聞きたいことは色々2

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 他に聞きたいことはと言われても、ゲイが事実なら相談乗ってくださいよと気軽に言える雰囲気はなかった。襲われたわけでも犯されたわけでもなく、退学を過去のこととして吹っ切れているなら、それはそれとして色々話を聞いてみたいのだけど。
 そんなこちらの躊躇いはダダ漏れなのか、相手は不快そうにため息を吐き出している。
「一応聞くけど、俺を好きだとか言い出す可能性ある?」
「え、いや、さすがに。あ、感謝はしてますし、恋愛的な意味での好きはないけど、好意はあります。半年だけだったけど、あなたが家庭教師してくれたから今の俺がある、みたいなとこがあるのは事実ですし」
「なんだそれ」
「勉強の面白さ、みたいなの教えてくれたのが、あなただったんですよ」
 そっか、と吐き出す声はそっけないのに、でも少しだけ気配が緩んで、どことなく嬉しそうに見えた。
「もう一度会えたら絶対お礼言いたいとは思ってたんで、良かったです」
 ありがとうございましたと頭を下げれば、相手は驚きを見せたあとで少し気まずそうな顔になる。
「ああ、うん。あー……こちらこそ、わざわざ、ありがとう」
 多分、こちらの目的が感謝を伝えることだったと認識したんだろう。聞きたいことじゃなくて、伝えたいことがあって躊躇っていただけ、と思ったのかも知れない。
「じゃあ、これでお前の気は済んだ、ってことでいい?」
 その確認に、躊躇いなく頷けたら良かったのに。
「やっぱまだ何かあるのか」
 眉を寄せて考え込む相手の気配は、またしても警戒が滲んでピリついている。
「あ、や、その……」
「言っとくけど、下衆な好奇心に付き合う気はないからな?」
「え?」
「特に隠す気ないから過去のアレコレを脅しに使うのは無理だぞって言ってんの。男とヤれるからってお前に抱かれてやるとかないから」
「いやいやいやいや」
 あまりに慌てて「いや」を繰り返すだけのバカみたいな否定をしてしまった。
「そこ否定すんのか」
「え、そりゃしますよ」
「男同士のセックス、絶対興味あると思ったのに」
「えっ、えっ、なんでわかるんすか!?」
 ほらな、という顔をされて失言に気づく。でも逆に、それを指摘されてしまったら、当初の目的も言えるような気がしてきた。
「あ、や、その、興味あるのは事実ですけど、その、あー……あの、抱きたいとかじゃなくて」
「ああ、抱かれたい側か」
「う、あ、」
 言葉に詰まれば、ふーんと言いながら品定めでもするようにジロジロ見られて、めちゃくちゃ居心地が悪い。
「未経験?」
「うぅっ……」
 そうですとも言えず、頷くことも出来ず。ただただ言葉を詰まらせていただけなのに、相手はそれを肯定と取ったらしい。まぁ、間違ってはいないんだけど。
「抱いてやろうか?」
 その言葉の意味を理解するのに、しばし時間を要した。呆然と相手を見つめてしまえば、ふいに伸びてきた手がサラリと髪を梳くように撫でたあと、ふにふにと耳を揉んでくるから、慌てて椅子から立ち上がる。だけでなく、逃げるように数歩後ずさってしまった。
「からかわないで下さいよっっ」
 相手はおかしそうに笑っていて、先程までの警戒の滲むピリついた気配は霧散している。
「お、おれは、ちょっと相談に乗ってほしいと思ってただけで」
「ゲイ仲間として?」
「まぁ、そう、です」
「いいよ」
「え?」
「相談乗るって言ってるの」
「えっ、いいんですか?」
「うん。だからいいよって」
 やっぱりおかしそうに笑った相手と、就業後に飲みに行くことが決定した。

続きました→

 
 
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聞きたいことは色々1

 中学生の頃、ほんの半年足らず家庭教師を付けられていた。息子のできの悪さにとうとう気づいてしまった親が、どっかから連れてきたその人は近所に住む高校生だったから、知り合いのツテとかでお安く勉強を見てくれそうな人を探したんだろう。
 半年足らずで終わってしまったのは先生が遠方に越してしまったからで、バカ過ぎて匙を投げられたわけでも、教え方が下手だとこちらからクビにしたわけでもない。
 どちらかというと勉強嫌いだったはずなのに、先生が来てくれる日が待ち遠しいと思う程度にはその時間を気に入ってもいたし、たった半年の付き合いでしかなかったのに、その後の人生にもそれなりの影響を受けたと思う。なんせ、彼が通っていた高校を受験し合格してもいる。
 そして就職を果たした現在、配属された先でその彼と思しき人物と再会した。といっても、本当にその本人なのかの確認は出来ていない。
 相手は全く覚えてなさそうだし、こちらとしてもそこまで確信を持てていない。なんせ、相手は名字が変わっている。
 でも絶対あの人だと思うんだよな、というくらいには面影があった。特に、口元のホクロなんかはかなり印象的だ。
 覚えてますかと聞けば済む話なのに気軽に確認できないのは、彼が引っ越した原因と思われることにも関係がある。親が離婚して引っ越したとか性が変わったとか、そんな単純な話だったら良かったのに。
 でもそんな単純な話だったら、こんなに意識してなかっただろうとも思う。確認して、お久しぶりですと笑って、ちょこっと昔話やらを懐かしんで終われていたはずだ。
 話しかけたくて、でもアレコレ確認するのも憚られて、そんな挙動不審が相手に伝わらないはずがない。
 結局相手から、何か言いたいことがあるなら話を聞く時間を作ろうかと提案されてしまって、会議室に連れ込まれてしまった。
「で、気になってるのは俺の噂?」
 告げる相手の表情も声も固い。まるで何かを警戒するようなピリつく気配をまとっている。
「は? 噂、ですか?」
「あれ? 違った?」
「違います」
 噂ってなんだろうというのは当然気になったが、じゃあ何と問われて覚悟を決める。別にそうオカシナことを聞くわけじゃない。
「あの、多分俺、あなたに家庭教師してもらってたことがあって」
「えっっ?」
 実家の場所と時期と当時の彼の名字と半年だけという部分を伝えれば、どうやら相手も思い出したらしい。
「ああ、なるほど……それは確かに、俺だなぁ」
「ですよね」
 こちらはホッと安堵の息を吐いたが、相手の纏う気配がそれで緩むことはなかった。
「当然、それ聞くの躊躇ってただけ、ってわけではないよね?」
「そ、れは、そう、なんですけど」
「気になるのはあんな時期に引っ越した理由?」
 どこまで知ってるのと聞かれて、やはり躊躇う。
「どこまでって、あ、噂ってこれか」
 色々言われてたけど何が真実かなんて知らないしと思ったところで、最初に問われた噂に思い当たってしまった。というか彼が引っ越したあと、人伝に聞いた彼の話は、つまりは噂でしかない。
「多分違う。あ、いや、どうかな。噂になっててもオカシクはないか」
 少し考える素振りを見せたあと、相手は言葉を少し変えて再度質問してくる。
「俺が引っ越した理由、なんて聞いてる?」
 もし自分が聞いた話が事実だとしたら、それを告げるのは相手の古傷をえぐることにならないだろうか。そう思って躊躇えば、過去のことだし吹っ切れてるから言っていいよと促される。
「その、同級生の男に、校内で襲われた、から」
「ああ、それで躊躇ったのか。俺が男に犯された過去持ちとか思ってた?」
「違うんですか?」
「襲われてないし犯されてもないよ」
 断言されて、またしてもホッと安堵の息を吐く。事実じゃなくて、本当に良かった。
「じゃあ、恋人と、校内でエッチしてたのがバレた方?」
「それも微妙に違うけど」
「微妙に?」
「男相手に校内でエロいことしたのがバレた、は事実だな。ついでに言っとくと、今後俺がゲイって噂を聞くこともあると思うけど、それ事実だから。隠してるわけでもないけどオープンにしてるわけでもないから、聞いたら適当に流しといて。もしくは俺に確かめればって言っといて」
「え、あ、はい」
 知りたかったのはまさにそれではあるのだけれど、こんな簡単に認めてしまうとは思わなかった。というよりも、本当にゲイなんだという衝撃を、どうやり過ごせばいいのかわからない。

続きました→

 
 
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そっくりさん探し(目次)

キャラ名ありません。全13話。
自分にそっくりな男を探しているという男に声を掛けられて、興味本位で自分のそっくりさんを探した結果、そっくりさんを探してた男と恋人になる話。
探し人に似てる男(視点の主)✕ 探してた男。

コネタのつもりで書いていたので、そっくりさんを探し当てるまでがめちゃくちゃ早いです。
そっくりさんの嫁として妹さんが幸せに暮らしてくることがわかった受けが寂しそうだったから、寂しいなら俺と遊ぶ? と誘い友だちになり、一緒に出歩いている内に意識されてるのがわかってしまったからお試しで恋人になます。
順調に交際が進展してると思ってたら相手は別れる気になってたり、自分ばっかり好きになってると言って泣くから、ちゃんと両思いになってること告げて、確かめあうエッチして、妹夫婦にも挨拶しに行くハッピーエンドです。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的描写が多目な話のタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 そっくりさん探し
2話 相手の事情
3話 観光地巡り
4話 お試し交際
5話 人の少ない観光地
6話 ラブホへ
7話 泣かれる(R-18)
8話 別れ話
9話 両思いだよ
10話 抱いて欲しい
11話 繋がる(R-18)
12話 一緒にイキたい(R-18)
13話 妹さん夫婦に挨拶

 
 
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そっくりさん探し13(終)

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 両想いを確認してセックスする仲になってから、やり取りするメッセージには少しだけ甘い言葉が増えてやり取りする頻度があがって、声が聞きたいなんていう理由で時々通話するようになって、デート先もまた少し変わった。
 存分にイチャつきたいから人が少なそうな隠れた観光スポット巡りが多いのは変わらないけど、帰りがけにラブホ利用ではなく最初から宿をとることがあったり、観光地巡りではなく互いの家に訪れたりのお家デートなんかもするようになって、お付き合いは順調に進んでいると思う。
 そんな中、相手が少し興奮気味に、妹夫婦に紹介したいと言い出した。
 先日甥っ子に会いに行った際、妹旦那のそっくりさんと深い仲になったことが、とうとうバレてしまったらしい。
 相手の休日スケジュールは当然把握してるので、妹夫婦とはそう頻繁に会ってないことはわかっている。つまり、バレるまでにそこそこ時間がかかったったのは、単に会ってなかったからというだけの理由で、とうとうバレたってよりはあっさりバレたが正しい。まぁそんな指摘をわざわざしたりはしなかったけれど。
 その前段階で、とりあえず恋人みたいな曖昧な関係だったことにも気づかれていて、別れようかと迷っていたあたりでしっかり心配されていたようだ。まぁそれも、きっと相当わかりやすかったんだろう。
 良かったと言われてホッとしたと喜んでいたから、こちらも良かったなと返したし、紹介されるのだってもちろん構わないと返した。
 こちらとしても、例のそっくりさんともう一度会えるのはちょっと楽しみでもあった。なんせ軽く挨拶して事情を説明したあとさっさと退席してしまったから、せっかくそっくりさんと会ったのに、本人同士はあまり会話が出来ていない。
 ただ、小さな子が居るからと呼ばれた先の相手の家で、待っていたのは妹さんだけだった。旦那であるそっくりさんは息子を近くの実家に預けに行っているらしく、もうすぐ帰ってくるとは言われたものの、明らかに、まずは3人でお話しましょうという雰囲気というか、つまりは思いっきり、兄の恋人として現れた男を品定めする気満々のようだ。
「本当に男同士で恋人してるんですか? 結婚も出来ないし子どもも作れないのに?」
 テーブルに向かい合わせに座って、簡単な挨拶を済ませたあとの開口一番のセリフとしては、内容にしろ声音にしろなかなかに棘がある。
「おいっ」
 思ったより歓迎の雰囲気がないのは相手もとっくに察していて、戸惑いつつもなんだか不安そうにしていたのだけれど、妹からの攻撃的なセリフに黙っていられなかったらしい。
「待って待って。大丈夫だから落ち着いて」
「でも」
「本当に大丈夫だから座って」
 声を荒げてガタッと椅子から立ち上がるのを宥めて座らせたあとで、妹さんに向き直る。
「本気で恋人してるし、それを後ろめたいとも思ってないし、誰に恥じる気持ちもないな。結婚はそのうち出来るようになるかもしれないし、必要ならパートナーシップ制度の利用を考えたっていいと思ってる」
「ええっ!?」
 驚きの声は隣から上がった。基本、今をどう楽しむかばかりに重点を置いた付き合いだったし、今後二人の関係をどうしていくつもりか、どうしたいか、なんて話は殆どしてなかったので当然だ。もちろん、パートナーシップ制度なんて単語が、今まで二人の間で出たことはない。
「って驚かれる程度には、まだ結婚やらを考えるには早い付き合いなのは確かだけどね。あとは子どもか」
 隣を向いて、自分の子供欲しい? と尋ねれば、大慌てで首をブンブンと横に振って否定してみせるから、可愛いなと思いながらくすっと笑って、俺も要らないと返す。
「てわけで、子どもに関しては、現状望んでないよ、としか言えないけど。少なくとも、自分の子が欲しくなったからって理由で放り出すような真似をする気はないよ」
 言ったところで信じられるかはわからないけど、と言えば、隣からは信じられるよと柔らかな声が響いて、妹さんは少し悔しそうな顔をした。
「でも、男同士で付き合ってるなんて、知られただけで何か言われたりするかもでしょ? 世間体とか、あるでしょ? お兄ちゃんがそうなんだって知られたら、私だって何か言われるかもしれないでしょ?」
「世間体って話をするなら、そっちだってかなり問題あるよね?」
 君の行動のせいで多分この人も色々言われたと思うんだけどと指摘すれば、不安そうな顔になって隣の男を見つめるから、どうやら自覚はあるらしい。
「何か、言われた?」
「あー……まぁ、そりゃ。でもお前が今幸せだってなら、いいよ、別に」
 過ぎたことだよと言い切るから、なぜかこちらまでホッとする。初めて会ったときの思い詰めた表情も、再会したときのやつれた様子も忘れていないせいだ。
「お兄ちゃんは今幸せ? その人のお陰で?」
「っ……それは、そりゃ、……そうだよ」
 言葉を詰まらせながらも肯定する相手は、多分相当照れている。チラッと横を向いて赤くなった耳の先を見れば、やはりくすっと笑いが漏れてしまう。
「可愛いな」
 思わず漏れた声に相手が反応して、ビクッと肩が揺れた。
「ちょ、今は、そういうのは」
 すっかり「好きだよ」に変換されるようになっているのは相手だけで、妹さんにはそこまで意味のある言葉として伝わっては居ないはずだけど。
「ああ、うん、ごめん。つい。俺と居るのが幸せだって認めて貰えて、嬉しくて」
「なんか、凄く変な感じ」
 私が知ってるお兄ちゃんじゃないと言い出した妹さんは、随分と複雑そうな顔をしている。
「俺がお兄さんの恋人なのは不満?」
 聞いたら、不満じゃないのが不満だと返ってきて、笑いをこらえるのが大変だった。
「他に聞きたいことは? 俺の年収とか聞いとく? それともお兄さんを俺にくださいって頭下げようか?」
「えっ、えっ、ちょ、何言って?」
「いやだってこれ、どう考えても、親に交際やら結婚やらの許可貰う疑似体験だよね?」
「えっ、えっ!?」
 親が居ないから妹さん相手になってるだけでしょと指摘すれば、相手はますます混乱した様子を見せたけれど、妹さんの方は諦めに似た溜息を吐き出している。そしてこちらと目が会えば、すっと背を伸ばしてから深々と頭を下げた。
「兄を、よろしくお願いします」
「これからも幸せだって言い続けてもらえるように、頑張ります」
 同じように頭を深く下げて告げれば、やっぱり隣からは戸惑いの声が漏れてくるから、顔を上げて妹さんと目があった後は二人して笑ってしまった。
 その後は、妹さんが旦那さんに連絡を入れて息子さん共々呼び戻して、一緒に食事をしながら和やかに過ごした。
 そっくりさんは妹さんから先程のやり取りを聞いて、だから言ったろと自信満々で、こんなにそっくりなんだからやっぱいい男なんだよと、若干自画自賛めいた言葉を続けて妹さんの頬を膨らませていたけれど。でもそのあとこっそり、兄である彼が会うたびに落ち着いていき、穏やかで幸せそうな顔を見せるようになったのが根拠だと教えてくれた。
 そっくりさんがアレコレ手を回して兄妹の繋がりを一度切ってしまったことを、悔やんでいるらしい。妹さんの話を一方的に信じて動いたことを申し訳なかったと言っていた。
 そっくりさんからも、彼のことをよろしくお願いしますと頭を下げられたから、先ほど妹さんに告げたのと同じ言葉を伝えてこちらも頭を下げる。
「え、ちょ、何してんの?」
「そりゃ、疑似お義父さんへのご挨拶的な?」
「ちょ、またそれ!?」
 頭を下げ合っていたから気になったらしい彼が声を掛けてきたので、何をしていたのか教えれば、相手はやはり驚きながらも戸惑っている。
「お義兄さんだって俺に妹をよろしくって頭下げてくれたんだから、そりゃあ俺だって、お義兄さんをよろしくって頭下げますよ」
 そうしていい相手なんでしょう? と言われて、困りながらもそうだけどと認める相手を見つめながら、愛しさが込み上げる。
 恋人として紹介されるだけのつもりで来たはずが、結婚の許可を貰うような場になってしまったのは驚いたけれど、でもまぁそんな疑似体験もなかなかに楽しかったし、もちろん告げた言葉に嘘はない。順番が逆になったけれど、あとでちゃんとプロポーズ的なこともしようと、愛しさとワクワクで胸を満たしながら考えた。

<終>

最後までお付き合いありがとうございました。1回分早いかなって思ったけど、キリが良いのでここで一旦お休みして、再開は4月30日(水)からを予定しています。

 
 
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そっくりさん探し12

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 ごめんと謝って、それでも一応、動いていいかと問いかける。間違いなく、言質を取るための行動でしかないから、本当に申し訳ないと言うか懲りないと言うか、恥じる気持ちはあるのだけれど。
「そんな顔しないで、どうぞ、好きに動いてください」
 そんな顔ってどんな顔だと思ったけれど、許されて動き始めてしまったので、本当に余裕がない。
 律動に合わせてあっアッと上がる声にも余裕がないというか、どうしようもなく漏れ出ている様子で、やはりだいぶ苦しそうだ。
 申し訳なくて、あやまりたくて、でも、ごめんごめんと繰り返すのも違う気がする。ついでに言えば、苦しげに耐えている姿を可愛いとはとても言えない。想い人を苦しめて楽しむ嗜癖はない。
 結果、馬鹿みたいに好きだ好きだと繰り返した。情けないことに、それ以外に言葉を見つけられなかった。
 せめて相手にも感じて欲しいと、自身の快楽をついつい追ってしまう中で、必死で相手の前立腺を狙って擦りあげる。
「ぁあああっっ」
 悲鳴に似た、それでも甘い声が響いて、躊躇ったのは一瞬だった。
「ここ、きもちぃとこ。一緒にイケる?」
 聞けば首が横に振られてしまったけれど、だからって諦められるわけでもない。わかったと返して、相手のペニスを握った。
「ひぇっ」
 漏れる短な音からでも、驚きと戸惑いの中に不安と怖れが混じっているのを感じ取る。
「嫌? 怖い?」
 さすがにこちらの意図は伝わっているはずだし、同時にされればイケはずだし、それは相手もわかっているはずだ。
「や、じゃ、ない。へぇき」
 やはり怯えは残っているようだったし、これも結局のところ言質を取っているようなものだったから、どうしたって申し訳ない気持ちはわくのだけれど。
 それを飲み込んで、一緒にイきたい気持ちと一緒にイケたら嬉しい気持ちを、思いっきり込めて笑ってみせた。
「ん、なら良かった」
「ふへっ」
 不器用な笑顔が返されて、ホッとする。
 思わず可愛いと漏らせば、さらにふへへと笑った相手が、俺も、と言った。略された「好きです」は当然伝わっていたから、やっぱり煽られてしまって、相手のペニスをゆるく握ったまま数度腰を振ってしまったけれど。すぐさま上がった小さな悲鳴に、そうじゃないだろとどうにか理性を引き戻す。
 こんなに愛しい相手を前に、自分だけが快楽を貪るセックスなんて、絶対にしたくない。
「んぁ、ぁっ、ああっ、きもち、ぃ」
 相手をイカせたくて相手に意識が向かったのと、そのために片手を使っているのとで、ガツガツと自分ばかりが快楽を貪れなくなったのは幸いだった。
 こちらの動きが鈍ったのは、相手にとっても良かったんだろう。適度な刺激に対してなら、相手の前立腺はもう、快楽を拾えるようになっている。
 とろけるような声を上げるようになった相手のペニスを扱きながら、いいところに当たるように腰を振るのにも、だいぶ慣れてきた気がする。
「ぁっ、もぉ」
「イキそ? イケる?」
「ん、はい、ぁ、あっ、いッちゃぁああ」
 相手の吐精でギュウギュウと括約筋が絞まって、たまらなく興奮する上に気持ちがいい。増す興奮に達成感と幸福感とを混ぜながら、締まる腸壁に少々強引にグッグッと強めに自身のペニスを擦り付け、自身も絶頂を迎えた。

続きました→

 
 
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そっくりさん探し11

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 自分ばかりがどんどん好きになるのが怖い、というのが払拭されたのは、触れる体の反応からも有り有りと感じ取れた。次は気持ちよくなれたら気持ちよくなれた分だけ嬉しい、の言葉通り、どこか怯えを含んでいた反応はすっかりとなくなり、うっとりと甘えた反応を見せてくれる。
 もちろん、勃起したペニスを握っても、嫌がられたりしなかった。イカせてしまわないように気をつけながら、同時にアナルの中の前立腺も柔く刺激する。
「ぁっ、ぁっ、きもちぃ」
「ここで気持ちぃの、怖くない?」
「へぇき、です」
 でも強くされたらまたイッちゃいそう、と続いた言葉に、次は繋がってから一緒にイキたいと思ってると返せば、安堵した様子でやっぱり嬉しそうに笑う。安心してとろけた顔が愛しい。
「可愛い」
 思わずこぼせば、ふふっと更に笑われて、好きですと返ってきた。
「俺も好き。可愛くて、愛しい」
「んふふっ、大好き、です」
 そう返して笑う顔は楽しげだ。
「俺も、大好きだよ」
 言いながら埋めていた指を引き抜いて、とうとう自身の準備にかかる。といってもとっくに完勃ちなので、ゴムを付けてローションをまぶすだけだけど。
 それをじっと見つめる視線には、当然気づいていた。
「今からこれが入るんだけど、大丈夫そ?」
「大丈夫じゃなかったら、入れてくれないんじゃ? って気がするから、ダイジョブ、です。けど」
「けど?」
「ちょっと触ってみても、いいですか?」
「もちろん」
 既にローションを掛けてしまったので、触れたらその手が汚れてしまうけれど。でもそんなの拭けば済む話だし、相手も一切躊躇わずに手を伸ばしてくる。
「おっきぃ、くて、熱い」
 独り言みたいな小さな呟きが漏れている。顔は股間に向いているのでその表情は読めないが、ふふっと笑う気配がして、間違いなく、握られて反応する様子を楽しまれている。
「俺が反応するの、楽しい?」
「ですね。あと、嬉しいです」
「うん、わかる」
「俺に触られて、興奮してる」
 ちらっと顔を上げて、ですよね、と言いたげな視線を投げられたから、そうだよと頷いた。
「握ってもらえるとか思ってなかったし、凄く、興奮してる。だから、あんまり強くされたらイッちゃうと思うけど」
 どうする? と聞いたら、えっ、と戸惑ってしまう。さすがに意味が伝わらなかったらしい。
「さっき一回イカせちゃったし、おちんちんの先から白いの溢れてくるのめちゃくちゃ興奮したからさ。君も、その手で俺をイカせたり、俺がイクとこ見たいかも、と思って」
 その方がお相子って感じもするしと言えば、確かにと同意はされたけれど、でもペニスを握っていた手は離れていく。
「いいの?」
「だって手で、じゃなくて」
「うん。次は繋がってから一緒にイこ、って言ったもんな」
「です」
 じゃあ君の中に入らせてとお願いしたら、小さく頷いて起こしていた体を戻す。自ら立てた膝を開いて、待っていてくれる。
 嬉しくて、愛しい。
「俺も、好きです。だから」
 早くきてと甘く誘われて、頷きその膝に手をかけた。
 可愛いと零しはしなかったのに、どうやら態度で伝わってしまったらしい。可愛いと零すまでを待てなかった、なんて理由かもと思いついてしまって、興奮は増していくばかりだ。
「ぁっ……」
 先端を押し当てれば、小さな吐息が漏れる。興奮と期待に、僅かながらの不安が見える。
「もし痛かったり苦しかったり辛かったら、我慢しないで教えてね」
「は、ぁ、ぁああっ、ぅっんんっっ」
 相手が頷くと同時に腰を進めれば、慌てて口を閉じようとする。
「声噛まないで。聞かせて?」
 可愛い声だよと促せばおずおずと口を開いてその声を聞かせてくれたから、その声を注意深く聞きながら、可愛い愛しい気持ちがいいねと繰り返しつつ、とりあえず一度全てを埋めきってしまう。さすがに「好き」とは返ってこなかったけれど、わかってると言いたげに頷く仕草は何度か見せていて、それがやはりとてつもなく可愛くて、愛しかった。
「全部、入ったよ」
 動きを止めて一息ついて、相手が多少落ち着くのを待ってから声を掛ける。
「痛くはない、です、けど」
 お腹いっぱいって感じ、と嬉しげに続いた言葉にまんまと煽られたけれど、反応して彼のお腹の中で質量を増してしまったペニスに驚かれたので、間違いなく狙った発言ではなく素での感想なんだろう。当然、そういうところも彼の魅力の1つではあるのだけれど。
「馴染むまで待ちたいから、今だけちょっと可愛いの禁止で」
「なんですか、それ」
 おかしそうに笑いながらも、どうすればいいんです? と小首を傾げる姿すら結局のところ可愛くて、もうダメだ、と思った。

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