聞きたいことは色々22

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 恋愛感情で、とは言えなくても、手放したくはないって思ってるみたいよ。と続いた言葉に、やっぱり首を傾げるしかない。
「だってデート中変なことされたり、デート先がヤバい場所だったりはしてないんでしょ?」
「人目を盗んで掠め取るキスのが興奮するとか言って周りに人が居るような場所でキスされたり、なんかちょっと変なラブホに連れてかれたりはしてますよ?」
 部屋からガラス張りの浴室が丸見えだったり、壁やら天井やらに大きな鏡が貼られてたり、拘束するための道具だったり装置だったりが置かれてたり、なんでそんな特殊な部屋選ぶかな、みたいなのを繰り返した結果、最近はもうラブホ利用は基本NGにしてしまったけれど。
 ラブホなんて、致す場所が確保できないわけでもないのにわざわざお金をかけて行くような場所じゃないと思う。だって気が散る要素満載でエッチに集中できない。
「うん、だから、そういう軽いのじゃなくて」
「軽い……?」
「出会い系も怖がって独り身貫いてきた子で、恋人にはなるけど惚れさせないでとか言っちゃうような子を、どう扱うかはかなり迷ったぽいよね。初めての恋人として都合がいいはずとか言っちゃったもんだから、あんまり無茶は出来なかったって感じなのかな」
 好きってバレたら捨てられちゃう、って考えて黙ってたのは大正解だね。と言いながら、伸びてきた手がワシャワシャっと髪をかき混ぜていく。
「好きになったって正直に言っちゃってたら、恋人としてのアイツに色々求めてたら、調子に乗ってどこまで許すか試されてたかもね」
「試すんですか? 振られるんじゃなくて?」
「好かれるのが重くて嫌とか、そういう感覚多分ないよね」
「えっ?」
「本気で惚れられたら飽きてポイ、の言葉の中には、君が想像してない色々があるわけだよ。好きになりましたって言われたら、即もういいやとかなるようなもんじゃないの」
 まぁなんでもさせるなって思われたらそこで終わりなのは事実だけど、そこまでアイツに惚れ込んでから捨てられたって子は多分居ない。らしい。
「え、居ないんですか?」
「アイツが好きだから、アイツが求めることはなんでもする。なんて気持ちが育つような関係、アイツに作るのは無理だよ。だって相手のこと、たいして見てないんだから」
 エッチの傾向がたまたま合致してただけとか、気持ちよければいいって割り切っちゃった子とかは居たよ。と続いた言葉が耳を通り抜けていく。
 相手のことなんてたいして見てない、という言葉が胸に響いて痛かった。そうなんだろう実感は嫌ってほどあったし、すんなり信じてしまえるのに。その事実がやっぱり悲しい。
「振られたり浮気されたりで終わった関係も多かったはずだし、君のことも、慣れたらさっさと次の人に行くだろうって思ってたみたいなとこあるね」
「出会い系やらないって言ってるのに、ですか?」
「それはね、出会える場所に連れて行く気があったっぽいよ」
「出会える場所……」
 ちょっとショックが強いかも知れない話になるけどいい、と前置いてから、さっき言ったデート場所だけどと話が続いていく。
「いわゆる発展場やらハプバーやらに連れ込まれたり、行為見せたり他人巻き込んだプレイしたりとかってのはなかったでしょ?」
「……は?」
「そういうのもありな付き合いが圧倒的に多かったんだよね。というか、いくら家族だからって、アレコレ詳しすぎると思わなかった?」
「え……?」
 まさか、と思うと同時に、旦那が健在だった時には当然俺らも一緒にしてた、という言葉が耳に届いた。
 隣に座る男の顔をマジマジと見つめてしまえば、気まずそうに苦笑を深くしながら、気持ち悪くなってないかと確かめられてしまう。
「気持ち悪く……すみません、頭、追いつかなくて」
 気持ち悪くないのかどうかもわからないくらい、呆然としていた。

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聞きたいことは色々21

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 そりゃ好きとか言われるわけ無いし好きを求められることも無いわと納得すると同時に、なんで恋人として引き止めたのかますますわからなくなったなと思う。欠片くらいは何かしら惹かれるものがあったから、今こんな関係になってるんだと思ってたのに。
 いやまぁ、カラダがって話なのかもだけど。でもカラダに執着されてる実感は全くと言っていいほどないから、多分違う気がする。
「あの人、なんで俺を恋人にしたんですかね。いやまぁ、俺が恋人でもない相手に抱かれないだろうって思ったから、とりあえず恋人ってことにして抱いた。てのはわかってるんですけど、俺はあの晩限りの恋人だって思ってたし、恋人続ける気なんか全然なかったのに」
「あーそれはねぇ」
 自覚ないと思うけどと苦笑しながら、めちゃくちゃ貴重なネコちゃんだからだよと教えてくれたけれど、さっぱり意味がわからない。
「なんすかそれ」
「自覚して抱かれたい側のゲイで誰とも未経験のままな男が、あいつの手が届く範囲でうろついたことが多分ないんだよね。タチって知ってて寄ってくるネコちゃんは大概色々経験済みで、そういう子にはあまり惹かれないみたい」
 ノンケだのタチだのに積極的に手を出すのは、男に抱かれた経験がないって部分が大事なんだと思う。と続けた相手は、つまりは処女厨なんだよアイツと言って、更に苦笑を深くした。
「処女厨……」
「人の手垢がついてない子がいいみたい。まぁ、それは君を手元に置き続けて自覚したっぽいんだけどね」
 昔は、抱く気で寄ってきた男を抱いたときの達成感がたまらない、なんてことを言ってたらしい。
「多分ずっとそういう、寄ってきた男を落として抱くゲームしかしてなかったし、好きって言ってっておねだりも、それを言わせるゲームを楽しんでただけなんだよね。そんなゲーム仕掛けられてる方はたまったもんじゃないけど」
「過去の恋人のことも、好きって言ったりはしてなかったってことですか? 言わせるだけで?」
「それは言ってたかな。だって抱くつもりで寄ってきた男に足開かせるんだよ? 甘えるのも、甘やかすのも、得意だったと思うよ」
 口説かないでって言わなかったら多分君にも当たり前に言ってたよ、と続いた言葉に、驚きで声が詰まった。
「えっっ!?」
「好きって繰り返してデロデロに甘やかしたり、好きって言ってっておねだりしたり、それって結局、相手を自分に惚れさせるための手段だからね。少なくとも、アイツにとっては」
 恋人とただイチャイチャしたくて好き好き言い合う感覚とか知らないと思うよと言ったあと、もったいないよねぇと同意を求められたから、この人は旦那だったという彼の叔父と、ちゃんとそういう好きのやり取りが出来る恋人だったんだなと思う。
 そういや、最初に抱かれる前のやりとりで、本気で口説いてもいいけど後々恨まれそうって言われたような記憶がある。抱かれずに帰るならお前を本気で落とすゲームを始めるって言われて、恋人になって寝室にって流れだった。
 好きって言い合う行為を相手を惚れさせるための手段としか認識してないから、口説かないで惚れさせないで落とすゲームを始めないでっていうこちらの主張に合わせて、そういう言葉のやり取りがないセックスをしたってことなんだろうか。
「でもデートするのは好きって言ってたし、デートするから恋人でデートしないでセックスだけするのはセフレだって言ってあちこち連れ回されて、その、ちゃんと恋人として扱われてるって感じるし、恋人とのイチャイチャがわからないって感じでもないような?」
「それそれ。アイツが卒なく恋人やってるっての、笑うよね」
 言いながら、本当にまた楽しそうに笑っている。

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聞きたいことは色々20

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「どんな、って……」
 会ったことあるんですよねと聞いてみたが、相手は困った様子で口を閉ざし考え込んでしまう。
「やっぱ俺とはカスリもしない感じなんですね」
「あー……いやぁ、確かにちょっと系統違うっていうか、珍しいタイプを恋人にしたとは思うけど」
「そ、なんですね」
「けど! あっちから別れる気とかなさそうだし、現状に満足してるとか言ってたのも多分嘘じゃないし、いい意味で代わろうとしてる可能性もあるから! 好きって言ってっておねだりが恋人たちの甘いやり取りとは限らないから! というか基本そういうのじゃないから!」
 泣きかけたりはしてないはずだが、一体どんな顔を見せてしまったのか。またしても慌てた様子でなにやら慰めの言葉をくれたけれど、後半は全然意味がわからなかった。
 好きって言ってっておねだりが、恋人との甘いやり取りじゃないってどういうこと?
「あの、エッチ中のおねだりが甘いやり取りにならない場面、まったく想像できないんですけど……」
「だーよーねぇ〜」
 感性まともすぎてなんかもう俺が申し訳なくなってくるよと嘆いたかと思うと、相手が勢いよく立ち上がるから驚く。
「え、ちょ、あの……?」
「ちょっと問い詰めてくるから。てかどこまで喋っていいのか確認してくるから!」
 連れ込んどいて一人にして悪いけどここで待っててと言い置いて、相手は部屋を出ていってしまった。
 一人取り残された寝室で、追いかけるべきかをかなり迷う。何を問い詰めに言ったのか知らないけれど、直接聞きたいって気持ちは当然ある。でも同じくらい、直接聞きたくない気持ちもあった。
 どこまで喋っていいか確認するとも言っていたし、多分きっと隠しておきたい何かしらの過去があるんだろう。隠すくらいだから、知ったら不快になる内容の可能性も高そうだ。
 お兄さんが戻ってくるのを大人しく待って、お兄さんの口から聞いたほうが、直接聞くより多少はマシかもしれない。だって恋人本人よりよっぽど優しいというか、わかりやすく好意的というか、なにやら心配されているのがわかるから。落ち込むと慰めてくれるから。もし聞き出した内容でつらくなりそうなら、なるべく傷つかないように言葉を選んでくれそうだから。
 そんな甘えた気持ちで結局大人しく戻ってくるのを待ってしまえば、やがて寝室の扉が軽くノックされた後で開かれる。
「待たせてごめんね」
 そう言って部屋に入ってきた男は困った様子の苦笑顔をしていた。
「おかえりなさい。そんなに困るようなこと、言われたんですか?」
「うんまあそれなりに。てか自分で直接話すっていうのを諦めさせるのが大変だった」
 恋人本人から聞くのは色々ショック大きすぎると思うんだよねと続いた言葉に、よほどの話をされるのだと覚悟を決める。
「あのね、恋愛対象が同性ってだけで、ごくごく普通のありふれた恋愛がしたいって思ってただろう子には、結構刺激強い話になると思うんだけど。でも俺が話さなくても、もうアイツが自分で話すと思うから、俺の話から先に聞いて欲しい」
 なるべく言葉は選ぶけど気分悪くなったら我慢しないで教えてねと念を押されるくらい、やばい話をされるっぽい。覚悟、足りるだろうか。だとしても、わかりましたと返すしかないんだけど。
「まず、アイツが過去に紹介してきた恋人たちの話ね。アイツの性癖っていうか好みっていうかなんだけど、ノンケとかバリタチとかが多くて、元から抱かれたい側の子をわざわざ恋人にして側に置くってのは多分初めてだと思う」
 初っ端からなかなかの衝撃内容だった。これってつまり、全く欠片も好みのタイプではないって意味なのでは?

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聞きたいことは色々19

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「やっぱもう終わりなんですかね」
「は? 何の話?」
「俺がもうけっこう好きになってるの、さっきのでバレたと思うんで。それに半年も付き合うのが珍しいみたいだし、本気で惚れたら満足してポイなら、もういいって言われるのかなって」
 ヤダなって思ったらやっぱり後半は涙声になってしまって、横から伸びてきた腕がまた、今度はそっと抱きしめてくれる。優しく背中を撫でてくれる。
「大丈夫。って言っていいかわからないんだけど、少なくともまだ別れる気は全然なさそうだったよ?」
「でもそれ、俺が好きなのバレてなかったからで」
「いやぁ……さすがに気づいてるでしょ。多分」
「え?」
 驚いて相手の顔をまじまじと見てしまえば、腕が解かれて間近にあった苦笑顔が離れていく。
「だって今日初めて会った俺があっさり気づくんだから、気づいてないとは思えないよ?」
「え……でも、えっ……えぇ……」
 戸惑いしか漏れなかったけれど、嘘だとも思えなかった。必要なのは付き合っているという事実で、定期的にデートしてセックス出来る関係が維持できるならこっちの好きは必要なさそうって思わされることは確かにあったから、気づいても無視していただけって言われたら納得してしまう。
 納得はするけど、でもやっぱり寂しいなと思う。せっかく恋人になったのに、求められてるのが体だけだなんて。それとも、本気で好きなのがバレてもポイされないくらい魅力的な体を持ってる、とでも思って誇ればいいんだろうか。
 カラダが良くて付き合ってる。なんてのを突きつけられるようなセックスはされてないし、そこまでスゴイカラダを持ってるなんてとても思えないんだけど。そもそも誰でも良さそうと言うか、たまたまタイミングよくフリーの時に、同じくフリーの色々未経験なちょろいネコが目の前をうろついたから、とりあえず捕まえたっぽいみたいな。
「気づかれてない想定だったか。てかアイツ、気づいてない振りしてたわけだよな? え、なんで?」
「って俺に聞かれても」
「だよねぇ」
 あとで問い詰めてやると意気込んでいるが、あとでっていうのはいつだろう。その場に自分も同席してていいのか、それとも自分が居ないところでって話だろうか。
 聞いてみたい気もするし、聞きたくないような気もする。だって余計に落ち込む可能性のが絶対高い。
「っていうか、好きとか言われるの、煩わしいからじゃないんですか?」
「どういうこと?」
「本気で惚れたら満足してポイなら、好き好き言われるのが根本的に嫌いなんじゃないかなって」
 もちろん、好きって言うのも。
「いやぁ……それはナイ、かなぁ」
「そ、ですか」
 あっさり否定されて気持ちが沈む。そうだねって肯定されたら、自分だけじゃないって諦めもついたのに。過去の恋人たちとはちゃんと好きって言いあったりしてたんだ、って考えてしまうから。
「てかエッチしてるとき、好きって言わされたりしないの? って、言わされてないっぽいよね」
「は? 言わされる? 好きって、ですか?」
「アイツ口うまいしあの顔だし、好きって言ってとかのおねだり、得意なはずなんだけど」
「ええぇ……」
 そんな経験、もちろんしたことがない。
 好きって言ってなんておねだりされたらきっと喜んで好きって言ってたけど、それで後から苦しくなったりしてそうだけど、でもそんな素振り欠片もなかった。むしろこっちからの好きなんて要らないって態度だった。
 それが気楽だって思ってたことすらあるのに。それでも恋人でいいんだって、そういう恋人もありなんだって、思ってたのに。
 でも過去の恋人相手にはそういう態度を見せてたってこと?
 家族に紹介したり、家族の前で好きって言ってと甘えて見せるような、ベタ甘の恋人が居たことがあるってこと?
 もしかして凄く特別な恋人が過去に居て、でもその人とは何かしらで上手く行かなくて、だからもう誰だっていいみたいな感じになってる?
 もう特別は作らないって思ってる?
「あの、あの人がそんなおねだりするような恋人って、どんな人でした?」
 そんなことを聞いたところで、その特別だった相手の代わりになれるわけがないんだけど。

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聞きたいことは色々18

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 部屋の中には大きなベッドが鎮座していて、寝室と言っていたのは聞き間違いじゃないらしい。物置って聞いてたのに。いやでも空きスペースに未開封のトイレットペーパーだの洗濯洗剤だの箱買いしてるらしいドリンクの箱だのが並んでいるので、物置と言えないこともないのか?
「あんにゃろ」
 それらを見て顔を顰めてるから、まだ暫くは帰ってこない想定で、どうやら勝手に部屋を侵食してたっぽい。
「大きなベッドですね」
「クイーンサイズだからね。てかこの部屋使ってたわけじゃないんだ?」
 あいつのベッドじゃ小さくない? と聞かれたけれど、こっちに大きなベッドがあるなんて知らなかったんだから、ベッドなんてそこにあるものを使うしかない。
 まぁセミダブルだし、事後にそのままそこで二人で眠っても特に問題は起きなかったし、どうしたってどこかしら触れ合ってしまう狭さを受け入れるのが恋人っぽいかな、なんてことも思ってたんだけど。
「初めて入りました。てかさすがに夫婦の寝室に入り込んでヤッたりは」
「でも俺の存在知らなかったでしょ?」
「そりゃ俺は、最初っからこの部屋通されてたら、これが彼のベッドなんだって信じてたかもですけど」
 まぁ初回にこのサイズのベッドを見せられてたら、色々余計なことを勘ぐってそうではあるけども。だって叔父夫婦の寝室なんて正解には絶対にたどり着けないから、元カレと使ってただろうことを想像したはずだ。
「俺じゃなくて」
「そんなの気にするヤツじゃないというか、あー……ホントに何も聞かされてないわけか」
 とりあえず座ってと促されて、ベッドに並んで腰掛ける。
「ねぇ、あいつが初めての恋人でセックスもアイツしか知らない、ってのは事実なんでしょう?」
「そうですね」
「身近なところで恋人が欲しくて、出会い系とか試すのは怖くて、ネコだと思って相談したのに実際は狼でその場でペロッと食べられて、そのまま捕まって逃げられなくなってる。のかと思ってたけど、本当に現状に満足してるの?」
 今日初めて存在を知らされたこっちと違って、こちらの情報はまるっと全部筒抜けらしい。
「あー……まぁ、はい」
「他を知らないから満足してる気がしてるだけじゃなくて?」
「いやでも実際、特に文句出るような部分てないですよ?」
 ものすごく卒なく恋人してくれてると思いますって言ったら、「卒なく恋人」って言い回しが可笑しかったらしく、けっこう派手に笑われてしまった。
「でも満たされてないでしょ?」
 恋人と一緒にいるって状態なのにちっとも幸せそうな顔してなかったと指摘されてしまうと、反論はしにくい。
「恋人だしやることやってるけど、恋愛してるわけじゃないから。ですかね」
「それ! 口説かれたくないって言ったって? 恋人になるのはOKで、なのに好きにさせないでってのはどうしてなの?」
「そういうゲームをしたいって言われたから、ですね」
「は?」
 恋人になるのを拒否するなら口説き落とすゲームを始めるって言われた話をしたら、相手は大きなため息を吐き出して頭を抱えてしまう。
「しかもその結果俺が本気で惚れたら満足してポイする可能性が高いみたいだったんで、そんな目に合うくらいなら恋人になった方がマシに思えて」
「あー、それで恋人になったのね。でも恋人としてデートしてセックスまでしてたら、好きになってくものじゃない? てかもうけっこう好きになっちゃってない?」
 片思いしてる本命が別にいるとかではないんだよねと確認されて苦笑するしかない。さっき別れてって言われたら別れるって言いながら泣いてしまったので、多分もうバレバレなんだろう。

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聞きたいことは色々17

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「俺だって現状に満足してる」
 少なくとも俺の方は、なんて言ったからか、隣から聞こえてきたのは少し不機嫌そうな声だった。
「強引に口説いたとは思ってないし、別に脅したつもりもなかった。俺と付き合うのはきっと都合がいいだろうと提案しただけだし、事実だったからこうして関係が続いてるんじゃないのか」
「いやだからそれ、そんなのに納得して良好な関係が続いてるとかちょっと信じられないじゃん?」
 どう考えたってけっこう難アリ物件のお前相手に、という言葉に内心首を傾げる。けっこうな問題のある恋人、だなんて感じたことがないからだ。
 でもまだ知らないってだけなんだろう。そう思ってしまうくらいには、出会ったばかりのこの男の言葉を信じられてしまう。
 過去の恋人の話なんてわざわざ聞かないけど、結構な人数と付き合ったり別れたりを繰り返してきたんだろう気はしている。つまりそれは、恋人関係を長く続けられないとも言える。
 そう思うと、そんな男相手にこのままダラダラと恋人を続けていられると考えていたこと自体が、間違っていたのかも知れない。
 相手を落とすゲームだの言ってたのを覚えているから、中には落とすまでを楽しんで付き合ったあとはあっさり熱が冷めた恋人とかも居たんだろうとは思うけど。でも自分含めて、そうじゃない恋人だって居たはずだ。
 自分としては、まだたった半年って思うんだけど。でも半年っていうのは、血縁関係はなくても一緒に暮らしていたことがある家族同然の男に、「良好な関係が続いてるのが信じられない」と言われるほどの長さらしい。
 そんな事実、知りたくなかった。いったいどんな理由で別れを切り出されるんだろう。
「実際、現状に満足してるらしいぞ」
「らしいね。まぁなんの不満もなく付き合ってるって感じでもなさそうだけど」
 突然知らない男が家に上がり込んでて随分不安そうだよと言う指摘に、彼は嫌そうな声で、誰のせいだと思ってると返している。それはそう。でもこの不安の一番の原因は、突然知らない男がリビングに居たことじゃない。
 このあと突然突きつけられるかも知れない別れに、すっかり怯えてしまっている。
「俺の存在隠してるとか思わないじゃん」
「居ないのにわざわざ説明する必要もないだろ。こんなあっさり戻って来るとか思わなかったし」
「嘘ばっか。こんな子恋人にしたら、俺が戻るのわかってたでしょ」
「え?」
「君、俺をここに引っ張り戻すために利用されたかもよ? って言ったら、こいつ見限って別れちゃう?」
「別れてって、言われたら」
 それが事実で、もうお前は必要ないからとか言われて別れを切り出されるなら、多分きっと受け入れるだろう。だって別れたくないと縋る理由がない。
 不安になって怯えるのは、別れてって言われたら終わるのが確定しているせいで、でも別れたいなんてちっとも思ってなくて、続けられるなら続けていたいと思っているらしい。
 しんどいって思うことがなかったからあまり実感してなかっただけで、結局、自分ばかりが好きな片想いは始まっていたってことなんだろう。気づかないままでいたかったけど。こんな場面で気づきたくなかったけど。
「ちょっ、ごめん。うそうそ。利用なんかしてないし別れてとか言わないから」
 眼の前に座っていた男がガバっと立ち上がったかと思うと、小走りで机を回り込んできて、いきなりぎゅっと抱きしめられてしまった。
 さっきからずっと堪えていた涙がとうとう溢れてしまって、どうやら相当慌てさせてしまったらしい。なんで慌てて慰めてくれるのがこの人の方なんだと思うと少し笑ってしまう。
 まぁ彼は隣りに座っているから、こちらの涙に気づかなかっただけなんだろうけれど。ってことにしておこう。でも気づいたからって、こんなふうに慌てて慰めに来てはくれないだろうなとも思うけど。
「ねぇ、寝室って」
「たまに掃除はしてる」
「じゃあちょっとこの子借りてくね」
 ちょっと二人だけで話をしようと言われて連れて行かれたのは、開けたことのないドアの先だった。

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