どうしよう。逆に、女の子の姿じゃ抱く気になれないとか言われてしまうんだろうか。
脱いだら結局は男の体なんだし、顔だけ女の子なんて違和感が酷くてむしろ萎える。とか思っている可能性だってある。
多分、思ってても言わないけど。言わないだろうからこそ、本心でどう思っているのかわからなくて怖い。
もしかしたら、メイクはない方が自然でいい、というのは、それを遠回しに伝えていたってだけかもしれない。自信がないって言っちゃったから、これ以上、メイクを落としてこいと強く言えないのかもしれない。
どうしよう。自分から、やっぱりメイクを落としてきますって、言うべきだろうか。
そんな風にグルグルと考えて迷っていれば、先に口を開いたのは相手の方だった。
「あのさ、俺が君のどこに惚れてるか、知ってる?」
「え……?」
こっちおいでよと呼ばれて、ベッドに腰掛けて待っていた相手の前まで近づけば、隣に座るようにと促される。従えばそっと片手が握られた。
自分のよりも大きくて温かな手に包まれて、少しばかり肩から力が抜ける。力が抜けてから、随分緊張しているらしいことを自覚した。
「こっち向いて」
その言葉にも素直に従えば、真剣な顔がじっとこちらを見つめている。気まずいような恥ずかしいような気持ちで、視線が泳いでしまったけれど、それもやっぱり、俺を見てと促されてしまう。
「あ、の……」
「可愛いよ。凄く、可愛い」
「うぇっ!?」
今までずっと、男バレを防ぐためにあまり接触しすぎないようにしていたせいで、この至近距離でド直球に可愛いなんて言われるのは初めてで焦らずにはいられない。
「俺の女性の好みを意識して、頑張ってくれた結果だって知ってるから、余計に可愛く感じてる部分もあるかもな」
キスしていい? と聞かれて軽く頷けば、そっと唇が触れ合って、でもすぐに離れていく。そのまま深く口付けて、押し倒してはくれないらしい。
自分から追いかけるように再度口づけて、先をねだるように舌を差し出したら、このままなだれ込んでしまえるだろうか。なんて想像はするものの、自分からその一歩を踏み出す勇気はなかった。
「この前、気持ちよく喘いでくれてる最中に、俺が何度も可愛いって言ってたのは覚えてる?」
「そ、そりゃ……」
「でももっと前から、言わなかっただけで可愛いとは思ってたよ。男の子に可愛いって褒め言葉にはならないよなって思って言ってなかっただけで、俺は、メイクを落とした君の素顔も、普通に可愛いなって思ってる」
「え、えと、ありがとう、ございます?」
言いながら、お礼を言うような場面だろうかと疑問に思ってしまったのが、そのまま声に乗っていたようで、相手がクスっと小さく笑う。
「嫌じゃないなら良かった」
「こ、恋人に、可愛いって言われて嫌なわけない、です」
「そっか、嬉しいな」
「そりゃ、この顔で嫌な思いしたこともありますけど。背が低めなのもコンプレックスありますけど。でも、そのおかげで、あまり違和感ない女装が出来てるのも事実ですもん」
「あまり違和感ない女装が出来てるのは、顔とか身長がってより、君の観察力とか努力の結果な気がするけどね」
「え?」
「めちゃくちゃ研究して、練習もしたって言ってただろ。しかもそれ、俺に女って思わせるためだけの努力でしょ」
そういやそんなこともぶち撒けたっけ。あの日はどうせもう最後だって思ってたし、別れたくないなんて気の迷いだと思ってたし、だいぶヤケになってたから、言えばドン引きだろうことをむしろ率先して口にした。
「そういうとこにさ、凄く惹かれてる」
「えっ?」
「俺が君のどこに惚れてるか知ってるか、って話」
「え? えぇっ?」
ドン引きだろって思ってた話が、惚れてる理由としてあげられたらしいことに、混乱ばかりが加速して意味のある言葉が出てこない。
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