経験もないはずだ。すなわち、友人経由での恋愛疑似体験すら、ないんだろう。
「えええっ!!??」
「ごめん。暗黙の了解的な駆け引きを恋愛初心者相手にやらかしてた、という自覚が全く無かった。というか今、振り返ってやっと気づいた」
「暗黙の了解、ですか……?」
「うん。手を繋ぐ以上のことしていいって伝わってきてたっていうか、キスを待たれてると思ったから、君もちゃんと俺に恋してくれてるんだって判断した、とか。キスした後の顔に嫌悪感がないかとか、そういうの当たり前にちゃんと確認してる。今日、触れるだけから一歩進んで少し深いキスをしたけど、それだって、君の反応を見たうえで踏み込んだよ」
 もし自分自身が恋愛初心者だったなら、キスしていいか、嫌じゃなかったか、全部、相手に確認を取っていたかも知れない。嫌じゃないという言質を取るための確認ではなく、気持ちの擦り合わせを目的とした言葉を、惜しまなかったかも知れない。キスの感想を詳細に告げて、相手からの詳細も聞きたがったかも知れない。
 それに恋愛初心者じゃなくたって、互いに恋をし合っていることは、言葉にして共有しておくべきだった。両想いからスタートしたお付き合いじゃないどころか、お試しで開始したお付き合いなんだから、そこは本当に、申し訳ないことをしてしまったと思う。
「俺が一方的に、やりたいことやりまくって楽しい〜、ってお付き合いをしてたつもりはないんだけど、言葉にして君自身に確認して来なかったのは、やっぱ俺の落ち度かな。ちゃんと言葉にして、お互いに意識を擦り合わせてたら、君に別れたいって思わせることも、さっさと一人で抱かれる準備させちゃうことも、きっとなかったよね」
 初心者が相手なのだからと思ってゆっくり一歩ずつ進んでいるつもりが、いきなり抱いたり抱かれたりのセックスに飛んだのも、間違いなくそれが原因だ。
「君のことが好きだよ。恋愛的な意味で。ちゃんと、好きになってる。別れてって言われて、いいよって言えないくらい、本気で君が好きだよ」
 全然足りないけれど、好き好き繰り返し告げてしまう。そういえば、楽しいとか可愛いとかはかなり頻繁に繰り返した記憶があるが、好きだと口にしたことはあまりなかったかも知れない。
 いやもしかして。あまりどころか、まさか言ったことがなかった……?
 という事実にちょっと血の気が失せる中。
「俺も、好きです。好きって言われてこんなにも嬉しくなるくらい、あなたに本気で恋してます」
 今更と呆れられることはなく、相手はふにゃっと嬉しそうに笑いながら、そんな言葉をくれた。
「うん。俺も、凄く、嬉しい」
 抱きしめていい? と聞けば、いいですよと柔らかな声が返ってくる。体ごと相手に向き直ってそっと抱きしめれば、すぐに相手からも柔らかく抱き返された。
「あとね、もう一個、言い訳というかお願い聞いてほしいんだけど」
「言い訳? と、お願い、ですか?」
「そう。ちゃんと好きって言ったことなかったのも、本当に反省してる。ただ、これからも好きより先に可愛いって言っちゃいそうだから。可愛いってのは君が好きって意味とほとんど同じだって、知っててくれると嬉しいかも。可愛くて愛しい、の愛しい部分を省略してたのは、ホント、ごめん」
「可愛くて、愛しい」
 その言葉を噛みしめるようなしみじみとした口調に、再度。
「君のことが、可愛くて愛しいよ。たまらなく」
 大好きって意味だよと付け加えれば、腕の中で相手が楽しげに肩を揺すった。

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そっくりさん探し8

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 ひとしきり泣ききったらしい相手が最初に口に出した言葉は「終わりにしたい」だった。
 もちろんそれは構わない。結果的にこうして泣かせてしまったけれど、当初の目的は達成しているとも言えるし、そもそも相手を抱くことにそう強い拘りがあるわけじゃない。急いでいないし、次でもその次でも、いっそもっと先でも、相手の気持ちと体の準備がしっかり整うまで待てばいい。
 そんなことより、わけもわからないまま泣かせてしまった方がよほど重大だ。
 たしかに嫌だとは何度も言われたが、あの場面でのああいった反応を、本気の拒絶だなんて思えるわけがなかった。という部分くらいしか、思い当たることがない。
 もし宥めすかして触れ続けたことそのものが泣くほどの原因だったとして、そもそも何がそんなに嫌だったのかもわからない。
 とりあえず落ち着いて話を聞くつもりで、少し迷った末に、二人並んでベッドの端に腰掛けた。正面から向き合って顔を見つつ話したい気持ちはあったが、相手は顔が見えないほうが話しやすいかも知れないと思ったからだ。
「終わりにするのはもちろん構わないけど、同じ失敗はしたくないから、泣いた理由は教えて欲しいな」
「あなたは何も、悪くないので」
「いやいやいや。俺が何も悪くなくて、あんなに泣かれるの、もっと意味がわからないよ?」
「いえ本当に。俺の方の問題だから。泣いて、すみませんでした」
「謝られたいわけじゃないっていうか謝るのは俺の方でしょっていうか。あー……じゃあ聞き方変えよう。俺とキスするのは嫌じゃなかったよね? 触られるのは? どこからが嫌だった?」
「どこから、って」
 これはもう細かに聞いて確認していくしかないか、という気持ちになって問いかけてみたが、相手からは戸惑いばかりが伝わってくる。
「それなら、おちんちん触っちゃダメだったのはなんで?」
「それは、触られたら、感じちゃう、から」
「感じたらダメなの? 俺はいっぱい、君が気持ちよくなるところを見たいよって、言ったと思うんだけど」
「で、でも、お、俺ばっかり気持ちぃのは、違う、と思って。それに……ぁ、いや」
「それに? 続きも聞きたい」
「や、ほんと、なんでもないです。ていうか終わりにするなら、俺のことはもう、いいじゃないですか」
「良くないでしょ。次に君がこういうことしてもいいって思ってくれた時に、また泣かせたりしたくないよ?」
「次、ってなんですか? 終わりなのに?」
「え? って、いやいやいや。そんな、え、いやいや、まさか」
 二人の間で終わりの意味が違っている、というのは感じたが、相手が言う終わりの意味を理解したくなくて、思わず否定の言葉だけを重ねてしまった。
「どうしました?」
 心配する気配とともに相手が窺うようにこちらを向いたのがわかったので、こちらも相手を振り向いてその顔を確認する。本気でこちらの不審な言動を心配しているだけらしく、別れを切り出されたらしいと知って受けたこちらの衝撃には、一切気づいていないようだった。
「一応の確認なんだけど、終わりにしたいって、俺達のお付き合いの話?」
「そうですけど」
「だよねぇ。じゃあ撤回で」
「えっ?」
「お付き合いは終わりにしません。俺が終わりでいいよって言ったのは、今日はこれ以上エッチなことしなくていいよ、って意味だから」
「えっ?」
「というかますます深刻な話になったんだけど、ほんと、俺の何がダメだった? 別れたいほど酷いことした自覚、マジで何もなくて困る」
「や、だから、あなたは本当に何も悪くないので」
「いやいやいや。お付き合いしてて別れを突きつけられてる側が、悪くないなんてあるはずないでしょ。というか別れてって言われる理由がわかってない、ってだけでも、充分俺にも非があるよね?」
「あなたに非なんてないですよ。だって最初っから、ちゃんと教えてくれてたし。そもそもこれって、お試しのお付き合い、ですよね?」
「そうだけど、何の問題もなくお付き合い出来てる気でいたから、本当に、別れたいって言われる意味がわからなくて。ていうか俺に抱かれるつもりで準備までしてくれた子に、エッチの最中に泣かれまくって、挙げ句に別れたいって言われるって、ほんと、何したの俺」
「ほんとは最後までちゃんと抱かれてみたかったけど、抱いて貰っても、多分、わかれてって言ったと思うので。あなたのエッチが下手だったとかそういうのじゃないですし、あなたは悪くないです」
 またしても衝撃の事実が告げられて驚く。
「え、じゃあ、もしかしてもっと前から、別れを考えてたってこと?」
「まぁ、そうですね」
 なるほど。と思ってしまったところはある。それに全く気づかずに、自分だけはしゃいでデートを楽しんでしまったから嫌気が差した、って話なのかも知れない。
「ごめん。一緒に楽しんで貰えてるとばかり、思ってた」
「楽しかったのもありますよ。俺のこと構って楽しそうにしてるあなたを見るのは、俺がその顔をさせてるんだって思うとなんだか不思議で、嬉しかったです。ただ、同じようにただただ楽しめない自分に気づいて、それが苦しくて。つまり同じようには楽しめない俺が、悪いんですよ」
 今日のエッチも同じです、と相手の言葉が続いていく。
「あなたは凄く楽しそうだったのに、同じように楽しめないどころか、どんどん苦しくなって泣いて困らせて、最後まで抱いて貰うことすら出来なかったんだから。だからもう、終わったほうがいいです」
「どうして苦しくなるの? 原因それなら、一緒に楽しめる方法を探せばいいんじゃないの?」
 言えば心底困った様子で笑う。
「なんでそこだけ鈍いんですかね。あなたが最初に言ったんですよ。もし俺が、ものすごく真剣にあなたに恋をしているなら、その気持ちに応えるのは躊躇う、って」
「えっ?」
「あなたと試しにお付き合いしたら、俺の気持ちはどんどんあなたに向かって膨らんで、ちゃんと恋になったんですよ。だから、終わりにさせてください。俺ばっかり本気で好きになっちゃって、ごめんなさい」
「ちょっ、待って待って待って」
 そんな理由で振られるとか、絶対に許せない。受け入れられない。第一、彼は大きく誤解している。
「俺だって君を、ちゃんと本気で好きになってるんだけど!?」
 言えば相手の目が驚きで見開かれるのがわかった。

続きました→

 
 
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