バレたら終わりと思ってた10

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 途中、やっぱりちょっと不安になって、メイクは落とさなくていいのと聞いたら、どっちの格好でも君は君だろと返される。女の子の顔なのに男の体で萎えたりしない? とも聞いてみたけど、新しい扉を開きそうだけど萎えたりはしないから大丈夫って笑われてしまった。
 新しい扉ってなんだろうと思ったら、そういうジャンルがあるんだよって言われたけど、そのジャンルについてはあまり詳しく教えてくれなかった。でも、そんな不安にならないでって言いながらたくさんキスをくれて、ちゃんと興奮してるよって言いながら勃起したおちんちんを触らせてもくれた。
 ただし、そのまま握って扱いてイカせようとしたのは、すぐに止められてしまったけど。
 気持ちよくさせたいし、イッて欲しいし、自分だって相手がイクとこが見てみたい。という訴えには、お尻に入らなかった時はぜひその手を貸してと苦笑されて、これから抱かれるんだったってことを思い出す。
「そ、でした」
「だって前回、イかせるだけで終わりにしちゃったの、ずっと気になってたんだもんな。それに俺にも、君の手で気持ちよくされて、今すぐイきたいって気持ちはあるよ」
「そ、なんですか」
「そりゃそうだろ。君が積極的に触れてくれるの、嬉しくないわけない。ただ、それよりもっと、今は君と一つに繋がりたいって気持ちが強いだけ」
「わ、私も、です」
「うん。良かった。ただ、無理をさせたいとも思ってないから、辛かったらちゃんと教えてね。痛いの我慢とかしないでよ?」
「でも、ちょっとくらいなら、無理してでも抱かれたい、です」
 やっぱり、抱いて貰った、っていう事実が早く欲しいと思う。もしかしたら、素の自分を全部晒したところで、この人は好きって言い続けてくれるのかもしれないけど。すぐに女装がバレて終わると思ってたのに、女装がバレてもこうして恋人のまま居られるみたいに。
「なんで? さっき一緒に見たサイト、ちゃんと準備すればアナルセックスで気持ちよくなれるって書いてあったろ。もし無理して気持ちよくなれないセックスしちゃって、もうしたくない、ってなるほうが俺は困るよ」
「そんなのならない、です」
「もし痛くて苦しいばっかりのセックスでも、また俺に抱かれたいって言ってくれるってこと?」
「はい」
「じゃあ尚更、そんなセックス出来ないな」
「え、なんで?」
「痛くて苦しいの我慢しながら抱かれてくれる君を見たら、自分を許せなくなりそうだから。そんなセックスをされても怒ったり幻滅したりしないで、また抱かれたいなんて言われるのかもって思ったら、そんな状態で抱くのは絶対ダメだってなるのは当然だろ」
「で、でも、早くあなたに抱かれたい、です。男の体でもちゃんと抱いて貰えるって、安心したい」
「あー……そういう……」
 ホロリと漏れてしまった本音に、相手は言葉を止めてまた何か考え始めてしまう。
「あ、いや、無理して欲しいわけじゃ、」
「それ、俺が君に言ったのとほぼ同じセリフね」
 慌てて無理はしないで欲しい気持ちを伝えれば、今度は苦笑されてしまった。確かに、抱く側と抱かれる側で立場は違うけれど、二人とも、早く相手と体を繋げるセックスがしたくて、でも相手に無理はして欲しくないとか、無理をさせたくないって思っている。
「ううっ」
 その通りだと唸ってしまえば、相手はふふっと息を吐くように小さく笑った。二人の間で張り詰めていた空気が、はっきりと緩むのがわかる。
「どこまで気持ちよくなれるかはわからないけど、時間かけてゆっくり慣らして広げれば、多分、痛いのとか苦しいのはかなり軽減できるはずだからさ」
 簡単に諦めてまた今度、なんてことは言わないって約束するから、それで妥協してくれる? という提案に、もちろん嫌だなんて返すはずがなかった。

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バレたら終わりと思ってた9

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 相手はそんな自分に、やっぱり全然知らなかったよねと言って苦笑する。
「男の子だって知る前もさ、なんていうか、一生懸命なとこがいいなって思ってたよ。全力でデート楽しんでます、みたいなの。隣でそうやってデート楽しんでくれたらさ、俺だって楽しいし、嬉しいし、安心だってするよね」
 手放せないなって思ったし、今も同じように思ってるよと告げた相手は、男の子だからってそういう本質的な部分は変わらなでしょと続けた。同意を促されてる気配があったけれど、でも、それに頷くことは出来そうにない。
「全力でデート楽しんでたのは事実だし、一緒にいる時間を楽しく過ごせるように頑張ってたのも事実ですけど、でもそれ、女装してたから、ですもん。男の俺とデートして、同じように楽しいか、楽しいって思ってもらえるか、わからないし、自信もない、です」
「今日のデートも楽しかったけど」
「今日も女装、してたじゃないですか」
「でもそれ、女装してたほうが外で手を繋ぎやすいとか、ラブホに入りやすいとか、そういうの考えてくれた結果でしょ?」
 そういうとこに惚れてるって繰り返されたけれど、それだけが理由で女装してたわけでもないので、なんだか余計に心苦しい。
「でもそれだけじゃない、し」
「それだけじゃない、って言うのは?」
「その、女装してるときって、自分であって自分じゃないみたいなとこあるっていうか、素の自分とはやっぱ違うんです、よ。男の俺は服なんか最低限あればいいやって思ってるし、友達だって少ないし、魅力的なとこ、多分あんまない、です」
「もし俺が男の子の君とどうしてもデートしたいって言ったら、どうする?」
「えと、来週はちょっと無理、ですけど、再来週なら……」
「えっ!?」
「え……?」
 あまりに驚かれて、こちらも驚く。というか困惑する。何か変なことを言ってしまっただろうか。
「あー……ごめん。想定外すぎる返答だった。というか、来週と再来週の間に何があるか全くわからないんだけど」
「えと、給料日……?」
「給料日!? ってバイトの?」
「そ、です」
「まじ、か……」
 また盛大に驚かれたあと、肯定すれば唖然としている。
「え、えと……何か、変なこと」
「あー、いやいやいや」
 変なことを言った自覚が全く無くて、相手の反応にどうしていいかわからない。焦るこちらに、相手は否定だけを返して、でもちょっと待ってと続けた。頭の整理させて、と言われてしまえば口を噤んで待つしかない。
「正直に言って欲しいんだけど、その女装、もしかしなくてもめちゃくちゃお金掛かってる、よね?」
 やがて意を決した様子で口を開いた相手が聞いてきたのはそんなことで、さっきの会話からなんでこの質問なのか、やっぱりイマイチ意味がわからない。
「そりゃ、多少は。でも仕送りとバイトで出来る範囲でしかやってないし、えと、ちゃんと学校も行ってるし、食事だって摂ってます、よ。あ、あと、借金とかも手ぇ出してないです」
 何を心配されているのかわからなくて、とりあえず思いついたことは否定しておく。
「でも男物の服は最低限で、友達と遊ぶためにお金使うのも避けてる。とか言わない?」
「友達はどっちかというと遊ぶ時間がない、方だと思いますけど」
「あー、平日にバイト詰め込んでて、週末は俺とデートしてるから?」
「そう、です」
「ねぇ、君にプレゼント、贈っていい?」
 誕生日でも何かのイベントでもないけどと言われて首を傾げる。
「なんです、突然」
「明日、君の男物の服、一緒に買いに行きたい。だから次はそれ着てデートして。って言ったら、俺のお願い、叶えてくれる?」
 プレゼントのお礼は男の子の君とのデートがいいんだけど、と言われて、そこまでして男の自分とデートがしたいのかと驚く。
「それはいいですけど、えと、さすがに男の格好で今日みたいなデートするのは、人の目が気になりそう、です」
「そうだね。ならお家デートしようよ」
 俺の家に招待しても、もう来てくれるでしょ。と言われて、それはちょっと楽しみだと思う。
「行きたいです!」
 楽しみだという気持ちがちょっと出すぎて食い気味になってしまったら、相手はどこかホッとした様子で、嬉しそうに笑った。
「やっぱり、本質的なとこは一緒だよ」
「え?」
「素のままの、男の子の格好した君とのデートだって、絶対楽しい。自信ないなんて言わないでよ。俺は、俺と恋人になりたくて女装までしちゃう、頑張り屋で努力家な君に惚れてるし、君から貰う大好きを手放したくないって思ってる」
 大好きだよと言って寄せられる顔に慌てて目を閉じれば、何度か軽く触れ合うキスのあとでそっと押し倒される。唇を舐められてゆるく口を開けば、すぐに相手の舌が入り込んできた。

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バレたら終わりと思ってた8

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 どうしよう。逆に、女の子の姿じゃ抱く気になれないとか言われてしまうんだろうか。
 脱いだら結局は男の体なんだし、顔だけ女の子なんて違和感が酷くてむしろ萎える。とか思っている可能性だってある。
 多分、思ってても言わないけど。言わないだろうからこそ、本心でどう思っているのかわからなくて怖い。
 もしかしたら、メイクはない方が自然でいい、というのは、それを遠回しに伝えていたってだけかもしれない。自信がないって言っちゃったから、これ以上、メイクを落としてこいと強く言えないのかもしれない。
 どうしよう。自分から、やっぱりメイクを落としてきますって、言うべきだろうか。
 そんな風にグルグルと考えて迷っていれば、先に口を開いたのは相手の方だった。
「あのさ、俺が君のどこに惚れてるか、知ってる?」
「え……?」
 こっちおいでよと呼ばれて、ベッドに腰掛けて待っていた相手の前まで近づけば、隣に座るようにと促される。従えばそっと片手が握られた。
 自分のよりも大きくて温かな手に包まれて、少しばかり肩から力が抜ける。力が抜けてから、随分緊張しているらしいことを自覚した。
「こっち向いて」
 その言葉にも素直に従えば、真剣な顔がじっとこちらを見つめている。気まずいような恥ずかしいような気持ちで、視線が泳いでしまったけれど、それもやっぱり、俺を見てと促されてしまう。
「あ、の……」
「可愛いよ。凄く、可愛い」
「うぇっ!?」
 今までずっと、男バレを防ぐためにあまり接触しすぎないようにしていたせいで、この至近距離でド直球に可愛いなんて言われるのは初めてで焦らずにはいられない。
「俺の女性の好みを意識して、頑張ってくれた結果だって知ってるから、余計に可愛く感じてる部分もあるかもな」
 キスしていい? と聞かれて軽く頷けば、そっと唇が触れ合って、でもすぐに離れていく。そのまま深く口付けて、押し倒してはくれないらしい。
 自分から追いかけるように再度口づけて、先をねだるように舌を差し出したら、このままなだれ込んでしまえるだろうか。なんて想像はするものの、自分からその一歩を踏み出す勇気はなかった。
「この前、気持ちよく喘いでくれてる最中に、俺が何度も可愛いって言ってたのは覚えてる?」
「そ、そりゃ……」
「でももっと前から、言わなかっただけで可愛いとは思ってたよ。男の子に可愛いって褒め言葉にはならないよなって思って言ってなかっただけで、俺は、メイクを落とした君の素顔も、普通に可愛いなって思ってる」
「え、えと、ありがとう、ございます?」
 言いながら、お礼を言うような場面だろうかと疑問に思ってしまったのが、そのまま声に乗っていたようで、相手がクスっと小さく笑う。
「嫌じゃないなら良かった」
「こ、恋人に、可愛いって言われて嫌なわけない、です」
「そっか、嬉しいな」
「そりゃ、この顔で嫌な思いしたこともありますけど。背が低めなのもコンプレックスありますけど。でも、そのおかげで、あまり違和感ない女装が出来てるのも事実ですもん」
「あまり違和感ない女装が出来てるのは、顔とか身長がってより、君の観察力とか努力の結果な気がするけどね」
「え?」
「めちゃくちゃ研究して、練習もしたって言ってただろ。しかもそれ、俺に女って思わせるためだけの努力でしょ」
 そういやそんなこともぶち撒けたっけ。あの日はどうせもう最後だって思ってたし、別れたくないなんて気の迷いだと思ってたし、だいぶヤケになってたから、言えばドン引きだろうことをむしろ率先して口にした。
「そういうとこにさ、凄く惹かれてる」
「えっ?」
「俺が君のどこに惚れてるか知ってるか、って話」
「え? えぇっ?」
 ドン引きだろって思ってた話が、惚れてる理由としてあげられたらしいことに、混乱ばかりが加速して意味のある言葉が出てこない。

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バレたら終わりと思ってた7

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「えっと、準備、する?」
「どんな?」
 どんな準備が必要かを必死で考える。
「その、きれいに洗う、とか……?」
「そうだね。で、自分で浣腸とかしてみた経験は?」
「え……」
「うん。やっぱないよね」
 浣腸という単語に驚いているうちに、相手はあっさり結論を出してしまうが、もちろんそんな経験はないので当たっている。
「というか出来ればお腹の中も洗ったほうがいい、ってのも知らなかったよね?」
「う……はい」
 疑問符はついているみたいだけど、そんな確信を持った顔で言われたら頷くしか出来なかった。
「どうしようか」
「ど、どうしましょう?」
「あー……じゃあ、ちょっと一緒にやり方学ぼうか」
「は? えっ? 学ぶ???」
 口先からも頭の中にも盛大に疑問符を飛ばしてしまえば、相手はちょっと待ってねと言って立ち上がる。
 何をするのかと思ったら、すぐにスマホを手に戻ってきた。
「俺がアナルセックスのやり方調べた時に参考にしたサイト、一緒に見よう」
「え、えぇ……」
「嫌そうだけど、さすがにもうちょっとお互いに、意識のすり合わせが必要だと思うんだよな」
 どうしても嫌ならアドレス送るから後で読んで、現段階でどこまで出来そうかメッセージ送ってくれるんでもいいよ、とは言われたけれど。
「そしたら今日はどうするんです?」
「さっきヤダって言われたけど、前回と同じでも俺は満足。あとはまぁ、余裕があったらでいいけど、俺もちゃんと興奮してるってのを感じて欲しいかな」
 同じように手とか口とかで気持ちよくしてくれたら嬉しい、と柔らかに笑われて、ううっと言葉に詰まってしまう。
 相手の提案に乗ってしまうのもありかなとは思うけれど、抱かれる気満々だったのも事実だし、出来ればちゃんと抱かれたかった。抱いて貰えたって事実があるのとないのとで、多分、安心感が違うから。
 相手がいくら男の子でも問題ないって言ってくれても、どうしても、今までは女性しか恋愛対象にしてこなかった人、という事実が頭の隅をチラついてしまう。それに、素の部分を知られていくうちに、振られるだろう予感だってある。
 好きだと言ってくれているうちに、抱かれてしまいたかった。
「えと、じゃあ、読みます」
 意を決して告げれば、相手はわかったと言ってスマホを弄りだす。そして差し出されたスマホに表示さされた画像と文章とに、一通り目を通した。
「どう?」
 出来そう? と聞かれて、やります、と応える。だって別にそんな怖いことは書いてなかった。ちゃんと気持ちよくなれるとも書いてあった。
「でもその、浣腸、薬局で売ってる、って……」
「ああうん、持ってきてる」
 ですよね。と安堵する気持ちに落胆が混ざるのは、やっぱり尻込みする気持ちがあるからだろうか。だって浣腸なんてしたことがない。
「手伝う?」
「え゛っっ」
「いやその、初めてだろうから」
「けど、さすがに恥ずかしすぎます、よ」
「だよね」
 じゃあこれ、と渡されたイチジク浣腸を手にバスルームへ向かう。
 浣腸自体は、そこまで難しくもなかった。というか、初めてだったけど多分問題なく出せたと思う。
 問題は、と思いながら鏡を見つめてため息を一つ。
 メイクを落とすつもりで化粧ポーチも持ち込んだのだけれど、いまひとつ踏ん切りがつかなかった。
 脱いだらどうせ男の体なんだから、メイクはない方が自然でいいと思うって言われたけど。前回もちゃんと興奮してたって力説されたけど。
 結局、メイクは落とさずにバスルームを後にすれば、相手は当然、驚きに目を見張っている。
「え、なんで!?」
「すみません」
「謝る必要はないんだけど、でも、女装にこだわる理由は知りたい。俺が男の子のままでいいよって言うの、やっぱり信用できない?」
「信じられないわけじゃないです。ただ、俺が、男のままの自分に、あまり自信がないってだけで……」
 だってあなたがずっと好きって言ってくれてたのはこっちの私だし。という訴えに、相手はそれはそうなんだけど、と難しい顔を見せる。難しいというか、どうやら悩ませてしまっているらしい。

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バレたら終わりと思ってた6

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 可能なら女装を解かないまましたい。と思ってしまうのは、前回自分だけイカされたせいだけど、シャワーを勧めてくるってことは女装を解いて欲しいって意味かもしれない。
 だって男のままの自分とデートする気だったのは明白だ。
 でもこの女装姿だったからこそ、あんなにベタベタと接触してきてたのも多分事実で、男の格好だったらあんな風に肩や腰を抱いて引き寄せたりしなかったはずだから、やっぱり女装してたほうが手を出しやすいんじゃないかとも考えてしまう。
 そんな風に、答えが出ない問いを頭の中でぐるぐると巡らせているうちに、バスルームの扉が開いて相手が戻ってきてしまう。
「なにか気がかりなことがあるなら言って欲しいな」
 どうしよう、と内心焦っていたら、近づいてきた相手がすっと腰を落として、椅子に腰掛けるこちらを下から見上げてくる。
「え……」
「さっき喜んで抱かれますよ、って言ってくれたけど、男に抱かれた経験があるわけじゃないんだよね?」
「そ、です」
 抱かれた経験どころか、女の子を抱いた経験もない童貞です。とか言ったら、引かれてしまうだろうか。それとも、嬉しいとか思ってくれたりするんだろうか。
「色々調べてみたんだけど、受け入れる側をするのって大変そうだし、無理させたいとか全然思ってない。この前みたいに触らせてくれて、気持ち良くなって貰えるなら、それで構わないって思ってるよ」
「え、やだ」
 前回と同じで、なんて言われて、咄嗟に嫌だと口から漏れた。
「やだ?」
「だ、だってほんとに、私だって、ずっと抱かれたいって思ってて」
「うん。それは本当に嬉しいけど」
 でも何か凄く躊躇ってるでしょと指摘されて、結局は相手がどうして欲しいか聞かないと答えないんて出ないんだからと、何を迷っていたかを告げる。
「いやその、女装、どうしようかなって、思ってただけで……」
「えっと、メイク落とすと何か問題ある? ってかお泊りしようって言ってなかったから、メイク道具がないとかそういう?」
「いえ、持ってきて、ます」
 男だとバレてる以上、男の自分としたいと言われる可能性も一応は考えたし、女装のまま致した結果、メイクがどうなるのかの想像がつかなかったというのもある。
「えと、じゃあ、他に何が……」
「その、女装してたほうが、エッチな気分が盛り上がっ」
「ええっ!?」
 こちらが何を言いたいか察した相手があまりに驚くので、途中で言葉が止まってしまった。
「え、いやいやいや。何いってんの。そんなことあるわけないだろ」
「で、でも、前回」
「前回? って、男の子の姿の君と何度も舌絡ませるようなキスして、あちこち触って、尖らせたちっちゃなおっぱいの先っぽいっぱい弄って、気持ちぃって喘いでくれるのめちゃくちゃ可愛いって何度も言いながら、この手で勃起おちんちんイカせてあげたあれより、俺が興奮するって思ってるの? 体も心も男の子だって知ってるんだから、女の子の姿かどうかで興奮変わったりしないよ? というか脱いだら男の子の体なんだから、メイク落としたほうが自然でいいと思うよ」
 ああやっぱり女装は解いてって思ってるっぽい。
「でも、でもっ」
「ああうん、ごめんね。ちゃんと聞く」
 気がかり話して、と優しく促されて、前回自分だけがイカされたからと訴えた。
 本当に興奮してたなら、なんで抱かずに帰っちゃったの。それって男の姿だったからじゃないの。
 そう告げれば、相手は慌てたように違うを連呼した。
「違う違う。そういうんじゃないから。てか誤解だから」
「誤解、って?」
「気持ちぃって言わせて、イカセて、そこで終わりにしたのは、男同士でセックスどうやるかとか全然知識なかったせいだよ。あの日初めて男の子だって知ったんだから、そこは大目に見て」
「本当に? 本当に男の俺の体触って、興奮できた?」
「してたよ。するに決まってるだろ」
「なら、同じように手でして、とか、口でして、とか、」
「いやいやいや。あのときの自分がどうだったか覚えてる?」
 とてもそんなお願い言える雰囲気じゃなかったよと言われて、確かに、イカされた衝撃でしばらく放心してたな、とは思う。
「俺に知識とか経験とかあって、痛い思いとか嫌な思いとかさせずに抱ける自信があったら、あの勢いで押し通した可能性はなくないよ。だってずっと、出来ればそういう関係に進みたいって思ってたんだから」
 でも踏みとどまれて良かったとも思ってるよと言った相手は、男同士でのセックスは知識があっても色々大変そうだし、ゴムだけあればどうにかなるようなもんじゃないもんね、と続けた。
「っていうか、あのまま抱いてほしかった、みたいに言ったけど、あの時、俺に抱かれる準備とかしてたの? そもそも別れる気満々そうだったし、準備してあるからそのまま抱いて、とかも言わなかったよね?」
「準備……」
 確かに、そういうのは全く考えていなかった。というか準備とかしないと、男同士でセックスするのは難しいのか。
「待って。今なんか恐ろしいことに気付いた気がする」
「え?」
 男同士でのセックスってどうやるか知ってる? と聞かれて、お尻でするんでるよね、と返した。
「うんそう。で、どうやってお尻に勃起したおちんちん挿れるかはわかってる?」
 わかってると思うけどそこそこの太さと長さがあるものだよと言われて、確かにそうだなとは思う。思うけど、相手のがめちゃくちゃ太いとか長いとかじゃない限り、そこまで難しくもないような気がする。だって、自分の勃起時くらいの太さの大便は、出てくることがあるわけだし。
 でも相手の様子からすると、そう簡単なわけではなさそうだった。

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バレたら終わりと思ってた5

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 夜というよりはまだ夕方って時間だったけれど、早めの夕飯を済ませたあと、躊躇いのない運転で連れて行かれたのは、ラブホじゃなくて普通のホテルのツインルームだった。目当てのラブホでもあるのかと思ってたけど、どうやら予約してたらしい。
「予約までしてたなら、最初から今日はお泊りデートでって誘ってくれても良かったのに」
「そうなんだけど、ちょっとガッツき過ぎてるような気もして。男の子の君とは初デートなのに、って思ったら余計に、エロいこと期待してるって思われながらデートするのも避けたかったし」
「今までのデートで避けてた分、エロいことも期待されてるって、ちゃんと思ってましたよ。というか次こそ、自分だけ気持ちよくして貰うんじゃなくて、あなたを気持ちよくしてあげたい。って思って、張り切ってるくらいなんですけど」
 前回あんなことをしておいて、エロいことなしの健全デートなんて考えるわけがないのに。
 でも相手はこちらもしっかりその気だった事実に、そこそこ驚いているらしい。
「でももしそういう雰囲気になったとして、行くのはラブホだと思ってました」
「ラブホねぇ……男同士で利用できるとこもあるみたいだけど、実際に男同士で使った経験なんてないし、慣れないことして失敗したくなかったっていうか、万が一でも嫌な思いさせたくなくて」
 男でもいいよと言ってくれたこの人は、男女なら出来ることが男同士だから出来なくなるのはオカシイと言いながらも、それで変な目で見られたり嫌な思いをして欲しくないとも言ってくれるような人だから、色々と考えてくれたんだろう。
 こんなに気遣ってくれるこの人に対して、女装しとけば避けれそうな問題は女装しとけば良くない? って考えは、あまり誠実ではないかもしれない。
 なんて反省してしてる間に、相手もなにかに思い当たった様子で目を見張っている。
「って、もしかして、男の子って知られた後なのに女装してきたの、まさかラブホはいる想定とかしてた?」
「まさかってなんですか」
「あー、ごめん。そっか、そういうの、考えてくれてたんだ。全く気付いてなかった」
 ここで、ありがとう嬉しい、って笑ってくるのはズルいなと思う。
「恋人っぽいこともっとしたいって思ってたの、そっちだけじゃないんですからね」
「そっか」
「男ってバレたら振られるって思ってたからはぐらかしてただけで、ずっと、本当に女の子だったらセックスだって出来るのにって、私だって思ってましたよ」
「そっか」
「ほんとは男の俺とでも、したいって思って貰えるなら、喜んで抱かれますよ」
 声音を地声に戻して俺と発言しても、相手は嫌な顔をするどころか、口元をへにょりと緩ませている。
「もちろん、したいよ」
 はっきり断言されて、ホッと息を吐いた。
「顔にやけてます」
「うん、知ってる」
 照れ隠しの指摘に、相手はニヤけた口元を隠すように片手で覆ってしまう。
 照れ隠しだったのに、なんだか余計に恥ずかしい気がしてきて、思わず視線を彷徨わせてしまうけれど、目に入ってくるのは綺麗にベッドメイクされたベッドなので、気持ちが静まる気配がまるでなかった。というか、逆にめちゃくちゃ意識してしまう。
「えっと、先にシャワー使う?」
 ベッドを凝視していたら、横からそんな言葉がかけられて、思わず肩が跳ねてしまった。
「え……」
「あー……じゃあ俺が先にシャワー使ってもいい?」
「あ、はい。はい、もちろん」
「うん、じゃあちょっと行ってくるね」
 妙に慌てた態度になってしまったけれど、相手は特に何も指摘せずにバスルームに消えていった。
 一人になって、数度深呼吸を繰り返す。
 そういや意気込みばっかり膨らませて、エッチなことをする手順とか方法とかまであまり考えていなかった。
 シャワーをと言われて真っ先に考えて、一瞬動きを止めてしまった原因は、この女装をどうするかを全く考えていなかったせいだ。

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