聞きたいことは色々9

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 何がいいのかは結局わからないものの、その後も時々「いいね」と言われながらお腹の中を探られて、どんどん息が上がっていく。
 当然そんな場所を他人に弄られるのは初めてで、人の手でされてるって興奮は間違いなくあるんだけど。でもきっと、相手が上手いんだろうなとも思う。
 気持ちいいかは大事、みたいなことを言ってたし。初めてが彼で良かったと思わせる自信がありそうだったし。
 なんでそんなことを考えてしまうかと言うと、自慰では感じたことのない場所で、感じたことのない快感を得てしまっているからだ。
 自覚しているイイ場所は、多分意図的に避けられている。触れられた時にしっかり反応してしまったから、気づいてないとは思えないのに、そこをしつこく弄ったりはしてこない。
 自分からイイ場所を申告して、もっとちゃんと弄ってってお願いしないと、触ってくれないのかもしれない。
 協力するなら手加減がどうとか言ってたけど、つまりは意図的に感じる場所を避けて、この時間を引き伸ばしてるってことなんだろうか。申告されるより自分で探る方が断然楽しいとかも言ってたし、その可能性は高そうだった。
 でもやっぱり手加減の意味がわからない。だって自覚してるイイトコを執拗に弄られるより、今のほうがじわじわ気持ちがいい。知らなかった快感に酔いしれるみたいに、甘く喘いでしまう。
 恋人っぽい扱いを全然して貰えてないのに、あっさり喘ぎまくってて、そんな自身の体にガッカリではあるけれど。恋人とのセックスに夢見過ぎと言われたら、多分きっとそうなんだろうとも思うけど。
 「いいね」は繰り返されるのに「可愛い」はあれきりなのも、あえて言わないようにされているみたいで寂しい。もしあの時、素直に嬉しいって言ってたら繰り返してくれてたんだろうか。素直に嬉しいって言っても、結局あれきりだった可能性のがやっぱり高いだろうか。
 恋人って言ったって形だけのものなのはわかってるから、好きと言って欲しいとまでは思わないけど。自分だって相手に好きだなんて言えないんだけど。
 でも体の気持ちよさ優先というか、気持ちよければいいよねってセックスじゃなくて、もうちょっと甘い雰囲気が欲しかったと、どうしても思ってしまう。
 キスだって最初に少し長めにされて以降は、軽く触れ合うものすら与えられていない。肌を撫でてくれる手の平もない。
 お腹の中をいじられて気持ち良く喘いでしまっているけど、「いいね」以外の言葉が欲しい。この体を楽しく弄り回してるだけって事実をせめて隠して欲しいし、仮にも恋人なんだから、できれば恋人を抱こうとしている男の顔をしていて欲しい。
 楽しげに煌めく瞳じゃなくて、もう少し熱を持った瞳で見つめられてみたかった。なんて思いながら相手の顔を見つめてしまえば、言いたいことがあるなら言っていいよと笑われてしまった。
 気持ち良さそうに喘ぐ割にずっと不満そうだよね、と続いた言葉に、不満を言ったところでちゃんと伝わるのかを危ぶんでしまう。この人にとっては、これが「恋人扱いしたセックス」なのかも知れないし。
「なら、キス、して下さい」
 もっと恋人らしい甘い雰囲気が、とか言っても伝わらないかも知れないけれど、キスしてなら通じるはずだし、拒否されることもないだろう。
 そんなこちらの思惑通り、わかったと短く答えた相手がグッと顔を寄せてくる。
 さっきと同じ様にチュッチュと軽く吸うみたいなキスを数度繰り返してから、じわじわと深く触れ合うようになっていく。
 上顎を舌先でくすぐられるのはやっぱりゾワゾワと気持ちよくて、しかも今回はお腹に彼の指がある。快感にキュッとお腹に力が入ると、そこにある相手の指を強く意識してしまう。だけでなく、お腹の快感も増してしまう。というかキスと連動して、指の動きが加速している。
「ん、んっ、んんっぁあっ、ま、まって、まって」
 強すぎる刺激に相手の肩を押せばキスは中断してくれたけれど、お腹の中を蠢く指の動きはそのままだ。
「待つわけないよね」
「あっ、あっ、んぅうっっ」
 再度口を塞がれて、指先に狙ったように今までは避けられていたイイ場所をグリグリと押し掻かれて、あっさり頭の中が白く爆ぜた。

続きます

 
 
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聞きたいことは色々8

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 こちらの不満を興奮に変えて、相手は喜々としながらこちらの服を剥ぎ取っていく。借り物の部屋着はゆったりとして防御力ゼロだ。
「お、俺だけ脱ぐんですか?」
「脱がせていいよ?」
「って言ったって」
 協力してくれる気ないですよねって感じに、相手はどこからか取り出したローションボトルの蓋を開けている。その服に手を伸ばしていいのかすら迷う、躊躇いのない動きで次へ進もうとしている。
「はい、足開いて」
「服……」
「がんばれ」
「って何を!?」
 相手は面白そうに笑いながら、有無を言わさずこちらの足を開かせて、その間に濡れた手を差し込んでくる。
「ううっ」
「こんなに近くにいるんだから、俺の服に手ぇ届くでしょ」
「じゃあ一旦止まっ」
「やだ」
 止まってくださいと言い切る前に拒否されてしまった。
 なんなんだとムッとするが、相手はますます楽しげだ。ほんと、いい性格してる。もしくは性癖が色々オカシイ。
「絶対面白がってる」
「実際面白いもん」
 で、どうすんの? と興味津々に聞かれて、もういいやと相手の服に手をかけ強引に捲りあげる。自身が着てたものと同じようにゆったりとした部屋着は簡単に頭を抜けたけれど、腕に絡まったその先はやはり相手の協力が必要そうだ。
「ちょ、ほんとに、一旦」
「やっぱここ自分で弄ってるよね」
 腕に脱ぎかけの服を掛けたまま、こちらの訴えも完全スルーして、アナル周りをクニクニと撫でていた濡れた指先がチュクっと押し込まれてくる。ゾワゾワと肌が粟立って、どうしたって期待でお腹の奥がキュンと疼いてしまう。
 脱がし途中の相手の服をぎゅっと握りしめてしまえば、相手が微かに笑う気配がした。
 この期待はどこまで相手に伝わってしまったんだろう。恥ずかしいのか腹立たしいのか悲しいのか、よくわからない感情が胸の中に渦巻くが、それに意識を向ける余裕はない。
「指、いれるよ」
「うぁっ、んんっっ」
「声、噛まなくて平気だから」
 聞かせて、と促す声はなんだか甘くて、でも頷けるわけがない。嫌だと示すために首を横に振れば、やっぱり笑われた気配がする。
「いい場所、自分で教えてくれる気ある?」
「そ、なの」
「まぁ言えないなら勝手に探るだけなんだけど」
 わかってる? と聞かれても、もちろん何もわからない。
「俺は自分で探る方が断然楽しいけど、そっちは色々不本意っぽいからね。協力してくれるなら手加減するって意味」
 相手は服を脱ぐのすら協力してくれないのに、協力しろなんて言われても素直に頷き難い。というか、自らいい場所を申告しろなんて言われても、協力だの手加減だのとどう繋がるのかイマイチ実感がわかなかった。
「じゃあまぁ、教えてくれる気になったら素直にイイって言うといいよ」
 相手はこちらに協力する気がないと判断したらしい。てか判断が早すぎないか。そんなにわかりやすく顔に出たんだろうか。
「ぁ、ぁっ、ま、まって、まって」
「待つわけないよね」
「ひうぅっ、ん、んっっ」
「いいね」
 何が? と思った矢先、可愛いと相手の口からこぼれた言葉に、キュンと胸が高鳴ってしまう。自分より数段可愛い人に、可愛いなんて言われる違和感もあるんだけど。
 だって一応ちゃんと恋人になったはずだった。恋人として抱かれる覚悟でここにいるのに、眼の前の相手が恋人なんだって実感が欠片も湧いてなかったから、可愛いなんて一言にも盛大に反応したんだと思う。
「可愛いって言われたら嬉しい?」
「ち、ちがっ」
「そう? 体は嬉しそうにしてたけど」
 素直な体だよねと言いながら、相手の指にお腹の中を擦られて、ビクビクと体が小さく跳ねてしまう。
「んああっっ」
「ほらこことか。かなり良さそう」
「やっ、やっ、んんんっっ」
「体は全然嫌じゃなさそうなんだよねぇ」
 またしても「いいね」と言って、相手が楽しげに笑った。

続きました→

 
 
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聞きたいことは色々7

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 結論から言えば、振って帰るのではなく、お付き合いを了承して寝室へ移動することになった。
 だって熱烈に口説かれて本気で好きになった後ポイ捨てされるより、特別本気で好きってわけじゃなくても抱きたい程度の興味は持ってくれてる相手と恋人になる方が、多少はマシに思えた。どっちみち1度抱かれたら相手の気が済むんだったら、本気で好きになってしまってからより、こちらの好意が育つ前のがいいだろう。
 別に恋人にならなくたって抱かれさえすれば相手はそれで満足するのかもだけど。さすがに恋人でもない相手と初エッチを経験するのは悲しすぎるし、多分それもあって相手から付き合ってと言ってくれたんだろうし、そこは相手の申し出に甘えておくことにした。
「そんな悲壮な顔しなくても」
 苦笑する相手に、誰のせいだと思ってと言いたいのをグッと堪える。どうせ言ったって状況が好転するわけじゃないし、気持ちが晴れるわけでもない。
「まぁそれはそれで興奮しなくもないんだけど」
「なんすかそれ」
 嫌がられて興奮とか変態っぽいですよと言えば、嫌なんだ? と意地悪く聞き返されてしまう。嫌じゃないと思ってるわけではないんだろうから、嫌だとはっきり言われたいのかも知れなくて、ますます変態っぽいなと思ってしまった。
「ヤダって言わないんだ」
「言ったら喜びそうだったんで」
「嫌がられてなくて嬉しいよ」
 にこっと軽やかに振りまかれた笑顔はわざとらしくて、なのにドキッと胸が高鳴るくらい惹きつけられてしまうから悔しい。だって絶対、自身の顔の良さをわかってやってる。
 しかもその笑顔がスッと近づいてきたかと思うと、チュッと小さな音をたてながら唇を吸っていく。
 あっけなく奪われていったファーストキスに、やはり少し残念な気持ちが湧いた。こんなものか、と思ってしまうのは、きっと相手のことを想う気持ちがないからなんだろう。
 抱えていた憧れは、とりあえずで恋人になった相手とではやはり叶えられない。好きだという気持ちが向かう相手と、両想いって形でしたかった色々を、このままこの人に全部持っていかれてしまう。
 残念に思う気持ちを隠すように瞼を下ろせば、再度相手の唇が柔らかに押し当てられた。
 何度か角度を変えて繰り返されながら、キスはだんだんと深いものになっていく。ついでのように押し倒されて口の中を蹂躙されながら、口の中に溜まっていく唾液をどうにか必死で飲み下す。そんな中。
「ん……」
 上顎を舐められてゾクリと肌が粟立った。
「んっ、んんっぅうっっ」
 それを相手も察したらしく、そこばかりを執拗に舌先でくすぐられてはたまらない。さすがに相手の肩を掴んで押し戻せば、楽しそうな視線とかちあって眉が寄ってしまうのを自覚する。
「気持ちよくてびっくりしちゃった?」
「わざわざ言わなくていいです」
「でもちゃんと気持ちいいかは確かめておかないと」
 初めての相手が俺で良かったって思ってもらいたいし、と続いた言葉に、それは無理、だなんてことはもちろん口に出したりしなかったけど。
「ふふっ、凄い不満そう」
 口にしなくても伝わったっぽいのに、相手は随分と満足げで、やっぱり変態なんだなと確信する。
 こんな人だと思わなかった、なんて言えるほど、相手のことを知っているわけではないのに。ほんの数年先に生まれただけの人のなのに。巻き込まれた被害者として仕方なく高校を変わったのではなく、自らの行いによって退学させられた問題児だったというのが正解っぽいのに。
 先生なんて呼んで慕っていた時期がわずかにあったのと、相手がゲイだとはっきり認めたせいで、勝手に仲間意識と信頼を募らせて、相談なんてしてしまったのが間違いだった。

続きました→

 
 
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聞きたいことは色々6

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 じゃあ何を迷ってたのと聞かれて、付き合いたいのかどうかだと答えて、ついでのように、あなたを好きなるのはなんだか怖いと付け加えておく。
「怖い? 好きになるのが?」
 どんな風にと聞かれても、そこは「なんとなく」でしかないんだけども。
「それは俺だからなの? それとも誰が相手でも怖く感じそうなの?」
 そういやアナルセックス未経験なこと以外は聞いてなかった、と続けた後。
「恋をしたことは? 告白したことは? 誰かと付き合ったことは? もしかしてそういうの全部、経験なかったりする?」
「好きになった相手位は、いましたけど」
 やっぱりって顔をされたし、相手が何を考えたかはわかったし、それも多分当たってはいるんだろう。付き合ってって言ってくれたのがこの人じゃなくても、こんな状況だったら、その相手を好きになるのは怖いって同じように感じる可能性はかなり高いと思う。
 と考えたところで、何で怖いのかがわかってしまったような気がする。怖いのは相手が誰かって部分じゃない。
「あー……」
 なるほど、と思ったら気が抜けた音が口から漏れてしまった。
「自覚した?」
「自覚は、しました。けど多分、あなたが考えてるのとは別のことで」
「別のこと?」
「こんな状況で付き合ってって言ってくる男を好きになるの、怖くないわけ無いんですって。逆にこんな状況じゃなければ、俺が好きで俺と付き合いたいって思ってくれてるんだったら、あなたが相手だったって、嬉しい付き合いたい好きになりたいって思ってたましたよ。多分」
「なるほど。まぁ確かに、お前におとなしく抱かれて貰うための提案でしかない、とも言えなくないからな」
「ほらぁ。別に俺のこと好きでもなんでもないのに、ゲイなら付き合ってとか付き合うから抱かせてとか、そんなこと言っちゃう男を好きになったら、結局俺ばっかり相手が好きな片想いみたいになりません?」
 そんなの、叶うことのない片想いを抱える以上に、辛い片想いになりそうだ。
「そこは自分が好きって思う以上に、相手に惚れさせてやる、くらいの気概を持てって言いたいとこなんだけど」
 まぁ無理だな、と断言されてしまったけれど、こちらも、無理ですねと即答しておく。
「でもまぁ、それでもやっぱり、身近なとこで恋人探したいってなら、最初の相手は俺にしとけば、みたいには結構本気で思ってるけど?」
「でも俺のこと、きっと好きにはならないですよね?」
「ならなくないし本気で口説き落としてもいいけど、そっちのがなんか後々恨まれそう」
「なんですそれ。てか嘘ですよね?」
 変な期待持たせないでくださいよと苦言を呈せば、期待持たせたいんじゃなくてどっちかって言ったら警告、などと返ってきて全く意味がわからない。
「今夜お前が俺に抱かれることなく帰るなら、俺はお前を本気で落とすけど、どっちかって言ったらお前を落とすゲームを楽しむ感じで、お前が俺を好きになって俺に抱かれた時点で俺は満足してその後は割とどうでも良くなるかな。それでも良ければ、もしくはそれを望むなら、俺を振って帰ればいいよ」
 熱烈に口説かれる経験をしてみたいなら楽しませてあげられる気がするし、それもいいかもね、などと何やら思案し始める相手に慌てて待ったをかけた。
「ちょ、待って下さい。思考が追いつかないっつうか、えと、口説いて俺が本気になったら満足してポイする宣言?」
「そうだね。だいたいそれで合ってる」
「そんなの言われて落ちるわけない、とは思わないんすか」
「落ちると思ってるから教えてる。ついでに言うと、だから言ったよね、って言えるようにしてるだけだし、簡単には落とされないぞって抵抗してくれたほうがこっちとしても楽しい、って理由もある」
「うわぁ」
 ドン引きなんすけどとと言ったら、相手はむしろ誇らしげに笑って見せた。

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聞きたいことは色々5

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「どこまで本気なんすか?」
 まさか酔ってないですよねと思わず確かめるくらいには、信じられない。いやまぁ顔に騙されてると言われたら、実は基本抱く側って話は信じそうではあるんだけど。
 顔だけじゃなく、勉強教えてくれてたときの柔らかな雰囲気とか、退学理由に襲われた的な話が混ざってたせいで、勝手に抱かれる側と思い込んでいただけとも言えなくない。
 まぁ柔らかな雰囲気は外向きというか、バイト先の子ども対応だっただけなんだろう。いや、結構初っ端から挙動不審だった自覚はあるから、そんな態度で警戒されたりしてなきゃ、会社でだってもっと柔らかに対応してくれてたかも知れないけど。
「全部本気だし酔うほど飲んでないでしょ、まだ」
 そうだ。だって雑談もないままに本題に入ったし、お互いにグラス半分だって飲んでいない。
「えと、……あー……」
 さっき恋人立候補っぽいことも言ってたけど、それも含めて本気ってことなんだろうか。だとしたら、付き合ってもいいみたいに思うような何かが、自分にあるってことだろうか?
 いやでもこんなの面と向かって聞くの躊躇う。
「やっぱり本気にしてない?」
 帰るって言い出すかと思ってたと続いた言葉に、そういう選択肢もありなんだと少し驚く。てか帰っていいのか。
「何もなく帰れる気でいるの、って、そっちが言ったんですけど」
「そうだけど、薬とか盛ってるわけじゃないし、本気で嫌がられたらさすがに抱いたり出来ないって」
 確かにそれはそうかも知れない。
「で、迷ってるのは抱かれてく気がある、ってことでいいの?」
「迷ってるのはそこじゃなくて」
「じゃあ何?」
「その、本気で俺と恋人になってもいいとか言いいました?」
「ああ、そっちか。好きになっていいよは本気で、好きになったから付き合ってって言われた時に他に恋人居なかったらOKするかな。くらいの気持ち」
 なんとも微妙な返答だった。いやでもモテるんだろうから、付き合ってって言われた時にOKするか断るかが基準とか言われても、なんか納得ではあるんだけど。
「ちなみにOKする基準って何かはっきりあるんですか?」
「その相手とセックスできると思えるかどうか?」
「ド直球じゃないすか」
 聞かなきゃ良かったと思ったままを口にすれば、大事なことだろと反論されてしまう。
「お前だって、恋人になった先にセックスを考えてただろ。逆に、その気にならない相手と付き合う意味って何?」
「それはそうですけど、それを基準に付き合うかどうか決めてるってのは、出来れば知りたくなかったって言うか、もうちょっとオブラートに包んでっていうか、あー……」
 いやもういいですと言葉を切って、それよりどうするかを考える。
 好きになっていいよって言葉は本気、なんて聞いてしまった後じゃ、多分どのみち好きにはなりそうなんだけど。身近に抱く側が出来るゲイを見つけてその相手と恋愛したいこちらの希望と合致した人物とも言えそうなんだけど。
「随分迷うね」
「あ、すみません」
「付き合ってって、言わないの?」
 一応待ってるんだけどと言われて、やっぱり何を迷っているかはバレてるんだなと思う。
「色々ぶっちゃけた後だし、じゃあ、今回は特別に俺から言おうか。今すぐ俺と、付き合って、って」
「え、今?」
「そう。今。この瞬間から」
 迷ってたのそれでしょと言われて、慌てて首を横に振った。そんなこと、欠片も考えていなかった。

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聞きたいことは色々3

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 飲みに行こうなんて誘われたら、居酒屋とかバーとかに連れて行かれるものだと思うだろう。
 どこに住んでるか聞かれて答えれば、方向一緒で良かったと言われて数駅移動した先の相手の最寄り駅で降りるよう促され、迷いなく進んでいく相手の半歩後ろを歩くことほんの数分。こっち、と言って相手がマンションの入口を抜けていくのを慌てて引き止めた。
「ちょ、待って下さい」
「何?」
「なに、って、飲みに行くんですよね?」
 この上に相手の住む部屋があるのだとして、自宅近くで飲みたいというならそれでもいい。けれど、1階には複数店舗が入っていて営業している飲食店だってあるのだから、それらを素通りでマンションそのものへ入っていこうとするのはどういうことなのか。
「荷物置きたいとか、もっとラフな服で飲みに行きたいとかなら、先店入って待ってますから」
「いや、宅飲み」
「なんで!?」
「なんで、って」
 人に聞かれたくない話題がメインになるだろうからと言われてしまえばそうなんだけれど。
「いきなり宅飲みとかハードル高くないすか。てかたいして知りもしない男を、よく自宅に入れようなんて思えますね」
「いや、そこそこ知ってる男だし。俺がここ住んでんの知ってるやつ多いし。家入れたからって襲われる心配もなさそうだし?」
「そりゃ、そんなことしませんけど」
 だろ、と応じる相手は楽しげに笑いながら、酒もつまみもそれなりに揃ってるから寄っていけよと誘う。
「外で飲むより安く済むし、ダラダラ飲めるし、繰り返しになるけど、人目やらを気にしなくていいのは絶対楽だぞ」
 同じ指向のヤツに相談したいことがあるんだろと、昼間のやりとりを持ち出されてしまうと断りにくい。相手はこちらのお願いを聞いてくれるだけでなく、安心して話ができる場所まで提供しようとしてくれている。
「じゃあ、お邪魔します」
 結局そう伝えて相手宅へ向かったものの、部屋にお邪魔してからもそうすんなりと飲み会が開始されはしなかった。
 だって、宅飲みだっていうのに途中で何も買ってこなかったことに気づいてなくて、つまみを用意する時間が必要だなんてこと、全く考えていなかった。というか相手がつまみを作る気だなんて、想定外すぎた。
 当然、相手宅で飲むからと言って、泊まるつもりなんかも欠片だってなかった。
 明日は休みだし、相手が自宅で寛いで飲みたいというのを止める気はないけれど、自分まで部屋着を借りて着替える必要は感じない。少し話を聞かせてもらって、遅くなる前には帰るつもり満々だった。
 なのにそれもなんだかんだと押し切られて、シャワーも借りたし、寝間着代わりのラフな部屋着に着替える羽目にもなっている。
 そうしてリビングに戻ったときには、テーブルの上には何やら色々と並んでいた。
「え、凄っ」
「缶詰とかレトルトとか開けてレンチンがメインだから」
 たいしたことしてないよと言われたけれど、充分「たいしたこと」だと思う。だって皿に移されているし、葉物野菜が追加されたりで彩りもいい。
「こんな宅飲み経験ないんすけど」
 コンビニとかスーパーの惣菜をそのまま出すのが当たり前で、皿に移し替える手間を掛けるような友人は一人も居なかった。基本茶色いばっかりで、彩りを添えるなんて発想もなかった。ついでに言うなら、つまみはスナック菓子オンリーなんてこともそこそこあったような気がする。
 言えば、そういうのが楽しいのは人数居るときじゃない? と返されて、そういや誰かと二人きりで宅飲みという経験が初めてなのだと気づいた。自分の性指向を自覚したのは酒が飲めるようになる前だったからだ。
 みんなに混ざってワイワイするのは可能でも、個人的に仲良い友人、というのを作るのが苦手になった。
 だってきっと、好きになってしまう。最初からわかりきっている、叶わぬ恋、ってのを抱えてしまう。
「先に始めててもいいけど、俺が戻る前に酔っ払うのはなしな」
 そう声がかかって、慌てて意識を相手に向ける。
「いや待ってます。あ、急ぐ必要もないっすから」
「じゃあ、相談したいことでもまとめといて」
 何を考えていたのか、顔にでも出ていただろうか。そうしますと頷けば、相手もシャワーを浴びるためにリビングを出ていった。

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