バレたら終わりと思ってた5

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 夜というよりはまだ夕方って時間だったけれど、早めの夕飯を済ませたあと、躊躇いのない運転で連れて行かれたのは、ラブホじゃなくて普通のホテルのツインルームだった。目当てのラブホでもあるのかと思ってたけど、どうやら予約してたらしい。
「予約までしてたなら、最初から今日はお泊りデートでって誘ってくれても良かったのに」
「そうなんだけど、ちょっとガッツき過ぎてるような気もして。男の子の君とは初デートなのに、って思ったら余計に、エロいこと期待してるって思われながらデートするのも避けたかったし」
「今までのデートで避けてた分、エロいことも期待されてるって、ちゃんと思ってましたよ。というか次こそ、自分だけ気持ちよくして貰うんじゃなくて、あなたを気持ちよくしてあげたい。って思って、張り切ってるくらいなんですけど」
 前回あんなことをしておいて、エロいことなしの健全デートなんて考えるわけがないのに。
 でも相手はこちらもしっかりその気だった事実に、そこそこ驚いているらしい。
「でももしそういう雰囲気になったとして、行くのはラブホだと思ってました」
「ラブホねぇ……男同士で利用できるとこもあるみたいだけど、実際に男同士で使った経験なんてないし、慣れないことして失敗したくなかったっていうか、万が一でも嫌な思いさせたくなくて」
 男でもいいよと言ってくれたこの人は、男女なら出来ることが男同士だから出来なくなるのはオカシイと言いながらも、それで変な目で見られたり嫌な思いをして欲しくないとも言ってくれるような人だから、色々と考えてくれたんだろう。
 こんなに気遣ってくれるこの人に対して、女装しとけば避けれそうな問題は女装しとけば良くない? って考えは、あまり誠実ではないかもしれない。
 なんて反省してしてる間に、相手もなにかに思い当たった様子で目を見張っている。
「って、もしかして、男の子って知られた後なのに女装してきたの、まさかラブホはいる想定とかしてた?」
「まさかってなんですか」
「あー、ごめん。そっか、そういうの、考えてくれてたんだ。全く気付いてなかった」
 ここで、ありがとう嬉しい、って笑ってくるのはズルいなと思う。
「恋人っぽいこともっとしたいって思ってたの、そっちだけじゃないんですからね」
「そっか」
「男ってバレたら振られるって思ってたからはぐらかしてただけで、ずっと、本当に女の子だったらセックスだって出来るのにって、私だって思ってましたよ」
「そっか」
「ほんとは男の俺とでも、したいって思って貰えるなら、喜んで抱かれますよ」
 声音を地声に戻して俺と発言しても、相手は嫌な顔をするどころか、口元をへにょりと緩ませている。
「もちろん、したいよ」
 はっきり断言されて、ホッと息を吐いた。
「顔にやけてます」
「うん、知ってる」
 照れ隠しの指摘に、相手はニヤけた口元を隠すように片手で覆ってしまう。
 照れ隠しだったのに、なんだか余計に恥ずかしい気がしてきて、思わず視線を彷徨わせてしまうけれど、目に入ってくるのは綺麗にベッドメイクされたベッドなので、気持ちが静まる気配がまるでなかった。というか、逆にめちゃくちゃ意識してしまう。
「えっと、先にシャワー使う?」
 ベッドを凝視していたら、横からそんな言葉がかけられて、思わず肩が跳ねてしまった。
「え……」
「あー……じゃあ俺が先にシャワー使ってもいい?」
「あ、はい。はい、もちろん」
「うん、じゃあちょっと行ってくるね」
 妙に慌てた態度になってしまったけれど、相手は特に何も指摘せずにバスルームに消えていった。
 一人になって、数度深呼吸を繰り返す。
 そういや意気込みばっかり膨らませて、エッチなことをする手順とか方法とかまであまり考えていなかった。
 シャワーをと言われて真っ先に考えて、一瞬動きを止めてしまった原因は、この女装をどうするかを全く考えていなかったせいだ。

続きました→

 
 
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