聞きたいことは色々30

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 いつも通りの3週間を過ごして、いつも通りデートの呼び出しに応じたけれど、さすがに緊張はしていた。
 別れるつもりがないと言ったことで、じゃあ今まで通りでって事になったけれど、本当に今まで通りのデートやセックスが出来るのかという不安はどうしたって湧いている。
 会社で顔を合わせてはいるけど元々なるべく関わらないようにしていたし、プライベートなメッセージのやり取りだって基本日程調整でしか利用されていなかったから、あの日から3週間も経過してるのに、あの日彼の家を出てから先、彼とこの件に関して何も話していなかった。
 あの日は彼と二人きりで話せないままお開きになってしまったし、何かしら話し合うことになるはずだ。とは思っていたんだけど。
「どうしたんですか?」
 待ち合わせ場所で顔を合わせるなりそう聞いてしまったくらいに、初っ端から全然「今まで通り」じゃない。あからさまに相手の纏う空気が重くて、多分相当機嫌が悪い。
「出掛けに、ちょっと……」
「ちょっと?」
 相当嫌なことがあったように思えるくらいの雰囲気なんだけど。
「デートは無理」
「ああ、はい。もちろんいいですよ」
 無理だと判断した時点で連絡をくれても良かったんじゃと思わなくもないし、らしくないなとも思ったけれど、こんな状態でデートを強行されるよりは断然いい。
「じゃあまた誘ってください」
 帰りますねと続けたら、背を向ける間もなく相手の手が伸びてきて腕を掴まれる。
「えっ?」
「デートはしないが、用事はある。というか聞きたいことがある」
「ああ、なるほど」
 だからキャンセルの連絡がなかったらしい。
「ちなみに嫌ですって言うのは?」
「なしで」
「ですよね」
 デートという形を取るのさえ嫌になる話題ってなんだろう。そう考えて出てくる話題なんて、別れ話くらいしか思いつかないんだけど。
「場所は?」
「うちで」
 あいつは居ないからと続いた言葉に、知ってますと返すのはやめておいた。
 連絡先を交換して、そちらとは他愛もないメッセージをあれこれとやりとりしている。だけでなく、誘われて食事に出かけたりもしている。
 ちょっと年が離れすぎかなとも思うけれど、思わぬところでいい友人を得てしまった。
 ゲイで、亡くなってはいるけれど本命相手がしっかりいて、抱かれる側のが圧倒的に多かったって人だから、話を聞くのはあれこれと参考にもなるしかなり楽しい。
 更には、こちらの恋愛事情が既にあれこれと知られすぎてるのもあって、色々と教えてくれる彼の話も、なんだかんだ有り難く聞いてしまっている。
「一応聞いておきたいんですけど、デートキャンセルで話し合いって、つまり別れ話だったりします?」
「その方がいいなら」
 よくわからない言い回しだけど、別れる気があるっぽいのはわかった。
「そ、ですか」
 落胆と胸の痛みと。
 結局別れることになるなら、前回振ってくれればよかったのに。
 色々と諦めも多かったけれど、別れたくないとはっきり意思表示されたことや、こんなに執着してる恋人は初めてだと思うと言って貰ったりで、別れずに済んだことを喜ぶ気持ちも安堵する気持ちも間違いなくあった。
 だって自身の中に芽生えていた恋情を自覚してしまった。本気で好きになったら、それが相手にバレたら、自分が振られて終わるんだと思っていた関係だったんだから。ずっとそれに怯えていたんだから。
 自覚して、しかもどうやら相手もそれに気づいてて、なのに終わらなかった。という事実に、喜んだり安堵していた自分がバカみたいだ。

続きます

 
 
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