イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった30

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「なんでもなくないだろ。よくわからなかったからもっかい言って」
 躊躇うように視線をうろつかせるから、睨みつけて「言えよ」と繰り返せば、諦めたように口を開く。
「だから、一回だけでいいから、みたいなしつこい誘いを断りきれなかったことが何度かあって、でも、お前が側に居てくれた大学時代はちゃんと全部断れてたの」
「あー……ギラギラした女の子からは、確かに俺が守ってやったもんなぁ」
 反感を買うのをわかっていて、いい加減にしろと仲裁に入った記憶が何度かある。なんでこいつが愛想を振りまいた尻拭いをしてるんだとうんざりしながらも。
「それもあるけど、断りきれなくてやっちゃったら絶対嫌われると思ってたっていうか、きっともう触らせてくれなくなるって思ってて、必死でお断りして逃げてた」
「そうか? お前、最初っから童貞じゃなかったし手慣れてたし俺が好きでって感じでもなかったから、誰にでも気軽に手ぇ出してんのかと思ってた。こともある」
「ないよ!」
 酷いと言われたって、そう見えるような軽薄さで愛想を振りまいたのはこいつだ。
「ただまぁ、モテんのに彼女作る気はなさそうだったし、俺なんかに手ぇ出すのは女より男相手のが良いんだろうなとも思ってて、疑ってたのは他の男友達ともこういうことやってんのかもな、って方向だけど。肉食系女子に食われるお前とかは全く想像したことないわ」
 やたら押しの強い女子がいたのは事実だし、目の前でこいつがきっぱり断れずにオロオロしてたらつい助けもしたが、それは自分の目につくところで繰り広げられるのが嫌だったのが大きい。だから自分が関与しないところで、そういう女子と関係を持ったと後から知ったところで、それを理由に相手を拒絶はしなかったと思う。
 なんせ、きっとゲイよりのバイで女より男がいいんだろうと思ってたから。女相手じゃやっぱ満足できないんだな、程度に考えたはずだ。
「男相手もないってば!」
 お前とするようになってから卒業するまでお前一筋だった、というのを否定するつもりはない。否定できる材料を持っていない。
 そういう現場を目撃したこともないし、共通の男友達相手に確かめたこともないし、わかりやすく怪しい素振りやらをされた記憶もないのだから、勝手にそう疑ってた事があるってだけだ。
「あの頃お前が誰と関係してようと、俺を気持ちよくしてくれんのを拒否ったりはしなかったと思うけど、でもまぁ、恋人になるなら話は別だよな。本気で逃げればお断りできるってのはわかったし、もうよその女になんか食われるなよ」
「わかってる」
 神妙な顔を見せてはいるが、でも口元がにやけかけているのを隠せていない。どうやら、恋人って単語に浮かれているらしい。
「まぁ、本当にお前と恋人になるかはまだ決まってないけど」
「えっ!?」
 意地が悪いのは承知で口にすれば、思ったとおりに焦りだす。なんで、と言いたげな顔は焦りと不安と混乱とで、随分と情けなくなっている。
 ははっと笑いながら、イケメン台無しな顔を素直に楽しめている事に気づいて、なんだかますます楽しくなった。気持ちに余裕があると、こいつのこんな顔を知っている人間がどれほど居るかなんてことにも気づいて、ちょっとした優越感まで味わえてしまう。
「だってお前相手に勃つか、まだ確認できてないし」
「え、じゃあ、もし勃たなかったら、恋人になる話とか今までの全部白紙なわけ!?」
「ばぁか」
 触られたら勃つと思ってるし、責任取らせるつもりだし。
 最悪勃たなくても、こいつが相手なら尻穴で気持ちよくなれる可能性だってあるし、それすら既に提示済みだと言うのに。その場合だって当然、突っ込んだ責任を取らせるに決まってる。
 つまりは、好きって認めさせたんだから今更逃がすわけがない、ってことだ。
「酷っ! だってそこ、めちゃくちゃ重要なとこじゃん」
 興奮して声を大きくする相手に、吠えるなよと苦笑しながら腰を上げる。
「さっさと確かめて、さっさと恋人になろうぜ。って意味だろ」
 ベッドまでの短い距離を詰めながら、もう一度バカめと罵ってやった。

続きました→

 
 
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