聞きたいことは色々12

1話戻る→   最初から読む→

 相手からの申し出だったのと、人目を気にせず話をするのに良さそうかもと思って、買い物デートは相手に車を出して貰うことにした。
 ただ、もともと強引に捻り出した「買い物」は当然のようにあっさり終えて、さぁじゃあじっくり話し合いを、と思ったところで次の目的地をどうするか聞かれて迷う。駐車場に停めた車の中で話せばいいかと思っていたけど、それじゃダメなんだろうか。
「ダメ、ではないけど。つか今のは、お前の家まで荷物運ぼうか、っていう提案だったんだけど」
「あ、次の目的地ってそういう……」
 重いものも嵩張るものも買ってないので、送ってもらう必要はない。車を出してもらった理由はそこじゃない。
 必要ないですと言えば、わかったと相手も即座に了承する。同時に、なんのために車を出してもらったかも思い出したらしい。
「話し合う時間が必要だろとは確かに言ったけど、そんな話すことないよなとも思ってんだよね。だって俺が恋人で不都合とかある?」
 身近なとこで欲しかったんでしょ、恋人。と言われてしまうと、そうだけど、とは思うんだけど。
「じゃあとりあえず俺の家向かうのでいい?」
「え、なんで!?」
 急に話が変わったのと、想定外すぎる次の目的地に驚いた。恋人が欲しい自身の気持ちに向き合ってる場合じゃない。
「家送らなくていいみたいだし、他に行きたいとこがあるわけでもなさそうだし」
「いやいや、ちょ、それは。えと時間下さい」
 行きたいとこ探しますって言ったら、あからさまに避けるねって苦笑されてしまった。
「だって家にお邪魔したら結局またエッチなことする流れになりそうで」
「うん。でもそれ、何か問題ある?」
 恋人が2週間ぶりに二人きりになってヤらないとかある? と聞かれても困る。だって恋人と2週間ぶりの恋人らしい時間、なんてウキウキと期待する気持ちが全然ない。
「だから! そもそも! 2週間ぶりの逢瀬、みたいに思ってんのそっちだけなんですって」
 なるほど、って返ってきたら、理解はしてくれたらしい。
「じゃあ適当にドライブでもするか、デートっぽく。さすがにこのままここで話し合うよりいいだろ」
 さすがにそれを引き止める言葉は持っていなかったので、車はあっさり動き出す。
「でさ、話戻すけど」
 しばらくして、相手がそう切り出してくる。
「どこに戻るんですか?」
「俺が恋人で不都合があるかって話」
 そういや相手の家に向かうのを阻止するやり取りの前はそんな話題だったっけ。
「むしろかなり都合のいい相手だろ、って思ってんだけど」
「でもこの2週間、恋人っぽいこと何もなかったですけど?」
 付き合ってるって認識だったんですよね? と確かめてしまえば、職場でゲイバレするのは嫌だろうと思ってただけと返ってきた。こちらからのそれっぽい行動が一切ないのも、同様の理由と思ってたらしい。
「まさか恋人になった認識がなかったせいだとはな。まぁプライベートの連絡先を交換しそこねてたのと、それに気づかず結果的に2週間も放置になったのはこっちのミスだが」
 会社でも恋人っぽいやり取りが必要? と聞かれて、慌てて首を横に振りつつ否定した。身近なとこで恋人が欲しいのは事実だけど、だからって職場バレなんか気にしない、という心境にはどうしたってなれそうにない。
 それに、校内でエロいことして退学になった過去持ち相手に、会社でも恋人扱いしてなんて言ったら、何されるかわかったもんじゃない。せっかく入った会社なんだから、あまり変な理由で退職したくはない。
「逆に言えば、俺の方からの会社バレはないって言い切れるくらい、完璧に隠し通せるのが証明されたんじゃないか?」
 会社にゲイバレしないし、ちゃんとゴム使うし、自分の快楽だけ優先しないし、むしろお前がイキまくりな気持ちぃセックスできる、身近な恋人だぞ。これ以上都合がいい相手とか居る? と自信満々に言い切られてしまうと否定はしづらい。しづらいんだけど、だからって歓迎出来るかは別だ。
 恋人が出来たってワクワク感はないし、どうしたって不安が大きい。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

聞きたいことは色々11

1話戻る→   最初から読む→

 明日どうする? という声が掛かったのは、セックスをした夜から2週間後の昼休憩時だった。ちょっと昼飯付き合ってと言われたところからして、いったい何を言われるんだろうとかなり緊張していたので、拍子抜けって気もするし、意味がわからなくて怖い気もする。
「どうするも何も、約束とかしてないですよね?」
 そもそもあれ以降、まともに会話するのが初めてだ。同じ部署なんだから業務絡みの会話はあるけれど、そこに親しみ込めたやり取りなんかは発生してないし、多少の雑談も他愛のないものばかりだった。
 特別気まずくなったわけでもないけど、ヤッたからって相手との距離が縮んだわけでもない。
 あんなドロドロに疲れ果てるセックスをしたのが嘘みたいに、翌朝顔を合わせた時からもう、けっこう素っ気ない対応をされている。
 まぁ素っ気ないなりに体の調子は気遣ってくれたし、遅い朝食というか早い昼食というかは出してくれたんだけど。初エッチの感想を求められたり、逆にこちらの振る舞いやら体やらを評価されたりするのかと思ってたから、そんなの全然なくてホッとしてたんだけど。
 抱いて興味が満たされたんだろうと思ったし、エッチの最中ですら殆ど甘やかしてくれなかった男に期待なんかするだけ無駄だと思ったし、自分自身、なんだかなぁって微妙な気分でいっぱいだったから、素っ気ない相手の態度に言及したりはしなかった。
 初エッチに対して思い描いていたアレコレが叶わなかったのと同様に、初エッチ後の朝に思い描いていたアレコレも叶わなかったけど、色々夢見過ぎだったよね、ってことで納得済みと言うか諦めがついているから、もうそっとしておいて欲しい。くらいの気持ちだったんだけど。
 なんで2週間も経過してから、昼食に誘ってきたりしたんだろう。しかも明日どうするってどういうことだ。
「まぁそうだけど。でも2週間経ったし」
「2週間経ったから?」
「そろそろ次のデートを誘っておいたほうがいいかなと」
「は?」
「デートに誘ってる」
「え?」
「俺達、付き合ってるんだよな?」
 驚きでまともな言葉が返せずにいたら、とうとう相手が不機嫌そうにというか、意味がわからないと言いたげに眉を寄せる。意味がわからないのはこっちの方なんだけど。
「え、ちょ、いやいやいや」
「なんでそんな驚くかな。別れ話された記憶、ないんだけど?」
 確かに別れ話をした記憶はないが、あれはあの夜限定の恋人って話だと思っていた。というか、付き合いが続いてるなんて到底思えるわけがない2週間だったんだけど!?
 え、俺等付き合ってるよねって、この人本気で言ってんの?
「嘘でしょ」
「何が嘘だって?」
「だってあの夜限定の話だとばかり」
「ああ、なるほど。こっちはそんなつもりじゃなかったよ。てわけで、明日どうする?」
 合点がいったと頷くものの、じゃあデートの話は撤回で、とはならないらしい。
「いやいやいや待ってくださいよ」
「どのみち話し合う時間が必要だろ?」
 特に予定ないならまた家でいいか、と続いた言葉に、慌てて予定を捻出する。いやだってそれ、相手の家に行ったら結局またなんだかんだでセックスする流れだよね?
 互いの認識に大きな隔たりを感じているのは事実だし、話し合いは必要かもしれないが、でもできれば相手の家は避けたい。もちろん自宅も無しだ。でも安心して話が出来る場所に心当たりなんてない。
「あ、え、その、買い物を。欲しいものがあって」
 とりあえず問題は先送りにして、話し合いやらをどうするかは後でじっくり考えよう。そう、思ったのに。
「わかった。欲しいものって何? 場所は? 車出すか?」
 相手の中で買い物デートが決定してしまって、どうやら逃げられそうにない。
「あーえと、詳細はまた後で、で」
「もうそんな時間か。じゃあ後で、」
 メッセージを送れとでも言いたかったんだろう相手が、そこで一度口を閉じた。
「まずプライベートの連絡先を交換するか」
「ですね」
 これで俺等付き合ってるんだって。と思ってしまうのは仕方がないと思う。零れそうになるため息をどうにか飲み込んで、連絡先を交換するためにポケットからスマホを取り出した。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

聞きたいことは色々10

*R18ですので18歳未満の方はこちらへ→

1話戻る→   最初から読む→

 人の手でイかされるって凄い。なんて感慨に浸る間もなく、ズルっと引き抜かれていく指にイッた直後でまだ整わない息を更に乱される。
「んぁあっっ」
「気持ちよかった? なんて聞くまでもないか」
 お尻だけでイケる体で良かったと笑いながら、相手が手早くゴムを装着していく。とうとう抱かれるんだと思うと同時に、ちょっと待ってくれとも思う。
「きゅ、休憩。い、イッたばっか、だから」
 どうにか絞り出した声に、相手がクスッと笑う気配がして、相手の言葉を待たずとも結果がわかって気が滅入る。
「イッたばっかなのがいいんでしょ」
「こ、怖い、んすけど」
「だいじょぶだいじょぶ」
 めちゃくちゃ気持ちいいだけ、なんて言葉、素直に信じられるわけがないのに。でも相手を止める言葉は見つからないし、強引に逃げ出す勇気も気力も体力もない。
「顔みたいから最初は正常位ね」
 キスもしやすいし、と言いながらチュッと軽く唇を吸っていったから、キスしての要望はこのあとも叶えてくれるらしい。
「怯えた顔」
 足を抱えあげられ、ピトッと先端がアナルに押し当てられて息を飲みつつその瞬間を待つというその時になって、上から見下ろす相手がフフッと笑う。
 やっぱりどこか楽しげだし、嫌そうな反応を返したら喜ばせそうだから、極力無反応を心がけるけれど、なかなかそう上手くは行かないようだ。
「言いたいことあるなら言いな」
「怯えた顔見て笑えるとか、ホント悪趣味すね。ついでにここで焦らすのとかも」
「怯えてるから、イッたばっかだから休憩したいってお願いをちょっとは聞いてあげようかな、って思っただけだったんだけど。そっか焦らされちゃうか」
 どこまで本気で言ってんだか。と思うくらいには、相手の笑顔が胡散臭い。しかもこちらの返答を聞く気はないようで、じゃあ待たなくていいよねって言葉とともに、相手のペニスがグッとお腹に入り込んでくる。
「ひぁあああっっ」
 容赦なく相手の下生えがお尻にくっつくくらい深くまで一気に侵入されて、なのに痛いとか苦しいとかより、圧倒的にキモチガイイ。ずっとじわじわ気持ちよくされていたあちこちが、さっきまでとは比べ物にならない快感を生んでいる。
 手加減しないってのは、この状況を指していたのかもしれない。と思ってしまうくらいには、内心かなり驚きだった。優しさの欠片も見えないこの扱いでこんなに快感が生まれているのが、本当、信じられない。
「良い声だすね。気持ちよさそ」
 軽くイッたかな、と言われると、そんな気もする。
「じゃ、いっぱいイッていいからね」
 イクと俺も気持ちぃし、と漏れたそれこそが相手の目的って気もするくらい、その後はひたすらイイ場所を擦られて突かれて喘ぎまくった。
 相手のゴム替えは3回までは覚えがあるが、結局自分は何回イカされたんだろう。お尻でイケるのが早々にバレたせいで、ペニスは全然弄って貰えなかったけど、触れられないままの吐精だけでも結構な回数になっていた気がする。といっても、最後の方はちゃんと出てたのかもわからないんだけど。というか出てなかったような気がするんだけど。
 なんかもう、最後の最後なんて、ずっとイッてるみたいな状態になってた気もするんだけど。
 つまりは記憶が曖昧になるほどイカされまくって、いつ終わったのかわからないくらい疲れ果てた。というのが、初セックスの思い出になった。
 こんなの、相手がいるセックスじゃなきゃ絶対経験できない。というのは明白だけど、なんだかなぁと思って深い溜め息が出てしまうのも仕方がないと思う。
 思い描いていた初エッチとは全然違うし、最後までどちらも「好き」とは口にしなかったのに、ドロドロにイカされまくって泣き喘ぎながら縋った相手は結構甘い顔を見せていたし、可愛いって繰り返し言ってもくれたから、最終的な満足感はそこまで酷いものでもないという、なんとも言えない微妙な気分だった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

聞きたいことは色々9

*R18ですので18歳未満の方はこちらへ→

1話戻る→   最初から読む→

 何がいいのかは結局わからないものの、その後も時々「いいね」と言われながらお腹の中を探られて、どんどん息が上がっていく。
 当然そんな場所を他人に弄られるのは初めてで、人の手でされてるって興奮は間違いなくあるんだけど。でもきっと、相手が上手いんだろうなとも思う。
 気持ちいいかは大事、みたいなことを言ってたし。初めてが彼で良かったと思わせる自信がありそうだったし。
 なんでそんなことを考えてしまうかと言うと、自慰では感じたことのない場所で、感じたことのない快感を得てしまっているからだ。
 自覚しているイイ場所は、多分意図的に避けられている。触れられた時にしっかり反応してしまったから、気づいてないとは思えないのに、そこをしつこく弄ったりはしてこない。
 自分からイイ場所を申告して、もっとちゃんと弄ってってお願いしないと、触ってくれないのかもしれない。
 協力するなら手加減がどうとか言ってたけど、つまりは意図的に感じる場所を避けて、この時間を引き伸ばしてるってことなんだろうか。申告されるより自分で探る方が断然楽しいとかも言ってたし、その可能性は高そうだった。
 でもやっぱり手加減の意味がわからない。だって自覚してるイイトコを執拗に弄られるより、今のほうがじわじわ気持ちがいい。知らなかった快感に酔いしれるみたいに、甘く喘いでしまう。
 恋人っぽい扱いを全然して貰えてないのに、あっさり喘ぎまくってて、そんな自身の体にガッカリではあるけれど。恋人とのセックスに夢見過ぎと言われたら、多分きっとそうなんだろうとも思うけど。
 「いいね」は繰り返されるのに「可愛い」はあれきりなのも、あえて言わないようにされているみたいで寂しい。もしあの時、素直に嬉しいって言ってたら繰り返してくれてたんだろうか。素直に嬉しいって言っても、結局あれきりだった可能性のがやっぱり高いだろうか。
 恋人って言ったって形だけのものなのはわかってるから、好きと言って欲しいとまでは思わないけど。自分だって相手に好きだなんて言えないんだけど。
 でも体の気持ちよさ優先というか、気持ちよければいいよねってセックスじゃなくて、もうちょっと甘い雰囲気が欲しかったと、どうしても思ってしまう。
 キスだって最初に少し長めにされて以降は、軽く触れ合うものすら与えられていない。肌を撫でてくれる手の平もない。
 お腹の中をいじられて気持ち良く喘いでしまっているけど、「いいね」以外の言葉が欲しい。この体を楽しく弄り回してるだけって事実をせめて隠して欲しいし、仮にも恋人なんだから、できれば恋人を抱こうとしている男の顔をしていて欲しい。
 楽しげに煌めく瞳じゃなくて、もう少し熱を持った瞳で見つめられてみたかった。なんて思いながら相手の顔を見つめてしまえば、言いたいことがあるなら言っていいよと笑われてしまった。
 気持ち良さそうに喘ぐ割にずっと不満そうだよね、と続いた言葉に、不満を言ったところでちゃんと伝わるのかを危ぶんでしまう。この人にとっては、これが「恋人扱いしたセックス」なのかも知れないし。
「なら、キス、して下さい」
 もっと恋人らしい甘い雰囲気が、とか言っても伝わらないかも知れないけれど、キスしてなら通じるはずだし、拒否されることもないだろう。
 そんなこちらの思惑通り、わかったと短く答えた相手がグッと顔を寄せてくる。
 さっきと同じ様にチュッチュと軽く吸うみたいなキスを数度繰り返してから、じわじわと深く触れ合うようになっていく。
 上顎を舌先でくすぐられるのはやっぱりゾワゾワと気持ちよくて、しかも今回はお腹に彼の指がある。快感にキュッとお腹に力が入ると、そこにある相手の指を強く意識してしまう。だけでなく、お腹の快感も増してしまう。というかキスと連動して、指の動きが加速している。
「ん、んっ、んんっぁあっ、ま、まって、まって」
 強すぎる刺激に相手の肩を押せばキスは中断してくれたけれど、お腹の中を蠢く指の動きはそのままだ。
「待つわけないよね」
「あっ、あっ、んぅうっっ」
 再度口を塞がれて、指先に狙ったように今までは避けられていたイイ場所をグリグリと押し掻かれて、あっさり頭の中が白く爆ぜた。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

聞きたいことは色々8

*R18ですので18歳未満の方はこちらへ→

1話戻る→   最初から読む→

 こちらの不満を興奮に変えて、相手は喜々としながらこちらの服を剥ぎ取っていく。借り物の部屋着はゆったりとして防御力ゼロだ。
「お、俺だけ脱ぐんですか?」
「脱がせていいよ?」
「って言ったって」
 協力してくれる気ないですよねって感じに、相手はどこからか取り出したローションボトルの蓋を開けている。その服に手を伸ばしていいのかすら迷う、躊躇いのない動きで次へ進もうとしている。
「はい、足開いて」
「服……」
「がんばれ」
「って何を!?」
 相手は面白そうに笑いながら、有無を言わさずこちらの足を開かせて、その間に濡れた手を差し込んでくる。
「ううっ」
「こんなに近くにいるんだから、俺の服に手ぇ届くでしょ」
「じゃあ一旦止まっ」
「やだ」
 止まってくださいと言い切る前に拒否されてしまった。
 なんなんだとムッとするが、相手はますます楽しげだ。ほんと、いい性格してる。もしくは性癖が色々オカシイ。
「絶対面白がってる」
「実際面白いもん」
 で、どうすんの? と興味津々に聞かれて、もういいやと相手の服に手をかけ強引に捲りあげる。自身が着てたものと同じようにゆったりとした部屋着は簡単に頭を抜けたけれど、腕に絡まったその先はやはり相手の協力が必要そうだ。
「ちょ、ほんとに、一旦」
「やっぱここ自分で弄ってるよね」
 腕に脱ぎかけの服を掛けたまま、こちらの訴えも完全スルーして、アナル周りをクニクニと撫でていた濡れた指先がチュクっと押し込まれてくる。ゾワゾワと肌が粟立って、どうしたって期待でお腹の奥がキュンと疼いてしまう。
 脱がし途中の相手の服をぎゅっと握りしめてしまえば、相手が微かに笑う気配がした。
 この期待はどこまで相手に伝わってしまったんだろう。恥ずかしいのか腹立たしいのか悲しいのか、よくわからない感情が胸の中に渦巻くが、それに意識を向ける余裕はない。
「指、いれるよ」
「うぁっ、んんっっ」
「声、噛まなくて平気だから」
 聞かせて、と促す声はなんだか甘くて、でも頷けるわけがない。嫌だと示すために首を横に振れば、やっぱり笑われた気配がする。
「いい場所、自分で教えてくれる気ある?」
「そ、なの」
「まぁ言えないなら勝手に探るだけなんだけど」
 わかってる? と聞かれても、もちろん何もわからない。
「俺は自分で探る方が断然楽しいけど、そっちは色々不本意っぽいからね。協力してくれるなら手加減するって意味」
 相手は服を脱ぐのすら協力してくれないのに、協力しろなんて言われても素直に頷き難い。というか、自らいい場所を申告しろなんて言われても、協力だの手加減だのとどう繋がるのかイマイチ実感がわかなかった。
「じゃあまぁ、教えてくれる気になったら素直にイイって言うといいよ」
 相手はこちらに協力する気がないと判断したらしい。てか判断が早すぎないか。そんなにわかりやすく顔に出たんだろうか。
「ぁ、ぁっ、ま、まって、まって」
「待つわけないよね」
「ひうぅっ、ん、んっっ」
「いいね」
 何が? と思った矢先、可愛いと相手の口からこぼれた言葉に、キュンと胸が高鳴ってしまう。自分より数段可愛い人に、可愛いなんて言われる違和感もあるんだけど。
 だって一応ちゃんと恋人になったはずだった。恋人として抱かれる覚悟でここにいるのに、眼の前の相手が恋人なんだって実感が欠片も湧いてなかったから、可愛いなんて一言にも盛大に反応したんだと思う。
「可愛いって言われたら嬉しい?」
「ち、ちがっ」
「そう? 体は嬉しそうにしてたけど」
 素直な体だよねと言いながら、相手の指にお腹の中を擦られて、ビクビクと体が小さく跳ねてしまう。
「んああっっ」
「ほらこことか。かなり良さそう」
「やっ、やっ、んんんっっ」
「体は全然嫌じゃなさそうなんだよねぇ」
 またしても「いいね」と言って、相手が楽しげに笑った。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

聞きたいことは色々7

1話戻る→   最初から読む→

 結論から言えば、振って帰るのではなく、お付き合いを了承して寝室へ移動することになった。
 だって熱烈に口説かれて本気で好きになった後ポイ捨てされるより、特別本気で好きってわけじゃなくても抱きたい程度の興味は持ってくれてる相手と恋人になる方が、多少はマシに思えた。どっちみち1度抱かれたら相手の気が済むんだったら、本気で好きになってしまってからより、こちらの好意が育つ前のがいいだろう。
 別に恋人にならなくたって抱かれさえすれば相手はそれで満足するのかもだけど。さすがに恋人でもない相手と初エッチを経験するのは悲しすぎるし、多分それもあって相手から付き合ってと言ってくれたんだろうし、そこは相手の申し出に甘えておくことにした。
「そんな悲壮な顔しなくても」
 苦笑する相手に、誰のせいだと思ってと言いたいのをグッと堪える。どうせ言ったって状況が好転するわけじゃないし、気持ちが晴れるわけでもない。
「まぁそれはそれで興奮しなくもないんだけど」
「なんすかそれ」
 嫌がられて興奮とか変態っぽいですよと言えば、嫌なんだ? と意地悪く聞き返されてしまう。嫌じゃないと思ってるわけではないんだろうから、嫌だとはっきり言われたいのかも知れなくて、ますます変態っぽいなと思ってしまった。
「ヤダって言わないんだ」
「言ったら喜びそうだったんで」
「嫌がられてなくて嬉しいよ」
 にこっと軽やかに振りまかれた笑顔はわざとらしくて、なのにドキッと胸が高鳴るくらい惹きつけられてしまうから悔しい。だって絶対、自身の顔の良さをわかってやってる。
 しかもその笑顔がスッと近づいてきたかと思うと、チュッと小さな音をたてながら唇を吸っていく。
 あっけなく奪われていったファーストキスに、やはり少し残念な気持ちが湧いた。こんなものか、と思ってしまうのは、きっと相手のことを想う気持ちがないからなんだろう。
 抱えていた憧れは、とりあえずで恋人になった相手とではやはり叶えられない。好きだという気持ちが向かう相手と、両想いって形でしたかった色々を、このままこの人に全部持っていかれてしまう。
 残念に思う気持ちを隠すように瞼を下ろせば、再度相手の唇が柔らかに押し当てられた。
 何度か角度を変えて繰り返されながら、キスはだんだんと深いものになっていく。ついでのように押し倒されて口の中を蹂躙されながら、口の中に溜まっていく唾液をどうにか必死で飲み下す。そんな中。
「ん……」
 上顎を舐められてゾクリと肌が粟立った。
「んっ、んんっぅうっっ」
 それを相手も察したらしく、そこばかりを執拗に舌先でくすぐられてはたまらない。さすがに相手の肩を掴んで押し戻せば、楽しそうな視線とかちあって眉が寄ってしまうのを自覚する。
「気持ちよくてびっくりしちゃった?」
「わざわざ言わなくていいです」
「でもちゃんと気持ちいいかは確かめておかないと」
 初めての相手が俺で良かったって思ってもらいたいし、と続いた言葉に、それは無理、だなんてことはもちろん口に出したりしなかったけど。
「ふふっ、凄い不満そう」
 口にしなくても伝わったっぽいのに、相手は随分と満足げで、やっぱり変態なんだなと確信する。
 こんな人だと思わなかった、なんて言えるほど、相手のことを知っているわけではないのに。ほんの数年先に生まれただけの人のなのに。巻き込まれた被害者として仕方なく高校を変わったのではなく、自らの行いによって退学させられた問題児だったというのが正解っぽいのに。
 先生なんて呼んで慕っていた時期がわずかにあったのと、相手がゲイだとはっきり認めたせいで、勝手に仲間意識と信頼を募らせて、相談なんてしてしまったのが間違いだった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁