結論から言えば、振って帰るのではなく、お付き合いを了承して寝室へ移動することになった。
だって熱烈に口説かれて本気で好きになった後ポイ捨てされるより、特別本気で好きってわけじゃなくても抱きたい程度の興味は持ってくれてる相手と恋人になる方が、多少はマシに思えた。どっちみち1度抱かれたら相手の気が済むんだったら、本気で好きになってしまってからより、こちらの好意が育つ前のがいいだろう。
別に恋人にならなくたって抱かれさえすれば相手はそれで満足するのかもだけど。さすがに恋人でもない相手と初エッチを経験するのは悲しすぎるし、多分それもあって相手から付き合ってと言ってくれたんだろうし、そこは相手の申し出に甘えておくことにした。
「そんな悲壮な顔しなくても」
苦笑する相手に、誰のせいだと思ってと言いたいのをグッと堪える。どうせ言ったって状況が好転するわけじゃないし、気持ちが晴れるわけでもない。
「まぁそれはそれで興奮しなくもないんだけど」
「なんすかそれ」
嫌がられて興奮とか変態っぽいですよと言えば、嫌なんだ? と意地悪く聞き返されてしまう。嫌じゃないと思ってるわけではないんだろうから、嫌だとはっきり言われたいのかも知れなくて、ますます変態っぽいなと思ってしまった。
「ヤダって言わないんだ」
「言ったら喜びそうだったんで」
「嫌がられてなくて嬉しいよ」
にこっと軽やかに振りまかれた笑顔はわざとらしくて、なのにドキッと胸が高鳴るくらい惹きつけられてしまうから悔しい。だって絶対、自身の顔の良さをわかってやってる。
しかもその笑顔がスッと近づいてきたかと思うと、チュッと小さな音をたてながら唇を吸っていく。
あっけなく奪われていったファーストキスに、やはり少し残念な気持ちが湧いた。こんなものか、と思ってしまうのは、きっと相手のことを想う気持ちがないからなんだろう。
抱えていた憧れは、とりあえずで恋人になった相手とではやはり叶えられない。好きだという気持ちが向かう相手と、両想いって形でしたかった色々を、このままこの人に全部持っていかれてしまう。
残念に思う気持ちを隠すように瞼を下ろせば、再度相手の唇が柔らかに押し当てられた。
何度か角度を変えて繰り返されながら、キスはだんだんと深いものになっていく。ついでのように押し倒されて口の中を蹂躙されながら、口の中に溜まっていく唾液をどうにか必死で飲み下す。そんな中。
「ん……」
上顎を舐められてゾクリと肌が粟立った。
「んっ、んんっぅうっっ」
それを相手も察したらしく、そこばかりを執拗に舌先でくすぐられてはたまらない。さすがに相手の肩を掴んで押し戻せば、楽しそうな視線とかちあって眉が寄ってしまうのを自覚する。
「気持ちよくてびっくりしちゃった?」
「わざわざ言わなくていいです」
「でもちゃんと気持ちいいかは確かめておかないと」
初めての相手が俺で良かったって思ってもらいたいし、と続いた言葉に、それは無理、だなんてことはもちろん口に出したりしなかったけど。
「ふふっ、凄い不満そう」
口にしなくても伝わったっぽいのに、相手は随分と満足げで、やっぱり変態なんだなと確信する。
こんな人だと思わなかった、なんて言えるほど、相手のことを知っているわけではないのに。ほんの数年先に生まれただけの人のなのに。巻き込まれた被害者として仕方なく高校を変わったのではなく、自らの行いによって退学させられた問題児だったというのが正解っぽいのに。
先生なんて呼んで慕っていた時期がわずかにあったのと、相手がゲイだとはっきり認めたせいで、勝手に仲間意識と信頼を募らせて、相談なんてしてしまったのが間違いだった。
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すっかりご無沙汰しています。仕事でバタバタしていてなかなかこちらも拝見できず…でしたが、新作楽しく一気に読ませていただきました。どちらも思いがない状態からのスタート、ここからどう動いていくのかワクワクしますね!笑
攻めくんの追い詰め方が絶妙なラインで、読んでて楽しいです。続きも楽しみにしています!
お久しぶりです〜
こちらもまったり更新ですし、気が向いた時とか時間に余裕がある時にまとめ読みでぜんぜん構わないと言うか、むしろ書き途中の話を読んでくださっていつもありがとうございます。
今回のお話も楽しく読んでもらえてそうで良かったです。
まだちょっと迷ってることがあって、今後の展開どうなるか全然はっきりしてないんですけど(いつものことですが)とりあえず今回もハピエン目指して頑張りますのでよろしくお願いします。