そっくりさん探し7

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 自身が抱かれる側になる想定で、事前の準備を一人で出来ると言った相手は、当然というかやはりというか、アナルの自己拡張にも踏み込んでいた。むしろその拡張がある程度のレベルに達していたから、ラブホという提案にも頷いたらしい。
 ただまぁこちらとしては、突っ込んで気持ちよくなって終わり、なんてセックスは全く考えていなかったし、そもそも繋がるような行為までは要求しない予定でラブホに連れ込んでいる。
 一番の目的は服の下に隠された場所に直接触れることで、その結果として、相手が気持ちよく果てることが出来れば尚いい。くらいの話で、それは相手にも伝え済みだったはずだ。無理をする気はないし、気持ちよくなって欲しいし、だから安心して任せてくれとも言ったはずだ。
 抱かれたい気持ちがあることも、そのために準備をしてくれたことも、本当に嬉しい。でもまずはゆっくりじっくりその体に触れさせて欲しい、というのが正直な気持ちだった。
 なのに。
「も、やだぁ、ぁ、あっ、はや、く、はやく、してっ」
 大丈夫だから入れてと懇願しながらも、潤んだ瞳が非難するように見つめてくるから心が痛い。
 抱かれる覚悟は決めていても、押し倒されてその体を撫でられ性感帯を探られ、他者の手で快感を引きずり出される、という事へ覚悟はなかったらしい。覚悟以前に、抱かれる側として突っ込まれる以外のことを、あまり想像出来ていなかった可能性も高そうだった。
 準備なんて単語が出て飛びついてしまったけれど、最初は手を握っただけであんなに体をビクつかせていたような相手に、やはり急ぎすぎたのかもしれない。
 簡単に反応する自身の体に戸惑う様子を見せていた相手は、優しい愛撫にすらあっさりいっぱいいっぱいになって、早く突っ込んで欲しいと口に出すまでがかなり早かった。
 それを宥めすかして、まずは相手にちゃんと気持ちよくなって欲しいこちらの気持ちを、惜しむことなく言葉に変えながら触れ続けている。
 あまりに急かすから早々にアナルにも触れてはいるが、そちらに触れたからこそわかってしまったこともあった。
 慣らして広げる真似は確かにしたんだろう。けれどそこで感じられるわけではなさそうだし、嫌悪感なのか不快感なのか恐怖なのかは定かでないが、否定的な感情を間違いなく持っている。
「もうちょっと。ね、やっぱおちんちんも一緒に触らせてよ」
「やっ、です。ぜったい、だめ」
 やっぱり潤んだ目が、何度もダメだと言ってると言いたげに、睨みつけてくる。
 なぜかずっと、ペニスを直接触って一番わかりやすい快楽を引き出すことを、拒まれていた。
 形を変えたそれを握って数度扱いたところで派手に拒まれ、手を離したらその後は隠すみたいにずっと相手の両手がそこを覆っている。覆っていると言うよりも、感じるのを拒むみたいに、押さえつけているようでさえある。
 正直意味がわからない。意味がわからないものの、譲る気がない強い意志が見えてしまって、無理やり触れることはもちろん、強引に理由を問うこともしていなかった。
 仕方がないと小さく息を吐いて顔を寄せる。キスは拒まれていないからだ。
 深いキスは今日が初めてだったのに、何度も繰り返したおかげで、口の中の弱い場所は把握出来ている。少しでもその快感をアナルの快感に繋げようと、同時にゆるゆると尻の中の指を動かした。
「んんんっっ」
 ビクッと大きく体を跳ねて藻掻かれて、咄嗟に肩を押さえてしまえば、強く胸を押されて顔を離す。
「ここが、キモチイイ?」
 盛大に反応した、前立腺と思われる場所を狙って指先で押し込んでやれば、やはりピクリと体を振るわせ、ぶわりとその目に涙を溜めた。
「やぁっ」
「でも気持ち良さそうだよ?」
 チラリと視線を移動させた先は、こちらの胸を押すために手が外された相手の股間だ。胸に触れた手が濡れているのは感じていたが、大量の先走りに濡れ光るペニスは大きく膨らみ、中を弄る指先に合わせてピクピクと震えて、今にも射精しそうだった。
「おちんちん弾けそう。ねぇ」
「ゃぁぁぁあっっ」
 触っていいよね。と続けるはずだった言葉は、控えめな悲鳴とともににおとがいを跳ね上げ背を反らし、括約筋をギュウギュウに締め付けながらペニスの先端から白濁をボタボタと垂れ流した相手によって、音になって溢れることはなかった。
 驚きに目を見張りながら、ついつい相手の股間を凝視してしまう。ついさっきまでは中で感じている様子なんてなかったのに、いくら前立腺への刺激で反応があったからといって、まさか触れずに吐精するとは思っていなかった。
「や、やだって、言った」
「えっ」
 明らかな泣き声に慌てて視線を相手の顔へと戻せば、目元を片腕で隠した相手が震える唇を噛み締めている。多分間違いなく、その腕の下で涙を流しているんだろう。
「ご、ごめん。ほんと、ごめん」
 慌てて謝罪を繰り返しながら、埋めていた指をゆっくりと引き抜いていく。さすがにこの状態で続けられるわけがないからだ。なのに。
「や、やっと?」
 腕を外した相手が、ぐしょぐしょに濡れた赤い目で見つめてくるから、意味がわからないのに胸だけがやたら苦しい。
 意味がわからないのに、どういう意味か聞くのすら躊躇われてただただ見つめてしまえば、またその目にぶわっと涙が溜まって流れ落ちていく。
「ど、して」
 引きつるみたいな苦しげな声と、ぎゅっと瞑ってしまった目蓋の隙間から、次々と零れ落ちてくる涙と。それを隠すみたいにまた腕が上がっていくのを思わず掴んで止めてから、目元に向かって唇を落とす。
 なぜ泣かせてしまったのかすらわからないが、それを聞ける状況じゃないのも明白だ。だからごめんごめんと短い謝罪を繰り返しながら、何度も濡れた目元や頬に触れるだけのキスを落として、相手が落ち着くのをひたすら待った。

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そっくりさん探し6

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 目に入った最初のラブホにそのまま進んで、完全に二人だけの空間をあっさり入手する。
 もし緊張しきっていたら、シャワーは飛ばしてベッドに押し倒しちゃってもいいかなと思っていたのだけれど。それなりに緊張はしているものの、キョロキョロと部屋の中を見回すくらいには余裕があるようなので、先にシャワーを使うかどうかを問いかける。
「使います」
「ん、じゃあ行こうか」
「えっ?」
「そこ驚くようなこと?」
 いきなり風呂場エッチとかは考えてないから一緒に行こうよと誘えば、相手は慌てた様子で首を何度も横に振って嫌がった。
「既に一緒に温泉入った仲だよ?」
 まぁそれは恋人になる前の話だけど。
「俺に裸見られるの、恥ずかしい?」
 一緒にシャワーを避けたところで、どのみち見るんだけど。
「ち、ちがっ、そのっ」
 一向に落ち着く気配がない相手が、あわあわと言葉を探している。
「うん。ちゃんと聞くからまずは落ち着こうか」
 深呼吸する? と促してみたら素直に深い呼吸を繰り返すので、やっぱりこのままベッドに押し倒してしまおうか、なんて気持ちがウズウズと湧いてしまう。早く触れたい。
「あ、あのっ」
「うん」
「じゅ、準備は一人で、できる、ので」
「ん?」
「だからその、一人で、させて欲しいっていうか」
「待って待って待って。準備?」
「だ、だって必要、ですよね?」
「それは俺に抱かれるための、体の準備?」
「そ、です」
「調べた?」
「そりゃあ……」
「調べて、自分一人で出来るように、練習した?」
 どんどん顔を赤らめていた相手が、ちょっと怒ったみたいに睨みつけてくる。デリカシーがないのは認める。でもやっぱり直接聞きたいなと思ってしまう。
「したんだ?」
「しました。だからっ」
「凄い。嬉しい」
 衝動に任せて眼の前の体を引き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。
「もうそこまで考えてくれてるとは思ってなかった」
「え?」
「キスだけじゃ足りなくてこんなとこ連れ込んだけど、君を抱く気はなかったんだよね」
「えっ?」
「だって男同士だよ? どっちが抱く側やったっていいんだよ?」
「あ……って、まさか俺が抱く側、でした?」
「違う違う。そういう話し合いを何もしてないのに、俺の一存で突っ込むわけ無いだろ、って話」
「じゃあ、こんなとこきて、一体何するつもりだったんですか?」
「何って、突っ込んだり突っ込まれたりしなくても、一緒に気持ちよくなれるよね? むしろ突っ込んだり突っ込まれたりしない方が、純粋にキモチイイだけで終われるはずっていうか」
 体撫で回して気持ちぃって喘がせてイク時の顔とか見れたら最高って思ってたし、触って貰えたらどんなに拙くても絶対楽しいし嬉しいだろうって思ってた。
 という正直な気持ちを伝えれば、相手は身体を捩って腕の中から抜け出すと、赤くなった顔を片手で隠すみたいに覆ってしまう。
「早とちり、すみません。ってか、ほんと、恥ずかしい……」
「なんでそこで謝るのかな。凄く嬉しい、って言ったのに」
 俺が抱く側でいいの? と聞けば、逆になんで抱かれる側になる可能性なんか思いつくんですかと聞かれてしまった。いやだってそんなの。
「いきなり処女奪われるより、やっぱ童貞捨てたいかなって。あとはまぁ、いつも通りの好奇心? 真剣に抱きたいって言われたら、童貞捨てさせてって頼まれたら、試してみてもいいかな、くらいの気持ちだけどね」
「言わないです。てか俺が抱かれる側やったほうが、絶対マシだと思うんで」
「マシって」
 凄い言い様だなと笑ってしまう。
「まぁ確かに。そう酷いことにはならないだろう自信はあるけどね」
 ちゃんと調べたし、無理する気ないし、気持ちよくなって欲しいって思ってるし。だから安心して任せてくれていいよと言えば、顔を覆っていた手を外した相手が、チラリと視線を寄越した後で頷いて見せる。未だ羞恥が引かないらしく、横を向くと耳まで赤くなっているのがわかって、それはそれでなんだか可愛い。
 再度引き寄せて、パクっとその熱そうな耳朶を食んでしまいたい衝動を、焦る必要はないんだからと押さえつける。
「じゃあ、先にシャワー浴びてくるから。そっちも準備、始めてくれる?」
 やはりコクンと頷く相手に、ゆっくりで大丈夫だからと告げてから、一人バスルームへ向かった。

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そっくりさん探し5

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 お付き合いを始めたからと言って連絡頻度が上がるだとか、やりとりするメッセージに愛の言葉が混ざるだとかの変化は起こらなかったが、出かける先は大きく変わった。
 今までは定番人気観光スポットがメインだったけれど、穴場と呼ばれるような自然あふれる静かな場所がメインになったわけだが、理由はもちろん、人目を気にせずいちゃつきたいからだ。
 旅の恥はかき捨てとも言うし、人気観光スポットだろうが男同士手を繋いで歩くくらいはどうってことないんだけど、それは自分の基準であって相手が同じとは限らない。
 ちょっと手を繋いだだけでも大きな反応が返ってきたから、それで人目を引いてしまう可能性もあるし、男同士でという部分に引っかかっていた彼に、周りからの好奇の視線が向くのはなるべく避けたい。
 とまぁ最初は恋愛初心者な相手への気遣いによる変更だったわけだけれど、高頻度で人目が全くないという状況が訪れるため、どんどん大胆になっている自覚はあった。
 交際申し込みをした最初に、隣に意識してくれる子が居たら手を出したくなる、という話をしていたせいか、相手に手を出される覚悟っぽいものがあるのもいけない。観光先の変更理由も、もしかしたら人気のない場所で気軽に手を出したいからと誤解されている可能性すらある。
 いやまぁそれは今となっては誤解とも言い切れない気がするけれど。人目がない場所へない場所へと誘導している自覚も有るし、そうして得たチャンスは逃すことなく、恋人的な接触をあれこれと試みてもいる。
 手を繋いで歩くのも、ふと視線が絡んだ後に軽く唇を触れ合わすのも。頻繁に繰り返したおかげで、どうやらすっかり慣れたらしい。
 手を握るたび、握った最初に伝わってきていた緊張が無くなって、唇を離したあとに見せる顔からこわばりが消えて、どこかうっとりとしてさえ見える。そんな顔をされたら更に一歩踏み込んでみたくなるのは当然で、再度顔を寄せて与えたキスはすぐに離れてしまう軽いものではなかった。
 といってもそこまで深いものでもなかったし、長々貪ったわけでもないのだけれど。それでもそれは結局のところ自分基準でしか無くて、どうやら相当相手の性感を煽ったらしい。
「おっとぉ」
「す、すみません」
 崩れそうになる体を慌てて支えてやれば、か細い声が謝罪を告げる。戸惑いと羞恥は滲んでいるが、それだけだ。
「謝らないでよ。俺は嬉しいばっかりなんだから」
 嫌じゃなかったならまたしてもいい? と聞いたら、少し待たされた後で、嫌じゃないけど歩けなくなりそうで困る、なんて、本気で困った様子で返ってきたから、愛しさが込み上げて笑ってしまう。
「じゃあ歩きながらするのは止めておくよ」
 車に戻ったらもっかいしようねと宣言したせいで、その後それを思い出してか、度々ぎこちなくなる相手をこっそりと堪能しながらゆっくり景色を楽しんで、それからようやく駐車場へと戻って来る。ちらほらと車が停まっているものの、やはり人の気配は皆無だった。
 穴場スポット巡りになってからは、車を出す頻度も上がっている。
 相手は免許を所持してないため、運転がこちらだけに偏ってしまうのを気にされて、なるべく公共交通機関を使ってたんだけど。穴場スポットとなるとやはり車があったほうが便利で、そういう観光地に行きたいのはこちらなのだからと押し切っていた。
 うん、まぁ、そういうところでも下心が丸出しなのは認める。
「さっき言ったこと、していい?」
 助手席に座った相手に向かってそう問いながら、既に体ごと相手へ向かって寄せている。
「ど、どうぞ」
 言ってキュッと目を閉ざしてしまうのがまたなんとも可愛くて、やっぱり愛しさが込み上げてくる。クフフと小さな笑いが相手の唇をかすめたせいで、その唇が震える様まで愛おしい。
 嫌じゃなかったと言質を取ったことと、ここなら腰が抜けたところで問題ないという気持ちから、先程より深く長く触れてしまったけれど、もちろん、嫌がる素振りは皆無だった。
「っ……はぁ……」
 顔を離せば蕩けるみたいな吐息がその口から漏れてくる。目蓋はまだ落ちたままで、赤くなった目元の上でまつ毛が微かに震えていた。
 可愛い、と素直な感想を口から零しながら、再度唇を塞ぐ。といっても今度は深くはせずに、チュッチュと軽く何度も啄んだ。
 そうしながら、確かめるように下肢に手を伸ばす。
「あっっ」
 その膨らみに触れた途端、慌てた様子で肩を強く押されてしまったので、諦めて顔も手も相手から離した。
「嫌?」
「いや、っていうか」
 こんなところで? という戸惑いの声に、誰も居ないけどと思いながらも、ここじゃなければいいの? と問い返す。
「そ、れは……えと、……」
 相手が答えを出すのを黙って待てば、やがて覚悟が決まったらしい。
「ちゃんと二人きりに、なれるところなら」
「ラブホとか連れ込んでもいいよって意味に取るけど、いい?」
 いいです、の言葉を貰ったあとは、上機嫌で車のエンジンを掛けた。

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そっくりさん探し4

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 メインの通りを避けて人が少ない方へ少ない方へと歩いていけば、やがて閑散としてきたので、もう歩きながらでいいかと思う。
「人居なくなったし、さっきの話の続き、してもいい?」
「あ、はい」
 他愛ない話をしていたところからいきなりの蒸し返しだったせいか、相手の声に緊張が走る。
「そんな緊張……いやまぁ仕方ないか。で、俺が君の気持ちを知って、何を悩んだかなんだけど、君との交際が有りか無しかで言ったら俺の中では有りなんだよね」
「えっ???」
 驚くだろうとは思ったけど想像以上に驚かれてしまったので、一旦足を止めて相手の顔を覗き見る。こちらの視線に気づいて、すぐに逃げるように顔を反対側に逸らされてしまったけれど。
「ただ、君のことを恋愛的に好きかって言われるとそこはあまり自信がないと言うか、正直好奇心、という自覚がしっかりある」
「あ、あー……なるほど」
 とりあえず先をと思って告げてみたら、顔は背けたまま、あっさり納得されてしまった。
「君の方は? 恋愛って意味で意識されてると思ってるけど、なんで俺を好きって思ったのか、理由とかきっかけとかってあるの?」
「きっかけ……は、妹の旦那、というか、その、甥っ子に会いに行った時の妹夫婦見てたら……」
 しばらく待ってみたが続きがない。
 妹の旦那というのは例のそっくりさんなわけで、そんなところで言葉を止められてしまうと、色んな可能性が見えてしまって困る。
「えと、続きを聞いても?」
 余計なことをあれこれ考えてしまう前に、ちゃんと相手の答えを聞こう。そう思って話の先を促せば、めちゃくちゃ言いにくそうに、兄妹で好みが似てる可能性に気づいてしまって、と返ってきて一瞬頭の中が混乱した。というよりは、ちらっと頭を過ったアレコレの可能性の中に、それはなかった。
「あの、彼らにはあなたとの出会いとか、今も結構な頻度で遊んでる話とか、したんですけど。いい人と出会ったんだねって言われて、普通に嬉しかったんですけど。その、妹に、兄妹だから男の好みも似るのかなって言われて、最初意味がわからなかったんですけど、後から気づいて、そうかもって思っちゃったと言うか。それでちょっと意識し始めたら、止まらなくなっちゃって。正直これが本当に恋愛感情なのか、俺にはわからないんですけど。でも意識する前に戻れないっていうか、戻り方がわからないっていうか、その、すみません……」
 こちらが混乱して黙ってしまったせいで、慌てて色々教えてくれたのだろうことはわかる。ただ、最後の方はかなり情けない声になっていて、なんだか泣きそうだ。それに気づいて、途端に罪悪感が膨らんだ。
「いや謝らないでよ。ずっと恋愛とは無縁な生活してた話は聞いてたし、納得はした」
 教えてくれてありがとうと言えば、相手があからさまに体の緊張を解くのがわかってしまった。それを見て、想像以上に緊張させていたことに今更気づく。
「で、話を聞いて、俺としては君と付き合ってみたいなって思ったんだけど、俺とお付き合い、する?」
「え゛っっ!!??」
 相当びっくりしたようで、逸らしていた顔がやっとこちらを向いた。大きく目を見開いて、本気か冗談かを確かめるみたいにこちらを凝視してくる。
「そんな驚かなくても。さっき俺の方は好奇心の自覚があるって言っただろ。ものすごく真剣に俺に恋してくれてるなら、そんな気持ちで応じるのはどうなんだって思ってただけで、君自身が恋かどうかもわからない状態なら、お互い試してみてもいいんじゃないかって思ったんだけど」
「その、男同士、ですけど」
「いまどきそこあんまり気にしなくても良くない? 少なくとも俺の方は問題ない。そっちだって、妹さんの発言からして妹さんは大丈夫そうだし、職場関係に男と交際はじめましたなんてバカ正直に言う必要だってないだろ?」
 別に今すぐ返事くれなくてもいいから考えてみてと告げてから、行こうかと促し歩き出す。
 結局自分の方から交際申し込みをしてしまったと思ったらなんだか笑えてきて、その気持はそのまま笑いとなって零れ落ちる。
「楽しそうですね」
「そうだね」
 誰かに付き合ってくださいなんて言うの超久々だったと言いながら、溢れてくる楽しさを笑いにしてさらに零した。
「今までの恋人に男性、居ました?」
「いやいない。だから余計に興味がある、という自覚もあるよ」
「元カノさんたちとは今はもう全然関わりないんですか?」
「全く無いわけじゃない子もいるけど、疎遠になった子もいるね。俺の元カノ、気になっちゃう?」
「いえ。付き合ってみて、別れた後、どうなるのかなって思って」
「あー、そういう……」
 友人が恋人を兼ねたら一石二鳥ってよりは、友人を恋人にしたら別れた後で友人まで失う可能性がある、って考えるタイプらしい。まぁ現状、彼にとっては自分が唯一の友人、という可能性を考えると、それはかなり重大な問題なのかも知れない。
「別に無理してお付き合いする必要はないし、今のままでも構わないって思ってるよ」
「あなたを意識しちゃうのに?」
「まぁ、そこは俺が我慢すればいいだけの話だから」
「え、我慢? 何を?」
「何をって、手ぇ出すのを?」
「え? は? えっ?」
「いやほら、すぐ傍に俺を意識してくれてる子が居たら、こう、ちょっとちょっかい出したくなる的な」
 言いながら相手の手を握って、反応を確かめるようにその顔を覗き込んでみる。
「ひえっ」
 慌てて顔を逸らす相手に苦笑を零しながら、握った手もすぐに離してやった。
「困らせるつもりはないし、友達でって言われたらちゃんと友達の距離で付き合うから大丈夫。意識されてるのわかっても、気づかないふりしてあげるよ」
「そういう事言うから、好きって思っちゃうの止められないんですけど。付き合ってみたいかもって、思っちゃうんですけど!?」
 くるっと振り向いてギャンっと吠えてくるその顔は結構赤くて、なんだか可愛い。可愛いなと思ってしまったことに、また少し笑いが溢れてしまう。楽しい。
「もぉ〜、また笑うしっ」
「いやだって可愛いなって思って」
「ちょっ!?」
「ねぇ、そう思うなら、やっぱ俺達付き合おうよ」
 甘く響くようにと思いながら、君と付き合いたいよ、と真っ直ぐ見つめて真剣に告げれば、相手は顔を赤くしたまま観念したように頷いてみせた。

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そっくりさん探し3

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 友人となった彼とはその後、たまにこちらの友人も交えたりしつつ、積極的に遊び歩いていた。人数は居たほうが何かと楽しいが、でも家庭持ちやら趣味持ちやら忙しそうにしている友人が多いのでそう頻繁に付き合わせるわけにもいかず、結局二人で遊んでいる方が圧倒的に多かった。
 元々、一人でふらっと観光地なりに出向いてそこの特産品やら名産品やらを味わうのが趣味、みたいな生活をしていたせいで、その趣味に相手を付き合わせてるともいう。
 温泉地へ行けば日帰り温泉を利用したりもするし、公共交通機関を利用するときは昼からお酒を飲むことも有るが、今のところ特に不満はなさそうだし、結構楽しんでくれているとも思う。
 こちらとしても、一緒に楽しんでくれる相棒が出来たのは有り難かった。
 一人でも楽しめるけど、美味しいものや綺麗な景色を共有できる相手がいる、という喜びはやはり大きい。
 ただ二人きりで観光地へ出かけるそれが、デートと言えないこともない、ということに気づいたのは最近で、なんでそんな思考になったかと言えば、相手の態度が何やら怪しくなってきたせいだ。
 最初の頃は何もかもが新鮮だという感じで、彼の意識は訪れた観光地の方へ向いていたのだけど、出歩くことに慣れたからか彼の興味がこちらへも向いてきた気がする。と思ったのが既に数ヶ月前のことで、最近は、なんだか意識されてる? みたいな気配を感じることが増えた。
 気の所為、ではないと思う。しかしきっかけは思い当たらないし、いつからという明確な時期もわからない。
 恋愛経験もあまりなさそうというか、それどころじゃなかったっぽい話を聞いたことが有るし、男が恋愛対象とか以前に、相手に関心を持って一緒に過ごしてくれる相手が今まで居なかったせいで勘違いをしている可能性が高そうな気はする。
 友人が恋人を兼ねたら一石二鳥、とまで思ってるかはわからないが、恋愛に興味が湧いたなら女の子紹介する? とか言ってみた方がいいのかどうかも少し迷う。
 ついでに、もしいつか告白されてしまったらどうするかも考えた。
 有りか無しかで言ったら有りなんだけど、残念ながら、相手に対してこちらも恋愛感情があるからではなく、無理と思わなかったから試してみてもいい、くらいの感覚なので、それを正直に伝えて相手がそれでいいならって感じになるだろうか。
 男と付き合ったことはないからそれはそれで面白そう、みたいな気持ちも若干あって、むしろ告白してくれないかなという期待も実はある。が、どう考えても真剣な想いに対する態度ではない自覚も有るので、もし真剣な告白を受けてしまったらいっそ丁寧にお断りするのが優しさかも知れない。いやでも好奇心が勝ちそう。
 などとあれこれ悩んでいたら、さすがに相手にも気づかれたらしい。
 混んでいたせいで少し遅くなった昼食を食べ終えたところで、相手が少し困った様子で苦笑する。
「もしかして、俺が悩ませてます?」
「えっ?」
 今日はかなり口数が少ないのでと指摘されてしまった。確かにそうだったかも知れない。
「ごめん。確かに君のことであれこれ考えちゃってた」
「ですよね。その、さすがに気づかれてるかなとは、思ってたんですけど」
「あー……俺のこと、好きになっちゃった? みたいな?」
「やっぱりわかりますよね」
 否定はされなかったが、ついでのように溜息が漏れていたから、相手もどうやらその想いを持て余しているようだ。
「ちなみに俺とどうなりたいとかどうしたいとかの希望は? ある?」
「特にはないです」
「ないんだ」
「というか何を望んでいいのかもわからないって言うか、そもそも俺に選択権ないですよね?」
「え、なんで?」
「なんで、って、俺が勝手に好きになっちゃって困らせてるんだから、その俺をどうするかはあなたが決めるんじゃ?」
「いやそんな一方的に委ねられても。てかまず俺が何を悩んでるかを確かめようよ」
「えっ?」
「でも取りあえずは場所移動しようか」
 人気店らしく未だに席が空くのを待っている客が途切れないので、早めに退席したほうがいいだろう。それに話の内容的にも、もう少し人目を気にしたい。
 といっても、観光地なのでどこもかしこもそこそこ人がいて、ゆっくり落ち着いて話せる場所なんて急に思いつかなかった。
 

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そっくりさん探し2

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 奢りますという連絡が来て向かった先では、随分と顔つきの変わった男が待っていた。晴れ晴れとして、といえるほどの陽気さはないが、それでも大分穏やかな顔つきになっている。
 初めて会ったときは思い詰めてると思ったし、一年ぶりに会ったあの日は、初めて会ったときよりかなりやつれてるなと思っていた。なので、他人事だけどなんだか安心してしまう。
 ゆっくり話せるようにと半個室の居酒屋を予約してくれていたので、そこへ移動したあとは、酒を交えながらようやく相手の事情を聞いた。
 早くに両親を亡くしたこと。実質妹を育てていたのは彼なこと。自身が学歴で苦労した分、妹の大学進学に反対はしなかったこと。なのに進学後は勉学よりも遊びに夢中で無断外泊も増え、交友関係や男との交際にかなり口を出しまくってしまったこと。いつの間にか帰ってこなくなったこと。慌てて探したが住民票なども移されていた上に閲覧制限が掛けられていて、自力では探せなかったこと。有り金はたいて頼んだ興信所がイマイチ頼りにならなかったこと。そもそも妹の交友関係を全く把握できていなかったこと。それでも諦めきれずに金が溜まったらもう一度調査を依頼しようと思っていたこと。などだ。
 なかなか苦労の多い人生だったようで大変面白く聞かせてもらったが、一通り話し終えたあとで一息ついた相手は、ようやく長々と語りすぎたことを自覚したらしい。
「す、すみません。ずっと相槌打ちつつ話聞いてくれてたから、俺ばっかりこんなに話しちゃって」
 こんな苦労話聞かされても困りますよねと肩を落としてしまうから、いや全然、と否定を返しておく。
「普通に楽しく聞いてた。苦労はしたんだろうけど、今日は穏やかな顔してるせいかな。苦労話が深刻なほど、妹さん見つけられてホントよかったって思うし、それ手伝えた俺凄い! みたいな気持ちにだってなるだろ?」
 知り合いにそっくりさん知らない? って聞いて回っただけで、そう大したことはしてないのだけれど。まぁ、たまたま顔が似てたってだけだけど、それでも自分の手柄には違いないので。
「というか前提はわかったけど、妹さんとは和解できたと思っていいんだよな?」
「あ、はい。一応は」
 いきなり消えたから凄く心配したってことは理解してもらえて、ちゃんと謝っても貰えたらしい。
「赤ん坊抱いてたけど、相手の男とはちゃんと結婚してんだよな? そっちも大丈夫そうだった?」
 聞いてないはずはないと思って話を振れば、思ったよりもまともそうな相手でした、と苦笑とともに返ってきた。
「大学生に手ぇ出して妊娠させて大学辞めさせた男、って思うとやっぱり許せない気持ちはあるんですけど。ただあの頃妊娠したなんて聞いたら、絶対堕ろせって言ってたと思うし、相手の男刺しに行くくらいしてたかもだし、そう言われて否定しきれなかった俺より、俺から逃がす手伝いしてしっかり結婚してお腹の子を妹ごと守った男の方を選んだだけって言われると、俺が言えることなんてないっていうか」
 その時の会話を思い出しているのか、ははっと乾いた笑いをこぼす相手は悲哀に満ちている。
「ちゃんと幸せだって言ってましたし、相手の両親が良くしてくれるとも言ってたんで、あいつのことはもう、大丈夫、です」
 新しい連絡先は聞いたけれどこんな自分じゃ困ったら頼れとも言いづらくて、今後は甥っ子のお祝いごとに贈り物をする程度の付き合いができればいい、らしい。多分それくらいはさせてくれると思う、と続いた声はどこか頼りない。
「寂しい?」
「え?」
「妹さん見つかって幸せそうで安心はしたけど、完全に自分からは手が離れちゃって寂しいのかな、と」
 実質君が育てたようなものなんでしょと言って、娘を結婚に出す男親の気持ちじゃないのと指摘してみる。
「ああ……そっか、そうなのかも」
「あ、自覚はなかった?」
「です、ね。なんか気が抜けたっていうか、今後どうしようっていう漠然とした不安? みたいな方が印象が強くて。そっか、これ、寂しいのか」
 妹さんを探すという目的がなくなって、次の目標とかがない状態か。
「寂しいなら俺と遊ぶ?」
「え?」
「いやまぁ俺じゃなくてもいんだけど。ずっと妹さんのために仕事優先して頑張ってきたんだろ? だったらこれからは自分のために時間使えばいいし、手っ取り早く、友達と遊びに行くのはって思っただけ」
 趣味を見つけるのでも彼女作るのでもいいと思うよと言ってから、勝手に判断は良くないなと思って、なにか趣味有る? 恋人いる? と聞いてみる。
 相手はやっと少しおかしそうに笑った。
「無趣味だし恋人もいないです。ついでに言うと友達もいないんですけど、あなたは俺を友達って思ってるんですか?」
「今日で終わりにならなくて、また飲みに行ったりどっか出かけたりする機会があるなら、友達ってことでいいんじゃない? って思ってるけど」
「じゃあ俺と、友だちになってください」
 いいよと即答したら、相手はやっぱりおかしそうに笑う。
「こんな風に友達できるとか、考えたことなかった、です。てか友人づきあいもかなり疎かにしてきてて、友達と何するかとかも正直あんまりわからないとこあるんで、かなり頼り切りになる予感がするんですけど」
 大丈夫ですか? 今ならまだ撤回してもいいですよ、と続く声がからかい混じりで、でも不安に揺れているようにも感じたので、問題ないよと返す声が柔らかに響けばいいと思った。

続きました→

 
 
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