聞きたいことは色々13

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 何が不満? と聞かれて、逆に何が良いんですかと尋ね返した。
「俺が未経験だったから抱いてみたかった、ってだけじゃないんすか。一回やったら興味なくしてポイなんだとばかり思ってたんですけど。てか、恋人になろうって言ったのは俺が抱かれる気になれるようにだし、俺が本気で好きになったらどのみちポイするんですよね?」
「なんか色々誤解されてる気もするけど、恋人になったと思ってたから、お前を落とすゲームをやってる気はなかったよ。でもあの晩限りの恋人と思ってて、今はもう恋人じゃないって言い張るなら、今からお前を落とすゲームを始めるのもありだよな」
「待って待って。だってもう抱かれたのに? 俺を落としてどうすんですか?」
 好きにさせてから振るのが楽しいとか言い出したらドン引きなんですけど、と続けたら、おかしそうに笑われて、そこまで悪趣味じゃないけど、と返された。
「けど、なんですか。結果的にそうなっちゃうよね、みたいな話ですか」
「どうだろね。結果的にそうなる、と言えないこともないのかもだけど、説明が難しいな」
 好きになって貰う過程を楽しむのは事実で、だけど別れを楽しんだりはしてなくて、でも惜しいとも悲しいとも思わないから薄情なのもきっと事実、らしい。好きになって貰うまでが楽しければ楽しいほど、ある程度満足したところで急激に気持ちが冷める、らしい。
「標的にされる相手が可哀想すぎじゃないですか。てかそれが俺になるかもとか、大迷惑なんすけど」
 恋愛未経験者を弄ばないで下さいよと言ったら、やっぱり可笑しそうに笑っている。こっちはちっとも笑えないのに。
「だからそんなゲームなしで、もう恋人ってことでいいだろ」
「だから! 俺の何が良くて恋人とか言ってんですか、てのを聞きたいんですって。そういや抱かれてる間『いいね』って何度も言われた記憶あるんですけど、あれって何が良かったんですか?」
「そうだな。端的に言えば、恋愛未経験でセックスも俺とのあの1回しかまだ知らないとこ」
「つまり体目当てなんだ……」
 知ってた!
 てかそれくらいしかないだろうことを、まんまと言われてしまっただけだ。
 特別鍛えてるわけでもないけど、運動は嫌いじゃないと言うか勉強に比べたら体を動かすほうが断然好きだったから、そこまで見劣りする体ではないはずという自覚はあった。それに、色々経験してそうだけど、むしろ経験してるからこそ、他の男を知らない体がいいのかも知れない。なんてことを思ったりもしていた。
「男なんて結局そこでしょ」
「ですよね」
 はぁああ、と大きなため息が零れ落ちていく。
 だって見た目なんか至って平凡で、相手と比べたら完全に見劣りするレベルだし。こんな人だと思わなかったって感じたくらい、相手だってこちらのことなんか大して知りはしないだろうし。って考えたら、魅力があると言って貰えるのなんか体だけなのは納得でしかないんだけど。一応は可愛いとも言ってくれてたんだから、何かしら、こういうところが好ましい的なものが聞けたら良かったんだけど。
 この人にとっての「恋人」ってのはセックスをする相手のことを指していて、恋愛する相手を指していないんだろう。欲しかったのは恋愛相手で、互いに恋情を持って付き合うことを「恋人」と呼ぶのだと思っていたのに。
 この人と恋人として過ごす時間が増えたら、こういう人だってわかってたって、本気で好きになったらポイされるって知ってたって、絶対好きになってしまう。今現在、強引に恋人関係に持ち込もうとされたり、体目当てを隠しもしない態度を取られているのに、ちっとも嫌えそうにないのがそれを証明している。
 こんなの、体だけが目当ての恋人相手に虚しい片想いが確定だし、本気の好きがバレたら捨てられるって不安が常に付きまとうことも確定だ。こんな確定事項、憂鬱になるに決まってる。
「そんなに嫌?」
「嫌じゃないです。てか俺を落とすゲーム始められる方が断然嫌です」
「だよねぇ」
 今度は相手から、小さなため息が吐き出されてくる。
「正直、なんかもう色々面倒だから落とすゲーム始めたい」
「やですってば。てか恋人でいいです。文句ないです」
 今夜また泊めてくださいよと誘いをかければ、「いいよ」と短いながらも機嫌の良さそうな肯定が返った。

続きました→

 
 
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