次回はぜひ男の子の格好で。という希望には明確な返答を避けつつ、今日のデートが楽しみだという方向へ話題を変えてしまう。
男バレして破局、という展開を避けたかっただけで、二人きりの空間への憧れはあったし、相手とより親密に過ごせる時間を欲する気持ちもあった。だからドライブのお誘いは嬉しかったし、すごく楽しみでもあった。
本日の目的地は海沿いの水族館で、別の水族館でデートをした時に、いつか行きたいと話した場所でもある。
以前の水族館デートの楽しかった思い出や、今日行く水族館への期待や、下調べ済みの近辺施設情報などから話を膨らませた雑談をしているうちに、あっという間に目的地に到着していた。
結局女装でデートに来てしまったから、車から降りてしまえば、以前のデートとそう変わることもない。なんてことはもちろんなかった。
男バレを警戒する必要がないのも、だからといって男同士でデートしてる姿を人目に晒しているという緊張感がないのも、気楽でいい。けれど男バレしたおかげで、以前よりも相手との距離が間違いなく近いという、戸惑いや羞恥が新たに発生していた。
相手に触れられるのが嫌なわけでも怖いわけでもないのが知られたせいで、相手が大胆に触れてくるようになった、というのがかなり大きい。手を繋ぐだけじゃなくて、肩を抱かれたり腰に腕が回ったりするから、そのたびに内心けっこうドキドキしてしまう。ドキドキしながら、このあとのことを考えてしまう。
ホテルに行く気があるのかは、結局恥ずかしくて聞けていなかった。
今日は土曜日だから泊まりだって可能なんだけど、でもいきなりお泊りを期待していいのかもわからない。というかそんな期待をしていること自体が、はしたないのではとも思ってしまうし、恥ずかしさで悶えそうになる。
でも相手と触れ合っていると、どうしたってあの日の夜のことを思い出してしまうし、期待するのをやめられない。
もう一度手を出して欲しいし、今度こそ、こちらからも相手に触れたい。相手の手で気持ちよくされたいし、相手にもちゃんと気持ちよくなって欲しいし、感じる姿を見せて欲しい。
ずっとこうしたかったって言いながら優しく触れて欲しいし、舌が痺れるくらいのエッチなキスで腰を疼かせて欲しいし、躊躇いのない手つきで固くなったおちんちんを扱いて欲しいし、たまらず喘いでしまう姿をトロトロに感じて可愛いねと言って欲しい。
「もしかして疲れちゃった?」
「……え?」
「ちょっとぼんやりしてるみたいだけど」
体調を確認されて、慌ててダイジョブですと返した。エロいことで頭がいっぱいなだけです、なんて言えっこない。
「本当に?」
「はい」
「距離が近いのしんどい、とかではなく?」
「ええっ!?」
「避けられないの嬉しくてベタベタしすぎてる自覚はあるというか。しかもそれを意識して貰えてるのがかなり新鮮で、やりすぎたかもと反省してるとこ」
ドキドキしすぎて疲れた、とか言われても驚かないんだけど。なんて苦笑顔で続けられて、こちらも思わず苦笑を返す。
「ドキドキ、伝わっちゃってました?」
「うん。めちゃくちゃ嬉しかったよ」
「もう、そう言われたら、こっそり楽しんでるなんてズルい、とか、酷い、とか。言いにくいじゃないですか」
「ごめんね。でもこっそりずっと見てたから、ドキドキしてくれたのがぼんやりになったの気になっちゃって」
何考えてたの? と聞かれてしまって言葉に詰まった。
「っ、そ、れは……」
「言いにくいようなこと?」
「えっと……まぁ……」
「もしかしてエッチなこと?」
「うっ……そんなの直球で聞かないでくださいよ」
「てことはエッチなことだ」
面白そうに笑って、ますます何考えてたか知りたくなったなと言う相手に、不満を知らせるように少しばかり口先を尖らせる。
「このあとの予定はどうなってるのかな、って考えてただけです」
言えば相手が時計を確認してから、何時に帰りたいとかある? と聞いてくる。
「ないですけど」
「明日の予定は?」
「ないですけど」
「じゃあ、帰るの明日になっても大丈夫?」
「だいじょぶ、です」
「ごめんね。俺も、ちょっとどう切り出したらいいか迷ってて」
期待しちゃうけどいいんだよね、と続けられて、いいです、とだけ返した。こっちだって期待してるんですよ、今のやり取りで期待爆上がりですよ、なんてことはさすがに言えなかった。
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