こっちが必死になってる姿が珍しい、とかだろうか。さっきは恥ずかしがってるのが珍しいからつい行き過ぎる、とかなんとか言ってたし。
悪気とか意地悪とか、そういうつもりは一切ないんだろうことは信じているけど。でも何がそんなに嬉しいのかは気になった。というか「嬉しそう」が間違ってないと確かめたかった。
「なに、が?」
キスの合間になんとか疑問の声を上げれば、気付いた相手がキスを中断してくれる。でも上体を起こしてくれたわけじゃないから、お腹の奥の方は圧迫されたままだ。
「ん? なにが?」
「俺がひっしなの、嬉しい、すか?」
「え、そりゃ嬉しいよ」
当然でしょとあっさり肯定されて、拍子抜けな部分もあるけれど。
「ひっしなの、珍しいから?」
「ん? なんの話?」
「だってちょっと意地悪っていうか」
「えっ? 意地悪したつもりなかったけど、何? どれ? どこが嫌だった?」
「あ、や、意地悪のつもりじゃないのはわかってて、でも、俺ばっか不利ていうか」
「ぇえっ!? 不利!?」
理解が追いつかないって顔で疑問符を飛ばしまくる相手に、この体勢がいかに不利かを訴えた。
「口ん中唾たまってくし、息するだけでも大変だし、なのに口ん中ずっとゾワゾワ気持ちぃし、お腹、奥の方入り過ぎだし、アンタは俺が必死に息継ぎしてんのわかってて、楽しそうに笑うから」
てかそうなるのわかっててわざと口ん中グチュグチュにするキスしたんだろって指摘すれば、それが嫌だった? と不安そうに聞かれてしまった。
「嫌じゃないすけど、何が楽しいのかわかんないな、って。必死な俺見るのが珍しいからやってんのかなって」
「あー……それは、必死な君が珍しいから、ってよりは、必死な君があまりに愛おしくて、かな」
口の中に溜まってく唾液を、吐き出さずに飲んでくれてるの見せつけられたら、興奮しすぎて止まんないよね。とか言い出して、何を言われているのかちょっと理解が追いつかない。
「え、なんすか、それ」
「今もさ、体勢そのままだし、キスはやめたけど奥の方入ったままで体の負担そこそこあるよね。でも君、おれが嫌か、とか、苦しいか、って聞いても全部否定してくれるの。めちゃくちゃ必死そうなのに、もうヤダとか、ヤメてとか、苦しいとか、言ってこないでどこまでも俺に応えてくれようとするの」
そんなの愛しくないわけ無いでしょと言って、ちゅっと軽いキスが落ちてきた。
「でも、それで興奮が煽られまくったからって何してもいいわけないよね。無理させたいわけじゃないんだから、ヤダとか、苦しいとか、やめて、とか、全然言っていいんだよ?」
「ムリしてないす」
「本当に? なら、逆にして欲しいこととかは?」
「じゃあ、はやく、続き」
なんで、と口を挟んでキスを中断させてしまったのはこっちだけど、だからこそ、自分から続きをねだるべきだとも思った。楽しそうだけど何が楽しいのかサッパリわからない、という不安がちょっと膨らんでしまっただけで、別に止めて欲しかったわけじゃない。
「口の中グチュグチュにするキス、続けていいの?」
「いいすけど、でも、あんま可愛く喘げないすよ。必死な息継ぎしてんの嬉しそうに笑えるアンタには、あんま関係ないかもですけど」
「うん、まぁ、可愛く喘いで貰うのもいいけど、必死にキス受け止めてくれるのも、どっちも興奮するよね」
ちょっと同意はしかねるけど、誰かを抱いた経験があるわけでも、誰かを抱きたいと思ったことすらない自分には、わからなくても仕方がないのかも知れない。
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