バレたら終わりと思ってた7

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「えっと、準備、する?」
「どんな?」
 どんな準備が必要かを必死で考える。
「その、きれいに洗う、とか……?」
「そうだね。で、自分で浣腸とかしてみた経験は?」
「え……」
「うん。やっぱないよね」
 浣腸という単語に驚いているうちに、相手はあっさり結論を出してしまうが、もちろんそんな経験はないので当たっている。
「というか出来ればお腹の中も洗ったほうがいい、ってのも知らなかったよね?」
「う……はい」
 疑問符はついているみたいだけど、そんな確信を持った顔で言われたら頷くしか出来なかった。
「どうしようか」
「ど、どうしましょう?」
「あー……じゃあ、ちょっと一緒にやり方学ぼうか」
「は? えっ? 学ぶ???」
 口先からも頭の中にも盛大に疑問符を飛ばしてしまえば、相手はちょっと待ってねと言って立ち上がる。
 何をするのかと思ったら、すぐにスマホを手に戻ってきた。
「俺がアナルセックスのやり方調べた時に参考にしたサイト、一緒に見よう」
「え、えぇ……」
「嫌そうだけど、さすがにもうちょっとお互いに、意識のすり合わせが必要だと思うんだよな」
 どうしても嫌ならアドレス送るから後で読んで、現段階でどこまで出来そうかメッセージ送ってくれるんでもいいよ、とは言われたけれど。
「そしたら今日はどうするんです?」
「さっきヤダって言われたけど、前回と同じでも俺は満足。あとはまぁ、余裕があったらでいいけど、俺もちゃんと興奮してるってのを感じて欲しいかな」
 同じように手とか口とかで気持ちよくしてくれたら嬉しい、と柔らかに笑われて、ううっと言葉に詰まってしまう。
 相手の提案に乗ってしまうのもありかなとは思うけれど、抱かれる気満々だったのも事実だし、出来ればちゃんと抱かれたかった。抱いて貰えたって事実があるのとないのとで、多分、安心感が違うから。
 相手がいくら男の子でも問題ないって言ってくれても、どうしても、今までは女性しか恋愛対象にしてこなかった人、という事実が頭の隅をチラついてしまう。それに、素の部分を知られていくうちに、振られるだろう予感だってある。
 好きだと言ってくれているうちに、抱かれてしまいたかった。
「えと、じゃあ、読みます」
 意を決して告げれば、相手はわかったと言ってスマホを弄りだす。そして差し出されたスマホに表示さされた画像と文章とに、一通り目を通した。
「どう?」
 出来そう? と聞かれて、やります、と応える。だって別にそんな怖いことは書いてなかった。ちゃんと気持ちよくなれるとも書いてあった。
「でもその、浣腸、薬局で売ってる、って……」
「ああうん、持ってきてる」
 ですよね。と安堵する気持ちに落胆が混ざるのは、やっぱり尻込みする気持ちがあるからだろうか。だって浣腸なんてしたことがない。
「手伝う?」
「え゛っっ」
「いやその、初めてだろうから」
「けど、さすがに恥ずかしすぎます、よ」
「だよね」
 じゃあこれ、と渡されたイチジク浣腸を手にバスルームへ向かう。
 浣腸自体は、そこまで難しくもなかった。というか、初めてだったけど多分問題なく出せたと思う。
 問題は、と思いながら鏡を見つめてため息を一つ。
 メイクを落とすつもりで化粧ポーチも持ち込んだのだけれど、いまひとつ踏ん切りがつかなかった。
 脱いだらどうせ男の体なんだから、メイクはない方が自然でいいと思うって言われたけど。前回もちゃんと興奮してたって力説されたけど。
 結局、メイクは落とさずにバスルームを後にすれば、相手は当然、驚きに目を見張っている。
「え、なんで!?」
「すみません」
「謝る必要はないんだけど、でも、女装にこだわる理由は知りたい。俺が男の子のままでいいよって言うの、やっぱり信用できない?」
「信じられないわけじゃないです。ただ、俺が、男のままの自分に、あまり自信がないってだけで……」
 だってあなたがずっと好きって言ってくれてたのはこっちの私だし。という訴えに、相手はそれはそうなんだけど、と難しい顔を見せる。難しいというか、どうやら悩ませてしまっているらしい。

続きました→

 
 
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