記憶にある彼とのセックスは割と性急だったというかキモチイイ重視だったから、ただただ裸で抱き合うだけの時間にはやはり慣れない。嬉しさはあるのに、どうしていいかわからないむず痒さがあって、なかなかじっとしていられなかった。
「落ち着きがないな」
やはり安心はできないかと言われて、ソワソワしちゃって無理ですと正直に返す。
「そわそわ?」
「だってこんなの初めてで」
「まぁ、そうだな」
「どうすればいいかわかんない」
「大人しく抱きしめられておけばいいんじゃないか? って、緊張させたいわけじゃないな」
動いてしまわないよう気を張ってみたら、あっさり前言撤回された。
「そう簡単には慣れないか」
「ですね。てか嫌がってはないですからね」
「わかってる」
「ちゃんと嬉しいって思ってるし、この後どんなセックスしてくれんのかなって期待もあります。その期待のせいでソワソワしてるとこもありますよ」
「期待はそれであってるのか?」
「あってます。てかあっちはあまり期待したくないので」
好きって自覚が芽生えない可能性はあると思っているから、期待はしたくなかった。だって彼が愛し気に見つめる先にいるのはだいたいお兄さんで、その視線が自分にだけ向かったことはないのだから。
「俺が好きなのはアイツでお前じゃない、って確定したらどうする?」
「どうもしませんけど、二人でセックスするのは今日が最後かなとは思います」
「それだけ?」
「あなたがお兄さんだけを好きだとしても、お兄さんと別れる気はないです。あ、俺とお兄さんを奪い合うとか?」
「それはない」
俺に勝ち目ないだろと言って笑う声はカラリとしている。
「お前を愛しいって思えなきゃ、弾かれるのは俺だよな」
いつだったか、変わらなかった場合の未来は彼もわかっているはずだと、お兄さんが言っていたのを思い出す。
「もし俺を好きって思えなかったら、どうするんですか?」
彼の自覚を促したいと思って始めたことなのに、彼がお兄さんだけを好きだと自覚した場合、彼がどうする気なのかってことを全く考えていなかったことに気づいた。
「てかなんで二人でしようなんて言い出したんですか。俺を好きって自覚できそうだから、ってわけじゃなかったですよね?」
確かめたいとは言っていたけど、確信持ってからにしてと迫るお兄さんに、確信が持てそうだとかは返していなかったはずだ。
「もし俺を好きって思えなくても、3人でするの、やめたりしないですよね?」
「お前を好きって思えなくても、それが確定した後でも、3人でしたいの?」
「したいです。でもお兄さんが俺を好きって言って甘やかすのを見るのが辛いとかだと、どうしたらいいのか」
どうしよう。そんなの全然考えてなかった。彼がお兄さんだけを好きって自覚した場合、3人でしたらお兄さんといちゃつく姿を彼に見せつけることになってしまう。
勝ち目がないとあっけらかんと言ってしまうくらい、お兄さんの気持ちが自分に向いてないことはわかっているんだろうけど。でもお兄さんの中に彼を好きな気持はちゃんとある。お兄さんがこちらに気を使って、それを彼に向けないようにしてくれているだけだ。
彼の好きに応えてあげてって言ったら。大丈夫だからって言えたら。きっと……
「あの、お兄さんは家族としての特別はもうあなたが持ってるって言ってて、家族としてはちゃんと好きで、だからあなたの気持ちに応えられないってわけでもなくて、は、半分こで、どうですか?」
「半分こ?」
何の話だと言われても仕方がないくらい、テンパって取り留めのない言葉を連ねたとは思う。
「お兄さんの好きを、です。俺とあなたとで、半分こ」
どうですか? と聞いたら、呆気にとられた顔をされた後で爆笑された。
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