「好きだ可愛い愛してるって思ったのを口に出すのと、そう言われた相手の反応を楽むためだったり、自分の要求を飲ませるための甘言は全然違うものだからな?」
お前の好きはこの子が欲しかった好きじゃないんだよと告げるお兄さんは呆れた顔をしているから、何が辛かったかはわかってくれているんだろう。
「てか好きって言わせたりお前から言ったって、それもうそういうプレイしたって話でしょ。お前絶対ノリノリで楽しんだだけでしょ」
目に浮かぶよと言いながら、こめかみを押さえている。
「で、こんなになるまで泣かせても、フォローとかする気も無いんだよな。というか泣くほど俺を好きな子を抱いてやる優しい俺、くらいの認識なんじゃないの」
そういうとこほんとクズ、と言い切るお兄さんは容赦がないなと思ってしまって苦笑がこぼれた。
「実際、泣くほど好きな相手に俺も好きだって言われながら抱いてもらったら嬉しいはずだろ?」
しかもちゃんと気持ちよくしてるし何度もイカせてやってる、という主張は、確かに間違いとも言い難い。
だって、ずっと貰えなかった相手からの「好き」を喜ぶ気持ちは間違いなくあったから。自分に対する想いなんかさしてないってわかってても、好きだと甘く囁かれながらイクのはたまらなく気持ちよかったから。
でもその反動も相当大きくて、嬉しいって思ってしまうことが悲しくて仕方がなかった。
秤にかけたら嬉しいよりも悲しいほうが勝ってしまうから、出来ればあんなセックスは繰り返したくない。
「お前はホント、そういうとこポンコツだよね。いっそ可哀想なくらいに」
泣くほどお前を好きな子に返せるものが気持ちいいセックスだけだなんて情けないと、やっぱり呆れた顔をする。
「それで、今後はどうするつもりなの。好きって言い合うセックスはもうしないからお付き合い続けてくださいって頼むの?」
「それ以外に何かあるのか」
その要求を飲まなきゃ振るぞって言われてるような状況で? と返す彼の声は渋い。
そんな脅迫めいたことを言ったつもりはないんだけど。でも確かにそう言ったも同然なのかもしれない。
「そこまでこの子に執着してるくせに、この子の想いに応えてあげたい的な気持ちってないの?」
「応えただろ。その結果がこれなんだろ」
「本当はわかってるんじゃないの」
「何をだ」
黙ったまま彼を見つめるお兄さんは、やがて諦めたようにため息を吐いた。それから視線をこちらに移して、他に言っておきたいことはあるかと問う。
「いえ。昨日みたいなセックスはもうやだ、ってのは伝えられたし、了承もされたっぽいので」
お兄さんがいてくれなかったらこんなにあっさり了承はされなかった気がするから、やっぱりこのタイミングで話せて良かった。心配してわざわざ様子見に来てくれたのが本当に有り難い。
「うん。じゃあ行こうか」
「ってどこへ?」
「寝室。自業自得とか言ってたけど、そんなに泣かせる原因作ったのはやっぱり俺だよねって気持ちが強いんだよね。だから俺にお詫びさせて。君が浮気だって思うようなことはしないから」
「って何をする気で?」
浮気だって思うようなことはしない、という言い回しが気になって、さすがに警戒してしまう。
「とりあえずは抱っこしながら昨日の詳細を聞きたいかなぁ」
思い出してまた辛くなったらヨシヨシって背中を撫でたい、らしい。
「しんどい思いした分、いっぱい甘やかしてあげる」
「却下だ」
「だめ。俺はこの子に必要だと思うケアをするだけ。お前には無理なんだから、お前は俺に感謝だけしとけばいいよ」
「だとしても許可できない」
「なんで許可できないのかちゃんと説明できたら、それに俺が納得できたら、考えてもいい」
そこで答えに詰まってしまった彼を置いて、促されるまま寝室へ向かった。
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