「ガチガチ」
下着の上に押し当てた足の裏、ゴリゴリと押し返してくる硬さを笑えば、相手はさすがに嫌そうに顔を歪めた。
「あ、たりまえ、でしょ。てか足癖悪いな」
「それに興奮したくせに」
足の裏で感じ取れるくらいに派手に脈打ったペニスは、多分、更に大きさと硬さを増したと思う。下着越しでもわかる膨らみの大きさに、既にフル勃起なのかと思っていたが、さすがにそこまでではなかったらしい。
足とは言えやっと与えられた直接の刺激に、更に興奮が増したとしてもなんらおかしくはない。
わかってんだぞという気持ちで、形をなぞるように足をツツッと動かしてやれば、小さく呻いて足首を掴まれた。
「もー、わかったから煽らないで。ゴムつけるから、この足、ちょっと大人しくしてて」
わかったかと言われて素直にわかったと返せば、掴まれていた足がやっと放され、相手の視線が外される。相手の視線が動いた先にあるのはコンドームの箱で、買ったばかりのそれは当然未開封だ。
「ジロジロ見られてると緊張するんだけど。てかダサいな、俺」
手持ち無沙汰にゴムを装着する相手の手元を見続けてしまえば、少し不機嫌そうな声が降ってきて、視線を手元から相手の顔へと移動する。不機嫌、というよりは照れと気まずさってところだろうか。
「ダサいか?」
「もっとスマートに、あんあん言ってる間にいつの間にかちゃんとゴムも着いてて、とか。せめて、なんかこう、ピッと開けてサッと着けたかったっていうか」
箱の外装開けるとこからとかってダサくない? と言うので、まぁ言いたいことはわからなくもないけれど。でもそんな準備をしておく時間がなかったのもわかっている。と思ったのに。
「タオルとか用意した時、一緒に開けとくべきだったよね」
「あー……なるほど?」
「なんかがっついてて恥ずかしいな。今更だけど」
タオルの用意に気が回ったり、枕を腰の下に用意したりと、充分に冷静に思えていたけれど。本人的にはちっとも気遣いが足りなくて、がっついている、という認識らしい。
「俺としてはダサいくらいが有り難いけどな」
相手が非童貞なのは知っているが、あまりに手慣れていたら色々と嫉妬しそうではある。何に対する嫉妬かは難しいところだけど。
「え、嘘でしょ?」
「なんで嘘なんだよ」
「だってもっとなんかこう、キモチイイなぁって思ってる間に全部終わってて、みたいなの期待されてるような、俺に任せてとか言っちゃったのもあるけど、俺に任せてたら大丈夫って思ってくれてるっぽいし」
「任せていいんだろ? てかそれとお前がダサいの関係あるか?」
「え、だって、上手く出来てないからダサい、って話で」
「どこも痛くないし、尻穴弄られてちょっとイッたっぽいくらいに気持ちよくなったし、それ突っ込まれても多分裂けて流血しない程度には広がったってなら、別に上手く出来てないってこともないだろ。しかもちゃんと勃ってるし」
「ちゃんと勃ってるし?」
なんだそれと言いたげな相手は、なぜ今日こんなところに呼び出されたかという根本的な原因を忘れてしまったんだろうか。
「勃たなくて振られた俺のダサさに比べりゃ、お前のダサさなんて、むしろ安心しかしないっての」
「そう、かな? てかそうなの?」
安心するような要素がわからないとはっきり顔に出ているから、そうだよと肯定してから更に言葉を続ける。
「お前が、相手をあんあん言わせてる間にゴム装着できるほど手慣れてなくて、ホッとするよ。遊ぼうと思えばいくらでも相手探せんのもわかってるし」
「そ、っか。それは、うん、わかる」
ホッとするってのとはちょっと違うんだけど、と言った後。
「手慣れてないの可愛いとしか思ってなかったけど、俺以外知らない体、って思うとめちゃくちゃ嬉しくなるね」
本気で嬉しいのがわかる緩んだ笑顔が、見ているだけで恥ずかしい。
「も、いーから、ほんと、さっさとそれ突っ込めって!」
やけくそ気味に言い放てば、相手は更に嬉しそうに笑顔を蕩かせた。
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