親切なお隣さん29

1話戻る→   最初から読む→

 体格にあまり差がなくて良かったと言われながら、服どころか靴まで一式借りて、ひとけのない暗い寒空の下を手を繋いで歩く。といってものんびり散歩ってわけではないし、移動距離だって長くない。
 そこそこ早足で向かっている先は、お隣さんが契約しているアパート近くの駐車場だった。
 抱かれたくてアナニーまでしてる。しかもそこそこの頻度で。と知られたおかげで、とうとうお隣さんがその気になってくれた結果だ。
 つまり、今からお隣さんにラブホへ連れて行って貰えることになった。
 言い出したのはお隣さんだけど、ぜひ行きたいと前のめりに承諾したのはこちらだ。
 ただでさえ触れたらどこまで抑えが効くかわからなくて躊躇うのに、いつか抱かれるつもりで準備までしてるって知ったうえで触れたら、欲が出て最後まで抱きたくなっちゃう可能性が高いから。というのが一番の理由らしいんだけど。その理由だけでも嬉しくてテンションがぶち上がった。
 お隣さん的には、デートとかの手順をすっ飛ばしてホテル、という部分を気にしてるみたいだったけど、残念ながらこちらはそんなの全く気にならない。散々一緒に食事を繰り返していたあれはお家デートだし、昨日の買い出しも、今朝の初詣も、今手を繋いで歩いているこれも、全部デートってことでいい。
 まぁ双方ともに付き合ってる認識になって、紛れもなく恋人と呼べる関係になったのは、ついさっきのことだけど。でも好きって気持ちも、行為への期待も、お互い充分すぎるほどに重ねてきたのは事実で、だから恋人になった直後にセックスだって何の問題もないと思う。
 そもそも恋人じゃなくたって、求められたら応じる気満々だったどころか、抱かれてみたくて仕方なかったんだから。好きな人に抱いて貰う幸せとか快感とかを想像してアナニーしてたけど、その想定を超えて、大好きな恋人に抱いて貰えるなんて楽しみで仕方がない。
 それに全く初めてではないというか、他人の指やら大人のオモチャやらを知ってしまっている穴だけど、厳密に言えば未経験と言っていいはずなので。処女なので。
 ちゃんと好きな人に初めてを貰ってもらえる、というのは、かなり低確率な当たりを引いた気分でもあった。
 自分の人生を振り返ったとき、あの日エアコンが壊れる不幸がなければ、初めてなんてもっと簡単に捨てていた気がする。というか間違いなく、こっちでもパパ活チャレンジをしていたと思う。
 だからホントに、「今からラブホ」を提案されてから先は、やたらテンションが上っていたんだけど。嬉しすぎたし、期待しまくってるんだけど。でもどうやらそれなりに緊張もしているようだった。
 その緊張に気づいたのは、ラブホに到着して、一通りの準備をしている最中だった。お腹の中を洗ったりで、冷静になってしまったともいう。
 好きな人に抱いてもらう都合の良い妄想しかしてこなかったし、それっぽい経験は過去に一度だけで相手ははっきりとゲイだった。お隣さんは男の大家さんを大好きだけど、女性の恋人を欲しがる様子は見たことがないけど、ゲイやバイなのか確かめたことはないし、男を抱いたことがあるのかどうかも知らない。
 間違いなく知識は持ってるんだろうし、さっきキスで反応してるのも確かめたし、したい気持ちがあるってのも本当なんだろうけど。
 部屋に戻り、ベッドに腰掛け待っていた相手と目があった瞬間に、苦笑されてしまった。
「どうしたの? って聞くまでもないかな」
 さすがに緊張してきた? と問われて、少し、と返す。
「俺もそう経験あるわけじゃないし、大丈夫だから全部任せて、とかは言ってあげられないんだけど」
「そ、なんすね」
 やっぱりあまり経験はないらしい。全く無いとは言われなかっただけマシと思うべきかもだけど、きっとその経験って女性相手だよなと思ってしまって、申し訳ないけど不安が増した。
「触れたら抑えが効かなくなるかもみたいな気持ちはあるんだけど、無理させるつもりもないから安心して、ってのも変かな。いやでも、ほんと、無理させるつもりないし、嫌になったら我慢はしないでいいから」
「あ、いや、そういうんじゃ……てか抑えが効かなくなった、とかならむしろ全然ウェルカムと言うか」
「えっ?」
「あーその、えー……」
 男と経験ありますか? と聞いたら、君はどうなの? とか聞き返されそう。というのが一番避けたい展開で、どうしても言葉を濁してしまう。
 パパ活って単語を会話にだしたことはあるけど、過去に実際経験した話なんて当然してないし、知られたくもない。なんせ中学時代に手を出してるので、そんなのを知られたらどう思われるのか、わからなすぎて怖かった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です