今日のデートはどうだった? と聞かれたのは、今現在お兄さんが暮らしている方の家に戻ってからで、彼とはランチを食べたお店を出たところで別れていた。というか現地集合現地解散って感じで、あれがデートだったとはどうにも言い難い。
けれど間違いなく、単なる食事会でもなかった。
半個室のお店が予約されてて、4人がけのテーブルで彼の隣に座ることになったり、お兄さんの前でキスされたりで、どうやら軽く触れるだけのキスはエロいことに入らないらしい。
人目を忍んで掻っ攫われる、なんて軽い触れ方じゃなかったけど。でも口の中へ侵入してくるような深いものでもなく、ちゅっちゅと何度も軽く吸われるようなキスは、まるでこちらが舌を差し出すのを待ってるみたいだった。
出さなかったけど、舌を出してと囁かれてたらうっかり従ってたかも知れない。くらいには、そこが半個室とはいえ店内だってことも対面に今現在の恋人が座ってるってことも、頭からすっぽ抜けてた自覚はある。
「デートしたって感覚、あんまないっすね」
「まぁ一緒にご飯食べただけだしね」
「ご飯食べただけじゃなかったですけど」
「そうだね。で、ご飯食べただけじゃない部分の感想は?」
思ってたより抵抗感なさそうだったと言われて、確かにそうだなと思う。
いくら半個室でも店内であんなにしっかりキスされたのに、次が無いようにしなければとは考えてないし、ヤバいと焦るような気持ちもない。以前なら絶対、このまま黙って許したら、人目が遮られる場所なら店内であってももっとエロいことされるようになるんじゃ、って考えたと思うし、どうすればそんな展開を防げるかを必死で考えたと思う。
だってこの人がそこに居てくれたから。
この人の存在が頭からすっぽ抜けて彼とのキスに没頭したくせに、とも思うんだけど。そもそもキスに没頭できたのが、この人がそこに居たからだって気がしている。
それに、恋人が目の前で他の男にキスされてても平気なんだ、なんていう悲しい気持ちにもならなかった。
平気なことは最初からわかってたし、それは想いがないからでもどうでもいい存在だからでもない、ってこともわかっているからだ。わかっているし、それを信じられている。
「あなたが居てくれたから、です。多分」
「そうなの?」
「だってあなたがそう望んだんでしょう」
「それはそう。でもそれはつまり、俺へのお礼的な気持ちが強くて抵抗感が薄れる感じ?」
「お礼の気持ちてよりは、安心感? ですかね」
どういうことか聞かれたので、もしあのまま流されても嫌われないし振られないしむしろ喜ばれるって知ってるのは大きいですと返した。ついでに、エロいことNGのデートって聞いてたのも、彼に口説いていいって言った話を聞いてたのも、安心感につながってると思うとも言っておいた。
まぁ彼には会って早々、俺をその気にさせるゲーム感覚で口説くのはやですよって、一応釘を刺してしまったんだけど。とっくに3人でしてもいいって気になってるし、彼への好きはちゃんと自分の中に残ってるし、まだしないって言ってるのはお兄さんの方だし、早くしたいって思うならこっちを口説くよりもお兄さんを説得するべき、という訴えが今日のデートにどう影響したかはわからないんだけど。
なおそれを聞いてたお兄さんは、渋い顔で戸惑う彼をめちゃくちゃ面白がって笑っていた。
「なるほどね。浮気じゃないし不快にもならないしむしろ歓迎する、ってのを結構素直に飲み込めてる感じかな。じゃあご褒美か感謝の方向にしようか」
「ってなんです?」
「今夜のエッチの方向性」
ただ流されてされるがままキスに没頭しただけなのに、褒められまくって喜ばれるんだから、なるほどと思わずには居られなかった。
こんなのを繰り返されたら、この人の想いを受け取るその延長上で、早く3人でしたいとか、また彼に抱かれたいとか、そういう気持ちだって本当に湧いてしまいそうだ。
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■
HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁