そっくりさん探し3

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 友人となった彼とはその後、たまにこちらの友人も交えたりしつつ、積極的に遊び歩いていた。人数は居たほうが何かと楽しいが、でも家庭持ちやら趣味持ちやら忙しそうにしている友人が多いのでそう頻繁に付き合わせるわけにもいかず、結局二人で遊んでいる方が圧倒的に多かった。
 元々、一人でふらっと観光地なりに出向いてそこの特産品やら名産品やらを味わうのが趣味、みたいな生活をしていたせいで、その趣味に相手を付き合わせてるともいう。
 温泉地へ行けば日帰り温泉を利用したりもするし、公共交通機関を利用するときは昼からお酒を飲むことも有るが、今のところ特に不満はなさそうだし、結構楽しんでくれているとも思う。
 こちらとしても、一緒に楽しんでくれる相棒が出来たのは有り難かった。
 一人でも楽しめるけど、美味しいものや綺麗な景色を共有できる相手がいる、という喜びはやはり大きい。
 ただ二人きりで観光地へ出かけるそれが、デートと言えないこともない、ということに気づいたのは最近で、なんでそんな思考になったかと言えば、相手の態度が何やら怪しくなってきたせいだ。
 最初の頃は何もかもが新鮮だという感じで、彼の意識は訪れた観光地の方へ向いていたのだけど、出歩くことに慣れたからか彼の興味がこちらへも向いてきた気がする。と思ったのが既に数ヶ月前のことで、最近は、なんだか意識されてる? みたいな気配を感じることが増えた。
 気の所為、ではないと思う。しかしきっかけは思い当たらないし、いつからという明確な時期もわからない。
 恋愛経験もあまりなさそうというか、それどころじゃなかったっぽい話を聞いたことが有るし、男が恋愛対象とか以前に、相手に関心を持って一緒に過ごしてくれる相手が今まで居なかったせいで勘違いをしている可能性が高そうな気はする。
 友人が恋人を兼ねたら一石二鳥、とまで思ってるかはわからないが、恋愛に興味が湧いたなら女の子紹介する? とか言ってみた方がいいのかどうかも少し迷う。
 ついでに、もしいつか告白されてしまったらどうするかも考えた。
 有りか無しかで言ったら有りなんだけど、残念ながら、相手に対してこちらも恋愛感情があるからではなく、無理と思わなかったから試してみてもいい、くらいの感覚なので、それを正直に伝えて相手がそれでいいならって感じになるだろうか。
 男と付き合ったことはないからそれはそれで面白そう、みたいな気持ちも若干あって、むしろ告白してくれないかなという期待も実はある。が、どう考えても真剣な想いに対する態度ではない自覚も有るので、もし真剣な告白を受けてしまったらいっそ丁寧にお断りするのが優しさかも知れない。いやでも好奇心が勝ちそう。
 などとあれこれ悩んでいたら、さすがに相手にも気づかれたらしい。
 混んでいたせいで少し遅くなった昼食を食べ終えたところで、相手が少し困った様子で苦笑する。
「もしかして、俺が悩ませてます?」
「えっ?」
 今日はかなり口数が少ないのでと指摘されてしまった。確かにそうだったかも知れない。
「ごめん。確かに君のことであれこれ考えちゃってた」
「ですよね。その、さすがに気づかれてるかなとは、思ってたんですけど」
「あー……俺のこと、好きになっちゃった? みたいな?」
「やっぱりわかりますよね」
 否定はされなかったが、ついでのように溜息が漏れていたから、相手もどうやらその想いを持て余しているようだ。
「ちなみに俺とどうなりたいとかどうしたいとかの希望は? ある?」
「特にはないです」
「ないんだ」
「というか何を望んでいいのかもわからないって言うか、そもそも俺に選択権ないですよね?」
「え、なんで?」
「なんで、って、俺が勝手に好きになっちゃって困らせてるんだから、その俺をどうするかはあなたが決めるんじゃ?」
「いやそんな一方的に委ねられても。てかまず俺が何を悩んでるかを確かめようよ」
「えっ?」
「でも取りあえずは場所移動しようか」
 人気店らしく未だに席が空くのを待っている客が途切れないので、早めに退席したほうがいいだろう。それに話の内容的にも、もう少し人目を気にしたい。
 といっても、観光地なのでどこもかしこもそこそこ人がいて、ゆっくり落ち着いて話せる場所なんて急に思いつかなかった。
 

続きました→

 
 
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そっくりさん探し2

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 奢りますという連絡が来て向かった先では、随分と顔つきの変わった男が待っていた。晴れ晴れとして、といえるほどの陽気さはないが、それでも大分穏やかな顔つきになっている。
 初めて会ったときは思い詰めてると思ったし、一年ぶりに会ったあの日は、初めて会ったときよりかなりやつれてるなと思っていた。なので、他人事だけどなんだか安心してしまう。
 ゆっくり話せるようにと半個室の居酒屋を予約してくれていたので、そこへ移動したあとは、酒を交えながらようやく相手の事情を聞いた。
 早くに両親を亡くしたこと。実質妹を育てていたのは彼なこと。自身が学歴で苦労した分、妹の大学進学に反対はしなかったこと。なのに進学後は勉学よりも遊びに夢中で無断外泊も増え、交友関係や男との交際にかなり口を出しまくってしまったこと。いつの間にか帰ってこなくなったこと。慌てて探したが住民票なども移されていた上に閲覧制限が掛けられていて、自力では探せなかったこと。有り金はたいて頼んだ興信所がイマイチ頼りにならなかったこと。そもそも妹の交友関係を全く把握できていなかったこと。それでも諦めきれずに金が溜まったらもう一度調査を依頼しようと思っていたこと。などだ。
 なかなか苦労の多い人生だったようで大変面白く聞かせてもらったが、一通り話し終えたあとで一息ついた相手は、ようやく長々と語りすぎたことを自覚したらしい。
「す、すみません。ずっと相槌打ちつつ話聞いてくれてたから、俺ばっかりこんなに話しちゃって」
 こんな苦労話聞かされても困りますよねと肩を落としてしまうから、いや全然、と否定を返しておく。
「普通に楽しく聞いてた。苦労はしたんだろうけど、今日は穏やかな顔してるせいかな。苦労話が深刻なほど、妹さん見つけられてホントよかったって思うし、それ手伝えた俺凄い! みたいな気持ちにだってなるだろ?」
 知り合いにそっくりさん知らない? って聞いて回っただけで、そう大したことはしてないのだけれど。まぁ、たまたま顔が似てたってだけだけど、それでも自分の手柄には違いないので。
「というか前提はわかったけど、妹さんとは和解できたと思っていいんだよな?」
「あ、はい。一応は」
 いきなり消えたから凄く心配したってことは理解してもらえて、ちゃんと謝っても貰えたらしい。
「赤ん坊抱いてたけど、相手の男とはちゃんと結婚してんだよな? そっちも大丈夫そうだった?」
 聞いてないはずはないと思って話を振れば、思ったよりもまともそうな相手でした、と苦笑とともに返ってきた。
「大学生に手ぇ出して妊娠させて大学辞めさせた男、って思うとやっぱり許せない気持ちはあるんですけど。ただあの頃妊娠したなんて聞いたら、絶対堕ろせって言ってたと思うし、相手の男刺しに行くくらいしてたかもだし、そう言われて否定しきれなかった俺より、俺から逃がす手伝いしてしっかり結婚してお腹の子を妹ごと守った男の方を選んだだけって言われると、俺が言えることなんてないっていうか」
 その時の会話を思い出しているのか、ははっと乾いた笑いをこぼす相手は悲哀に満ちている。
「ちゃんと幸せだって言ってましたし、相手の両親が良くしてくれるとも言ってたんで、あいつのことはもう、大丈夫、です」
 新しい連絡先は聞いたけれどこんな自分じゃ困ったら頼れとも言いづらくて、今後は甥っ子のお祝いごとに贈り物をする程度の付き合いができればいい、らしい。多分それくらいはさせてくれると思う、と続いた声はどこか頼りない。
「寂しい?」
「え?」
「妹さん見つかって幸せそうで安心はしたけど、完全に自分からは手が離れちゃって寂しいのかな、と」
 実質君が育てたようなものなんでしょと言って、娘を結婚に出す男親の気持ちじゃないのと指摘してみる。
「ああ……そっか、そうなのかも」
「あ、自覚はなかった?」
「です、ね。なんか気が抜けたっていうか、今後どうしようっていう漠然とした不安? みたいな方が印象が強くて。そっか、これ、寂しいのか」
 妹さんを探すという目的がなくなって、次の目標とかがない状態か。
「寂しいなら俺と遊ぶ?」
「え?」
「いやまぁ俺じゃなくてもいんだけど。ずっと妹さんのために仕事優先して頑張ってきたんだろ? だったらこれからは自分のために時間使えばいいし、手っ取り早く、友達と遊びに行くのはって思っただけ」
 趣味を見つけるのでも彼女作るのでもいいと思うよと言ってから、勝手に判断は良くないなと思って、なにか趣味有る? 恋人いる? と聞いてみる。
 相手はやっと少しおかしそうに笑った。
「無趣味だし恋人もいないです。ついでに言うと友達もいないんですけど、あなたは俺を友達って思ってるんですか?」
「今日で終わりにならなくて、また飲みに行ったりどっか出かけたりする機会があるなら、友達ってことでいいんじゃない? って思ってるけど」
「じゃあ俺と、友だちになってください」
 いいよと即答したら、相手はやっぱりおかしそうに笑う。
「こんな風に友達できるとか、考えたことなかった、です。てか友人づきあいもかなり疎かにしてきてて、友達と何するかとかも正直あんまりわからないとこあるんで、かなり頼り切りになる予感がするんですけど」
 大丈夫ですか? 今ならまだ撤回してもいいですよ、と続く声がからかい混じりで、でも不安に揺れているようにも感じたので、問題ないよと返す声が柔らかに響けばいいと思った。

続きました→

 
 
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そっくりさん探し1

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「あのっ、すみません」
 電車を降りたところで声を掛けられ、ついでに逃さないとでも言うように服の裾を掴まれてしまったので、無視できなくて振り向いた。
 そこにはなんだか思い詰めた表情の青年が立っていて、一人の男の名前を告げる。
「御本人、もしくはご家族の方、ですか?」
「いや全く知らない」
 本当に聞いたこともない名前だったのに。
「本当ですか?」
「本当に」
 そう肯定してもまだ疑り深く見つめてくるし、服も掴まれたままだ。
「その男が俺に似てるとして、なんで探してるのか聞いてもいい?」
 単純な好奇心だった。あとまぁ暇だった、というのもある。むしろ後者の方が比率はでかい。
「その、本当に探してるのは妹で」
 多分消えた原因がその男、ということらしい。見せられた写真に写っていた男は、確かに自分に似ている。かもしれない。
 いや正直そこまで似てるともいい難いような……?
 まぁいいか。
「本気で探したいなら興信所とかは?」
「使った結果知ったのが、この写真と男の名前。あと前に住んでたって住所くらいで」
 追加で調べてもらうには金が足りなかったらしい。本当に知りたいのは妹の居場所で、本当に繋がってるのかもわからない男の情報に大金を掛けられない、という面もあるのかも知れない。
「で、俺に声かけたのは、たまたま見かけたとかそんな理由?」
「そ、です」
「じゃ、一応連絡先交換するか」
「えっ!?」
 人違いだったのになんで、という顔をされた。もちろんただの好奇心とは言わない。
「友人知人に俺のそっくりさん知らないかって聞いてみようと思って。もし何かわかった時に、あんたの連絡先が必要だろ」
「いいんですか!?」
「いいけど、そんな期待されるのは困るな」
 思い詰めた暗い表情をしていたのに、一転してキラキラの目で見つめられてさすがに焦る。
「わかってます。大丈夫です。よろしくお願いします」
 本当にわかってんのか? と言いたくなる勢いで連絡先交換を済ませたあと、相手は引き止めたお詫びと協力の御礼にと言って、自販機で飲み物を1本買ってくれてから帰っていった。
 5分にも満たない邂逅だったその男とは、多分きっとそれっきり。そう、思っていたのに。
 ちょっとそのそっくりさんに自分自身が会ってみたい気もして、幅広く友人知人にそっくりさん知らない? と声を掛けまくっていたら、とうとう知ってるという相手と出会ってしまった。
 どうやらそいつも、似てるなとは思ってたらしい。名前を確認すればドンピシャだった。
 その男と直接会えないか、場を設けて貰えないかとお願いしつつ、あの出会いからおよそ1年ぶりに初めてのメッセージを送る。
 こちらの都合で日程を組むので一緒に行くのは無理かもしれないが、だったら妹さんの名前を聞いておきたい。
 そんな内容に、絶対予定を空けると返ってきたので、そっくりさんの知り合いだという相手には、参加者が一人増える旨を伝えてその日を待った。
 当日、初めて会ったそっくりさんとは、並ぶと結構違うけど確かに似てる気もすると言い合って笑った。そしてその後、なんでそっくりさんを探すことになったかという経緯を軽く説明して、最後に、本当に君を探してたのはこの人だと言って、そわそわとこの時を待っていた男のことを紹介した。
 そっくりさんはすぐに事情を理解した様子で、呼びますと言って電話をかけ始める。電話はすぐに繋がって、どうやら目的の妹さんが今からこの場へ来てくれるらしい。
 展開が早い。
 30分足らずで現れた女性の腕には赤ん坊が抱かれていて、まぁ予想通りという気はした。男が原因で姿を消したなら、まず最初に疑うのが結婚を反対されての駆け落ちだ。
 この先は多分込み入った話になるのだろうと思って、一旦お開きと言うか、紹介者と共にその場から離脱する。
 落ち着いたらでいいから奢ってと言っておいたから、そのうち連絡が貰えるだろう。その時に、じっくり話を聞けばいい。

続きました→

 
 
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親切なお隣さん(目次)

キャラ名ありません。全46話。
隣に住む社会人✕貧乏大学生(視点の主)。
明確な年齢差は出てませんが、7歳位を想定。出会った時、視点の主18歳・お隣さんは25歳くらい、みたいな。

真夏にエアコンが壊れてしまって途方に暮れてた視点の主を、昔周りの大人に助けられた経験を持つお隣さんが、今度は自分が困ってる子どもを助ける番! と思って張り切って助けてくれる話。
視点の主は中学時代にパパ活経験あり。それがキッカケでアナニーを覚えて、一応処女だけど自己開発済み。だけど性経験はそのパパ活のみの童貞。
お隣さんはアナルセックス未経験の非童貞。視点の主に抱きたいって言われる可能性を考えてアナニーチャレンジ経験あり。
視点の主には毒親とその親に甘やかされて歪んだ弟がいて、作中、その弟にアナニーを知られて襲われかける展開があります。
弟から視点の主に向かう恋愛感情はないので当て馬とは少し違うかもですが、弟は放置されたまま特に救済なく終わります。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
性的描写が多目な話のタイトル横に(R-18)と記載してあります。

1話 真夏に壊れたエアコン
2話 オカシナお隣さん
3話 お隣さん宅で過ごす
4話 今後も食事作り継続
5話 大家さんに挨拶
6話 お弁当も作るよ
7話 祖父の他界
8話 喪服のお礼持参
9話 お隣さんの下心
10話 お隣さんの特殊な要望
11話 結婚なんて……
12話 巻き込みたくない
13話 抱かれたくてアナニー
14話 帰省しないお正月
15話 弟相手にも強気
16話 3人で夕飯
17話 弟と自宅に戻る
18話 実家の闇
19話 弟の来訪理由
20話 実家に戻る気はない
21話 弟から見たお隣さんとの関係
22話 弟にアナニーばれ
23話 お隣さんに助けられる
24話 お隣さんに報告
25話 弟とはキスだけ
26話 結婚諦めてない宣言
27話 今すぐ抱いてって言ったら?
28話 ひとりH中の声
29話 ラブホへ
30話 お隣さんの経験値
31話 パパ活経験済み認定
32話 あっさりイっちゃう(R-18)
33話 相手をイカセたい(R-18)
34話 飲んでやった(R-18)
35話 いっそ全部話してみる?
36話 怖い笑顔
37話 こんな体になったのは
38話 必要なものは持ってきた
39話 性急に(R-18)
40話 繋がる(R-18)
41話 また自分だけ(R-18)
42話 奥は未開発(R-18)
43話 とにかく必死
44話 エロい意味で好き(R-18)
45話 ゆっくり気持ちよく(R-18)
46話 今日の予定

 
 
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親切なお隣さん46(終)

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 自然と目が冷めて見慣れない天井に慌てて体を起こした後で、昨夜何があったかを思い出す。
 部屋に窓がないので、朝になっているのかすらわからない。いったいどれくらい寝てしまったんだろう?
 キョロキョロと辺りを見回して、ベッドヘッドの時計にやっと気づいた。時計が示す時間はいつもの起床時間とほぼ変わらず、どうやら普段起きる時間を体が覚えていたらしい。
「ん、おはよ」
 慌てて飛び起きたり時計を探したりで、どうやら隣で寝ていたお隣さんを起こしてしまった。
「起こしてすみません。あ、朝飯」
 どうします? と聞くより先に、昨日遅かったからもう少し寝たいと返ってくる。なのにそこで会話は終わらず、相手から次の話題を振ってきた。
「それより体は平気そう?」
「あー、まぁ、ちょっと腰がだるいくらいすかね」
 時計を探してキョロキョロ動いた時も平気だったし、立ち上がることはしないまま軽く体を動かしてみるが、やっぱりどこかが強く痛むとかはない。
「そういや突っ込んだまま寝たりはしなかったんすね」
「さすがにね。だって俺も一緒にイッたし、またゴム変えて寝落ちた君の中に入ろう、とかは考えなかったかな」
「あ、やっぱ一緒にイッてくれたんすね。良かった。てかそんな時に寝落ちてすみません」
「一瞬気絶したかと思って焦ったけど、幸せそうな顔してるし、寝てるだけみたいだし、どう考えても夜ふかしさせすぎたせいだなって」
 こっちこそ長々付き合わせてゴメンねと謝られて、いっぱいしてもらえて嬉しかったから謝らないで欲しいと返す。
 だいたい、ヤリ溜めしたい的なことを自分から言ったし、求められて仕方なく応じたなんて場面は全然なかったんだから、謝られる要素なんて欠片だってない気がする。
「簡単には後始末もしてあるけど、必要ならここ出る前にもっかいシャワー使うといいよ。あ、お湯ためて一緒に入る?」
 広いしと言われて、確かに二人一緒に入れそうな風呂だったなとは思うけれど。
「二度寝するんじゃないんすか?」
「と思ったけど、話してたら目が冷めてきちゃった」
 そして結局、お風呂にお湯をためて朝から一緒に風呂に入った。
 体を洗いあって、そんなことしたら当然気持ちが盛り上がって、でもさすがに挿入はってことで、互いに互いのを握りあって扱いてイッて、結果、風呂上がりに二人してベッドに倒れ込んでいる。
 疲れた……
 てか朝から何をやってるんだ。
「今日の仕事、昼からだよね?」
「そっすね」
「じゃあもう1時間くらいは寝てもいいかな」
「1時間?」
 そこまで遠くのホテルに連れてこられたわけじゃないから、もう少し寝てても大丈夫そうだけど。ああ、でも、一旦帰って何かお腹に入れてからバイトに行きたい。というか家の鍵とかスマホとか、モロモロ全部持ってきてない。ってのを考えると、1時間は妥当な時間でもあるか。
 そう、思ったのに。
「お腹減ってるでしょ。どっかでブランチして、そのあとバイト先まで送ってあげる」
「どっかで? え、外食!?」
「たまにはいいでしょ。お正月だし。って、あー……」
「どうしました?」
「いや、君の弟くんの朝ご飯、考えてなかった」
 家の鍵とかスマホとか取りに戻ったほうがいいよね、って話かと思いきや、心配してるのは残してきた弟のことらしい。この人らしいと言えばらしいんだけど。置いてきた弟のことなんて、出来れば忘れていたいと言うか、あまり考えたくないんだけど。
「や、あれはほっといていいす。てか出来れば顔合わせたくないっていうか」
 多分向こうだって会いたいとは思ってないんじゃないだろうか。
 だってどう考えたって気まずい。あんなことがあったあとでお隣さんと仲良く朝帰りなんて、色々な意味で気まずい。
 何言われるんだろと考えるだけで、気まずいを通り越して、絶対会いたくないって気持ちになってしまう。
「ああ、うん。じゃあ直接バイト先送るのが正解だね」
「ですね。でも一つ問題が。というかお願いがありまして」
 ここで弟の朝飯の心配が出来るこの人になら、甘えてしまっても大丈夫なんじゃないかと思って口に出す。
「お願い? なんだろ?」
「俺のスマホと家の鍵の回収というか、アイツがまだ家にいるかもわかんないんすけど、いっそ鍵開けっぱにして帰っててくれてりゃいいんすけど、もし、まだアイツが家に残ってたら、スマホと家の鍵回収して、アイツ追い出してくれないかなって……」
 アイツと顔合わせたくないんすよと繰り返したら、あっさりわかったと了承された。本当は、これ以上この人をあの弟と会わせるのも嫌なんだけど。
「あの、俺とヤッたってアイツも気づいてると思うんで、もし変なこと言われたらすみません。つか、もし誘惑されても断ってくれるて、信じてるんで」
「兄貴の恋人奪ってやるって?」
「そういうの平気で考えるヤツなんすよ」
「おれが好きなのは君だけだから大丈夫だよ」
 即答でそう言い切ってくれるから、ほんと、嬉しいし安心するし信じられるとも思う。にへっと頬が緩むのが自分でもわかってしまう。
「それより、バイト中にスマホなくて大丈夫なの?」
「それは全然大丈夫す」
「しかし、鍵もスマホも持ってきてないの全然気づいてなかったっていうか、おれも相当テンパってたと言うか浮かれすぎてたね」
「俺はまぁいっかなって。このチャンス絶対逃せないって、テンションぶち上げだったんで」
「まぁわからなくはないかな」
 気づいてても取りに戻れる感じじゃなかったよねと納得されて、ですねと相槌を打っておく。
「さて、じゃあ今日の予定もあらかた決まったところで」
 おいでと両手を広げられてしまって、もぞっと相手に近寄れば、すぐに緩く抱きしめられる。
「アラームかけたから大丈夫だと思うけど、もうちょっとだけ眠らせてね」
 言って目を閉じた相手が、すぐに穏やかな寝息を立て始めて、寝付きいいなと思ってしまう。普段からこうなのか、疲れ切っているのかはわからないけど。昨夜あっさり寝落ちたのはこっちだけど。
 自分の方は、そこそこ疲れては居ても眠いってわけではないんだけど、でも抱き枕よろしく抱え込まれているし、やれることなんてないし。
 そう思いながら目を閉じたら、案外するっと意識が落ちた。

<終>

最後までお付き合いありがとうございました。
1ヶ月ほどお休みして、次回更新は12/25(水)の予定です。

 
 
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親切なお隣さん45

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 次はもっと密着した体勢で繋がりたいなと言われて、言われるまま横向きになれば、背後に寄り添うみたいに寝転がった相手が片足を持ち上げて穴の位置を確かめてくる。だけでなく、そのままぬるっと指先が入り込んできた。
「んっ」
「乾いてなさそうだし、このまま入るけど、いい?」
「は、はい」
 ゴムを付け替えるのは見てたし、そっちにローションを塗りつけているのだって見ている。穴は少し前までマックスサイズを受け入れて、けっこうガッツリ動かれても擦れる痛みはなかったんだから、多分なんの問題もないだろう。
 さすが、幾らか知らないけど安全を買ったとか言ってたアナル用ローション。そういや乾きにくくて良かった、とも言ってたっけ。
「じゃあ、入るね」
「ぁ……んっ……」
「さっきより小さくなってるし、この体勢だとそんなに奥までは届かないけど」
 物足りない? と聞かれて、いいえと否定を返した。
 だいぶ浅い位置にしか入ってないけど、そもそも、強い刺激が欲しいとか早くイきたいとは思っていない。物足りないってほど、体が昂った状態じゃない。
「じゃあもし物足りなくなったら、正直に教えてね」
 取り敢えずはしばらくこのままイチャイチャさせてと、足を下ろした相手の腕が、胸の前に回ってくる。というか抱きしめられた。
 背中があったかくて、確かにこれは密着って感じ。
 ほぅ……と緩んだ息が漏れて、背後から相手がクスッと笑う気配がする。
「腕の中に君がいて、その君と繋がってて、なのにそんな風に安心してくれてるの、すごい幸せだよ」
「俺も、けっこう幸せ? かもっす。なんかこのまま寝れそう、みたいな」
「あれ、そこまで落ち着いちゃってる?」
「まぁ……」
 ちゃんと気持ちよくはなっていたけど、奥への刺激でイッた経験はないから、正直イキそこねた感は薄かった。相手が気持ちよくイッてくれて満足したのもあるし、一度抜け出てゴムを変えるというインターバルもあった。
 今のサイズ的にもそこまで圧迫感はないし、挿入が浅いからそこまで快感を刺激されてもいない。
 うん、このままじっと抱きしめられてたら、本気で寝落ちる。
「もしかして眠い?」
 いつもならとっくに寝てる時間だもんねと言われれば、確かにそうなんだけど。でもこの時間を惜しむ気持ちだって当然ある。
「や、だいじょぶす」
「俺だけ先イッちゃったから、もっかいイカせてあげたかったんだけど」
 このまま寝てみる? という提案に、どこまで本気なんだと思いながら、嫌ですと返す。
 指でイカせてあげるよ、だったらともかく、まだ出来るって言われて実際こうして体を繋げているんだから、こんな中途半端な状態で終わりたくはなかった。
「もったいないんで」
「もったいない?」
「だって次いつ抱いて貰えるかわかんないすから。アンタがもう無理出ないって言うまで、搾り取りたい」
「ええ、本気で?」
 笑われてしまって、全く本気にされていないけど。実際、搾り取りたいって部分は本気で言ってるわけでもないけど。
 でも、次いつ抱いて貰えるかわからない、は間違いなく本音だった。というかあのアパート内では抱いて貰えないのだから、これは切実な問題だ。
「それくらいの気概で、ってヤツっすね。ヤレるだけヤッて帰りたい、みたいな」
「そんな意気込まなくても、ラブホくらいいつでも連れて来るんだけどね。普通のデートだってしたいんだけどね。でもおれとの時間を作るための無理もさせたくないし、ヤリ溜めみたいな無茶なセックスだってする気はないよ」
 そう言った相手は、明日だって仕事入れてるでしょと聞いてくる。
「入れてますね」
「じゃあ、これ以上あまり体に負担かかんないように、ゆっくり気持ちよくなって、気持ちよくイッたら、今日のところは終わりにしようか」
「それでいいすけど、そんな狙ってゆっくりとか出来るんすか」
「多分出来るよ。ゆっくり、一番キモチイイとこ擦ってあげる」
「えっ!?」
 言いながら、こっちの腰を押さえて後ろからゆっくりと腰を突き出してくる。
「ああっっ」
「ほらココ、でしょ」
「あ、そ、なんで……」
「なんで、ってイチャイチャしたかったからあんまり当たらないようにしてただけで」
 随分浅い挿入だと思ってたけどそれはわざとで、腰もしっかり密着させたら前立腺まではちゃんと届く、らしい。
「あ……はァ……」
「えっちな声出てる」
「だ、だって」
「少し動く? それとも、もうちょっとこのまま焦らそうか」
 そのほうがじっくり気持ちよくなれるかも、とか言われたけど。
「う、動いて」
「ん、わかった」
 ゆっくりするからゆっくり気持ちよくなって、の言葉通り、ゆるゆると腰を前後されると、お腹の中からじわっと快感が広がっていく。
「あ……あ……ぁあ……」
 ただ、そんな風にゆるゆると刺激されて、前立腺だけでイケるまで我慢、なんて出来るわけもなかった。そんな焦らしプレイやら我慢プレイには縁がないというか、ゆっくり気持ちよくなって、なんてセックスをされる想定がなかったから、そういう妄想で自分を焦らした経験なんて無い。
 つまり、もどかしさにあっさり屈して、自身の手を股間へ伸ばした。
「はぁ……」
「ん? もしかして、我慢出来なくて自分でおちんちん触ってる?」
 満足気な吐息が漏れるのが自分でもわかったし、快感でお尻の穴を締めてしまった自覚もあった。だから気づかれて当然なんだけど。
「だって……」
 最初にトコロテンしてペニスには触らずイッたから、前立腺だけでイケるって思ってるのかもだけど、トコロテンはそんなに簡単なものじゃない。そもそも、こんなゆっくりな刺激で自分を焦らした経験がないんだから、この状態からトコロテンが出来るのかどうかすら自分自身わからない。
「別に責めてないよ。ただ、おれも一緒に、していい?」
「え?」
 戸惑う声を上げたときには、腰を押さえていた相手の手がスルッと前に回ってくる。ペニスを握る手を包みこんで、一緒にゆるゆると扱いてくる。
「ぁ……」
「気持ちぃ?」
「き、きもちぃ、ああ」
「ふふ、えっちなお汁いっぱい出てる」
 指先が器用に先端からこぼれる先走りを掬い取って、くるくるとくすぐるみたいに亀頭へ塗りつけてくるからたまらない。ゾクゾクと腰の奥が疼いてしまう。
「あぁ、やぁあ」
「でも気持ちぃでしょ」
 お尻凄い締まったよと指摘されて、止めては貰えなかった。
 トプトプと溢れてくる先走りを次々と掬われ塗り込まれ、お尻の中では前立腺をゆっくり擦られて、全然激しくされてないのに、ビリビリ痺れるみたいな快感がずっと続いていっそ怖い。
 なにこれ。
「あ、あ、ああっ、や、だめ、だめっ」
「何がダメ?」
「だ、だって、いく、も、いきたい」
「うん、いいよ。イッて?」
 そう言うくせに、イクために激しく擦ろうとするのはやんわりと拒否られて、こちらの手を覆う相手の手は、依然としてゆるゆるとしかペニスを扱いてくれない。
「あ、ああ、やだぁ」
 イキたいイキたいイカセてと繰り返したら、仕方ないなぁと、呆れるってよりは甘やかすみたいな、どこか笑いを含んだ声とともにペニスを握る手が外れて、また腰を掴んでくる。
「自分でしていいから、イクときちゃんと教えてね」
 おれはいっぱい前立腺突いてあげるからいっぱい気持ちよくなってと、その言葉通りに、さっきよりも強めにゴリゴリと前立腺ばかりを狙って突いてくれるから、焦らされまくった体はあっという間に昇りつめていく。
「あ、あ、あ、イクイクイクっ」
 ギュウギュウとお尻の穴を締め付けながら、ビュクビュクと白濁を吐き出す中、背後で相手が小さく呻くのがわかった。自分の体が絶頂で痙攣してるからか、さっきほどはっきりわからないけど、でも多分、相手も一緒にイッてくれたんだと思う。
 良かった。嬉しい。
 そう思ったところまでは、覚えている。

続きました→

 
 
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