バレたら終わりと思ってた11

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 結論から言えば、女装はやっぱり解いておくべきだった。
 女の子の姿の方が手を出しやすいかもとか、顔だけ女の子のがむしろ萎えるかもとか、相手がどう思うかって部分とは全く別にして、メイクなんかしてない方が多分色々マシだった。
 だって汗とか涙で顔はドロドロぐちゃぐちゃになったし、結構しっかり固定出来てたはずのウィッグは、外れはしなかったけどちょっとズレたしボサボサだ。
 だって女の子相手のセックス経験もない童貞だから、セックスがこんなに大変だって知らなかった。
 始める前に、彼が参考にしたというアナルセックスのやり方サイトを一通り読んでおいて本当に良かった。あれを読んでなかったら、途中もっと焦ったと思うし、もっと落ち込んでいたとも思う。
 出すのと挿れるのじゃ大違いで、お尻の穴を慣らして広げるのにあんなに手間と時間がかかるなんて思ってなかったせいだ。これは相手が、痛い思いをさせたくないからって、かなりしつこかったせいも大きい気がするけど。
 足を開いて相手の前に全部晒すってだけでも結構恥ずかしいのに、たっぷりのローションでヌルヌルにされた穴にクチュクチュと音を鳴らしながら何度も相手の指が出入りするのを、真剣な顔で観察される恥ずかしさと言ったらない。
 部屋の明かりはかなり落としてくれたけど、でも見られてるのはわかってたし、気配だけでなく真剣な表情そのものが、時折こちらからも見えていた。
 それが相手の思いやりで、優しさだってわかってても。必要な準備だってわかってても。このあとへの期待よりも、今を耐えるしんどさの方が勝ってしまって、ちょっとくらい痛くてもいいから、さっさと次に進んでほしかった。早く相手と繋がりたかった。
 なのに、もうヤダ早く挿れてって頼んでも聞いてくれなくて、結果、女の子の体だったら良かったのにと悲しくなってしまった。女の子の体なら、もっと簡単に相手を迎え入れられたはずで、こんなに恥ずかしい苦労をしなくて済んだはずだと思わずに居られなかった。
 結構派手に泣いてしまって相手を焦らせたけど、もし女の子の体だって初めてってわかってたらいっぱい時間かけて慣らすから一緒って言われて、初めてを貰えるのが嬉しいって喜んでもくれた。恥ずかしいの耐えて頑張ってくれてるのはわかってるし、愛しくて仕方がないし、むしろ下手でゴメンと謝られたりもした。
 相手もアナルセックスは初めてで、だから上手にリード出来てないし、時間も掛かっちゃうし、辛いの耐えさせて結局無理させてるよね。なんて言われたら、もうちょっとなら耐えられそうって思えてしまう。というよりも、相手も初めてって部分が、自分もちょっと嬉しかったんだと思う。
 だからちゃんと体を繋げられた時にも、今度は良かったって安堵でまた泣いた。
 痛いとか苦しいとかで泣いてるわけじゃないと伝わってたからだろう。相手は焦ったり困ったりした様子は見せず、約束守れて良かったって、嬉しさが滲むような優しい笑顔をくれた。
 そんな笑顔を向けられながら、そういや簡単に諦めない約束をしてたなって思い出したら、更に泣けてしまうのも仕方がないと思う。
 諦めずに続けてくれたから、もうちょっとなら耐えられそうって思わせてくれたから、今、体の中に相手を感じられてるって思ったら、嬉しさとか感謝とか好きだって気持ちが胸の中に溢れて絡み合って、胸の中に収まりきらないそれらが涙になって流れていくみたいだった。
 相手はちゃんとこの体を抱いてイッてくれたし、お尻の中を突かれながらおちんちんを扱かれて、気づけば自分もあっさり吐き出していた。というか最後の方はちょっとわけがわかんないくらい気持ちよくなっちゃって、頭の中が白く爆ぜるみたいだったのを覚えている。
 ちゃんと準備すればお尻で気持ちよくなれる、というのは嘘じゃなかった。
 しかし正直、やってる最中は必死過ぎて、自分がどんな状態なのか考えるような余裕はなかった。メイクした状態で泣くような経験が初めてだったから、イメージしにくかったのもあるかもしれない。更に言うなら、相手からは可愛いって繰り返されていたから、その言葉を信じて安心しきってた。
 大惨事に気づいたのは、疲れてるだろうけど体動くならシャワーをしておいでとバスルームに送り出された直後のことだ。つまり、明かりを絞った部屋から明るいバスルームに移動して、そこにあった鏡と対面した時だ。
 メイクはドロドロだし、ウィッグはズレてボサボサだし、可愛さの欠片もない姿を前にしばらく呆然と立ち尽くした。いつまで経ってもシャワーの水温が聞こえないことに気づいた相手が、心配してドアを叩いてくるまで立ち尽くしたあと、ようやくノロノロとメイクを落としていく。
 ウィッグも外して素の自分に戻ったけれど、散々泣いた目元は赤いままだし、気持ちよくセックスできた喜びの余韻なんか当然吹っ飛んでいて、気落ちした暗い表情はとても相手に見せられる顔じゃないと思った。
 シャワーを浴びれば少しは気持ちが落ち着いたり上向いたりするかなと思ったけれど、全然そんなことはなくて、むしろどんどん気持ちが落ちていく気がする。だから、バスルームを出たあとは無理やり笑顔を作って、交代だと相手をバスルームに押し込んだあと、自分はさっさとベッドに潜り込んでギュッと目を閉じる。
 できれば相手が出てくる前に眠ってしまいたかったし、もし眠れなくても、疲れて眠ってしまったと思わせたかった。

続きました→

 
 
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