抱かれたら慰めてくれんじゃないのかよ10

一話戻る→   目次へ→

 ただ、色々無駄にしてきたってなら、それはこっちだって同意見だ。
「お前がわかりにくいから、こうなってんだろ」
「だから、それもわかってるってば。半分は自業自得って言ったし、そもそも俺を好きになるとか思わないでしょ」
「なんで?」
「あんたの好みのタイプじゃないはずだから。あと、男が恋愛対象になるわけじゃないでしょ。あいつが特別だったってだけで」
「まぁそれは、……確かに?」
 ほらみろと言いたげな胡乱な目に見つめられて、へろりと笑ってごまかしてしまう。
「というか、そんな、特に好みでもない対象外な俺を好きになった理由とか、聞いてもいいわけ?」
「あー……それは、ほら、あいつへの気持ちを知られてるから気楽だったというか、お前の前では隠さなくていいから気を張ってなくていいとか、つまりはまぁ、お前と二人きりの時って、なんかすごく安心できる」
「あぁ……あんた無駄にカッコつけだもんね」
 納得という顔はしているものの、その口から吐き出されてきた言葉は容赦がない。
「うっせぇ。周りにカッコいい俺を見せたいと思ってて何が悪い」
「別に悪くはないけどさ。つまり恋人相手にも、常にカッコいいとこ見せたい派なんだなって」
「なんだよ。男なんて割と皆、そういうもんじゃねぇの?」
「個人によるし程度によるって言ってんの。俺はそこまで、恋人にカッコいい俺を見せたい、とは思ってないし。あとまぁ、嬉しいよ」
「は? 嬉しい?」
「だってそれ、あんたが気を許せる一番の相手が俺、って意味じゃないの?」
「そうは言ってないだろ!」
「じゃあ、俺以上に気を許せる同性の友人って誰? だいたい、あんたの一番の親友って、あいつじゃなかった?」
 とっさに、お前が知らないやつだ、なんてことは言えなかった。ウッと言葉を詰まらせれば、勝ち誇ったような顔をされて嫌になる。
「ほんっと、意地が悪い」
「そんなこと無いでしょ。これさっきも言ったけど」
「じゃあ、俺がまた何か見落としてるってのかよ」
「まぁ、そうなるかな」
「まじかよっ。で、今度は何だって?」
「俺に一番気を許してる。って言って欲しいだけ、って気付いてないよね?」
「そ、れは、……だってお前、気付いてんだろ、もう。というか、あれじゃ俺にはわかんねぇよ、そんな気持ち」
「気付いてても言って欲しい気持ちは別。で、わかれよとは思ってないから、いちいち説明することにしたの」
 てわけで、はい、言って。なんて促されて、またしても言葉を詰まらせた。というか、こんな形で強引に言わされた言葉でもいいって言うんだろうか。
「そんな言わされただけの言葉に、意味、あんのかよ」
「あるね。大アリだね」
 悲しい誤解がこれ以上発生しないための訓練だよ、などと言われたってわからない。そして全くわかってないって事は、間違いなく伝わっている。
「俺は、あんたが理解しない言い回しや態度を見せたなと思ったら噛み砕いて説明する。だからあんたには、俺の前でもっと素直に振る舞えるようになって欲しいわけ。で、手始めに、恥ずかしいだの悔しいだのカッコ悪いだので言うの躊躇う言葉を、口に出すことにまず慣れて貰いたいわけ」
 だから言ってよと、どこか甘えを含んだ柔らかな声に促されて、その声はなんか卑怯だと思いながらも、渋々口を開いた。
「俺が、一番気を許せるのは、お前だよ」
「はは、うん。嬉しい。ありがとう」
 確かに嬉しげな笑顔が近づいてきて、唇が触れる。何度かちゅっちゅと、角度を変えて唇を触れ合わせながら、ゆっくりと体に伸し掛かるような力と圧とが増えていく。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です