親切なお隣さん21

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「俺の弟ってことで、警戒心ゼロで受け入れたんだろな、ってのは想像がつく」
 ちょっと難ありの弟がいる、という話はチラッとした事があるけれど、どんな弟で何を懸念してるかを詳しく語ってはいない。弟にお隣さん取られるのは嫌だ的なことも言ったけど、どこまで本気にしてたかは謎だし、当たり前だけどそんなことは起こらないと否定的だった。
 家族とのゴタゴタに巻き込みたくないって理由でお隣さんとのお付き合いを拒否ったのだから、お隣さん的には、ここで弟相手に上手く立ち回れるところを見せたかった。なんて思惑もあっただろうか。
 いやでもやっぱりただただ純粋に、寒いからうちで待てばいいよ、という親切心だけって気もする。状況的に、助けてあげたい困ってる子ども認定された可能性は高い。
「俺のこと、弟としか知らない感じなのに、馴れ馴れしすぎて意味わかんねぇっつうか、こっちは警戒心マックスだったつうの。つうか兄貴とやれんなら、警戒してて大正解だったってことじゃねぇの?」
 そこで一度言葉を区切った弟は、何かを思案し始めたかと思うと、やがてボソリと不穏でしかない言葉を漏らす。
「いやでもいっそ何かあったら兄貴との仲壊せてたのか?」
「まず、ナチュラルに仲壊そうって考えるのをやめろ。あとやってないし、そもそも無節操に手ぇだすような人でもないから」
「は? じゃあなんで……」
「なんで?」
「や、なんでもない」
 そう言ってまた何か考え込んでいる。
「で? マジに俺の顔見に来たってのがお前の目的?」
 明日おとなしく帰んならもうそれでいいけど、と言えば、今度はこちらをジッと見つめてくる。でもまだ何かを考え続けているようで、その口が開くことはなかった。
「なんだよ。てかこれ以上話すことないなら寝るぞ」
「なぁ、兄貴って結局アイツとどういう関係?」
「どうって……」
「付き合ってんの?」
 実は片思い? と聞かれて、キスしてんのに? と言い返したものの、付き合ってるわけじゃないのもまた事実だ。
「どうみても兄貴がねだってして貰ってたキスじゃん」
 まぁそれも事実だけど。好きとは言われたけど、結婚なんて話まで出たけど。でも口へのキスを最初にねだったのは自分で、それが習慣化しただけで、相手からキス以上のことを求められたことはない。
「ほら言い返せない」
「うるせぇ。ちゃんと、好きだとは言われてるよ」
「好きっていうだけ? あ、キスもか。で、それだけ?」
 デートしたりセックスしたりは? という追求に、してると返せないのが悔しくて、ついでになんだか少し悲しい。
 キュッと唇を噛み締めながら弟を睨みつければ、やっぱないんじゃんという呆れたような声を出しつつ、どこか嬉しげな顔を近づけてくる。悔しがる顔を間近に見たいんだろうと思って、顔を反らしながら仰け反ったのは失敗だった。
 顔近すぎって押しのけるのが正解だったんだろうけれど、弟相手に手なんか出せない生活が身に染み付いている。
「ちょっ、おいっ、いい加減に、痛っ」
 ぐいぐい寄ってくる弟を避けるためにどんどんと重心が後ろに傾いて、とうとう仰向けに倒れてしまった。倒れた先に布団はなく、畳の上に頭を打ってしまって痛い。
「兄貴さ、やっぱ帰っておいでよ。卒業したらでいいから」
 あと1年くらいなら待ってやるよと、こっちで就職するつもりだと言ったばかりだと言うのに、弟はどこまでも尊大だ。
「なんだいきなり。帰らないって言ってんだろ」
「隣の貧乏人に尽くしたところで何になんの? あんな男に尽くすくらいなら、俺に尽くしてくれてもいいじゃん」
「絶対ヤダ。実家戻ってお前のサポートするくらいなら、お隣さんに尽くす方が何倍もマシだっつうの。つかいい加減そこ退けよ」
 何を考えているのかわからないが、ひっくり返ったその隙に弟に腰を跨がれてしまった。なので現状、身が起こせずにいる。というか強引に抜け出ようとしたときに、弟がどういう行動に出るのかさっぱりわからなくて動けない。
「ヤダ。俺にしろよ。兄貴のこと、俺が抱いてやるからさ」
「はぁあああ????」
 そんな爆弾発言を投下されたら、叫ばずにはいられなかった。

続きました→

 
 
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