聞きたいことは色々29

1話戻る→   最初から読む→

「ヤダって何!?」
「さっき別れさせようとしてただろうが」
「え、そっち!?」
 さすがにこれは口に出た。
「そっちってなんだ」
「逃げない恋人が欲しくなった理由を知られたくないのかと思って」
「ああ、別に。それはそんな大した理由じゃない」
 そう言って自ら話しだしたことを簡単にまとめると、叔父の後を引き継ぐつもりで抱こうとしたら盛大に拒否られて家まで出ていかれた、ってことらしい。
 結構長いこと家族として一緒に暮らしてセックスまで参加してたのに、二人がと言うかこの隣りにいる男が、どれほど旦那を一途に想っているかを全く知らなかったんだそうだ。そして出ていく時に、叔父とは全然違うとあれこれ指摘されて、性癖に寄り添って一緒に居てくれる恋人なんかお前に作れるはずがない、的なことを言われたと。
「つまりそう言われたのが悔しくて、自分もそういう恋人作ってやる、的な?」
「違う」
 あっさり否定されてしまった。
「作ろうと思って作れるならとっくに作ってるだろ」
「確かに」
「ただ、どの恋人よりも多く抱いて散々好きだって言わせてた相手ですら、好きって言葉はセックス中のプレイの一環で言ってただけで、俺のことは別に好きでもなんでも無かったってのはそこそこ衝撃だった」
「はい待って」
 彼の言葉を止めた男が、好きでもなんでもないとまでは言ってないと訂正を入れてくる。
「お前が俺を想う程度には俺もお前を想ってるけど、それは旦那抜きでセックスしたいほどじゃないってだけ」
「なんでだよ。同じだけ想ってるなら、セックスはするはずだろ?」
「お前が俺を抱こうとしたの、俺を好きだからじゃないでしょ」
 叔父の後を引き継ぐつもりでってさっき自分で言ってたよと指摘された相手は、やはりイマイチ納得がいかないという顔をしている。
「君は俺の言葉の意味、わかってるよね?」
 そう聞かれてしまえば答えないわけにも行かず、多分、とだけ返しておいた。
 居なくなった叔父の代わりに叔父のしていたプレイを真似る、までは出来ても、叔父が愛したのと同じようにこの人を愛するのは無理。という判断をされたんだろうことはわかる。
 もし彼が、愛する人を事故でなくしたこの人を本気で想って寄り添うことを望んだのなら、この人は家を出たりしなかったのかも知れない。
 寄り添って傷が癒えるのを待てば……
 いやでも旦那と旦那が抱かれろって連れてきた相手にしか抱かれてないって言ってたから、抱いてって言われるより抱かせてって言われる方が先の可能性もあるか?
 なんて、ついつい思考が余計なことに向かってしまうのは、多分、現実逃避なんだろう。
 この人と付き合い続けても、こちらが望むような想いは今後も返ってこないのだと、確定したようなものだから。
「お前がそこ理解しない限り、この子も傷つけるだけになるから別れなよ」
「嫌だ。俺たちは上手く行ってる」
「って本人は言ってるんだけど、どうする? もう無理ってなら、俺が次の恋人探すの手伝ってもいいって、割と本気で思ってるけど。でも、こいつがこんなに執着してる恋人ってのも初めてだから、こいつが変わるきっかけに君がなってくれるんじゃないかって期待は、俺にも、ある」
 思わず見つめてしまう先で恋人が不安そうな顔をしているから、珍しいものを見ているという不思議な感動が湧いた。隣に視線を移せば、やはり不安そうな顔をした男がこちらを伺っている。
「えと、別れるつもりは、ない、です」
 これだけ色々と聞いて、諦めに似た気持ちは結構湧いているのに、でも、別れたいなとか別れなきゃとかは思わなかった。というのが、自分の答えなんだろう。
「今のところは」
 それでもそう付け加えてしまう程度には、今後も続けていくことに自信がないのも確かだった。

続きます

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です