一回り以上年下の従兄弟を恋人にしてみた6

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 笑ってしまったからか、本気なんですけど、と告げる声は不満げだった。
「本気で言ってんのはわかってるよ。たいして金かかってるわけでもないし、お前にだって充分出せる額だってのもわかってる」
「じゃあ」
「でもまぁそこは、今後も甘えてくれてていいかもな」
「なんで?」
「お前が俺を好きすぎるから。つか恋人とデートしてて、抱いて貰うんだから自分も半額出す、なんて言われるの初めてだったんだよな」
 嬉しかったし可愛すぎたから、今後もデート代は出してやろって気になった。と続ければ、そんなことでと驚かれた後、やっぱりどこがケチなのか全然わからないとボヤかれてしまった。
 そんなことでと言うけれど、今まで同じことを言った恋人は居なかったし、この子は抱かれるためにお金を出してもいいくらいに自分のことを好いてくれている、という事実は、財布の紐が思わず緩むくらいの衝撃だったというだけだ。
「お前が相手なら、セックスするため以外のデートだって全額俺持ちで全然いいわ」
 年齢差的に当然そうなるだろという認識ではあったのだけど、3週間放置になった原因のひとつに、ヤれないデートに金をかけたくない=積極的に会いたいわけではない、という気持ちがなかったとは言い切れない。
「てわけで、今後はもっと積極的に、セックスなしの日帰りデートもセックス無しのお家デートもするからな」
「えっ!?」
「抱いて貰えないならデートしたくないとかは言わせないぞ」
「言いませんよ。言いませんけど、でも」
 本気で? と確かめられて、本気でと即答してやる。
「そういやお前、俺がセックス抜きのデートする気がないって思ってた、よな?」
「そりゃ、だって、いくら俺が実感できてなくても、あんなに何回もケチでクズって自己申告されてたら、ヤれる時だけ会うほうがいいんだろうなって、思っちゃうというか。その、少しでも長くあなたの恋人で居たいって考えたら、かろうじて耐えられそう、みたいに言ってたようなことは避けておきたいと言うか」
「待て待てなんだそりゃ。かろうじて耐えられそう? 何を? つかそんなこと言った?」
「言いましたよ。俺と付き合うメリットで、好きだからただ側にいたいっていうのも、恋人なら許せそうだ、って」
「あー……」
 そう言われてしまうと、確かに言ったような気がする。
「恋人ならギリ許容できそう、って……?」
「それですね。ギリ許容って、かろうじて耐えられそう、とは違いました?」
「すまん。確かに俺が言ってたわ」
「なのにセックス抜きのデート、あなたから誘ってくれるんですか?」
「そうだな。セックス抜きでもお前とは会いたいって思うよ」
 本気で? と確かめにくる声は、さっきよりもさらに疑わしげだった。
「本気で言ってるけど、でも、好きだから会いたくてしょうがない、みたいなのとは確かに違うかな」
「もし俺を甘やかそうとか、喜ばそうとか、そういうのなら、あまり無理して欲しくないです」
「違う違う。いや違くもないけど、ヤれないデートに金出すのもお前相手なら全然有りって思ったら、もうお前を放置しておきたくないなってなっただけ」
 お前面倒だから放置しとくと余計なこと色々考えて、下手したらやっぱり自分なんかが恋人なのはとか言い出しそうだし。と続ければ、ちょっと言葉に詰まっているので、多分似たようなことを既に考えていたんだろう。
「お前がもう無理別れたいって言ったら別れてやる気はあるんだけど、こんなに俺のこと大好きで居てくれる恋人初めてだし、手放したくないなって思ってアレコレする価値が充分にあるとも思ってる。あと、お前が俺を好き好き思いながら俺のそばをウロつくの、ギリ許容どころか思ってたよりずっと楽しそう。つか嬉しい。のと、多分、愛しい」
 最後の部分を拾って、愛しい? と呟く相手に、そうだよと肯定を返す。ついでに、本気で、と相手に問われる前にさっさと自分から申告しておいた。

続きました→

 
 
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一回り以上年下の従兄弟を恋人にしてみた5

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 腕の中で身動がれる気配に意識がふわりと浮上する。腕の中に抱えていた熱がもぞもぞと這い出て、どうやらトイレに行くらしい。
 相手がそのまま起きるなら自分も起きないとと思いつつも、たゆたう意識にそのまま目を閉じ横になっていれば、戻ってきた相手がまたもぞもぞと腕の中に潜り込んでくるから、こらえきれずに小さな笑いがこぼれ落ちた。
「んふっ」
「ふぇっ!?」
 驚かせてしまったようで、びくっと体を跳ねさせた相手からも不思議な声が漏れてくるから、やはり笑うみたいな吐息を零してしまう。
「ふ、かぁいいなぁ、ホント」
 ちゃんと腕ん中戻ってきてえらいな〜と発する声は、寝起きのぼんやりが滲んで間延びしている。
「ぁ、起き、て……ってか、もしかして、起こしちゃいました?」
「んー、まぁ、昼寝だからな。元々そんな深く寝入るつもりもなかったし」
「あ、じゃあ、」
「起きてもいいけど、せっかく腕ん中戻ってくれたから二度寝もあり」
 どうしたい? と問いかければ、少し迷う素振りを見せた後。
「起きます。けど、もう少しだけ、こうしてて貰えませんか……?」
「もちろん。もう少しと言わず、たっぷりこのままでもいいくらい」
「そ、なんです、か?」
「そりゃ、可愛い恋人が腕ん中に収まってくれてる状況だもん」
 しかも自分っから入ってきた点が本当にポイント高いと思う。ここに戻るんだ!? という驚きと納得とを含んだ感動を思い出して、また胸の奥の方から笑いが溢れてくる。そういや前回も、泣くのを抱いてあやしたら、次に泣いた時には自分から顔を埋めにきてたっけ。
「ふふっ、腕ん中戻ってきて偉いな、って言ったろ。俺はこういうイチャイチャだって、決して嫌いじゃないからな?」
 まぁ過去の経験で言えば、主にヤった後の話ではあるのだけれど。そう思うと、ヤル前に話をしようだの、酔いを覚ますために昼寝しようだの、確かに昔の自分からは想像できないような手順を踏んでいる。
 ヤル気はあるがそれが一番の目的でホテルに入っているわけじゃない。セックスは後回しでも構わない。なんて思えるようになったのはどう考えたって年齢が関係しているんだけど、でも、相手がこの子だからというのもそこそこ大きそうではある。
 どう考えたって、酔った勢いに乗って致す方が楽しい相手には思えない。
「そ、なんです、ね」
 何にホッとしたのか、こちらが起きてると気づいた時から微妙に固くなっていた、相手の体の強張りが少しばかり解けたようだ。
「俺、前回もお前のことそれなりに甘やかしまくったつもりなんだけど、こういうの嫌がりそうって思うようなこと、あった?」
「ないです、けど、でも」
「でも?」
「あれは、その、セックスの最中だった、し、俺、いっぱい泣いちゃった、ので」
「ああ、確かに。お前と楽しくセックスするために甘やかしまくった面も、まぁ、なくはなかったか」
「それに、ヤルより先にすることもしたいことも色々あるって、言ってたから。俺のわがままで甘えさせて貰って、時間潰しちゃうのも申し訳ないというか、その、俺が面倒だから付き合うメリットがあるって言ってくれたけど、面倒掛けすぎて愛想つかされるのは怖いというかで」
「あー……なるほど」
 いくら恋人になってから初めてのデートだからといっても、前回とほぼ変わらないデートにそこまで緊張するのはおかしくないかと思っていたし、どんなことをするか身を持って知った後の初めてのセックスを意識しまくっているのかとも思っていたが、どうやら愛想を尽かされるのが怖いと怯える気持ちがあったらしい。
 ほだされたとか、結婚する気は一切ないだとか、他の誰かと二股するタイプのクズではない話はしたし、恋人になれと誘ったのはこっちだけれど、恋愛感情かは微妙だってことや、リップサービスどころか好きと言われたら反射的に好きと返していることもあると認める発言をしたのは事実だ。
 ただ、それを言うなら、別れはこちらから申し出るのではなく、相手がこちらを切る時だろうと、割と本気で思っている。
「まぁ、お前の面倒臭さが付き合うメリットつり上げてるのは事実だし、そう簡単に愛想つく面倒臭さなら、こんな面倒な子をあんなに一生懸命口説いて恋人にはしないから安心しろよ。むしろ俺は、俺のクズさにお前が呆れて、いつか俺が捨てられる側って思ってるからな?」
「あなたがクズでケチっていうの、俺、全然実感できたことないんですけど。って、そうだ。俺だって好きな人に抱いて貰うんだから、セックスするときのデート代、割り勘でもいいんですよ?」
 結局今回も全部払ってくれようとしてるみたいですけど、と続いた言葉にやはり笑いが込み上げてくる。笑いというか、これは多分、愛しさだ。

続きました→

 
 
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一回り以上年下の従兄弟を恋人にしてみた4

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 やはり飲ませすぎていたらしい。確かに緊張してるという自己申告はあったし、料理類にあまり箸が伸びていないのは見ていたけれど、まさか昨夜からほとんど食事が喉を通らなかったなんてのは想定外過ぎだったというのもある。空きっ腹にアルコールばかり入れたなら、そりゃ酔いが回って当然だ。
 とても次の店へという状態ではなさそうだったので、元々今日のデートは動画撮影がメインではないのだしと思って、さっさと予約済みのホテルにチェックインしてしまったが、むしろ落ち着いて話をするには丁度いいのかも知れない。
 でも予定通りに店が回れないことに責任を感じているのか、相手は酷く申し訳無さそうに、さっきから何度もごめんなさいを繰り返している。
 飲み慣れていないのはわかっていて飲ませたのはこちらだし、泊まりが確定してたから酔っても構わないと思っていたというか、前回ほど相手が酔うことに注意を向けていなかったし、今日のデートは元々相手の希望に合わせる予定でいたのだから撮影が中断しようと問題はない。
 謝られるたびに言葉を変えて、相手に責任がないことを伝えているが、それを素直に信じて、なら良かったと安心してくれるような相手じゃないのは明白だ。
「なぁ、俺がデートって単語使って誘った意味、お前ちゃんとわかってたろ」
 それならばと、言外に今日のメインはセックスと匂わせてみれば、相手はコクコクと2度ほど頷いたあと。
「セックス、ですよね」
「そうだ。だから、」
「わかりました。準備、してきます」
「ってそうじゃなくて!」
 バスルームへ向かおうとする相手を慌てて引き止めて、もう少し落ち着けという意味を込めて抱きしめた。
「ひえっ」
 腕の中で小さな悲鳴があがって、体が緊張でこわばるのを感じながら、やはり3週間も開けたのは失敗だったよなと思う。ゲスな発想なのは認めるが、さっさと2度目を抱いておけば良かった。
 せめてセックス抜きでももう少し頻繁に会っておけば、いざ2度目でも、ここまで意識されなかっただろうか。なんて思ってしまうくらいに、妙に意識されすぎている。
 何をするのか、どんなことをされるのか、知ってしまった後の初めて。と考えれば、その緊張やら意識しすぎたオカシナ態度にも納得、と言えなくもないのだけれど。
 準備してきますね、なんて言葉がスルリと出るくらいには相手にもその気はあるようだけれど、前回同様に手伝ってやると申し出たら絶対に断られそうな雰囲気がある。
 セックスは一緒に楽しむもので、体を使ったコミュニケーションで、こちらだけが一方的に欲を発散させるセックスにはあまり興味がない。それを前回も実践したはずだけれど、夢にされかけたくらいだし、どこまで覚えているかはかなり微妙そうだ。むしろ相手がこちらを誘うきっかけになった、飲み屋での会話の方が記憶されているんだろう。
 ヤりたいから付き合うクズでデート代を出し渋るケチ、辺りの情報ばかりが強く印象に残っている気配が強い。でもヤれそうになかったら割り勘とは言った記憶があるけど、ヤれないならデートする意味がないとまでは言ってないはずなんだけど。
 さっきの店での最後の方の会話からすると、ヤれないならデートしないと思われている可能性が高い気もする。その辺をちゃんと確かめて、しっかり訂正しておきたい。
「も少し落ち着けよ。セックスするのはお前の酒がもうちょっと抜けた後。てかヤルより先にすることもしたいことも色々あるから」
「したいこと、ですか?」
「そう。まず一番最初にするのは昼寝」
「昼寝?」
「うん、昼寝。少し眠って酒抜こう」
 酔ったままの相手といくら会話を重ねたところで、どこまで覚えててくれるか怪しいから。とまでは言わずに、近くにあるベッドへと一緒に転がってしまう。
「えっ? えっ?」
「良い子だから目ぇ閉じて」
 エアコンが効いてるけど寒いほどではないし、くっついて眠るにはむしろちょうどいい。
「ん、いい子。じゃあゆっくり深く呼吸して。吸って……吐いて……」
 指示を出せば素直に従うので、相手が口を挟めないように吸って吐いてを言葉にして繰り返しつつ、時々、上手と褒めてやる。相手の体から少しずつ緊張が抜けていき、やがて穏やかな寝息になったことを確認した後、そのまま自身も目を閉じた。

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一回り以上年下の従兄弟を恋人にしてみた3

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 酒の力を借りつつ、恋人が出来たら行きたかった場所やらやってみたかったことやらに探りを入れ、相手の希望を取り入れた次回のデートプランを練っていく。
「夏休みっていつまでだっけ? お前が休みの間に、も一回くらいは泊まりでデート行けたら良いよな」
 休みが調整できないか検討するけど、最悪日帰りでもデートはするぞと宣言すれば、相手は少しばかり目を瞠ったあと、困ったようにへらっと笑った。
「日帰りでもデート、してくれるんですね」
「むしろなんでしないと思うんだよ。確かに今日のはデートしよって誘ったけど、もしお前が他の誘いに乗ってたら、それだって日帰りデートだったろ?」
 恋人と二人で過ごしたらそれはデートだと言ってやれば、相手はどこか腑に落ちない様子を見せながらも、口では「そう、ですね」と返してくる。正直に言ってしまえば、その腑に落ちない感覚こそが正しい。
 だってこちらの都合に合わせろって誘いと、相手の希望に沿うお出かけでは全然違う。違うのがわかっているからこそ、デートしようと誘うことはしなかった。でもデートって単語を使ってでも、3週間も放置せずに会っておくべきだったとも思っているのだ。
 もし日帰りでデートしよって言ってたら、他の撮影にも同行したかもしれないし、お家デートがしたいと誘えば、母に合わせる顔がどうこう言わずに遊びに来たかもしれない。そう、思わずに居られなかった。
 想いのデカさで言えば断然相手が抱える好意の方が大きいのだけれど、恋人関係を持ちかけたのはこちらだということを、恋人となることを了承させるのにあれだけ手間取ったことを、もっと慎重に考えるべきだった。好きな人と会える時間がもっと増えれば良いな、ってだけでまっさらな体を差し出してくるような相手だってことを、もっと肝に銘じておくべきだった。
 恋人なんて関係は望んでなくて、でももっと会いたいとか一緒に過ごす時間が欲しいって気持ちだけはあんなにも強かったのだから、せっかくの夏休みに3週間もお預けされて平気だったわけがないだろう。
「ごめんな」
「え、なんで謝るんですか」
 いきなりの謝罪に、相手はやはり戸惑って見せる。
「せっかくあれこれ誘ってくれたの、全部断っちゃったの俺なのに。なら謝るの、俺の方じゃないですか」
「日帰りデートしよって言って誘わなくて、ごめん。お前とデートしたいからおいで、って誘えば良かったよな」
「で、でも、日帰りデートだとヤれない可能性、高くないですか?」
「ん?」
「今日をデートに指定したの、明日もお休みだからですよね? てことは、翌日仕事で泊まりは避けたいんですよね?」
 朝早かったし結構バタバタと支度して大変そうでしたもんねという指摘には、当然、肯定しか返せない。
「まぁ、そうだな」
「ラブホって、男同士でも問題なく使えるようなとこばっかじゃないんですよね?」
「えっ?」
「おばさん帰ってくるかもって思いながらするよりはラブホのが全然いいんですけど、俺としてもこの前みたいに普通のホテルの方がありがたいし、だからデートするのはお休みが連続してるときだけでも構わないっていうか、ヤれないのに無理して日帰りデートして欲しくないっていうか、あ、でも、男同士でも日中使える、えーと、ご休憩? 出来るホテルに心当たりがあって誘ってくれてるなら、」
「待て待て待て」
 慌てて待ったをかけて相手の口を閉じさせる。酒の力は偉大だが、思考力が鈍っていけない。
 いやまぁ、相手の問題って方が大きそうではあるけれど。素面でも待ったをかけてそうなことを言われた気がするけど。
 むしろ相手に飲ませすぎているだろうか。話のつながりが飛んでいるように感じるのは、相手が酔っているからかも知れない。そこまで酒に強そうって感じでもないのに、口が軽くなればと、今日は途中で取り上げずに飲ませてしまっている。
「よし、お前ちょっとお酒やめてソフトドリンク……よりも、一旦締めて次の店行くか」
 お互い頭を冷やそう。まぁ外に出たところで頭が冷えるような涼しさは期待できそうにないけども。でも外の空気を吸って、すこし頭をすっきりさせたい。
 そんなことを考えながら、取り敢えずこのお冷は飲んどけと、最初に出されたままほぼ手つかずだった自身の水入りグラスを押し付けた。

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一回り以上年下の従兄弟を恋人にしてみた2

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 待ち合わせ場所にほぼ時間通りに到着すれば、このデートを楽しみにしていたとわかる顔ではなく、はっきりと不安そうな顔をしてこちらを待っていた相手は、めちゃくちゃぎこちない口調で「お久しぶりです」と告げる。
「おう、久しぶり」
「すみません、なんかすごく、緊張しちゃってて」
 早速だけどなんだこの対応、と思いながらも反射的に挨拶を返せば、理由はあっさり相手が教えてくれた。
「あー、緊張、ね。うん、緊張、か……」
 緊張だけって感じにも思えないんだけど。でも、取り敢えずはそういうことにしておこうか。なんて気持ちから、思わず2度ほど繰り返してしまえば、相手は少し焦るような様子を見せる。
「だ、だって、初めてなんですよ」
「え、何が?」
 本気で意味がわからない。だって前回とほぼ同じコースなデート予定なのに。違うのは連れ回す店と連れ込む予定のビジホだけだ。
「何って、デートするのが、です」
 俺に恋人いた事ないの知ってますよね、と不安げに尋ねられて、いやそりゃ知ってるけども、と思う。
「つっても、連れてく店と宿が違うだけで、前回とそう代わり映えしないコースだぞ?」
「けど前回はまだその、こ、恋人、とかってわけじゃなかった、ですし」
 心構えがぜんぜん違う、らしい。
「しかも3週間ぶりだし、なんか夢見てたみたいなとこあって信じられないというか」
「待て待て待て。3週間ぶりになったのはお前が今日まで会おうとしなかったからで、つか夢ってなんだ。まさか、なかったことにしたいわけ? いや待て。長くなりそうだから取り敢えず店行くか。すぐそこだし」
 今日のデートがすんなり行かない可能性はあると思っていたが、会って数分でここまで実感することになるとは思ってなかった。
 ほんと、顔出しも声出しもない動画にしてて良かった。しみじみとそう実感しつつ、不安げなままの相手を連れて最初の店に向かう。
「で、最初に確かめさせて欲しいんだけど、俺とお付き合い続ける気ってまだある?」
 注文を済ませて店員が下がったあと、取り敢えずこれは聞いておかないとと、ど直球に問いかければ、すぐにはっきりと「あります」と返ってきてホッと安堵の息を吐いた。
「夢見てたみたいなとか言い出すから、そこから覆されるのかと思ってヒヤヒヤしたわ。お前を恋人にするのめちゃくちゃ大変だったのに、デート1回すら出来ずに終わるのかと」
「やっぱ本当にこれ、デート、なんですね」
 え、そこから? という驚きとともに、この感じめちゃくちゃ覚えがある、とも思う。そう思ったら、なんだか笑いそうだった。
 さっき自分でも、デートするのが初めてだとか言ってたくせに。ちゃんとこれがデートだってわかってるくせに。でも、今実感しました、みたいな顔をしているこれが演技だとは思わない。
 こちらが彼を恋人と認める発言をして、これをデート扱いしたことで実感した。辺りだろうか。
「お前、この3週間で色々余計なこと考えまくったな?」
「え?」
「デートしよって誘ったんだから、デートに決まってんだろ。てか初デートなのに、また動画撮影がいいっつったの、お前だからね?」
「それは、そう、なんですけど」
「恋人できたら行ってみたいと思ってたデート先とかないの?」
「え……と、あなたとなら、居酒屋めぐりがいい、です」
 多分、かなり考えながら言葉を選んでいる。そう思ってしまうような間を感じた。
 メッセージのやり取りでは感じ取れないものも、こうして眼の前でやり取りすれば隠せない。
「それは俺が男だから? おっさんだから? こんな俺とじゃ、いつか恋人ができたらって夢見てたデートなんて出来っこないって思ってる?」
「ち、違っ、でも、どこ行きたいとか、わかんなくて」
「それ、俺がどこに行きたいかわからない、って意味でいい?」
「え?」
「違った?」
「えー……」
「そこですぐ違うって言えないの、そうですって言ってんのとほぼ同じなんだよなぁ」
 その指摘に次の言葉を発せず、小さく口を開けたり閉じたりしている様が可愛くて、やはり笑いを堪えるのが大変だった。

続きました→

 
 
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一回り以上年下の従兄弟を恋人にしてみた1

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 色々あって一回り以上も年下の、従兄弟という関係性のあるまだ大学生の男の子を恋人にしておよそ3週間。こちらの休みが基本平日ばかりだろうと相手は夏休み中なのだから、休みに合わせて頻繁に家まで押しかけてくるのかと思いきや、会うのはなんと、恋人となった日以来の3週間ぶりだった。
 その3週間の間には当然数回の休日があって、動画撮影込みの飲み歩きだって2度もしているのに。
 一番の原因は多分、休みの日程を知らせるときに、今日この日を指定して、こちらからデートしようと言ったせいだ。デートという単語を使いはしたが、要はセックス込みの泊まりのつもりで出かけようって話で、セックス込みでとまでは言わなかったが泊まりでとは言ってあるので、相手もさすがにこのデートを了承する意味はわかっているだろう。
 なぜこの日を指定したのかと言えば、珍しく2日続けて休みな日程を見たら、この日は逃せないなと思ったからだ。初回がビジホお泊りでのセックスだったから、同じパターンなら間違いなくヤレルはず、というゲスな試算に、こちらの体力やらを考えたらやはり翌日は休みのほうが都合がいいという、あまり認めたくはない加齢問題がプラスした結果でもある。
 ただ、デートの日を指定したからと言って、そこに「だから他の日には会わない」などという意味を含ませてはいなかった。どちらかというと、「お前の要望を叶えてやるぞ」のサービス的な意味を持たせて、デートという単語を使ったつもりだったんだけど。
 あまり遠出はしたくないけど行きたいとこがあれば教えてという問いには、なぜかまた撮影同行がいいと返ってきたし、店もこちらにお任せだった。一応、デートなんだから遊園地でも水族館でも映画でも小洒落たレストランでも、お前が行きたいとこ言っていいよと再度問いかけ直したけれど、相手の回答は変わらなかった。
 セックス前提のサービス精神ではあるが、よほど金銭的に引くような提案でなければ何を言われようと付き合う気でいたが、前回同様の撮影同行デートでという返答に安堵した面がないわけではないから、そこまで見越しての提案という可能性もあるかもしれない。もしくは、年の差ありまくりの男同士カップルでも浮かないデート先が思い浮かばなかった、という可能性。
 うん、そっちの可能性のが多分高い。というか、それを考えてしまうと、自分だってここならと思うデート先など思い浮かばないから、デート先ごと決めてくれと投げ返されなかっただけ良かったと言えそうだ。
 そしてデートが動画撮影となったせいで、その間の2回の飲み歩きにまで同行はしなくていい、となるのは納得でもある。顔出しも声出しもない動画だけど、彼の父である叔父さんが視聴者で、かつ投稿者の素性に気づいていないことを考えたら、そう頻繁に動画になりたいわけでもないだろう。
 同行したい理由の一つに、父親が気づくか確かめたい的なのもあったけれど、恋人関係になってしまった今も同じように思っているとは限らない。
 そして一番の原因とした以上、他にも要素はある。部屋が見てみたい的なことを言っていたのに、家に来ようとしない原因はこちらの母親だ。これも言っていたのは恋人関係になる前の話で、どうやら、合わせる顔がないので家には来たくない、らしい。
 母が彼に女の子の紹介の話を持ちかけた件に関しては、こちらから追求もしてないし、母からそんな頼み事をしたって話もされてないが、その現場に同席していたわけではない自分が、気にするなだとか無視すりゃいいとか言ったところで、きっと彼には響かない。なんせ、あんなにもこちらの結婚問題を理由に恋人になるのを拒んでいた相手だ。
 確実に母が家に居ない時間だけ滞在、というのも、パートタイムで一日の労働時間がそこまで長い訳では無い上に、母の勤務日やら時間やらを把握しきってないので難しい。今まで気にしたこともない母の勤務スケジュールやらを確かめるのは、どう考えたってやぶ蛇で、追求が始まるのが目に見える。
 結婚する気もなく、特に恋人を必要としていなかったというか、お付き合いのデメリットが増えて避け気味だった自分はともかく、二十歳になったばかりの大学生が、初恋を実らせたと言っても良いような現状に、そこまで浮かれた様子も見せず、3週間もお預けされて平気なものなのか。会えないにしても、もっとこう、色々と聞きたいことやら伝えたいことやらあるんじゃないのか。という疑問はもちろんある。
 この3週間、こちらからの連絡には割とすぐにレスがあるものの、相手からのアクションもほとんどなかった。
 ただまぁ、結構強引に恋人関係に持ち込んだのはこちらだし。と思うと、そうおかしなこともないのだろうか。でも相手は何やら拗らせた恋愛ど素人のちょっと難解なタイプだし。と思うと、今日のデートもそうすんなりとは行かないのかも知れない。
 そんな多少の不安を持ちつつ、本日の待ち合わせ場所へと向かった。

続きました→

 
 
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