聞きたいことは色々50

1話戻る→   目次へ→

 まだ早いと言っていたのに、数日後には次回のデートには彼も誘おうと思う、という内容のメッセージが届いてちょっと意味がわからない。
 まだ早いって言ってませんでしたか、と返信すれば、エロいことNGの健全なとこだけしか参加させないと返ってきて、3人でしてもいいって思えたみたいだから取り敢えず3人でのデートをしてみようかと思っただけだよ、とも追加で送られてきた。
 ただただ3人でしたいだけなら相手なんかすぐ探せるって言っていたくらいだから、3人でのデートも彼が目指す3Pへの必須項目だったりするんだろうか。なんて思いながら了承を返せば、しばらくして待ち合わせの時間と場所とがお兄さんからではなく彼の方から届いて、そちらにも了承を送る。
 相変わらず端的でシンプルで余計な情報がないやりとりだと思って苦笑していたら、最後に楽しみにしてると送られてきてビックリした。今まではデートの連絡時に、そんなサービストークめいたものを付けてくれることはなかったからだ。
 一時的なものとして了承したとは言っても、目の前で恋人を掻っ攫われたわけだから、多少は何か思うところでもあったのかも知れない。とは思うものの、恋人を奪い返す的なゲームとかが始まってないといいなとも思ってしまう。
 軽くお兄さんに伝えてみたら、どうやらお兄さんの指示だった。そういう気遣いをしろ、というのではなく、口説いていいよって言ってあるらしい。
 なんだそれ。そんなゲームに熱中して、冷める熱がない状況が変わってしまったらどうするんだ。それは、奪い返して満足してポイ、になる可能性が出てきたってことじゃないのか。
 思わずただただ文句を垂れ流したに近い不安を吐露したら、電話が掛かってきて、ぜんぜん違うから大丈夫と宥められてしまった。
 相手の声を聞くだけで、文字だけのやり取りでは得られない安堵は間違いなくある。というか、文字だけのやり取りよりも情報量が格段に上がる。
 どうやら「口説いていい」っていうのは、奪い返すゲームじゃなくて、早く3人でしたくなるようにって意味だったらしい。
『つまり、俺と付き合ってる状態で、俺に大事にされまくってる自覚を持ったまま、あいつに抱かれたくてたまらない、みたいな気持ちになって欲しいわけだよね』
 今はまだ抵抗感すごいと思うけどと言いながら、相手は電話の先で楽しげに笑っている。
『浮気だなんて思わないしむしろ俺もあいつも歓迎する。ってのはわかってると思うから、3人でするのを一緒に楽しめるようになれたら、二人だけでする時にはいっぱい褒めるし感謝もするけど、もしどうしても罪悪感なり抵抗感が拭えないまま3人ですることになったら、二人でする時には無理させてごめんねって方向で慰めることも出来るし、罰が欲しいならお仕置きとかも出来るから』
 その前段階として、まずは口説かれてみるといい。らしい。
 口説かれて心揺れてもちゃんとケアするから。らしい。
 あと、君を取り上げたままあんまり放置しすぎるのも可哀想だし、口説くのも手を出すのも何もかもNGで一緒に出かけるだけだと、こっちの仲の良さを見せつけるだけになってそれもやっぱり可哀想でしょ。らしい。
 多分後半の方が3人デートの本命理由。とは思ったけれど、事情が事情なのでその気持ちもわからなくはない。なんせ彼は、一時的に手を離す=交際を続けている状態、的な認識をしている。
 こちらとしては、一時的なものにしろしっかり別れている。という認識なんだけど。じゃなきゃお兄さんと恋人になんてなれないんだけど。
 というこちらの事情もわかった上で、彼だけが交際を続けている認識なわけで、それを思い出してしまうと結構後ろめたいものがある。
 ワンナイトの相手を探すなりするかと思っていたのに、どうやらそういう遊びに興じる気はないらしい。もちろん、繋ぎの遊び相手を作る予定もなさそうだ。
 元々交際相手がいる間の浮気はしないタイプだそうで。恋人交換は浮気じゃない扱いだし、恋人がいる期間は叔父夫婦に交ざっての3Pはしてなかったというから、多分きっと事実なんだろう。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

聞きたいことは色々49

1話戻る→   目次へ→

 いつだったか、トロトロに優しく甘やかされながら、好きだよ可愛いよ愛してるよっていっぱい言われるセックスが好きそうだと言われたことがあるけれど、間違いなく相手はそれを意識してたと思う。
 いつかする時にはそういうセックスをしようって言ってくれてたのを、覚えているんだろう。
 あと、想いが返るセックスを経験させてあげたい、みたいなことも言われたことがあったっけ。
 好きって言い合うプレイとしてのセックスを経験済みだから余計に、本気で愛しい可愛いと思いながら抱いてくれているのが伝わってくるセックスには感動したし、こちらが差し出す好きもしっかり受け取って貰えたのがわかる、嬉しそうな顔には心底安堵した。
 結果、そこそこしっかり泣いてしまったわけだけど、涙があふれる理由が全然違う。早々に嬉し泣きですと自己申告しておいたので、相手はますます可愛いと笑いながら、たくさんのキスをくれた。
 本当に、いつか恋人が出来たらと夢見ていたアレコレを、全部叶えてくれたと思う。
 だから今度は自分の番だって、思ったんだけど。相手の望みを叶えてあげたいって、思ったんだけど。
 3人でしても良いですよと言ったら、その気になってくれて嬉しいけどまだ早いと言われてしまった。
「まだ早い? ってのは?」
「だって恋人出来たらしてみたかった事を、俺が色々叶えてあげた、そのお礼、だよね?」
「それは、まぁ」
「3人で、なんて考えられない感じだった君が、3人でしても良いって思えるようになった事、だけで充分かな。お礼なら」
「つまりしないって事ですよね?」
 いいんですかと聞いたら、翻ってやっぱヤダってなる可能性高いの? と逆に聞かれてしまった。
「高くはない、です」
「だよね。俺もそうならないように頑張るつもりだもん。じゃあまだいいよ」
 お礼で付き合わせる3Pで満足出来るなら君を選んでないよと言われて首を傾げてしまえば、ただただ3人でセックスしたいだけなら3人目なんか簡単に探せるんだよねと言って苦笑する。
 その言葉に嘘はないと思うのに、じゃあ何を求められているのかはイマイチわからなかった。というか、彼を好きになってしまったこの想いが必要なんだと思ってて、そこは既に満たしているから、あとは自分が3人での行為に納得して参加出来るかが問題で、それを待たれてるのだとばかり思っていた。
「あいつを好きって想いが必要なのは間違ってないし、君が3人でしてもいいって思うのを待ってたのも事実ではあるんだけど、そこがゴールではないっていうか」
「ゴールじゃない?」
 目指してるのは「俺の特別になって」ってとこだよと言われて、確かにそれはそうなんだろう、とは思ったけども。
「あの、旦那さんとしてたようなこと全部は絶対無理、なんですけど。てか3人でしたいくらいなら、受け入れられそうって思っただけで」
「うん。知ってる」
「じゃあ」
「でもまだ育て中だから」
 3人でするのがゴールってことで良くないですかと言う前に、そんな言葉で遮られてしまった。
「まだ育て中?」
「そう。めちゃくちゃ大事に君の好きを育ててあげるって言ったでしょ。まだ全然終わりじゃないから。もっと育てたいから」
 まだまだ俺を好きになれるでしょと断定的に言われても、否定は出来そうにない。もっとこの人を好きになれると、自分でも感じている。
「あと別に旦那としてたこと全部を君ともしたい、なんてことは全く思ってないから。そもそも君と旦那じゃ立ち位置真逆だし。いずれ童貞は貰う気満々だけど、ネコちゃんに抱く側頑張らせる気はないし」
 勃たせててくれればいいよ、とのことなので、どうやら騎乗位とかそういう形で奪われるらしい。
 抱いてって言われたら頑張る気はあったんだけど。でも気持ちよくしてあげられる自信なんか欠片もないので、乗って好きにしてくれる方が気が楽そうではある。
 頑張れるって思ったんだから、勃たせてて、の部分は多分大丈夫なはず。
「そ、なんですね」
「まぁ俺を抱いてあげたいなぁとか、抱いてみたいなぁ、みたいな気持ちが湧いたとしたらそれはそれで大歓迎だけど。そういうのも、君の好きがもっと育った先でわかることでしょ」
 好きが育ったら受け入れて貰えることと、好きが育った先でもどうにも無理ってことを、これからじっくり確かめていく。らしい。
「それと、確かにあいつを仲間外れにしないセックスがしたい気持ちがあるとは言ったけどね。まだ1回しか抱いてない恋人をあいつに差し出すとかないから。しかもあいつから奪った、あいつに抱かれ慣れてる上にあいつを好きって気持ちもしっかり持ってる子だよ。あまりに俺が不利でしょ」
 3人でするのは、君があいつに抱かれたのと同じくらいは俺に抱かれた後でにしよう。なんてことを大真面目に語られて笑ってしまった。
 まだまだ好きを育てたいってのも嘘ではないんだろうけど、まだ早いの本音部分はきっと、「あまりに不利」の方なんだろう。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

聞きたいことは色々48

1話戻る→   目次へ→

 好きになった相手と恋人になる、という順番だけはどうにもならなかったけれど、恋人に夢見ていたアレコレをお兄さんは着々とこなしていく。
 たくさんの好きの応酬も、熱のこもった視線のやりとりも、他愛ない触れ合いも。
 惜しげもなく与えられる愛情は未来への投資、というのもわかっているけれど、それを受け取ることに抵抗感はなかった。というよりも、このままそれを浴びていれば、お兄さんの期待にはいずれ応えられるようになるんだろう予感があるから、素直に受け取って今を存分に楽しめばいい。という気持ちでいる。
 そういう気持ちでいることは伝えてあるし、それでいいと言われているし、期待してるとも言われていた。ついでに言うと、渋々ながらお兄さんとの交際を認めてくれた彼も、お兄さんが目指す未来には間違いなく期待している。
 彼と付き合い続けたままお兄さんとも付き合えるような感覚を持ち合わせていないのは彼もわかっていて、仕方なく、一時的に、手を離してやる。という感じに落ち着いていた。
 だから実のところ、お兄さんへの好きをしっかり育てたあと自分たちの関係がどうなるかは、今はまだ未定と言えそうだ。
 あんまり揉めて欲しくはないんだけど、誰かを挟んで成り立つ兄弟間コミュニケーションみたいにも思えてきたから、二人の間で好きなように決めてもらえばいい気もしている。
 だってお兄さんへの好きを育てるだけで、彼への想いだって変わらず自分の中にあるのだから。これはそれを目指したお付き合いなんだから。
 会社バレを避けたいのはもちろんだけれど、親バレだって避けたいのが実情で、親子関係も今のところ特別問題を抱えているわけではないから、お兄さんが言ってたような養子だのパートナシップだのには応じられそうにない、というのもある。
 好きを育てまくったらそこすら飛び越えて、家族として仲間入りしたくなる。なんてことはないと思うんだけどどうだろう?
 好きになっちゃいけない、と思うことばかりの人生だったから、好きが育ったらどうなるのか、自分自身のことなのに全く想像がつかなかった。
 でもまぁそう遠くない未来に、知ることになるんだろう。だってお兄さんへ向かう好きは、間違いなく順調に育っている。
 セックスは既に色々経験済みだけど、大事に好きを育ててあげるの一貫らしく、キスすら数度のデートを重ねた先だったし、体を繋ぐようなセックスはさらに数回先だった。その間に、互いのペニスを握って気持ちよくなる、相互オナニー的なものを経験している。
 好きと言い合いながら互いの熱を煽り合うなんて行為は当然初めてだったし、お兄さんと性的に触れ合うのもそれが初めてだったけど、恋人として順当に関係が進んでいる感じがしたし、自分の手で恋人を気持ちよくしてあげられた満足感も悪くなかった。
 抱かれ慣れてる人の反応だから、だろうか。はっきり抱かれたい側で抱く側をやりたいと思ったことはないけれど、目の前で感じてくれている男に、いつか抱いて欲しいとお願いされたら頑張れそうな気がする。と思う程度には、相手の勃起ペニスを握って扱いて気持ち良さげな反応が返るのは感動的だった。
 ただ、吐き出せば一旦スッキリするしキモチイイには違いないんだけど。なんせお腹の中をペニスで擦られてイクことに、すっかり慣れてしまった体だ。
 お兄さん的には体を繋ぐのはもっと先と思ってたみたいだったけど。というかそれがわかってしまったから、待ちきれなくて自分から抱いて欲しいと頼んでしまった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

聞きたいことは色々47

1話戻る→   目次へ→

 話してる間に二人の腕が緩んだので、話し終えたあとは二人の間から抜け出てそれぞれの顔を眺め見る。
 お兄さんは困ったように笑っていて、彼は不機嫌そうに口を引き結んでいたから、彼に向かって図星ですかと問いかけてみたけれど返答はなかった。
「いやぁ……さすがにそれはないでしょ。いやもちろん、家族愛的な情はお互いあるとは思うけど」
 こいつに恋愛的な意味で好かれてると思ったことってないし、過去の恋人たちも君のことも恋愛的に好きで付き合ってるように見えたこともないから、やっぱり恋愛感情を理解しないポンコツだと思う。というのがお兄さんの意見らしい。
「でも本人否定してないですよ?」
「それはそう。てかお前なんで黙っちゃうかな。否定しなよ」
 それとも本当に俺が好きなの? とニヤニヤ顔で彼を覗き込むお兄さんは、少し前まで困った顔をしていたのに、どうやら既にこの状況を楽しむ気になっているようだ。
「アンタのこういうとこ、ホント腹立たしい」
「だよねぇ」
 嫌そうな顔でお兄さんの顔を真正面からわしづかむ彼と、絶対避けれたと思うのに素直にわしづかまれて笑っているお兄さんとを見ながら、仲いいなぁと思ってしまう。思うだけでなく、口からも出た。
「仲いいっすね」
「どこが!?」
 不満げな声を上げたのは彼だけで、顔から手を離されたお兄さんは嬉しそうに笑っていて、そうでしょとでも言いたげだ。なのに実際にお兄さんの口から出てきた言葉は、全く違うものだった。
「ねぇやっぱ俺と付き合おうよ。というか俺の特別になろうよ」
 養子ならこいつが叔父さんだし、パートナシップならこいつが義理の弟になるよ。などと言い出していて、だいぶ話が飛躍している。そんな話、今まで欠片も出てなかったのに。
 好きになってしまった先でどこまでこの人の嗜好についていけるかって話で、そこを乗り越えてこの人の特別が欲しいと思うのか、決めるのは自分だと思ってたんだけど。でもってお互いに、現状ではかなり無理そうって思ってたはずなんだけど。だからワンチャンって単語を使ってたはずなんだけど。
「おいっ、何言い出してんだアンタ」
 先に反応したのは彼の方で、相当驚いているらしい。いやまぁ気持ちはわかる。
「だって俺とお前が仲良しなの、嫌そうじゃなかったから。てかいっそ付き合えばいいのに、くらいに思ってそうだったから」
「付き合えばいいのに、はさすがに言いませんけど。でもそうなって振られるのが、俺が一番傷つかない別れ方かも、みたいな気はしてます」
 彼にしろお兄さんにしろ、自分が恋人でいるよりよっぽどお似合いだと思ってるのは事実で、結果自分が振られるのは、素直に仕方がないと思えそうだ。
「ほらね。てか俺は仲いいのは否定しないけど、でもさっきも言ったとおりに、家族の情だから。家族愛だから。ただ、恋愛する気も伴侶にする気も二人きりでセックスする気もないけど、仲間はずれにしないセックスをしたい気持ちはけっこうあるんだよね」
 めちゃくちゃ大事に君の好きを育ててあげるから、頑張って俺の特別になって。その先で、一緒にこいつに愛を注ごう。だそうで。
 なるほど、と納得してしまう部分はあった。出会った初日から3人でしたがってたし、多分お兄さんが目指しているところはずっと同じなんだろう。
 旦那さんとのとんでもセックスを自分も全部受け入れる必要はなくて、彼との3人でのセックスだけ受け入れられればOKなら、そこまで難しくはないかもしれない。
 なんて思ってしまうくらいに、すでに自分の価値観は崩されているみたいだから、大事に好きを育てられたら軽々超えてしまいそうだ。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

聞きたいことは色々46

1話戻る→   目次へ→

 どういう状況なんだこれ、という驚きと混乱とで、ダラダラと溢れていた涙はピタリと止まった。二人に挟まれてしまって顔なんか見れる体勢じゃないし、ひっそりと息を詰めて自分を挟む二人の様子を伺うしかない。
「腹立たしいって何が?」
 先に口を開いたのはお兄さんだった。
「なにもかも。俺を好きで別れる気はないと言ってたくせに、あっさり掻っ攫われる気でいるこいつにも。死んだ男をいつまでも想い続けて俺を受け入れなかったくせに、よりにもよってこいつに特別を渡す気でいるアンタにも。結局、誰にも選ばれない自分自身にも」
 腹が立ってると繰り返す声は凪いでいる。腹が立っているというわりには、強い憤りなどが滲む声ではなかった。
「好きにすればいい。勝手にしろ。正直、そう思う気持ちのが強いのに、わかったと頷いてこいつの手を放すのがどうしても嫌だ。ただ、俺を排除して二人で幸せになろうとしてるのが許せないだけかもしれない、という気もしてる」
 同じ奪われるにしても、全く知らない男が相手だったならここまでの執着心は湧かなかった気もする、らしい。ということは、こんなに執着されてるのも結局のところ、奪っていく相手がお兄さんだからってことなのか。
 そりゃ、好きだから執着してるなんて、言ってくれるはずがない。まぁ好きを知らないポンコツ、が事実の可能性もあるけど。でも本当に知らないのかは疑わしいな、とも思ってしまった。
 お兄さん的には旦那の代わりになんか全くなれない拙い「好き」だったとしても、彼的には本気で好きだったから叔父の代わりを努めようとした可能性。
 旦那という絶対的な存在が居たから好きを隠す必要があったなら、伝え聞く元カレ相手の態度にも納得がいく気がする。そして今も彼の好きがお兄さんに向かっているなら、自分との付き合いの違和感というか、好きとかどうでも良さそうな感じに納得がいくんだけど。
 あれ、どうしよう。
 昨日、お兄さんと食事に行ったことに不満そうだった彼に嫉妬ですかと聞きそうになったけれど、その感覚も実は結構的を得ていて、お兄さんに頻繁に食事に誘って貰っているという部分に嫉妬されてた可能性まで見えてくるんだけど。
 ええ、どうしよう。
 考えるほどに、彼の好きがお兄さんに向かってる気がしてくる。
「君の意見は?」
「ふぇっ!?」
 もう泣いてないよねと聞かれて妙な声を上げてしまった。というか全然聞いてなくて、彼らの話がどういう方向で進んだのかさっぱりわからない。
「すみません、聞いてませんでした」
「妙なところでのんきだよな」
 背後からの少し呆れた声は彼のものだ。
「身勝手にもほどがあるとは思うけど、どうしても君に捨てられたくないみたいなんだよね。で、それ聞いてやっぱり振れない! みたいになる? 絶対俺に乗り換えたほうがいいと思うけど、少なくとも今はまだ、俺よりこいつのが好きでしょう?」
「あの、その前に一つ確かめたいことがあるんですけど」
「うん、何?」
「お兄さんが俺を心配して彼のフォローするの止めたら、俺への執着はなくなるんじゃないですか?」
「ん? どういうこと?」
「全く知らない男に奪われるならここまで執着しなかったかもって言ってましたよね。つまり相手がお兄さんだから、俺を手放したくないんですよね?」
「あー俺への嫉妬的な?」
 さんざん抱いてきた男にガチネコちゃんな恋人奪われるのは悔しいよねと苦笑されたから、お兄さんはやはり気づいてないらしい。
「じゃなくて。お兄さんと幸せになる他人を見たくないから、そうなりそうな俺を手放したくないんじゃないかって」
「あー……それもまぁ、ありそうでは、ある」
「彼が好きなのって、お兄さんですよね?」
「うん、待って。てかどこからそんな話が?」
 俺らの話も耳に届かないくらい考えふけってたのってそれなの? と驚かれながら、促されるまま考えていたアレコレを語ってみた。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

聞きたいことは色々45

1話戻る→   目次へ→

 社内にも彼が把握しているゲイやバイの社員がいる、という話は初期に一度聞いていたけれど、どうやら近辺でゲイが集まれる場所なんか限られてるって話らしい。そういうお店やらが知り合いの性指向を知るきっかけ、ということもそこそこあるようだ。
 デート先にもかなり気を使ってるとは言われたけれど、そういや知り合いに見つかる可能性なんか考えたこともなかった。正直にそう言えば、相手はあっさり知ってると返してくる。
「そこ気づいてたら外でキスさせないだろ」
 最初から気づいてたらそうだったかもしれないけど、デート中に掠め取られるキスにドキドキすることをしっかり自覚済みの今はどうだろう。じゃあもう外でのキスも無しで、とは言えそうになかった。
「なるほどね。デートどうするかも擦り合わせが必要そうだ、というのはわかった」
 というかそもそも、別れ話が成立してしまったら彼とはデートをすることがなくなるのか。
「まぁ初っ端から俺の趣味で振り回す気なんかサラサラないし、さっきも言ったけど、あげたいものがいっぱいあるの。まずはそっち優先したいから、デート先とかデートの内容とかもこの子の要望優先するよ。お前のお陰でこの子が満たされてない部分はっきりしてるし、お前よりはマシな恋人やれる自信しかないから」
 だからこの子は俺が貰うねと言い切られた彼は、酷く嫌そうに顔をしかめている。
「というわけで、お前も了承ってことでいいよね?」
 肯定も否定もないまま黙ってお兄さんを睨む彼は、何を思っているんだろう。
 あんなに自信満々に自分のほうがマシな恋人になれると言い切られたら、そう簡単に否定なんて出来ないだろうとは思う。
 つまり沈黙は肯定。彼との恋人関係はこれで終わってしまった。
 そう思ったのはもちろん自分だけじゃない。行こうと肩を抱かれて、お兄さんと一緒に彼に背を向けた。
「待て」
「まだなにかある?」
 隣のお兄さんが顔だけ振り向くのを、自分は追わずに前だけを見続ける。振り向いて彼の顔を見たくなかった。
「了承できない」
「なんで?」
「なんで、って」
「お前が執着したくなるほどいい子なのはわかってるけど、お前この子泣かすじゃん。もう手ぇ放しなよ」
「嫌だ。だってまだ俺を好きだろう?」
「そうだよ。だからこれは、お前より俺を好きになって貰おう計画なんだよ」
 ちょっとでもこの子を想う気持ちがあるなら邪魔しないでの言葉にも、やっぱり彼の「嫌だ」が返っているから、またしても欠片も想われてない事実を突きつけられてるみたいで苦しくなる。同時に、お兄さんを説得できるような言葉を何も持たないまま、ただただ嫌だと抵抗する彼の執着を、嬉しくも思っているらしい。嬉しいことが、どうしようもなく、悲しい。
 だぱっと涙が溢れてきて、どうやら涙腺は昨夜ぶっ壊れてそのままらしい。
 慌てて涙を拭えば、すぐに隣のお兄さんにも気づかれて、やっぱり慌てた様子でギュッと抱きしめられてしまう。
「ゴメン。連れてこなければよかったね」
 二人だけで決着つけるべきだったと謝られて、ゆるく首を横に振って、いいえと返した。
「ここまで嫌がられると思ってなかったから、それを見れただけでも良かった、です」
「俺は流石に、こんな駄々っ子じみた抵抗されるとは思ってなかったんだけど」
 好きを知らないポンコツな弟でゴメンと謝られて、泣いているのにちょっとだけ笑ってしまった。
 こんなに執着してくれてるのに、それを好きだからだとは言ってくれない。という虚しさに気づかれている。
「腹立たしいな」
 不意に聞こえた彼の声はとても近くて、ビクリと体が跳ねた。だけでなく、背中を覆う熱を感じてそのまま体が硬直する。
 どうやら背後から彼に抱きしめられた、らしい。お兄さんの腕が背に回ったままだから、つまりはお兄さんごと抱きしめられてるのかもしれない。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁