聞きたいことは色々54

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 相手が不機嫌だって、車が動き出して早々に深いキスを仕掛けられたら、慣れた体はやっぱりあっさり反応してしまう。不機嫌でも手つきはそれなりに優しかった、というのもある。
 体の力を抜いて甘えるように身を預ければ、さらに手つきが優しくなるから、多少は機嫌が上向いたのかも知れない。なんて、内心ちょっと安堵したんだけど。
「あの、」
「腰上げて」
「なんで?」
 脱がすから、と続いた言葉に被せるように疑問が口からこぼれ落ちる。
「邪魔だから」
「なんで?」
 そんな答えじゃ当然納得できるわけがなく、結局同じ言葉を繰り返す。
 というか何をする気だ。という疑問は、返る答えを聞きたくなくて口にできなかった。
「気になるなら腰にバスタオル広げるくらいはしてもいい」
「嘘でしょ?」
「するな、とは言われてない」
「嘘でしょ!?」
 思わず声を張り上げてしまったのは、運転席に座る男へ向かっての言葉だからだ。
「まぁダメではないけど。でも突っ込んでいいのは指だけね」
 顔は前を向いたままだけど、あっさりそんな答えが返って血の気が引いていく。
「ほらな」
「む、ムリムリムリムリ」
「本当に?」
「当たり前」
「でも相手が俺じゃなくてあいつなら、本当に無理か試させるくらいはするんだよな?」
「それは」
「本当に無理そうだったらちゃんと止める」
 いい子だから腰上げてと促されて、抗いきれないと諦めに似た気持ちになりながら、先にバスタオルが欲しいと要求した。
 わかったと頷いて助手席に置かれていたカバンに腕を伸ばして手を突っ込んだ彼が、そこから2枚のバスタオルを引っ張り出してくる。だけじゃなく、ローションボトルまで握られてるのが見えてしまった。
 前回どころか初回から助手席に置かれていたカバンには、エッチなことをするのに必要なアレコレが入っている。まだラブホを利用してた頃にもそのカバンは使われていたから、お兄さんの許可が出ればそのままラブホへ行けるようにって考えで持ち込んでるのかと思ってたんだけど。
 前回、車の中でイカされるのに抵抗して、車の中を汚すかもという不安を口走ったら、そこからコンドームの箱が出てきて付けられてしまった。当然、今日のデートの前半でも、そこから出したコンドームが使われた。
 だからローションが入ってるのはそこまで不思議ではないんだけど。でもまさか、バスタオルまで出てくるとは思わなかった。
 バスタオルの片方を手渡されながら、再度の「腰あげて」って言葉に従えば、ササッとお尻の下にバスタオルが敷かれてしまう。手際が良い。
「ううっ、用意周到すぎ」
「狙ってたからな」
「そんなの狙ってないで、早く3人でちゃんとしよって方、頑張って下さいよ」
 したいの? と聞かれる意味がわからない。早くしたいに決まってるでしょと返せば、最近は玩具でしかお尻イカせてもらってないらしいもんな、と冷えた声が降ってきて心臓がキュッと縮む気がした。
「なん、で」
 また不機嫌スイッチが入ってしまったらしい。車の中で下半身を晒して、お尻をイジられる覚悟を決めたばかりだっていうのに。いい子だからって言ったときの声は多少なりとも甘さを含んでいたのに。だから、受け入れたのに。
「お前らが俺抜きでどんなセックスしてるかは全部聞いてる」
 なんで知ってるの、なんて聞いてない。というか全部筒抜けなのは自分だって知ってる。
「じゃあわかってますよね」
「何を?」
「俺が玩具を受け入れてる意味、すよ」
 3人でする時はちゃんと俺を抱いて下さいよと、「俺を」の部分を強調して告げた。
「あなたの恋人は俺なんですから」
 こんな時だけ都合がいいことを言っている自覚はある。今の自分の恋人は目の前に居るこの人じゃなくて運転席の男なのに。
 でも3人でする時にこの人に抱いて貰うための準備を頑張ってるのは本当だからいいよね、とも思う。ちゃんと抱いてもらえなくて焦らされてるのは事実で、だから早く3人でしたいって気持ちにさせられてるんだろう自覚もなくはないけど。
 不機嫌な彼がどんな言葉を浴びせてきても泣かないぞって思いながら睨んでしまったけれど、少し驚いた顔を見せた後で笑い出すからこっちこそ驚いてしまう。
「何笑ってんすか」
「いや。お前に俺の恋人だって意識がまだあって良かった、と思った自分に驚いた」
 なるほどね、と何かを納得した様子だったけれど、何を納得したのかは教えて貰えないまま、不機嫌を振り払って楽しげな彼にお尻を弄られまくってしまった。

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聞きたいことは色々53

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 3人デートを繰り返すごとに彼の機嫌が悪くなっているのは多分気の所為ではなくて、でも初回に釘を刺してあるというか、3人でするかを決めるのは既に自分ではなくお兄さんの方だと言ってあるからか、早くその気になれ的な催促を直接言葉で食らうことはないのだけど。というかこちらにその気があるのは彼も充分わかっているのだろうけど。
 でも不機嫌の理由はいつまで経っても3人でしようとはならないくせに、少しずつエッチな手出しも許可されて散々煽りまくるデートにあるのだろうし、その不機嫌はどうしたって自分にも向かってくる。
 今日も目的地に到着して車を降りたところで、苛立ちを含んだ冷たい視線にさらされて身が竦む。
 ここで食事を摂った後は、ドライバーをお兄さんと交代した彼と後部座席で過ごすことになるわけだけど、いちゃいちゃするのなんて絶対無理だと思う。それを期待できる甘やかな雰囲気が欠片もない。
 行きと帰り、逆だったら良かったのに。というか前回までは逆だったのに。
 個室だったり半個室だったりのお店で、声を我慢しきれなくなったり、勃ってしまって落ち着くまでに時間を要するようになって、デートはドライブがメインになった。
 スモークが貼られた後部座席は外から丸見えってわけではないけど、それでも車の中でという抵抗感は普通にあったし、ドライバーそっちのけでいちゃいちゃするのも気が引ける。お店で対面に座って見られているよりも、運転を邪魔してしまうのではとか、見えない分余計に気が散るだろうとか考えてしまって、後ろめたさがあったんだけど。
 結局数回で慣れてしまったし、前回なんかとうとう行きの車中で彼の手でイカされてしまった。
 そして今日も、ここへ到着するまでにお兄さんの手でイッている。前回の帰りはイクまでされなかったから、というよりは帰宅するまではお預けって感じになったから、彼の前でお兄さんにイカされたのは初めてだった。
 正確には前じゃなくて後ろだけど。運転しながらだから殆ど見られてないはずだけど。
 前回もイカされてるし、的な慣れと諦めとであっさり受け入れてしまったのはやはり失敗だったのかも知れない。
 思ってた以上に彼の不興を買ってしまった気がする。なのにお兄さんは相変わらず、そんな不機嫌そうな彼を見て楽しげだ。
「俺にイカされるこの子があまりに可愛くって焼けちゃった?」
 そんな感情がはっきりあるような人だったら、一時的にだろうとお兄さんとの恋人関係を許可したりしてないと思う。
「この前、お前相手にはけっこうごねて抵抗してたもんなぁ」
「や、あれは車の中でってのに抵抗があって。で、今日はもう二回目だし、最初からそうするって言われてたし、っていう」
 あわあわと言い訳を言い募れば、お兄さんの方はもちろんわかってるって顔で笑ってくれたけれど、彼は依然として不機嫌そうなままだった。
 そして結局その不機嫌は回復することなく、帰路につく時間になってしまってなんとも憂鬱だ。
 3人デート頻度も上がってきたとは言え、彼とは途中で別れてお兄さんとお兄さんの家に帰ってセックスって流れになるし、そもそもの目的が早く彼に抱かれたくてたまらないって気持ちを昂らせるってものだから、彼が多少不機嫌だろうとその手を拒むことはなるべくしないつもりなんだけど。前回だって、せめて最初から車の中でイかせるまでするって宣言されてから乗ってたら、あそこまで慌てなかったと思うんだけど。
 お兄さんはそういうとこ、けっこう事前にしっかり知らせてくれるので本当に有り難い。無理そうなら無理って事前に言えるし、じゃあ本当に無理そうだったら諦めるねって結局それなりに試されはするけど、でも本気で無理な時はごめんねって手を引いてくれるし、がんばった分はしっかり褒めてくれるんだけど。そうすると次はもうちょっと頑張れそうかもってなるんだけど。
 彼はこちらが本気で嫌がるだろうことは取り敢えず試しに言ってみる、みたいなところはあるけど、受け入れるだろうことはあまり事前に教えてくれない。結局のところ、こちらが慌てたり戸惑ったりなんなら嫌がったりするのを、楽しんでる部分があるんだろう。多分。
 楽しんでるなら、せめてちゃんと楽しんでる様子を見せてくれればいいんだけど。以前はもっとはっきり楽しげだったはずなんだけど。
 不機嫌になるくらい早く3人でしたいなら、さっさとお兄さんを口説き落としてくれればいいのにと思わずにいられなかった。

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聞きたいことは色々52

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 好きになったらどうしよう、なんて思う必要がない相手なので、お兄さんとはほぼほぼ毎週末に顔を合わせていたし、当然セックスもしていたから、彼に抱かれたのと同じくらいの回数なんてあっという間に過ぎていた。
 宣言通り童貞も奪われたし、お兄さんの趣味嗜好に合わせたプレイ的なことも、結局そこそこ受け入れていると思う。
 アナニーでは使うけど、自慰で使うからこそ、玩具を使われるのなんて絶対嫌だって思ってたし、無機物にイカされるのも、それを見て楽しまれるのも、泣かずにいられる自信がなかったのに。恋人にそんな扱いされたら絶対悲しい、って思ってたのに。
 でもそこに想いがちゃんとあって、こちらが晒す痴態を本気で愛おしいと感じているらしいのが伝わってくると、どうやら悲しい気持ちにはならないらしい。こちらの不満とか泣き顔とかを興奮に変えて楽しむような真似をされてないというのも、かなり影響しているかも知れない。
 だから、さすがに自分から積極的に使われたいとまでは思わなくても、必死で回避を考えたりはしていなかった。まぁ必死で回避を考えるような状態なら、まずはそこの改善からってタイプの人だし、だからこその現状なんだけど。
 自分たちの関係がどうなっているかはほぼほぼ彼にも筒抜けなので、それを知った彼には、心底驚いた様子のあとで不機嫌そうに納得がいかないと言われてしまった。
 口説くななんて言われてなければ、自分だって受け入れさせていたのに。みたいに思ったらしいから、あなた相手じゃ泣いて逃げ出す想像しかできないと言って、ますます不機嫌にさせてしまったけれど。
 それでも、「そこにちゃんと想いがあるかどうか」というのが自分の中で相当重要な扱いになっている。というのは、少しずつだけど彼にも伝わっているような気がしている。彼が口説く時に口にする「好き」だって本心からのものなのに、何でそれじゃダメなんだ、というところで止まってるっぽいけど。
 後で恨まれそうって躊躇われたけど、そういや本気で好きになるし口説いてもいい、みたいに言われたこともあったかも?
 実際、お兄さんと出会う前に好きだと繰り返されていたら、彼に対してももっとあれこれ受け入れてた可能性はある。その言葉に縋って、もっと想ってもらえるようにと頑張ってた気がする。
 でも玩具を使いたいって言われたら普通にドン引きだし、無機物にイカされるところを楽しまれたら結局泣いて逃げ出してたと思うから、やっぱり「そこに想いがあるかどうか」が彼とお兄さんとの違いなんだろう。
 だって、好きって言ってくれても結局そこには想いがないカラッポ、という事実に、多分きっと気づいてしまうから。恋人相手に自分だけが本気で好きになってる辛い片思いを、どのみち自覚していたと思うから。
 お兄さんは相変わらずそんな彼をポンコツ呼ばわりしているし、そう言われた彼は嫌そうにしてるけど、以前はここまで直球で彼に「お前は恋愛感情を理解してない」と突きつけたりはしてなかったらしく、お兄さんは彼の変化もどうやら結構楽しんでいる。というか多分期待している。
「いい加減3人でしたい気もするけど、もうちょっと焦らしたらいい加減自覚できたりしないかな、みたいな気持ちもある」
 何度目かの3人デートを終えたあと、そう言って悩ましげなため息を吐き出すから、俺はちゃんと早く抱かれたい気持ちになってますよと言っておく。
 ついでに、好きって言わされるプレイをされても、その延長でカラッポの好きを渡されても、多分もう大丈夫ですよとも付け加えた。
「だよねぇ。てか焦らされてるのは君もだよね」
「ですね」
 なんせここ最近は玩具しかお尻に入れてもらってない。玩具をお尻に入れた状態でお兄さんに乗られるようなセックスを繰り返している。
 3人でする時はどうやら自分が真ん中らしい。
 彼は抱かれる側を嫌がるだろうから、後はお兄さんが真ん中になって、自分を抱きながら彼に抱かれるパターンだけど、彼に抱かれたいって思うように誘導してるのと、彼に抱かれる自分以外の男の姿なんて見たくないだろうという配慮だ。
 彼に抱かれながら自分を抱くお兄さんを見たい、という欲求がこちらに湧かない限りは、試さなくていいと思っているらしい。
 3人でしたら、彼がお兄さんを抱きたがることもあるんじゃないの。という考えがチラリと頭の隅をかすめたけれど、お兄さんは否定するか、否定まではしなくても拒否するって言いそうだったから口には出さなかった。

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聞きたいことは色々51

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 今日のデートはどうだった? と聞かれたのは、今現在お兄さんが暮らしている方の家に戻ってからで、彼とはランチを食べたお店を出たところで別れていた。というか現地集合現地解散って感じで、あれがデートだったとはどうにも言い難い。
 けれど間違いなく、単なる食事会でもなかった。
 半個室のお店が予約されてて、4人がけのテーブルで彼の隣に座ることになったり、お兄さんの前でキスされたりで、どうやら軽く触れるだけのキスはエロいことに入らないらしい。
 人目を忍んで掻っ攫われる、なんて軽い触れ方じゃなかったけど。でも口の中へ侵入してくるような深いものでもなく、ちゅっちゅと何度も軽く吸われるようなキスは、まるでこちらが舌を差し出すのを待ってるみたいだった。
 出さなかったけど、舌を出してと囁かれてたらうっかり従ってたかも知れない。くらいには、そこが半個室とはいえ店内だってことも対面に今現在の恋人が座ってるってことも、頭からすっぽ抜けてた自覚はある。
「デートしたって感覚、あんまないっすね」
「まぁ一緒にご飯食べただけだしね」
「ご飯食べただけじゃなかったですけど」
「そうだね。で、ご飯食べただけじゃない部分の感想は?」
 思ってたより抵抗感なさそうだったと言われて、確かにそうだなと思う。
 いくら半個室でも店内であんなにしっかりキスされたのに、次が無いようにしなければとは考えてないし、ヤバいと焦るような気持ちもない。以前なら絶対、このまま黙って許したら、人目が遮られる場所なら店内であってももっとエロいことされるようになるんじゃ、って考えたと思うし、どうすればそんな展開を防げるかを必死で考えたと思う。
 だってこの人がそこに居てくれたから。
 この人の存在が頭からすっぽ抜けて彼とのキスに没頭したくせに、とも思うんだけど。そもそもキスに没頭できたのが、この人がそこに居たからだって気がしている。
 それに、恋人が目の前で他の男にキスされてても平気なんだ、なんていう悲しい気持ちにもならなかった。
 平気なことは最初からわかってたし、それは想いがないからでもどうでもいい存在だからでもない、ってこともわかっているからだ。わかっているし、それを信じられている。
「あなたが居てくれたから、です。多分」
「そうなの?」
「だってあなたがそう望んだんでしょう」
「それはそう。でもそれはつまり、俺へのお礼的な気持ちが強くて抵抗感が薄れる感じ?」
「お礼の気持ちてよりは、安心感? ですかね」
 どういうことか聞かれたので、もしあのまま流されても嫌われないし振られないしむしろ喜ばれるって知ってるのは大きいですと返した。ついでに、エロいことNGのデートって聞いてたのも、彼に口説いていいって言った話を聞いてたのも、安心感につながってると思うとも言っておいた。
 まぁ彼には会って早々、俺をその気にさせるゲーム感覚で口説くのはやですよって、一応釘を刺してしまったんだけど。とっくに3人でしてもいいって気になってるし、彼への好きはちゃんと自分の中に残ってるし、まだしないって言ってるのはお兄さんの方だし、早くしたいって思うならこっちを口説くよりもお兄さんを説得するべき、という訴えが今日のデートにどう影響したかはわからないんだけど。
 なおそれを聞いてたお兄さんは、渋い顔で戸惑う彼をめちゃくちゃ面白がって笑っていた。
「なるほどね。浮気じゃないし不快にもならないしむしろ歓迎する、ってのを結構素直に飲み込めてる感じかな。じゃあご褒美か感謝の方向にしようか」
「ってなんです?」
「今夜のエッチの方向性」
 ただ流されてされるがままキスに没頭しただけなのに、褒められまくって喜ばれるんだから、なるほどと思わずには居られなかった。
 こんなのを繰り返されたら、この人の想いを受け取るその延長上で、早く3人でしたいとか、また彼に抱かれたいとか、そういう気持ちだって本当に湧いてしまいそうだ。

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聞きたいことは色々50

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 まだ早いと言っていたのに、数日後には次回のデートには彼も誘おうと思う、という内容のメッセージが届いてちょっと意味がわからない。
 まだ早いって言ってませんでしたか、と返信すれば、エロいことNGの健全なとこだけしか参加させないと返ってきて、3人でしてもいいって思えたみたいだから取り敢えず3人でのデートをしてみようかと思っただけだよ、とも追加で送られてきた。
 ただただ3人でしたいだけなら相手なんかすぐ探せるって言っていたくらいだから、3人でのデートも彼が目指す3Pへの必須項目だったりするんだろうか。なんて思いながら了承を返せば、しばらくして待ち合わせの時間と場所とがお兄さんからではなく彼の方から届いて、そちらにも了承を送る。
 相変わらず端的でシンプルで余計な情報がないやりとりだと思って苦笑していたら、最後に楽しみにしてると送られてきてビックリした。今まではデートの連絡時に、そんなサービストークめいたものを付けてくれることはなかったからだ。
 一時的なものとして了承したとは言っても、目の前で恋人を掻っ攫われたわけだから、多少は何か思うところでもあったのかも知れない。とは思うものの、恋人を奪い返す的なゲームとかが始まってないといいなとも思ってしまう。
 軽くお兄さんに伝えてみたら、どうやらお兄さんの指示だった。そういう気遣いをしろ、というのではなく、口説いていいよって言ってあるらしい。
 なんだそれ。そんなゲームに熱中して、冷める熱がない状況が変わってしまったらどうするんだ。それは、奪い返して満足してポイ、になる可能性が出てきたってことじゃないのか。
 思わずただただ文句を垂れ流したに近い不安を吐露したら、電話が掛かってきて、ぜんぜん違うから大丈夫と宥められてしまった。
 相手の声を聞くだけで、文字だけのやり取りでは得られない安堵は間違いなくある。というか、文字だけのやり取りよりも情報量が格段に上がる。
 どうやら「口説いていい」っていうのは、奪い返すゲームじゃなくて、早く3人でしたくなるようにって意味だったらしい。
『つまり、俺と付き合ってる状態で、俺に大事にされまくってる自覚を持ったまま、あいつに抱かれたくてたまらない、みたいな気持ちになって欲しいわけだよね』
 今はまだ抵抗感すごいと思うけどと言いながら、相手は電話の先で楽しげに笑っている。
『浮気だなんて思わないしむしろ俺もあいつも歓迎する。ってのはわかってると思うから、3人でするのを一緒に楽しめるようになれたら、二人だけでする時にはいっぱい褒めるし感謝もするけど、もしどうしても罪悪感なり抵抗感が拭えないまま3人ですることになったら、二人でする時には無理させてごめんねって方向で慰めることも出来るし、罰が欲しいならお仕置きとかも出来るから』
 その前段階として、まずは口説かれてみるといい。らしい。
 口説かれて心揺れてもちゃんとケアするから。らしい。
 あと、君を取り上げたままあんまり放置しすぎるのも可哀想だし、口説くのも手を出すのも何もかもNGで一緒に出かけるだけだと、こっちの仲の良さを見せつけるだけになってそれもやっぱり可哀想でしょ。らしい。
 多分後半の方が3人デートの本命理由。とは思ったけれど、事情が事情なのでその気持ちもわからなくはない。なんせ彼は、一時的に手を離す=交際を続けている状態、的な認識をしている。
 こちらとしては、一時的なものにしろしっかり別れている。という認識なんだけど。じゃなきゃお兄さんと恋人になんてなれないんだけど。
 というこちらの事情もわかった上で、彼だけが交際を続けている認識なわけで、それを思い出してしまうと結構後ろめたいものがある。
 ワンナイトの相手を探すなりするかと思っていたのに、どうやらそういう遊びに興じる気はないらしい。もちろん、繋ぎの遊び相手を作る予定もなさそうだ。
 元々交際相手がいる間の浮気はしないタイプだそうで。恋人交換は浮気じゃない扱いだし、恋人がいる期間は叔父夫婦に交ざっての3Pはしてなかったというから、多分きっと事実なんだろう。

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聞きたいことは色々49

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 いつだったか、トロトロに優しく甘やかされながら、好きだよ可愛いよ愛してるよっていっぱい言われるセックスが好きそうだと言われたことがあるけれど、間違いなく相手はそれを意識してたと思う。
 いつかする時にはそういうセックスをしようって言ってくれてたのを、覚えているんだろう。
 あと、想いが返るセックスを経験させてあげたい、みたいなことも言われたことがあったっけ。
 好きって言い合うプレイとしてのセックスを経験済みだから余計に、本気で愛しい可愛いと思いながら抱いてくれているのが伝わってくるセックスには感動したし、こちらが差し出す好きもしっかり受け取って貰えたのがわかる、嬉しそうな顔には心底安堵した。
 結果、そこそこしっかり泣いてしまったわけだけど、涙があふれる理由が全然違う。早々に嬉し泣きですと自己申告しておいたので、相手はますます可愛いと笑いながら、たくさんのキスをくれた。
 本当に、いつか恋人が出来たらと夢見ていたアレコレを、全部叶えてくれたと思う。
 だから今度は自分の番だって、思ったんだけど。相手の望みを叶えてあげたいって、思ったんだけど。
 3人でしても良いですよと言ったら、その気になってくれて嬉しいけどまだ早いと言われてしまった。
「まだ早い? ってのは?」
「だって恋人出来たらしてみたかった事を、俺が色々叶えてあげた、そのお礼、だよね?」
「それは、まぁ」
「3人で、なんて考えられない感じだった君が、3人でしても良いって思えるようになった事、だけで充分かな。お礼なら」
「つまりしないって事ですよね?」
 いいんですかと聞いたら、翻ってやっぱヤダってなる可能性高いの? と逆に聞かれてしまった。
「高くはない、です」
「だよね。俺もそうならないように頑張るつもりだもん。じゃあまだいいよ」
 お礼で付き合わせる3Pで満足出来るなら君を選んでないよと言われて首を傾げてしまえば、ただただ3人でセックスしたいだけなら3人目なんか簡単に探せるんだよねと言って苦笑する。
 その言葉に嘘はないと思うのに、じゃあ何を求められているのかはイマイチわからなかった。というか、彼を好きになってしまったこの想いが必要なんだと思ってて、そこは既に満たしているから、あとは自分が3人での行為に納得して参加出来るかが問題で、それを待たれてるのだとばかり思っていた。
「あいつを好きって想いが必要なのは間違ってないし、君が3人でしてもいいって思うのを待ってたのも事実ではあるんだけど、そこがゴールではないっていうか」
「ゴールじゃない?」
 目指してるのは「俺の特別になって」ってとこだよと言われて、確かにそれはそうなんだろう、とは思ったけども。
「あの、旦那さんとしてたようなこと全部は絶対無理、なんですけど。てか3人でしたいくらいなら、受け入れられそうって思っただけで」
「うん。知ってる」
「じゃあ」
「でもまだ育て中だから」
 3人でするのがゴールってことで良くないですかと言う前に、そんな言葉で遮られてしまった。
「まだ育て中?」
「そう。めちゃくちゃ大事に君の好きを育ててあげるって言ったでしょ。まだ全然終わりじゃないから。もっと育てたいから」
 まだまだ俺を好きになれるでしょと断定的に言われても、否定は出来そうにない。もっとこの人を好きになれると、自分でも感じている。
「あと別に旦那としてたこと全部を君ともしたい、なんてことは全く思ってないから。そもそも君と旦那じゃ立ち位置真逆だし。いずれ童貞は貰う気満々だけど、ネコちゃんに抱く側頑張らせる気はないし」
 勃たせててくれればいいよ、とのことなので、どうやら騎乗位とかそういう形で奪われるらしい。
 抱いてって言われたら頑張る気はあったんだけど。でも気持ちよくしてあげられる自信なんか欠片もないので、乗って好きにしてくれる方が気が楽そうではある。
 頑張れるって思ったんだから、勃たせてて、の部分は多分大丈夫なはず。
「そ、なんですね」
「まぁ俺を抱いてあげたいなぁとか、抱いてみたいなぁ、みたいな気持ちが湧いたとしたらそれはそれで大歓迎だけど。そういうのも、君の好きがもっと育った先でわかることでしょ」
 好きが育ったら受け入れて貰えることと、好きが育った先でもどうにも無理ってことを、これからじっくり確かめていく。らしい。
「それと、確かにあいつを仲間外れにしないセックスがしたい気持ちがあるとは言ったけどね。まだ1回しか抱いてない恋人をあいつに差し出すとかないから。しかもあいつから奪った、あいつに抱かれ慣れてる上にあいつを好きって気持ちもしっかり持ってる子だよ。あまりに俺が不利でしょ」
 3人でするのは、君があいつに抱かれたのと同じくらいは俺に抱かれた後でにしよう。なんてことを大真面目に語られて笑ってしまった。
 まだまだ好きを育てたいってのも嘘ではないんだろうけど、まだ早いの本音部分はきっと、「あまりに不利」の方なんだろう。

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